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いつもなら目覚まし時計が何個あっても起きない翠星石だったが……この日は自然と目を覚ました。

飛んでいきそうな勢いでベッドから跳ね起きると、そのまま窓辺に向かう。
そしてカーテンをサッと開けて天気を確認した。

気持ち良い位に、晴れ渡った青空。

「おお!やったですぅ!! 」
目をキラキラさせながらグッと拳を空高く突き上げる。

そしてジャージに着替えると、部屋の中で準備体操を始めた。
と……
ちょうどそのタイミングで、翠星石を起こしてあげようとした蒼星石が部屋の扉を開いた。

「おはよう翠星せ…… 」
そこまで言い、扉に手をかけながら呆然と立ち尽くす蒼星石。
彼女の目の前では、ジャージ姿の翠星石が「おいっちに、さんし、ですぅ♪ 」とストレッチをしている……

「………翠星石……念のために言っておくけど……体育祭は来週だよ? 」
蒼星石は苦笑いを浮かべながらそう言うと、そっと扉を閉める。

数秒遅れて…「ほぁぁぁぁぁぁ!!!?? 」という叫び声が部屋の中から聞こえてきた。




◆ ◇ ◆ ◇ ◆  この町大好き! ☆ 増刊号27 ☆  ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




◇ ◇ ◇ H.R


「翠星石ったら、一週間も間違えて体育祭のつもりでいたんだよ? 」

授業が始まる前のホームルームの時間、蒼星石は楽しそうに今朝の様子を真紅と水銀燈に話していた。

「プ…あはははは…!翠星石…あなた本当にバカじゃないのぉ…! 」
「全く…これが同級生だと思うと、泣きたくなるわね 」
お腹を抱えて笑う水銀燈と呆れ顔の真紅。

そんな二人に囲まれ、翠星石は耳まで真っ赤にしながら机に突っ伏していた。
「ぅぅー…蒼星石のおバカー!大っ嫌いですぅ! 」

「はは……でも、そんなおっちょこちょいな翠星石でも、僕は好きだよ? 」
蒼星石はそう言いながら、ジタバタと足だけ動かす翠星石の頭を撫でる。

すると翠星石は……バタバタしていたのをピタリと止め……
頬を膨らませながら、チラッと蒼星石の顔をうかがいはじめた。
「…………おいしいご飯でも貰わないと機嫌を直さないに違いないですぅ…… 」

翠星石を囲む三人が苦笑いを浮かべた所で、担任の先生がガラッとドアから入ってくる。


今日は、普通の日。




◇ ◇ ◇ 一時間目


「………このダイナ号の沈没は、後に外交的な問題にまで発展し…その代表的な例として… 」
歴史の結菱先生が、相変わらず物静かな雰囲気を身にまといながら教科書片手に授業を進める。

この先生の授業は、なにやら小難しい事で生徒の間では評判はイマイチであったが……
それでもそこは、結菱先生の存在感というのか……授業はひたすら静かに進んでいた。

(こんな授業では、嫌われても仕方ない事かもしれんな…… )
やけに静かな教室を背中で感じながら、結菱先生は黒板にチョークを走らせる。

と……
不意に、カリカリと必死にペンを走らせる音がしている事に気が付いた。

驚かなかったと言えば、嘘になる。
今までも真面目な生徒はいたが…そんな彼らとは比にならない程の熱心さでノートをとる音。
「……ほぉ… 」
小さな声でそう言い、結菱先生はその音の主を突き止めようと振り返った。

真面目な表情で黒板を見ながらノートをとる蒼星石が最初に目に留まる。
だが……それは先ほどの音の主にしては…どうも勢いが無い。

そう考えながら、視線を蒼星石の横に向けると……

必死な形相で、教科書の隅にパラパラ漫画を書いている翠星石を発見した。

双子だと聞いたが…何故、こうまで違うのだろう……
教師を長年続けてきた結菱先生にも、それはさっぱり分からなかった。




◇ ◇ ◇ 二時間目


「He is Jun,not a jum.…この英文を……そうね。水銀燈、訳して 」
外国からやってきたオディール先生が気だるげに椅子に座りながら授業を進める。

今日の今日とて睡眠不足な様子で、オディール先生はしょっちゅうあくびをしていた。

と……そんなチャンスを翠星石が見逃す訳が無い。
「先生!どうして寝るときには羊を数えるですか? 」
ズバッっと手を上げながら、そうオディール先生に尋ねてみた。

「どうしてかしらね……こう……ふわふわしてて柔らかそうだから…?
 でも……毛を収穫されたら、ふわふわじゃなくなるし…… 」
オディール先生は考え込むように首をかしげながら、ブツブツ言い出す。

「それに…羊を数える時って、柵を飛び越えさせるけど……
 そんなに運動したら、かえって目が冴えるわよね……… 」
瞑想するように目をつぶり、オディール先生は考え込む。


「ふっふっふ……計画通りですぅ…… 」
今にも寝ちゃいそうなオディール先生の様子に……翠星石は人知れず、ニヤリと笑みを浮かべていた…。

まさか、そんな作戦だったとは夢にも思わず、オディール先生はブツブツ言いながら夢の世界へと旅立ち始め……


「いいえ……これは逆に……運動した事による疲労で………ダメよ……疲れるのは私じゃなくって……羊だもの……
 なら……何でなの?………ああ!もう!眠れないじゃないの!! 」
クワッと目を見開き、オディール先生は立ち上がる!

「……寝ないで授業を続けていただけませんか? 」
生徒の一人、雪華綺晶から向けられる冷ややかな目線が、とっても痛かった。




◇ ◇ ◇ 三時間目


化学の先生、みっちゃんが、よれよれの白衣を着ながら授業を……してなかった。

「それでね!この前なんて、私の為にお弁当を作ってくれたのよ! 」
こんな調子で、授業時間の大半を使って姪っ子のノロケ話をするみっちゃん。
黒板には資料の変わりに、みっちゃんが用意した彼女の姪・金糸雀の巨大パネルが張られていた。


彼女自身にも、先生であるという自覚は少なく……生徒からも、先生だとはあまり思われてない……




◇ ◇ ◇ 四時間目


「さあ!来週に迫った体育祭の為にも、今日はゲロを吐くまで授業をするわよ! 」
体育教師とは思えない貧弱な体と青白い顔で、めぐ先生が元気良くそう叫ぶ。

「今日はリレーの時のバトンを渡す練習をするわ。さあ、皆、準備して 」
そう号令を飛ばすと、ポケットからゴソゴソと合図用の音が鳴るピストルを取り出した。

その瞬間!翠星石の目がギラリと光る!!

「ほぁぁぁ!!隙ありですぅ!! 」
叫ぶや否や、猫科最強の動物の如くの勢いでめぐ先生の手からピストルを奪い取る!
そして……
「ふっふっふー……さあ!命が惜しくば、授業は組み体操の練習にするですよ…… 」
ピストルをめぐ先生に向けながら、翠星石は不敵な笑みを浮かべた……

「…くっ……そんな脅しに乗ると思うの……授業の為に死ぬなら…本望よ! 」
(音しか出ない)ピストルを向けられ、めぐ先生は顔を強張らせながら答える。

「ひーっひっひ!!そう言うと思ってたですよ!ですが…強がってられるのも……今だけですぅ! 」
翠星石はなおも悪役みたいな笑い方をしながら……
今度はそのピストルを水銀燈へと向けた!

「……よりにもよって水銀燈を狙うだなんて……卑怯よ! 」
ギリギリと歯を食いしめ、悔しそうにめぐ先生は呟き……

「…何で……あなたまでノリノリなのよぉ…… 」
水銀燈に頭をペシっと叩かれた。




◇ ◇ ◇ 昼休み


「すこやかに~伸びやかに~ 」
翠星石は楽しそうに口ずさみながら、校庭の隅に植えられた小さな木に水をやっていた。

「あら翠星石、何をしているの? 」
真紅がそんな翠星石に声をかける。
「見て分からんとは、真紅もまだまだですね。木に水をやってるですぅ! 」
翠星石は満面の笑みで振り返ると、これまた楽しそうに答えた。

「……それは見たら分かるわ。そうじゃなくって…… 」
「だから、それは何の木か、って事よぉ 」
真紅の質問を水銀燈が今度は受け継ぐ。

「この間こっそり植えた桃の木ですぅ!!
 桃栗三年、火器八年と言うですよ!きっと再来年には美味しい桃が出来るに違いないですぅ! 」

今から収穫が楽しみなのか、幸せそうにクルクル回りながら翠星石は答えた。


「再来年って……僕ら卒業してるよね…… 」
蒼星石が、小さな声で呟く。

「……ダブらないと食べられないわねぇ…… 」
「翠星石、あなた…ダブるつもりだったの…? 」
水銀燈と真紅も、困ったような表情で呟く。


翠星石はピタリと止まり……それから、ガックリと地面に膝を付いた………




◇ ◇ ◇ 五時間目


お昼ごはんが終わってから始まる五時間目。
翠星石にとっては、起きてろという方が難しい時間帯。
それが……何を言ってるのかよく分からない、数学の授業なら…なおさら。

「……むにゃ……むにゃ…… 」
ご丁寧に机の上に枕まで置いて、翠星石はお昼寝の時間を楽しんでいた。

「それではこの問題を…翠星石に…… 」
梅岡先生がそう言いながら、教室を見渡す。

「は、はぃぃ!? 」
突然、名前を呼ばれて翠星石は飛び起きたが…どうにも寝ていたせいで状況が掴めない。
困りながら周囲をキョロキョロしていると……
ありがたい事に、真紅が助け舟を出してくれた。

「教科書の55ページ……X足すCを求めよ…の所よ…… 」
真紅は小声で、翠星石に出題の箇所を教える。

だが……翠星石は素っ頓狂な声を出すだけだった。

「は?エクスタシー?……真紅、何を言ってるですか? 」
寝起きの、あまりハッキリしない頭のまま、翠星石は思ったままにそう言う。

瞬間、教室の中が凍った………




◇ ◇ ◇ 六時間目


「今日の授業は……何にしましょうか?先生、迷っちゃうわぁ! 」
家庭科担当の桜田のり先生が、天然ボケを遥かに超えたボケっぷりを披露しながら教壇に立っていた。

「はいですぅ!それなら3時のおやつを作るのが一番ですぅ!! 」
ここぞとばかりに目を輝かせ、手を上げる翠星石。

そんな訳で、クッキーを焼く事に。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

「……………… 」
薔薇水晶は、お父様にプレゼントしてあげよう。きっと喜ぶ……と考えながらクッキーの生地をこねる。
何味が良いだろう?そんな風に考えながら、生地をこねる。
「………お父様が好きなもの……………………私? 」

『クッキー(薔薇水晶入り)』
何だか、妙な単語が浮かんできたけど……ブンブン頭を振って忘れ事にした。

ふと薔薇水晶が横を見ると、雪華綺晶がクッキーをオーブンに入れ……
焼き上がりを待つ間、使いきれずに残っていた苺ジャムをパクッと食べていた。

苺ジャムを食べながら、嬉しそうにニタァ…と笑う雪華綺晶を見て……
(きらきーは優しくて美人だけど……時々、もの凄い笑顔をするなぁ……)
と、薔薇水晶は思った。

◆ ◇ ◆ ◇ ◆

そうこうしている内に、時間は流れ……
クッキーが焼きあがった香ばしい匂いが、教室の中に広がり始めた。

「と…特別にくれてやるですぅ!ありがたく受け取りやがれですぅ!! 」
翠星石は背中に大量のカラシを隠しながら、水銀燈にクッキーの入った小さな袋を押し付ける。

「ふふふ……貰っちゃったぁ 」
何か裏があるとは知らず、そのクッキーを蒼星石に自慢する水銀燈。
「翠星石……僕のは……無いの? 」
しょんぼりしながら、蒼星石は姉に声をかけ……

翠星石の目が怪しげにギラギラ光っているのを見て……やっぱり貰うのは止めといた。

「蒼星石。それなら、私が焼いたクッキーをあげるわ 」
不意に背後から聞こえてきた真紅の声。

蒼星石が返ると……真紅が、異臭を放つ消し炭を手渡してきた。


まさかとは思うけど……彼女はコレの事ををクッキーだと言っているのかな?

蒼星石の背中に、とっても冷たい汗がツツーっと流れる……




◇ ◇ ◇ 放課後


「いやー、やっぱりここが一番落ち着くですぅ… 」
いつもの部室。『部長』と書かれた三角コーンの置かれた席で、翠星石は一息ついていた。

そしていつものように、真紅は部室に置いてあるポットで紅茶を淹れようとして……
紅茶のリーフの買い置きが残り少なくなってきた事に気が付いた。


「そういう事なら、今日の部活は町に繰り出して…おもしろいネタを探す事にするですよ!! 」

「たまにはまともな事も言うのね。リーフを買うついでに喫茶店にでも行きましょうか 」
「それだと、そのまま皆でお茶を飲んで解散、ってなっちゃうかもしれないね 」
「その方が変な事に巻き込まれるより、ずっとマシねぇ…? 」

4人で賑やかに部室から出て、仲良く並びながら廊下を歩く。




今日も、学園は平和だった。




と、校舎の外にも聞こえそうな位に元気な声が廊下に響き渡った。

「おお!バカ水晶に雪華綺晶じゃーねーですか!どうせならお前達も一緒に来るですよ!! 」




今日も明日も、あさっても。
この町はいつまでも、平和だった。
 
 
 
 

 
 
 

 

コノマチ ( ゚∀゚ ) ダイスキ!



  

  
     
  

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