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第四話


全く、チビチビにまで心配かけるなんて、長女失格ですね。
ま、まァその、ほら、アレですよアレ。
翠星石は水銀燈とかきらきーのコトなんかちぃとも心配してないんですよ。
ジュン? あんなチビ人間は最初っから思慮の度外視です。
せっかくだから晩ご飯は豪勢にしてやりましたけど。
ふん、コレでジュンもちょっとは翠星石のありがたみを知ればいいんです。
そ、そりゃあ少しは蒼星石にも手伝ってもらいましたけどね。
この寮で翠星石の料理の腕に着いて行けるのは、蒼星石を置いて他にはおらんです。
あー! チビ人間のクセして、また水銀燈とイチャイチャしてるですぅ!
んー、もー、なんか腹が立つです。
なんだってジュンは水銀燈とかきらきーばっかり心配するですか!
翠星石もこんなに悩んでるですから、ちょっとくらいこっちも見るべきですよ。
べ、別に翠星石はジュンに心配してほしいワケじゃないです。
ただ、み、皆の前でイチャつかれるとムカつくんですぅ!


「落ち着いてよ翠星石。水銀燈が元気になったんだからいいじゃないか」


それはそうなんですけど、んー。
なーんか気に入らんです。
気に入らんと言えば、昼間ジュンは、翠星石に向かってとんでもなく失礼なコト言ってたですね。
なーにが「背伸びしても僕より低い」だーですか。
翠星石は女の子なんですから、普通は男よりちっちゃくて当たり前なんです。
それを、小さいプライドを振りかざして言い返すなんて、やっぱりジュンは器もちっちゃいです。
ふふん、翠星石は常に余裕を持っていますからね。
なんと言われても、全然平気の平八郎です。
やっぱり、ジュンが晩ご飯食べていくだろうと思って豪勢にしたのは間違いだったですかね。
いつこうなってもいいように、こっそり9人分の食糧を買っておいたのがバカみたいです。
ま、まァせっかくなので無駄にはしませんでしたけど。
それに、水銀燈も水銀燈ですよ。
あんなに顔をくしゃくしゃにしてたクセに、ジュンと話しただけでもうご機嫌です。


「全く、さっきまで落ち込んでたと思ったらもうニヤニヤしてるです。現金なヤツですぅ!」

「あ、あなたには関係ないわぁ!」

「むっきー! ひ、人が心配してればつけあがりやがってー! ですぅ!」


か、かんけーないとはなんですか!
人がせっかく心配してたですのに!
きぃぃ、なんかイライラするです。
大体、学校で最初にジュンと話したのは翠星石なんですよ。
それがなんですか。
気付いた時には、すでにこの寮の皆がジュンの周りにいるです。
……はっ。
だ、ダメですよ翠星石。
せっかく、才と色を兼ね備えた美少女として生まれてきた翠星石が、こんなに怒ってるのはありえないです。
また眉間にシワが……。
んうー、これというのも、全部ジュンのせいですぅ。


「ほら、二人とも。手を合せて」


あ、ああ、そうでした。
もう晩ご飯なんですよね。
せっかくたくさん作ったんですし、美味しいモノ食べて落ち着くとしますか。
味はきらきーのお墨付きですし。
その、スープの味は、ですが。


「みんな合わせた? はい、それじゃいただきます」

『いただきます!』


ふう、やーっとご飯ですよ。
なんだかここまでが妙に長かった気がするです。
やっぱり、今日はちょっと張り切りすぎたですかね?
色々凝ったものも作ったですし。
それにしても、きらきーはやっぱり震えてるです。
気休めにリラックス効果のあるハーブ料理をいくつか作りましたけど。
やっぱり、あの騒がしいジュンを静かにさせられるのは翠星石だけです。
きらきーが困るのも当然ですよね。
あんなに騒がしいチビ人間が隣でご飯を食べていたら、そりゃあ困るってもんです。
やっぱり、ジュンの隣にふさわしいのは翠星石なのですよ。
……ジュンを止められるのは翠星石だけですからねっ。
仕方のないコトなんです。


「ねえ、翠星石。大丈夫?」

「へ? な、何がですか?」

「だって、さっきから怒ったりニコニコしたり」

「なぁ!? 何言ってるですか蒼星石! 翠星石はずっと淑やかに食べてたです!」

「……はいはい。やっぱり翠星石は、素直じゃないけど素直……むぐぐ!?」


全く、今日の蒼星石はおしゃべりですぅ!
い、い、いちいちくだらんコトは言わんでほしいです。
いくら双子の妹でも、言ってはならんコトくらいあるですよ。
というワケで、ちょっと口を封じてみたです。
翠星石もツライですが、たまには心を鬼にしないとダメですからね。
帰って来たときのコトだって、ちゃーんと聞こえてたです。
ジュンにヘンなコトを吹き込まないように注意してて良かったですよ。
蒼星石は、最近お茶目になりすぎなんです。
今度余計なコトを言いそうになったら、何か罰を与えねばなりませんかね。
ぽこぽこ。
そうですね、こんなカンジに優しく諭すのもいいかもです。
さすがの翠星石も、腕力は強くありませんですしね。
軽く叩いて諭すってのは良い考えですぅ。
ぽかぽか。
うーん、こんなカンジで、ちょっと強めにするのも良いかもですかね。
でも、あんまり暴力に訴えても、それはそれで翠星石のモットーに反するです。
翠星石は、才色兼備の美少女ですから。
淑女らしく、もっと丁寧に諭すのが一番ですよ。
優しい言葉で、ゆっくりと。
そして、相手の心は健やかにのびやかに成長していくってワケで……
ぽこぽこぽかぽか。


「んもう、何ですかさっきから……って、ああ!」

「むー、むー!」

「ああ、す、スマンです蒼星石ぃ。その、だ、大丈夫ですか……?」

「んあっ、は、はぁ……ふう。もう、ひどいよ翠星石ってば」


しまったです。
考え事に夢中で、蒼星石を河のアッチ側へ吹っ飛ばす寸前でした。
翠星石としたコトが、ポカやっちまったですぅ。
いくらなんでも、双子の妹である蒼星石を手に掛けようとしちまうなんて。
これじゃ、翠星石は翠星石失格です。
うう、さすがの蒼星石もちょっとニラんでるですよ。
ただ、その、片目をつむりながらけほけほしてる蒼星石がちょっと可愛く見えてしまったです。
へ、ヘンですね。
翠星石にはそんなケはちぃともないハズなんですが。
あ、これは姉妹愛ですね姉妹愛!


「なァ、翠星石」

「ふぇ? な、何ですかチビ人間」

「さっきから、蒼星石を口封じしたり、一人でブツブツ言ったり、どうかしたのか?」

「な、なぁ!?」


ひぃー、ぜ、全部見られてたですか!
うあ、よく見れば、皆からヘンな目で見られてるですぅ。
ジュ、ジュンも口をぽあーっと開けて見てるですよ。
うう、こ、こっち見んなですぅ。


「はは、面白いヤツだな」


ま、真っ赤になっていくです、顔が、翠星石の。
ジュンに笑顔を向けられちまったですよ。
知ってるです、ぜーったいヤツは知ってるです。
きらきーほどじゃないですけど、その、翠星石も男子の笑顔には慣れてないんですよぅ。
その、だから、んー。


「な、何でもないです。なんでもないですぅ」

「んぁ?」


ホンット鈍感な野郎です。
乙女がこんなにハズかしがってるのに、いつまで見てる気ですか!
おかげで目も合わせらんなくなっちまったです。
それにあの目、あの日のあの目とおんなじだったです。
いっつも翠星石をニラんでるクセに、何でこんな時に限ってそんな目をするですか!
うう、や、やめてほしいですぅ。
その目は苦手です。
うああ、顔が熱いですよ。


「本当、蒼星石の言う通りねぇ。素直じゃないけど、素直だわぁ」

「同感だわ。全く、羨ましいわね」

「翠星石ったら、顔が真っ赤なのー」

「あの、その辺でやめておいたほうが良いと思うけど、どうかしら?」


う、う、う。


「うるせえーですぅ! 翠星石は顔を真っ赤に、なん、か……」


ばぼん!
ま、まだジュンが見てるですよぅ。
その目は苦手って、何度言えばわかるですか!
ていうか、なんで翠星石がこんなにうろたえなきゃならんですかぁ。
おお、おかげで顔が爆発しちまったです。
あー、あー、あー。
もーいいです認めるですよ。
翠星石は、ジュンのコトが、その。
す、す、す、好きなんです、悪いですか!
あんな暑い日にあんなコト言われて、嬉しくないハズがないですぅ。
そーですよ一目ボレです。
全く、この才色兼備の美少女である翠星石が、なんでこんな冴えないヤツを好きになったんだか。
21世紀初頭にして、すでに世紀の謎ですぅ。


「大丈夫だよジュン君。翠星石、たまにこんなだから」

「そうなのか?」


そ、蒼星石ぃ。
ジュンにヘンなコト吹き込まないでほしいです。
なんでジュンもそんなコトで納得するですか。
ちょっとは察してくれです。
なんで翠星石がジュンのコトでこんなに悩まなきゃならんですか。
やっぱり、全部ジュンのせいですぅ。
ジュンが翠星石に一目ボレさせなければ、今頃は翠星石も世界も平和だったです!
んもー、こうなったらヤケです。
食って全部忘れるですよ!


「ごちそうさまー」


ふー、意外に夢中になれるもんですね。
おかげで、ちょっと落ち着いたです。
あとはこの食器の群れを片づけていれば、その間もヘンな考えを起こさずに済むですぅ。
さっすが聡明な翠星石ですね。
食器の量も考えて、あと20分はなんとかなるですよ。
さっきは混乱し過ぎて何を考えていたのかも忘れたですけど。
どうせロクでもないコトですし、思い出しても仕方ないです。
ヘンなコトは、忘れるのが一番です。


「あ、食器洗うの手伝うよ。ごちそうになったんだし」


ひいぃぃ!
ジュンのヤツ、なんだって空気読めねえんですか!
あああ、ジュンのせいでさっき何を考えていたのか思い出しちまったですよぅ!


「大丈夫だよ。ジュン君はお客様なんだし、ゆっくりしていってね」


そ、そーですさすがは蒼星石です。
頼むからこのまま引き下がってくれですぅ。
コレ以上もんもんとしたら、もうホントにやべえです。


「いいさ、これくらい。なし崩しとはいえ、今日一晩世話になるんだし。皿洗いくらいなら、僕にもできるからさ」


くーうーきーよーめーでーすぅ!


「そ、そう? それじゃあ、お願いしようかな」


蒼星石までぇ。
ふうぅー。
こうなったら、無心で通すしかないです。
心頭滅却すればジュンもまた容易いハズです!


「それじゃ、僕は洗い終わった食器を片づけるから。二人には洗い物をお願いするね」


も、もういっそ殺してくれ、です。
蒼星石のイジメっ子ー!
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