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「相談があるんだ……ちょっと来てくれないかな…? 」
蒼星石から届いた、一通のそんなメール。

いつものように、喧嘩しながら二人で買い物をしていた真紅と水銀燈は…
呼び出されるまま、近くの喫茶店で蒼星石の到着を待っていた。

「それにしても…急に相談だなんて、一体何なのかしらね? 」
アイスティーにストローを突き刺しながらの真紅。
「さぁ……案外…恋の悩みだったりして…?ふふふ…… 」
早くも妄想大爆発でコーヒーをスプーンでグルグルしてる水銀燈。

「恋……まあ、私たちの年頃には珍しくない悩みね 」
「そぉよねぇ?やっぱり蒼星石、ボーイッシュな所あるし…気にしてるんじゃなぁい? 」
「そうかしら?あれはあれで、コアな層には受けると思うのだわ 」
「…そのコアな層、ってのが、悩みの種なんじゃないのぉ? 」

そんなこんなで、二人が妄想を大爆発させていると……

 カランコロン…

蒼星石が到着した。そして…――――


「あの翠星石に!? 」
「恋人ですってぇ!? 」 




◆ ◇ ◆ ◇ ◆  この町大好き! ☆ 増刊号11 ☆ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
  


 
ガタン!と同時に席を立った真紅と水銀燈に、店中から白い目が向けられる。
二人同時に、気まずそうに着席。
コホンと咳払いをして、再び蒼星石に向き直った。

「…蒼星石、それは本当なの? 」
「で?でぇ?相手は誰なのよぉ? 」

興味津々といった表情で、前のめりの真紅と水銀燈を前に…
トップ・オブ・ザ・シスコン、蒼星石は…『相談する相手を間違えたなあ』と思った。

◇ ◇ ◇

「いや、相手はその…まだ分からないんだけど……
 最近、翠星石がダイエット始めたみたいで…… 」
蒼星石はテーブルの上のアイスコーヒーを見つめながら、ポツポツと話し出す。

「…あの子がダイエットに挑戦するのなんて、珍しくないじゃないのよぉ… 」
「そうね。私の知る限りでも、これで16回目のチャレンジなのだわ 」
ちょっと怪しくなってきた流れに、真紅と水銀燈は椅子に深く座りなおす。

そんな二人の態度の変化には気づく素振りも見せず、蒼星石は相変わらず泣きそうな顔をしている。

「でも…!三度の食事よりご飯が好きな翠星石が…晩御飯を残すんだよ!? 」
「どれだけご飯が好きなのよ… 」
ガタン!と席を立った蒼星石に、真紅が小声でつっこんだ。

◇ ◇ ◇
 
「それに…それだけじゃないんだ…… 」
すでに周囲が完全に見えなくなっているシスコンの独白は続く。

「最近…翠星石の下着…どんどん新しいのが増えてるんだ… 」

「……流石の私もそれは引くわぁ…… 」
「……蒼星石…どうして翠星石の下着をチェックしてるの…? 」
少し顔を引き攣らせる水銀燈と真紅。
水の無くなったコップに入った氷が、カランと音を立てた。

「ち…違うよ!?全然違うよ!?僕が洗濯をしてるから、たまたま気付いただけだよ!? 」

顔を真っ赤にしながらガタン!と席を立つ蒼星石。
いい加減、店内から向けられる白い目にも、悲しい事に慣れてきた。

◇ ◇ ◇

このままでは店を追い出されかねない。
そう考え注文した二杯目の紅茶を飲んでる真紅に、蒼星石はまだまだ喋り続ける。

「今まではそんな事なかったのに…最近になって急に、翠星石の日記帳に鍵が付けられるようになったんだ… 」
「ちょっと待って、蒼星石。あなた、翠星石の日記を勝手に読んでるの!? 」

真紅の言葉に蒼星石は一瞬、「しまった!」みたいな表情をして…
それから、やけに思慮深げな顔をしながら答える。
「いや…あれは……そう…事故…みたいなものだね… 」
無意味に凛々しい表情が、逆に虚しかった。

   
その頃…
「あ、すみませーん。ケーキセット一つ貰えるかしらぁ? 」
水銀燈は既に話を聞いてなかった。

◇ ◇ ◇

「それに…何といっても、これが一番の要因だけど……
 ちょうど夏休みが始まった頃から…時々、翠星石が一人で出て行って……
 それで、帰ってくるのは、いっつも夜になってからなんだ……ねえ、どう思う!? 」
目の端に涙をうっすら溜めながら蒼星石が真紅と水銀燈に詰め寄る。

「ふふ…このケーキ、なかなか美味しいわぁ… 」
「そうなの?少し貰えるかしら? 」
「もちろん、お・こ・と・わ・り 」
「でしょうね。私も注文するわ 」
完全に、聞き流し始めた二人。


蒼星石は……
「…………………………それでね?この間なんて…―――― 」
勝手に一人で話を続けた。

◇ ◇ ◇

「あなた達は姉妹なのでしょ?だったら、ウジウジ悩まず本人に直接聞いてみる事ね 」
「それでも駄目だったら…その時こそ、話くらいは聞いてあげるわぁ 」

散々聞き流しながら、それでも最後の最後にはそれっぽい事を言う真紅と水銀燈。
 

「ありがとう。二人に相談できて良かったよ 」
心のモヤモヤが少しは晴れたのか、いくらか明るい表情で答える蒼星石。

気が付けば日も暮れ始めていたので、その場で解散する事に。

そして………


◆ ◇ ◆ ◇ ◆


「ただいま…っと、翠星石。今日はもう帰ってたんだ? 」
蒼星石が家に帰ると、そこには既に翠星石がリビングでテーブルに向かっている姿。

「おおおおおおかえりなさいですぅ! 」
やけに慌てながら、翠星石がテーブルの上の何かを隠している。

「どうしたんだい?そんなに慌てて… 」
蒼星石がそう言いながらテーブルの向こう側に回りこむと……
そこには、お皿に乗ったケーキが2つ。

「…駄目だよ?ご飯の前にケーキなんか食べたら晩御飯が食べられなくなるよ? 」
「なーに言ってるですか!お菓子を食べない翠星石なんて、ただの可愛い美少女ですぅ!! 」
「…それを自分で言う所が、姉さんの凄い所だね…… 」

ちょっと苦笑いを浮かべながら蒼星石はそう言い…ふと気が付いた。

「ねえ翠星石…ひょっとして…毎日ケーキ食べてたの? 」
 
 
翠星石はビクッ!と分かりやすいリアクションをして…
それから、涙を浮かべながら(嘘泣き)弁解を始めた。

「違うですぅ!何も違わないですけど、違うですぅ!
 夏休みだけケーキ屋でバイトをしてみたら……気が付いたらケーキを買って帰ってるですよ!
 そうです!これはケーキ屋の陰謀ですぅ!そうと分かれば、これからケーキ屋に殴りこみに…――― 」

適当に話題を逸らしながら逃げようとする翠星石の首根っこを捕まえ、蒼星石は…
自分の心配が杞憂だった事に気が付いた。

ご飯をあまり食べなかったのは、ケーキでお腹が一杯だったから。
帰りが遅いのも、ケーキ屋でバイトをしていたから。
新しい服も、バイト代で余裕ができたから。
それに……
「日記帳の鍵も、バイト代で買った………ハッ!? 」

途中から言葉に出ていた事に、蒼星石は気付かなかった。
でも、いつの間にか翠星石が真っ黒なオーラを放っている事には気が付いた。

「…蒼星石……オマエ……何で私の日記の事知ってるですか…? 」
邪悪な何かにしか見えない翠星石っぽい人影が、ゆらりと揺れる。

   
これは不味い。
そう考えた蒼星石は……とりあえず、凛々しい表情で思慮深げに呟いた。
「いや…きっと…それは…事故……そう、事故のようなものだね…… 」

「…………… 」
「……そう、事故だよ……不幸な事故さ……だから……ね? 」
「…………… 」
「……いや…その………ごめんなさい… 」


「問答無用ですぅ!! 」
翠星石が普段からは想像もつかない速さで蒼星石に飛び掛る!


逃げろ!蒼星石!! 



◆ ◇ ◆ ◇ ◆


数日後……


「でね?流石にやりすぎたって、翠星石が僕に帽子を買ってくれたんだ! 」
小さなタンコブを頭に作った蒼星石が、喫茶店の机に置いた新しい自分の帽子を愛おしそうに見つめる。

「ところで水銀燈。喫茶店のおしぼりでアヒルの作り方、知ってるかしら? 」
「何それぇ…興味ないわぁ。………で…どうやるのよぉ… 」
「ふふ…簡単よ。折り紙といっしょなのだわ 」

「それから二人で翠星石がバイトしてるケーキ屋さんに言ってね。そこのケーキがまた美味しいんだ。
 それで二人でケーキを食べてから…―――― 」


またしても喫茶店に呼び出してきたシスコンの話を聞き流す二人。


町は今日も、平和だった。






     
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