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「それじゃあまた明日ねジュンジューン!」
「明日も来るのかよ…お前の相手は疲れるんだよ」
「まあまあ。せっかく再会できたんだから…」
 また明日も来るといったみつに対して露骨に嫌な表情を浮かべるジュンをめぐがなだめる。
 みんなでお茶会をした日から真紅の部屋は完全にドールズのサロンとなってしまった。
 その事に真紅は最初は頭を抱えていたが、今はもうどーでも良くなっている。
 どこか感覚が麻痺してしまったようだ。
「バイバ~イ」
「じゃあね、ジュン」
「ああ」
 テンションが高いままみつは先に鏡へ飛び込み、続いてめぐも鏡の中に消えて行った。
 ジュンは二人がいなくなったのを確認するとそのままベッドに倒れこみ、真紅は勉強机のイスに座って部屋を眺める。
「あ~疲れた…みつはテンション高すぎるんだよな…」
「元気って事で良いんじゃないかしら? 金糸雀も同じタイプだし…」
「…まぁ、あいつから元気が無くなったらかなり不気味だけどな」
 そう言って近くにあったスナック菓子の袋からスナックを一つ取って食べた。
 真紅は一つ溜息を吐くとおもむろに立ち上がってジュンへと近付いていく。
 いきなり来た真紅にジュンは何事かと体を起こす。
「な、何だよ」
「…部屋、片づけなさい」
「…何で?」
「何で…ですって? この部屋見てよくそんな事言えたわね…!」

 

 わなわなと震える声で、顎で部屋をしゃくってジュンに部屋の様子を改めて確認させる。
 食べ散らかしたお菓子、読んだら読みっぱなしの本、出しっぱなしのCD…全部ジュン達が散らかした物だ。
 その部屋の様子を見てジュンは呆れたように溜息を吐いた。
「…もう別に良いだろ? どうせ明日また散らかるんだから」
「ふざけたこと言うんじゃないのだわ! こんな部屋で勉強が出来ると思ってるの!?」
「大体散らかしたのあいつら…特にみつだろ!? あいつに片づけさせれば良いじゃないか!」
「じゃあそう言って片付けさせなさい! ほら、連帯責任!!」
「なんで僕があいつの後片付けまでしなきゃいけないんだよ!」
「口答えしない! 本当に性格変わってないわね、今度その球体関節に接着剤入れて何も出来なくするわよ!」
「うわ、ひっでぇ! 人形虐待だ!」
「嫌ならさっさと片づけなさい!」
「ちくしょう、みつの奴ーー!!」
 いつも通りの真紅の部屋だった。

―※―※―※―※―

 翌日、相変わらずnのフィールドを経由してみつとめぐは真紅の部屋へ向かっていた。
「さーて、今日は何しましょうか」
「少しは落ち着かないとダメよ。あそこはジュンの部屋だけど真紅の部屋でもあるんだから…」
「分かってる分かってるって」
「絶対分かってないでしょ…はぁ…」
 テンションが高いままのみつにめぐは呆れて溜息を吐いた。
 恐らく今日もテンションが高いまま突き通すだろう…そう思ってジュンに心の中で合掌する。

 

 それからどれくらい歩いただろうか、いつまで経ってもジュンの部屋に辿り着かない。
 同じような光景が延々と続くばかりだ。
「…ねえ、ジュンジュンの部屋ってこんなに遠かったっけ…?」
「いえ、もうとっくに着いても良いはずだけど…」
 違和感に気付き立ち止まって辺りを見てみると、あることに気が付いた。
「みっちゃん、おかしくない? ここさっき通った所よ」
「…本当ね…。…そうか…こんなことが出来るのは…」
「まさか…」
 二人とも同じ事に考えが行き着き、辺りを警戒して見回した。
 だだっ広い殺風景な砂利の広場…いつ何が来ても良いようにめぐはメスを自分の周りに浮かび上がらせ、みつはカードを懐から取り出した。
「こんな芸当が出来るの…オディールでしょう?」
「さっさと姿を現したら?」
 二人とも誰もいない空間に呼びかける。
 すると二人の背後の空間に鏡が現れ、中からオディールが笑いながら出てきた。
「フフフ…お久しぶりね、二人とも」
「…久しぶり」
「…ついに来たわね…」
「アリスゲーム、あなた達は望んでないみたいだけど…忘れたの? 一葉のローザミスティカが奪わたた事…」
「忘れるわけ無いでしょう…!」
 嘲笑するかのようなオディールにみつが睨みつけ、カードを持つ手に力を入れる。
「なら分かってるでしょう? アリスゲームからはどう足掻いても逃げられない運命だって事を」
「…私達は平穏に暮らしたいだけなのに…どうしてあなた達は…!」
「それはお父さまへの冒涜ではなくて?」
「そんなのもう忘れたわ!」

 

 お父さま、という言葉を聞きみつが声を荒げた。
「勝手に作っておいて消えて…何がお父さま? 私はお父さまより、カナやジュンジュン、めぐ…みんなの方がよっぽど大切よ!」
「…私も同じ気持ちだわ」
 二人はオディールを睨みつけ、一切の迷いも無くそう言い切った。
 オディールはローゼンを侮辱され、怒りに満ちた目で睨み武器であるレイピアを取り出し二人に向けた。
「…とんだ親不孝物ねあなた達。同じ姉妹として許すわけにはいかないわ」
 完全に臨戦態勢となったオディール。
 そのオディールに向けて二人とも呆れたように笑みを見せる。
「一人で私達に立ち向かうつもり? 二対一で勝てると思ってるの?」
「悪いけど、返り討ちにさせてもらうわ。大丈夫、ローザミスティカまでは奪わないから」
 余裕に満ちた二人。だがオディールは不敵な笑みを見せる。
「別に一人だなんて言ってないけど?」
 そう言って指をパチンと鳴らすと、空間にもう一つ鏡が現れ中から木刀を構えた巴が飛び出してきた。
 巴はそのまま二人の後方へ着地し、オディールと共に二人を挟み撃ちにする体勢になる。
「フフ…久しぶりね、めぐ」
「巴…!!」
 巴の不敵な笑みを見て、騙された事や水銀燈を馬鹿にされたことを思い出してめぐの心に怒りが湧き上がる。
「なるほど…二人とも組んでたって訳ね」
「そう。これならフェアでしょう?」
「まとめて始末してあげるわ」
 巴はめぐと、オディールはみつと向かい合い睨み合う。
「…巴…今日こそあなたを倒すわ。アリスゲームなんて興味無いけど、あなただけは許さない…そう決めてるの」
「フン…あなたみたいなジャンクに負けるなんてありえないけど。まあ、ローザミスティカは欲しいから相手してあげるわ」
「私はジャンクじゃない!!」
 ジャンク、と言われ怒りに任せてメスを幾つも巴に向けて一直線に飛ばす。
 巴はそれを空中に飛び上がってかわし、そのままめぐの方へ落下しながら木刀を振り下ろした。
 めぐはそれをサイドステップでかわしたが、それでみつとは離れ離れになってしまった。

 

―※―※―※―※―

 みつとめぐの距離が離れ、それぞれ一人になりみつがめぐの方を見る。
「めぐ!」
「他人の心配をしてる余裕なんてあるの?」
「っ!」
 刹那、遠くにいたオディールが瞬間移動してみつの目の前に現れ、それと同時に顔面にレイピアで突きを入れてきた。
 ギリギリそれをかわし、後ろへ下がると手に持っていたカードを手裏剣の様に投げつける。
「喰らえ!」
 カードを投げつけられたオディールはそれを見ても動ずる事はなく、逃げようともしない。
 やがてそれが目の前に来た時、オディールの正面の空間に穴が開いて中にカードが吸い込まれて穴が消えていった。
「お返し」
 オディールのその言葉と同時にみつの両サイドに同じような穴が開き、中からみつが放ったカードが勢い良く飛び出してきた。
「チィッ!」
 後ろに下がってそれをかわし、目の前でカードが交差して宙へと舞って行く。
「その空間を操る能力…本当にいやらしいわね…」
「お父さまが授けてくださった能力だもの。有効的に活用しないと」
「…遠距離戦は不利か…」
 このままいくらカードを投げても、あの空間を自由に操る能力で全て無力化されるだろう。
 そう判断したみつはカードを幾つも取り出し、それを全てくっ付けみつよりも長身な一つの槍に錬成させた。
 槍を両手で構え、それをオディールへと向ける。
「私をカード投げるしか能が無い人形だと思ってないわよね?」
「…どちらにせよ、あなたは私には敵わないわ」
「それはどうかしらね!」
 槍を構えてオディールへと突進し、今度はみつが突きを連発していく。
 オディールはレイピアで応戦していくが、みつの攻撃に押されて確実に後退りしている。

 

「どうしたの? 近距離戦は苦手?」
 尚も押され、ついにオディールの背中が生えていた木に当たり逃げ場を無くしてしまった。
 みつは勝利を確信し、槍に渾身の力を込めてオディールの胸へと狙いを定める。
「クッ…!」
「これで終わりっ!!」
 掛け声と共に槍を突き出し、それはオディールの胸を一気に貫く…はずなのだが、手に返って来た感触は異様に固いものだった。
 そして目に映ったのは全身がひび割れた入った自分の姿。
 それがオディールの生み出した鏡だと理解するのに時間は掛からなかった。
「変わり身…! あいつは!?」
 鏡から槍を引き抜き振り返るのと、そこにいたオディールが自分に向けて数本のレーザーを発射したのはほぼ同時だった。
 慌ててサイドステップでそのレーザー達をかわすと後ろにあった木が吹き飛び辺りに飛び散った。
 もし避けていなければ確実にやられていただろう。
「…どうもおかしいと思った。あれ位であなたがやられる訳ないわよね…」
「フ…あなたがあの木みたいになるのも時間の問題よ」
 再びお互いに武器を構え睨み合った。勝負はこれからだ。

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