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[ARMORED CORE BATTLE OF ROSE]


MISSION no.6[舞い上がる銀色の羽根]



「―――そ、蒼星…石…?」
「…驚いたよ、翠星石。まさか…キミがACに乗っているなんて…」
蒼いACから姿を現した、蒼星石という人物。
赤みの少し強い短髪。翠星石と真逆のオッドアイ。
しかし、その目は何か鋭いものを感じさせる目だった。

「―――メイメイ。あのACをデータベースと照合して頂戴…」
『了解。照合開始―――――完了。目標は、AC・ラピスラーツリシュテルンと確認』
「シュテルン…。なるほどねぇ…あれが噂の……」
レイヴンはその仕事の性質上、自らの首に賞金が懸けられることも少なくない。
そのレイヴンを『ランカー』と呼び、特にめざましい活躍を上げている者には決まって通り名がついていた。
目の前の蒼いAC…ラピスラーツリシュテルンは、最近よく耳にするようになった噂と共に有名になっていた。
―――蒼い稲妻のようだ―――
―――気付いたら、いつの間にか斬られていた―――
ブレード以外を一切使用しないことと、ほぼ一撃で相手を両断することから、巷のレイヴン達は畏怖の念をこめてこう呼んだ。
「…『サムライ・ブルー』……ねぇ…」

「…あのレイヴン…知っているのぉ?翠星石…」
「…あれは…蒼星石は…翠星石の双子の妹ですぅ………」
少し涙声になりながらも翠星石が言う。
「…妹…?」
「そうです………。蒼星石は…翠星石よりも先にレイヴンとして活動してたです……。
 でも3年程前に………蒼星石は…任務に出かけたっきり……帰ってこなかったです…。
 次の日のテレビには………蒼星石の…ACの残骸が映っていたのです………!」
「………それで妹は死んでしまった、と思った…」
コクと頷く翠星石。
「…翠星石は、自分を呪ったです。何もしてやれなかった自分を…。
 もしあそこに自分もいたら、蒼星石は死なずに済んだんじゃないか…。そう思ってレイヴンになったのです。
 …そして、最近聞く噂から、まさか………とは思っていたですが…本当に………生きていたなんてぇ………!」


「(翠星石…そんな事情が…)」
今まで水銀燈は、翠星石の過去を聞こうとしなかった。
興味がなかったこともあるが、水銀燈自身が「過去」毛嫌いしているからだ。

「(…でも……あの蒼星石とやらから感じる、この刺すような感覚は…何…?)」
表現しがたい、妙な違和感を覚える水銀燈。



「ずっと………ずっと…!会いたかったですよぉ…!蒼星石ぃ……!!」

「………ああ。ボクもだよ…翠星石…。キミと…ずっと会いたかった………。キミを…ずっと―――」





「―――殺したかった―――」

「―――え―――?」

そう言うと、蒼星石はハッチを即座に閉めてブレードを構え、高速で斬りつけてきた―――!

「―――っ!危ないっ!!翠星石!!」
咄嗟に翠星石機を突き飛ばし、斬撃から救う水銀燈。
大きく振られたブレードは翠星石機ではなく、代わりに後ろのエネルギーパイプを吹っ飛ばした。
「くっ―――!」
ライフルを構え、威嚇の体勢をとる水銀燈。同時に、相手も後ろへジャンプする。
「―――邪魔をしないでくれるかな―――?ボクには、あまり時間がないんだ―――」
翠星石は唖然とする。
いきなり蒼星石が斬りかかってきたのだから。
「…そ、蒼……星…石………?」

―――やはり、真紅と同じ――。
そう水銀燈は感じた。

「―――『時間』ねぇ…。前に似たような事を、真紅っておばかさんが言っていたわぁ。…いったい、アナタの目的は何?」
真紅の名前を聞いて、蒼星石が少し驚いたような声で言う。
「………真紅を知っているのかい?…キミの名前は…?」
「私は水銀燈。真紅とは…ただの腐れ縁ってやつよぉ…」
「水銀燈―――。そうか、キミが…」
「………?」

「―――なら、キミもここで――――――死んでもらうっ!!」

再びブレードを構え、突撃してくる蒼星石機。
凶悪な光の剣が、横一文字に薙ぎ払われる。
「―――!」
考えるよりも早く、体が動いた。
素早く上空へ飛び上がり、第一撃を回避する。
「―――っざけんじゃないわよぉ!!」
宙返りをしながらライフルを連射する。
だがやはり、水銀燈が狙った場所には既に誰もいなかった。
レーダーに示された方向は―――
「―――後ろ―――!」
「はあぁっ!!」
上体を大きく反らせ、両腕を水銀燈機に向かって振り下ろす蒼星石。
それを左腕のブレードで受け止める―――が、その衝撃に耐えられなかった左腕は、ブレードもろとも吹っ飛んでしまった。
その衝撃は腕を吹っ飛ばして尚強く、そのまま水銀燈機を床に叩きつけた。
「っくぅぅ…!」
「これで終わりに―――!」
上空からブレードを振り下ろしつつ落下する蒼星石機。
凶悪な刃が、目前に迫る―――。



「―――やめるですぅ!!蒼星石ぃ!!!」
「何ッ!?」
翠星石が、背後から蒼星石にタックルを食らわす。
そのため水銀燈機を斬ることはできず、体勢を立て直しながら大きく後方へ退避した。
「…翠星石…!」
「…どうして………?どうしてですか!?蒼星石!?
 どうして翠星石を殺そうとなんかするですか!?」」
「どうして………?」
ブレードを一振りし、蒼星石が言う。
「それはボクの台詞だよ……翠星石…」
「…………?」



「どうして………ボクからお父様を奪ったりしたの…?」
「え………?」
ワケがわからない、といった反応をする翠星石。
確かに昔、自分はかなりの甘えん坊で、何かと手をかけてもらっていた。
だが、それは蒼星石も同じようなものだったし、殺したくなるほど憎まれる理由がわからない。
「お父様はキミを連れてこいと仰っている…。でも、それは嫌だ…。連れて行けば、お父様はまたボクを見てくれなくなる…!」
蒼星石機がゆっくりと歩み寄っていく。
「蒼星石……?一体…何を………?」
自分達の父親は、もう随分前に特攻兵器によって命を奪われたはず―――。
少なくとも翠星石は、そう記憶している。
「キミはとても愛されている………。そう…キミだけが……。キミだけを気にかけている…。
 お父様は、ボクだけを愛してくれればいいのに……どうして…!」
「…な………何を…言ってる…です……か…?」
全く訳のわからないことを本気で言う蒼星石。
翠星石には、どうしていいのか全くわからなかった。
そうしている間にも蒼星石機は近づいてくる。
「…どうして、キミだけが―――!」


「―――うるっさあぁぁああいぃ!!!」
水銀燈がライフルを上方向に乱射する。
「す…水銀燈…?」
「……………」

「…見ててイライラするわぁ…そのケンカ…。……アナタ、蒼星石とか言ったわねぇ。そんなに翠星石が憎いの…?」
「…当然さ。でなきゃ襲ったりしないよ」
「そう………。だったら、不意討ちなんてマネはやめなさぁい。アナタも人間でしょう?仇は正々堂々とってこそ意味があるのよぉ…」
ライフルを蒼星石機に向け、そう言う水銀燈。
「戦いってのはねぇ…自分の大切なものを守るためにやるものよぉ…。でもアナタは、誰かから奪うためだけに戦おうとしている…。
 ………私はねぇ……そうやって、命を粗末に扱うやつが大っ嫌いなのよぉ…!」
ライフルを一発、蒼星石機をかすめるようにして撃つ。
撃たれたほうは全く気にしていない様子だったが。
「翠星石ぃ!アナタもコイツに何か言ってやりなさぁい!!こんな理不尽なことばかり言われて、悔しくないのぉ!?」
水銀燈が檄を飛ばす。が、翠星石は、ショックで思考が止まりかけているようだ。
「……そ………それは………そ…そう……」
文字通り、全く話にならなかった。
「(くっ…。だからそんな半端な覚悟じゃダメだと言ったでしょう…!)」
そして、明らかに敵意のこもった眼差しを向ける蒼星石。
「…正々堂々か…。じゃあ、もしボクが人間じゃなかったら………殺してもいいのかな…?」
ブレードの刃をこちらに向け、臨戦態勢に入る。
「勝手にしなさぁい…。でも、負ける気はないわぁ。私には、どうしても守らなきゃいけない相手がいるのよぉ…!」
水銀燈も機体を正面に向け、神経を張り巡らす。

そこで蒼星石が、構えていたブレードをゆっくりと降ろした。
「…守る……。…そうか…。キミには確か…『めぐ』という女性がいたね……」
「…どうしてそれを…?」
「真紅が教えてくれたのさ…。水銀燈には、重病を患っている親友がいる。
 その人の治療費を稼ぐために、レイヴンとなって戦っている。ってね…。
 まったく、感心するよ。水銀燈。そんないつ死ぬかもわからない人間のために…」
「…黙りなさい。アナタには関係のないことよぉ…」
「どうかな…。…実は、その人にも用事があってね。先週会う機会があったんだ」
その言葉を聞き、嫌な予感が頭をよぎる。
「―――アナタ、めぐに何かしたんじゃないでしょうねぇ!?」
「いいや、何もしてないさ。―――その必要がなかったからね」
「何ですって…?」
「だって、ボクが会いに行った時にはもう―――」



「―――死んでいたんだから―――」

「――――!」

何の前触れもなしに聞かされたその言葉。
家族、いや、自分自身といっても差し支えないぐらい、一緒にいた親友。
そのめぐが、死んだ―――?
「―――まさか、アナタが―――?」
「…さぁ。どうだろうねぇ…。ふふふ……」
頭に言葉が反響する。その度に、死の呪文の如く自分から生気を吸い取っていく。そんな感じがした。
機体に異常が起きはじめる。が、水銀燈は気付かない。
「―――そんな―――めぐが―――」
―――嘘だ。でも、本当かもしれない。事実、めぐはいつ死んでもおかしくない危篤状態にあったのだから。
しかし、今まで自分がやってきたこと、自分の存在価値、その全てを否定されたようだった。
もう戦えない。戦いたくない。戦っていく自信がない。
目の前が真っ暗になる。周りの音が聞こえなくなる。
全ての感覚が、闇に閉ざされていく。
普段、機体から発せられるうるさいジェネレーターの駆動音も、全く聞こえない―――。






水銀燈が気付く。
「―――ジェネレーターが…止まっている…?」
駆動音が全く聞こえない。それは比喩ではなかった。
本当に、機体の動力がストップしていたのだ。
操縦桿を押してみる。何の反応もない。
トリガーを引いてみる。何の反応もない。
「一体―――どうして―――?」
メイメイからの報告が入る。
『エネルギー伝達率、15%以下。駆動系、作動しません』
ありえなかった。そんなこと、熱暴走とエネルギーの過剰使用を同時に行いでもしない限り、なるはずがなかった。
だが機体は、現に動かない。

「ふふ…。もう戦う気力が失せてしまったのかい?」
蒼星石機が、再びブレードを構えながらこちらへ近づいてくる。
ゆっくりと。とてもゆっくりと。
機体の前にブレードを構え、確実に距離を詰めてくる。
―――逃げないと―――
水銀燈は焦った。少しでも機体を遠ざけようとする。
しかし、機体は全く動く気配がない。

「逃げるつもりもないのかい…?」
水銀燈は焦った。片足でもいいから動かそうと努力する。
だがやはり、ピクリとも動かない。

「…そう。なら―――さようなら―――」
ブレードを機体の横に構え、真横に薙ぎ払おうとする蒼星石。
水銀燈は焦った。ブースターを少しでもふかそうと、必死で操縦桿を握る。
奇跡的にブースターが作動した。だが、炎が出たのはほんの一瞬。
地面から少し浮き上がったところで止まり、そのまま落ちた。
そして、着地の瞬間、あろうことか機体のバランスが崩れ、仰向けに倒れこんでしまった。
しかしそのお陰で、幸か不幸かなんとか斬撃をかわすことができ、代わりに持っていたライフルに攻撃が当たった。
だがそれまでで、また機体は沈黙してしまい、唯一の武器であったライフルも真っ二つにされてしまった。

「―――ふざけているのかい?水銀燈…」
コックピットに影が落ちる。
蒼星石機が、水銀燈機を見下ろすように立っていた。
「―――くっ―――」

―――もう何回絶望したことだろう。
いい加減疲れてしまった。
たとえ生き残ったとしても、もうめぐはいない。
それならば、死んでも構わないか―――。そう思った。
今度は、視界が白に染まっていった。
体が浮かぶような感じがする。
自分が大気と化してしまった。そんな感じがする。
もういい。後少しで、自分は機体ごと真っ二つだろう―――

「―――ふっ…これじゃあ、まるで『ジャンク』だね―――」

「………っ………」
突然、現実に引き戻される。
―――今、なんと聞こえた―――?
「………ジャンク………?」

「…そう。ジャンク。肝心な時に動かなくなるなんて、ジャンク以外の何物でもないよ。
 ………そしてもちろん、キミもね」

―――ジャンク―――?
嫌な響きだ。聞きたくない。
昔、どこかで聞いたことがある気がする。聞きたくない。
何かが、自分の中にふつふつと湧き上がる。

「…ジャンクっていうのは、不完全なガラクタのこと。大切な人を失った、今のキミにぴったりだ―――」

―――私が、ジャンク―――?
違う。私はジャンクじゃない。私は不完全じゃない。
何だ、この感覚は。
刺すような感覚。内側から、皮膚を突き破るような感覚。
今までに感じたことのない感覚。
怒り?違う。
悲しみ?違う。
憎しみ?それも違う。


―――ああ、わかった―――。



―――これが、『殺意』―――。




「―――とても不恰好だ。今のキミは、醜い、ただのガラクタ―――」

「………じゃない………」
「………え?」

何かが変わった。
空気が変わった。大気の流れが、変わった。
またあの甲高い音が鳴り始める。
そして機体を起こそうと、操縦桿を引く。すんなり動く。

「………ジャンクじゃ………ない………」
地面が、大気が震えている。
音が、より一層高く、大きくなる。
―――体が熱い―――
誰かに、この言いようの無い感情をぶつけてやりたい。

「何だ……?これは………?」
ただ一点。蒼いACを見つめる。
呪ってやる。私から私を奪ったこいつを呪ってやる。
殺してやる。私の全てを否定したこいつを殺してやる。
壊してやる。私をジャンクと、不完全と嘲ったこいつを―――壊してやる。


「―――私は―――――ジャンクなんかじゃ――――――ないッ!!!!!」
「!!?」

突如機体が凄まじい光を放つ。
辺りに強烈な衝撃波が巻き起こる。
大地を、大気を、全てを震わせていた。
その衝撃で、至近距離にいた蒼星石機を吹っ飛ばす。
「うぁっ!―――くっ…!一体何が―――!」
起き上がり、水銀燈機の方を見る蒼星石。

「―――アレは―――!?」

さっきまで、戦う意思すら見えなかったその機体。左腕を吹っ飛ばされ、満身創痍だったその機体。
今、その機体の腕は完全に復元し、溢れんばかりの光を纏っていた。
―――そして、その背部から伸びる、一対の黒い翼。
その翼が徐々に大きくなっていく。
その後、急速に燃え上がる。その翼が、巨大な青い炎となった。
それはまさに、全てを燃やし尽くす憤怒の炎。
そして機体に纏われた光が、徐々に形を変えていく。
光が炎と混じりあう。再度強烈な光を放つ。


ゆっくりと光が薄れ、なんとか目視が可能になった蒼星石は、『それ』を見る。



―――そこには、巨大な光の翼を広げ、銀の羽根を舞い上がらせる、『天使』がいた。




「―――ふふっ…。やっと本気を出してくれたのかい…?水銀燈…」


To be continued...

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