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「…じゃあこのジュンもローゼンメイデンなのかしら?」
「ああ。誇り高きローゼンメイデン第5ドールだ」
 隠し通すのは無理だと諦めた真紅はジュンのことを紹介する羽目になった。
 紹介されたジュンは誇り高そうに胸を張る。
「…ちっとも可愛げが無いかしら…」
「な…」
「でしょう? 生意気でしょうがないのだわ」
「お前らなぁ!」
 溜息を吐きながら勝手な事を言う二人に、ジュンが抗議の声を上げる。
 それを気にせず、金糸雀はジュンを持ち上げるとそのまま頬を引っ張った。
「ひっふぁるなぁ!」
「へえー、まるで人間みたいかしら」
 そう言いながらあちこちを弄くる金糸雀。
 ジュンはその間も抗議の声を上げていたが、金糸雀の好奇心の前では無意味である。
「だから止めろって言ってるだろ!!」
「…ねえ金糸雀。ジュン弄りも良いけど重要な何かを忘れてない?」
「え?」
 真紅にそう尋ねられ、金糸雀は何かを忘れていたような気がした。
 重要な何か…。ジュンを持ち上げたままそう考えていると、パッと思い出し大声をあげる。

 

「あー!! 宿題忘れてたかしらー!!」
「耳元で叫ぶなー!」
「もうこんなことで三十分以上使ってるわよ。さっさとやらないと本当に終わらないわ」
「そうかしら、大変かしらー!」
「こうなったら仕方ない。ジュンも一緒に手伝うのだわ」
「な、何で散々弄くられた上にそんな事しなきゃいけないんだよ!」
「居候の身で偉そうな口叩くんじゃない! ほら、さっさとやる!」
 ジュンに抗議をさせないうちにプリントとペンを突き出した。
 それを一瞬放り投げようとしたが、真紅の眼力に押されて渋々とやり始めた。
「くそ…僕はドラえもんじゃないんだぞ…」
「何がドラえもんよ。貴方なんかよりドラえもんの方が数億倍役に立つのだわ。滅茶苦茶な戦いはするし…」
 真紅のその台詞を聞き、金糸雀は手を進めながら真紅に尋ねる。
「戦いって…他にも目覚めたのがいるのかしら?」
「え…ええ、まぁ…」
 真紅も宿題を進めながら答える。するとジュンが口を挟んできた。
「巴にめぐ…今のところこの二人だな。他にもいるけどまだ会ってない…」
「勝手に喋るんじゃない!」
「へえ、じゃあ全部で四人目覚めてるのかしら…」
「うん。…四人?」

 

 一瞬納得しかけた真紅だったが、考えてみて疑問が浮かぶ。
 確認しているのはジュン、巴、めぐ…そして既に消えているじーさんとか言われてるドール。
 目覚めているのは全部で三人だ。これだと計算が合わない。
「金糸雀、今四人て言ったわね?」
「え…あ、ああ。数え間違えたかしら」
「…?」
 歯切れ悪く答えた金糸雀に真紅は疑問符を浮かべた。
 その真紅の意識を宿題に向かわせようとするのか、金糸雀が額に汗を浮かべて声を上げた。
「そ、それより早く宿題を進めるかしらー!」
「手伝ってあげてるのに、勝手に仕切らないで欲しいのだわ…」
「おい、これじゃいつ終わるのか分かんないぞ…もっと人手があれば…」
「のりに手伝わせる訳にもいかないし…ん?」
 不意に部屋の鏡台が光り出し波打ち始め、真紅とジュンは思わず身構える。
 その二人に金糸雀は意味が分からない、といった様子だ。
「どうしたかしら?」
「ジュン、鏡が…!」
「…ああ…誰だ!」
 鏡に向かってジュンが叫ぶと、中から一体の人形が飛び出してきた。

 

「こんばんはジュン。暇だから退屈しのぎに来たわ」
「な…なんだめぐかよ…」
「ビックリさせないで欲しいのだわ…」
 出てきたのはめぐだった。それを確認して二人は緊張が解けて溜息を吐いて力が抜けた。
 しかし、金糸雀にはこれは初めての光景。鏡から人形が出てきたことにかなり驚いている。
「な、に、人形が鏡の中から…!!」
 その間にも鏡は光り続け、更に今度は人間が中から現れた。
 中から出てきた人間は、鏡台の化粧品や小物に気を付けながら床に降りる。
「…水銀燈…貴方まで…」
「はぁい。めぐに付き合って来てあげたわよぉ。…あ…金糸雀…」
「こ、こ、今度は水銀燈が…一体どうなってるかしら!?」
「…まずい時に来ちゃったみたいねぇ…」
「…横着するんじゃないわよ…」
 動揺しきっている金糸雀を尻目に、二人はやれやれと頭を抱えた。

 

 それから金糸雀にみんなで説明し、何とか事を把握してもらうことが出来た。
 そして退屈しのぎに来た二人はと言うと…。
「ちょっとジュン、そこ間違ってるわよ」
「ああもううるさいな、こんなもん適当に埋めときゃ良いだろ。白紙よりマシだ」
「そんな事したら再提出喰らうかしら!!」
「と言うか、人にやってもらってる時点で再提出ものなのだわ…」
「はぁ…とんだ時に来ちゃったわぁ…なんで私まで…」
 みんなで金糸雀の宿題に取り掛かり始めた。
 真紅と金糸雀に三人も加わり一気に騒がしくなった真紅の部屋。
 そして当然その分宿題も早く進んで行き、それから1時間もしないうちに宿題は全部埋まった。
「みんなありがとう! これで何とか提出できるかしら!!」
「はいはい。今度からは気をつけなさい」
「疲れたぁ…とんだやぶ蛇だったわぁ…」
「それじゃあね金糸雀。今度はゆっくりお話したいわね」
「勉強なんて久々にやったな…」
 宿題を終えて、玄関から金糸雀を見送る一同。
 金糸雀が玄関から出て行き、部屋に戻ると既に時間は9時を回っていた。
「もうこんな時間か。僕は寝るぞ」
「はいはい勝手におやすみなさい。…そう言えば晩ご飯食べ損ねたのだわ…」
 ジュンは鞄に戻り、めぐと水銀燈は鏡台から帰っていく。
「私も帰るわ。おやすみ、ジュン、真紅」
「それじゃあねぇ。また明日ぁ」
「ええ。またね二人とも」
 そう言って二人は鏡に吸い込まれ、残された真紅はそのままベッドに倒れこんだ。
「…あー…何だかすっごく疲れたのだわ…。…私もお人好しね…」
 そのまま横になっているとウトウトしてきて、結局風呂にも入らずそのまま寝てしまった。

 

―※―※―※―※―

 その頃、金糸雀家…。
「ただいまかし…ぐぇっ!」
 真紅の家から帰ってきて、自分の部屋に入ると一体のドールが胸元にダイビングアタックをしてきた。
 何とか踏ん張ったものの、今度は全力で抱きしめてきて首がどんどん絞まっていく。
「お帰りカナぁーー!! 寂しかったぁー!!」
「み、みっちゃん…首がまさちゅーせっちゅかしら…!」
 苦しくなっていく中それだけ絞り出し、みっちゃん――みつ――と呼ばれたドールは慌てて飛び降りた。
 解放された金糸雀は咳き込みながら息を吸い込む。
「あ、ご、ゴメンね…大丈夫だった?」
「ゲホゲホ…だ、大丈夫かしら…」
「ごめん…。それで、宿題は終わったの?」
「うん。真紅と水銀燈に手伝ってもらったんだけど…」
「けど?」
 そこで一旦区切り、笑顔を作ってみつの方を見る。
「なんと、そこでめぐとジュンってローゼンメイデンが出てきたかしら!!」
「ええっ!? めぐとジュンジュンが!?」
「うん! やっと仲間が見つかったかしら!!」
「やったあー! 見つけてくれてありがとうカナー!!」
 仲間が確認できた事に喜びが隠せず、再びみつは金糸雀に飛びついた。
 更に今度は頬擦りも一緒で金糸雀の頬が熱くなっていく。
「明日にでも会いに行くわ! 本当にありがとう、カナは最高のミーディアムねー!!」
「ぎゃあああホッペがまさちゅーせっちゅぅぅぅ!!」
 そんな騒がしい金糸雀と、そのドールみつのハイテンションなやり取りは夜遅くまで続いた。

 

―※―※―※―※―

「ジュン…みつ…めぐ…巴…全員目覚めたわね…」
 nのフィールドの、鏡に囲まれた自分の世界で、それぞれの様子を探る一体のドールがいた。
 自分の正面に張られた四枚の鏡に映った画面を見て、不敵な笑みを浮かべる。
 その画面にはそれぞれジュン達ドールの現在の様子が映し出されていた。
「…巴以外はみんなアリスゲームを放棄している…」
 長い金色の髪をなびかせながら、人工精霊のスゥーウィをペットのように抱いてブツブツと呟く。
「…貴方達が望んで無くても、一葉のローザミスティカが巴に奪われた以上、アリスゲームは止められない…」
 クスクスと笑い、自分の周りの空間に四つの白い穴を開け、中からそれぞれレーザーが撃ち出した。
 撃ち出されたレーザーはそのドール達が映っている鏡を貫き、粉々に砕け散る。
 その砕けた破片を踏みにじりながら金髪のドール…オディールは一層ドス黒い笑みを浮かべた。
「…貴方達も…いずれこうなる運命なんだから…」

 アリスゲーム、本格的な始動まであとわずか…。

第3話 終わり

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