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「すっかり明るいな」
ベジータが体を伸ばしながらつぶやいた。

「そうだね。こんな時間までファミレスにいたの久々だよ」
同じく伸びをしながら笹塚。

会計を済ませ、外に出た僕ら。
外が明るくなったという理由で、解散することになった。

「お前ら…なんかおっさん臭いからそういうことやるなよ」

僕は伸びをする二人に声を掛ける。

「しかしよかったのか?大した金額じゃないにしろ、俺の分出してもらって」

「遠慮するもんじゃないわよぉ、ジュン」
「そうです。もう翠星石たちは大人です。もっとデカい金額の時に遠慮しやがれです」

僕が飲んだコーヒー代は、“お帰りなさい”ということで出した貰った。

「どうせお金を出したのはベジータかしら」
「ヒナたちの分も出してもらったの。ご馳走様なの!」

太陽がすっかり顔を出した早朝。
僕たちの話しは、終わりが見えなかった。

「まともに働いてるのは俺ぐらいだからな。こういう時じゃないと格好がつかないだろ?」
「お。さすが旦那様。言うことが違うねぇ~」


ベジータと笹塚は、卒業後も親交が厚かったらしく会話にムラがない。
言ってることや、姿形の雰囲気は変わってもアイツらはアイツらだ。

「それじゃ、解散しようか。皆、一応社会人な訳だし」

蒼星石が解散の音戸をとった。
このカオスな連中をまとめれるのは、やっぱり蒼星石しかいない。

「それでは、ワタクシたちはここで失礼致しますわ」
「…ジィがうるさくなる前に…」

「それでは」と、車の方に歩いていく雪華綺晶。
そしてその後ろをついていく薔薇水晶。

見た目もそうだが、どこかつかめない印象も似ている。

って、薔薇水晶が運転?…昔からアウトドアなヤツだったからな…そういうトコは似てない。


「それじゃ、私たちも行きましょうかぁ」
「そうね。まだまだ夜はこれからだし」

学生時代は何かと喧嘩ばかりしていた真紅と水銀燈。
あぁやって二人一緒に並んで会話しているのが、少し驚きだ。

ファミレスの中でも席が隣同士だったし。

「じゃ、蒼星石。翠星石も予定通り真紅の家でお泊りしてくるですから、気をつけて帰るですよ」
「うん、わかった。おじいちゃんにまた伝えておくよ」

こっちの双子も、顔は似ている。
けれど中身はあっちの双子とは違い、動と静だ。

それが相成って、まとめ役は蒼星石になったんだな。
もしかして俺ら全員足しても、翠星石の騒々しさに達してないのかな?

「ふふ」
僕はそんなくだらないことで少し笑ってしまった。

「ん?どうしたの?ジュン君」
それに気づいたのか、蒼星石が僕の顔を覗き込む。

「なんでもないよ」
僕は含み笑いをそのままに、蒼星石に向かった。


「それじゃあ、私たちも行きましょうか、雛苺、金糸雀」

「うぃ~」
「はぁ~い、かしら」

柏葉たちも帰路に着くようだ。
―楽しい時間は、あっという間なんだな。


「チビ人間!」
物思いにふける僕に、突然の罵声。

「…まだ言うか…なんだよ」

真紅たちと車の方に向かったと思っていた翠星石が、僕の名を呼んだ。

僕の名前は桜田ジュンだけど。

「蒼星石に変なことしたら承知しねぇですからね!わかってるですか!」

「しません。大体変なことってなんだよ!」

腰に手をあてて、僕を下から覗き込む翠星石。
どっちがチビだか。

「う……そ、それはですね……えっと…」
腰にあてていた手は胸元でなにやらごそごそと。口元はゴニョゴニュとこもっている。
顔は何故か紅潮し、目線は僕から離れた。

「はいはい、姉さん。ジュン君はそんなことしないよ。ほら、早く行かないと置いていかれるよ?」
両手でグイグイと翠星石を押し、目線を真紅たちの乗る車へ向けた。

真紅たちの乗った車はアイドリングを始めており、助手席に乗っている水銀燈がこっちを見ている。
こっちの会話が聞こえていない分、何をしているのか不可解なのだろうか。

「と、とにかく!承知しねぇですから!!」
そう言い残し、翠星石は車へと向かった。

なんだか弱そうな悪人みたいな去り方だな。

「…まったく………じゃ、蒼星石。僕らも行きますか」
「―うん」

僕らも、帰路に着くことにした。


―――ぶーん。

「すっかり遅くなちゃったね」
「まぁ、遅いというか早いというか」

「はは、そうだね。もう朝だし」

外が明るいからか、蒼星石の運転には余裕が見られる。
その証拠に、僕との会話のキャッチボールが成り立っている。

「なぁ、蒼星石」

だから僕は聞いてみることにした。
僕は蒼星石の返事を待たずに続ける。

「やっぱり、別れたのか?」

前方を向いている蒼星石はふっと息を吐き応える。

「うん。別れちゃった」

さらに溜め息を吐き、蒼星石は続ける。

「一緒にいて楽しかったんだけど、やっぱり彼は許せなかったみたい」
「そうか」

赤色が点灯している信号。

蒼星石の目線は前方のままだった。
僕は後悔した。この話しをすべきでなかった。

元々関係のない人間が振る話しではなかったんだ。

「でもね」

しかし、前方に向いていた視線は突如僕に向いた。

「僕はやっぱり……」

彼―、というのは蒼星石が付き合っていた男のことだ。
二年ほど…になるのだろうか。

それくらいは付き合っていたと思う。

その時は蒼星石も、どこぞの会社でOLをしていて同じ会社の彼と出会ったらしい。
男だとか恋愛だとか、そういうのに全く興味のない蒼星石を知っている僕としては大層驚いた。

比較的時間の余裕があったのだろう。最初の一年は幸せそうにしていた蒼星石。
翠星石と一緒に花屋を始めた頃から、様子が変わった。

これまで頻繁にやりとりしていたメッセンジャーも、サインインの頻度が落ちたり送った携帯メールが帰ってこなかったりと大忙しだったようで。
まぁ、僕は実際の距離が離れていたこともあり、さほど気にならなかったが付き合っている彼氏としてはどうだろうか。

我慢できなかったんだろうなぁ、いろいろと。
彼を小さいだなんて思ってはいけない。人間折れれる所と折ることができないモノがあるだろうし、何より――。

「翠星石と一緒に、幸せになりたいから」

この性格だ。

「はっは…」

僕は思わず笑ってしまった。

「え?どうしたの?」

予想外の反応を返されて、蒼星石は困惑している。

「信号――青いよ?」

「あ」

慌ててギアをドライブに入れ、前進を開始させる。

服装や、化粧の仕方――、口癖や趣味は変わっていても、やっぱり蒼星石は蒼星石。

変わっちゃいない。

 

「ありがとう。今日は楽しかったよ」
僕の家の前。僕は車の扉を開け、そう言った。

「こっちこそ。また誘うね」

笑顔で見送る蒼星石。

ガチャ。

「じゃ、またな」
「うん」

バタン。

車のドアを放り投げ、車を見る。
ぶーん。

そのまままっすぐに車は進む。


(さて…)

きっと僕は一生この想いを口にすることはないんだろう。
誰かに打ち明けたとしても、蒼星石には絶対に伝えないだろう。

僕らが僕らのまま…ずっと笑顔でいる為には――僕に思い浮かぶ術がそれしかないから。


(男女の友情は有り得ない…か)
全く、故人はかく語りきだ。

『おかえりなさい』


(…ベジータに相談してみよう)

面白いくらい思い浮かぶ蒼星石の顔を振り払うかのようにそう決める。

傷つくのが怖い、なんて思春期はとうに過ぎたはずなんだけどな。 

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