[ARMORED CORE BATTLE OF ROSE]


MISSION no.5[蟲蟲大行進]



「これは………」
「…大抵のOSには、機体構成の情報がインプットされている。そのデータを基に、ACが自分で装甲を形成したんだ。
 もっとも、似せて作れるのは外見だけで、中身はそのまんまなんだけどな。武装は…ここにはライフルとブレードしかないな…」
「なんと言うか…その…生きているみたいですぅ…」
「そう。このACは生きている。…生きた大きなからくり人形さ」
「…その螺子を巻いたのが私ってワケねぇ。面白いじゃなぁい…。悪魔のからくり人形がどんな力を持っているのか、見せてもらうわぁ…!」
「よし。二人はそこのリニアレールでエンジンルームへ直行してくれ。
 …頼んだぞ水銀燈、翠星石」

「まっかせろですぅ!AMIDAだかアメダスだか知らんですけど、この翠星石が木っ端微塵にしてやるですよ!!」
と、手にしているハンドレールガンを一振りしながら自信たっぷりに言う翠星石。
「…くれぐれもエンジンを撃ち抜かないでくれよ…」

二体のACが、高速リニアレールに乗る。それを見送るジュン。
「無事に戻ってきてくれよ。…まぁ、失敗したときには跡形も無くなってるだろうけどな…」
「わかってるわぁ。さぁ…いくわよぉ!!」





リニアレールでメインエンジンルームに辿り着いた二機。
まだAMIDAの姿は見えない。が、レーダーには確かに多数の熱源が存在していた。
「ここがエンジンルームですか…」
広い。一言で言えばそれに尽きる。ドーム球場の10倍はありそうな、部屋というよりは一つの建築物のようであった。
一番奥には問題の巨大メインエンジン。これも常軌を逸脱した大きさで、ちょっとしたビルぐらいはありそうだった。
そして、横の壁と天井には幾つもの通気口。恐らく、AMIDAはそこから侵攻してくる。
「翠星石。アナタは左側を迎撃してちょうだい。右は私がやるわぁ…」
「合点ですぅ!」
右と左に散開し、個々に迎撃を行うようだ。
そして、AMIDAがくる時をひたすらに待つ………。


1分後。さすがにまだやってこない。


2分後。やはりまだ来ない。


3分後。まだ来ない。


4分後。まだ―――
「―――来たわぁ…!」


爆発音と共に通気口の網が破られ、中からは何匹ものAMIDAが這い出してくる。
丸いボールのような身体についた6つの目。腹部から前方に伸びる何本もの触覚兼手足。
まるでナ○シカの王○である。
「翠星石ぃ!壁にいる内に仕留めなさぁい!」
「わかってるですぅ!」

水銀燈はライフルで、翠星石はハンドレールガンで、それぞれAMIDAを迎撃する。
数こそ多かったが、一匹が自爆をすると、それに巻き込まれた何匹かも一緒に自爆してしまうので迎撃自体は容易だった。

「でも…あれに巻き込まれたら熱暴走じゃ済まないわねぇ…」
「くぅ~!一体何匹出てくるですか!このクモモドキ!!」
「…!翠星石!上から来るわぁ!」
天井の通気口も破られ、そこからAMIDAが顔を覗かせる。
「あぁもう鬱陶しいです!煩わしいですぅ!みんなまとめて吹っ飛びやがれ!ですぅ!!」
ついにイライラが頂点に達した翠星石は、天井に向かって肩の大口径エネルギーキャノンをぶっ放す。
着弾による爆発と、AMIDAの連鎖爆発のお陰で天井には巨大なクレーターができてしまっていた。
その際に天井から降ってきた破片によって、壁や床に取り付いていたAMIDAは皆ペシャンコになってしまった。

「…えぇと…その………。ま、まぁAMIDAは全部駆除できたですから、これはこれで本末転倒ってやつですぅ!」
「…それを言うなら結果オーライよぉ…。おばかさぁん…」
「うるっさいですねぇ!そう言うところだけに突っ込まんでもいいです!」

「…待って。もう一匹くるわぁ…!」
「まだいやがるですかぁ!?政府が異常に嫌う理由がわからんでもないですぅ…」
「どこからかしらぁ…?…えぇと…この反応からだと―――

 ―――下!?」

咄嗟に上空へ回避する水銀燈と翠星石。
その直後、物凄い衝撃と共に今まで立っていた床が吹き飛び、中から巨大な「何か」が這い出してきた。
「ななな何ですかぁ!?コイツ!?ACより遥かにデカいですぅ!!」
「AMIDAとはタイプが違うわぁ…。ジュンが言っていたのはコイツだったのねぇ…!」
その巨大兵器の後ろ側に降り立つ二機。
そして巨大兵器が穴から完全に這い出し、その全貌を現す。
「…なんですか…?ダニ…モドキ……ですか…?」
AMIDAと同じように、少し角ばった扁平な本体から生えている4対の脚。
その本体の上からは腕のような二本の触覚が突き出し、腕の付け根からは更に小さな触覚が数本生えていた。
AMIDAが地面を這うように移動するのに比べ、それはしっかりと地面を捕らえ、立っていた。
その規格外の姿に唖然とする二人。そんな中、ジュンからの通信が飛び込んできた。
『……聞こ…るか…!…銀燈!翠…石!』
「ジュン!?聞こえてるですよ!少しノイズが混じってるですけど…」
『…そい…は、ディソーダー…!お…達じゃ勝て…い!逃…るんだ…!』
ディソーダー―――。どこかで聞いたことがある。と水銀燈は思った。
遥か昔、人類がまだ火星に移住して間もない頃、どこからともなく現れた謎の古代兵器。
だが、それ以上の情報はいかなる手段を持ってしても集められなかった。
古代兵器という情報も、所詮眉唾物の噂でしかなかった。
それが今、現実に目の前に存在する。しかも、「勝てない」とは…?
『早く脱出…るんだ…!脱…ルー…は………ザーッ…ザザーッ………ザーッ…』
「ああもう!ノイズが多すぎて聞こえんですぅ!!」
「…どうやら、あの『ディソーダー』とやらにECM機能が搭載されているようねぇ…」
「…どうしても倒さねばならんようですね…!」
ディソーダーが器用に脚を動かし、こちらを向く。
「…さぁ、来るです!」

ディソーダーの2本の触覚の先が怪しく光り、巨大なレーザーを放ってきた。
それをジャンプでかわす翠星石と水銀燈。相手の予備動作が長かったために、苦労なく避けることができた。
だがディソーダーは、それを待っていたかのように小さいほうの触角からエネルギー弾を連射する。
「空中じゃ不利ですぅ……キャノンを使うにしても隙が大きすぎますし…」
ヤーデシュテルンに搭載されたエネルギーキャノンは、威力こそ絶大だがその分反動も大きく、
発射するためには地面に降りて体勢を整えなければならない。
そしてその間は、完全な無防備状態となってしまう。
どうしようかと試行錯誤しているところに、水銀燈から通信が入った。
「…私が囮になるわぁ。アイツの真上で飛び回って気を逸らすから、その隙にぶっ放してやりなさぁい!」
「…わかったです。頼んだですよ!」
水銀燈がライフルを乱射しながらディソーダーの上空を旋回する。
完全に気をとられたディソーダーは、水銀燈機を何とか落とそうとエネルギー弾で応戦する。
その隙に翠星石が着地し、砲撃態勢に入る。
「さぁ、コイツで木っ端微塵にしてやるですぅ!!!」
翠星石機から強烈な閃光が走り、ディソーダーに直撃する。
凄まじい衝撃で、周りの瓦礫が全て吹っ飛んでいく。
爆煙が辺りにたちこめ、視界が悪くなる。ディソーダーからの反撃は来ない。
「これでお終い?つまんなぁ―――」

だが、安堵する暇もなく、ウィィイインという機械音。ガシャンガシャンと何かが触れ合う音。
煙の晴れた先には、全く無傷のディソーダー。いや、更に巨大化したディソーダーがそこにいた。
「何ですかこれはぁ!?あり得ねぇです!非ィ科学的ですぅ!!」
「『勝てない』っていうのはこういうことだったのねぇ…」
どうやら、目の前のディソーダーはエネルギーを吸収し、取り込むことが可能らしい。
つまりレーザーやパルスによる攻撃は、ディソーダーに餌をやっているのと同じことになる。
そして翠星石機の装備は、吸着地雷を除いて全てがエネルギー兵器。
水銀燈機は、貧弱なライフルと低出力のブレードのみ。
どうあがいても勝てる見込みはなかった。
「くっ…!こんなところでっ…!」
そう言いながらライフルを連射するが、全て硬い外骨格によって弾かれてしまう。
脱出しようにも、ジュンとの連絡は絶たれたままであり、脱出中にメインエンジンを攻撃されればお終いだ。
「こっちに来るなです!このダニモドキ!!」
翠星石も地雷をばら撒くが、それをおもちゃか何かのように踏み潰し、こちらへゆっくりと向かってくるディソーダー。
ディソーダーの触覚が目前まで迫り、再度怪しい光が灯りはじめる―――。


―――その時、何もないはずの天井が突如爆発し、破片が降り注ぐ―――!
そして、煙に紛れて何かがゆっくりと降下してくる。
天井から降りてきたのは―――全身を蒼く染めたACだった。
一見して特に武装を持っていなさそうなそのAC。だが、その両腕は大型のブレードとなっていた。
巨大なディソーダーを一瞥する蒼のAC。

爆発に気付き、蒼いACの方を向くディソーダー。
しかし、もうそこにACの姿はなかった。

刹那。後ろから両腕のブレードで切り裂かれ、右の触覚が床に落ちる。
後ろにエネルギー弾を連射するも、やはりそこにACの姿はなく―――。
『…はぁっ!!』
一閃。ザッ!という斬撃の音の後、ディソーダーは真っ二つになり、崩れ落ちた―――。


その蒼いACは、真っ二つになり煙を上げているディソーダーの上に降り立った。
そしてハッチが開き、中から何者かが姿を現した―――。




「―――やぁ。翠星石―――」


To be continued...

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最終更新:2008年06月22日 23:26