今日の朝JUMが学校に着くと、教室の中から女同士の言い争いが聞こえた。
翠 「大体、どうして真紅はそうやって自分勝手なんですかぁ!」
真 「貴女にそんなこと言われる筋合いはないのだわ!」
翠 「そっちに言われる筋合いがなくても、こっちには言う権利があるんですぅ!」
蒼 「ふ、二人とも、落ち着きなよ…」
雛 「喧嘩は良くないの~!」
水 「そうよぉ。見苦しいわぁ。」
お馴染みの面子のようだ。一体何を言い争っているのだろうか。
聞き耳をそばだてていると、前のドアのところにもう一人の女の子が居ることに気づいた。巴だ。
どうやら、ドアを開けようか開けまいか迷っているらしい。とりあえず状況が知りたいので、声をかけてみた。
J 「なあ、ちょっと…」
巴 「!…桜田くん。」
J 「何喧嘩してるんだ?…えっと…真紅と翠星石は。」
巴 「うん…その…言いにくいんだけど…桜田くんのことで喧嘩してるみたい。」
J 「え?僕のこと?」
巴 「さっきから聞いてたんだけど…ほら、いつも真紅って桜田くんに色々仕事を言いつけるじゃない。」
J 「ああ、まあね。」
巴 「それで翠星石が、そうやって奴隷みたいに扱うのはおかしい、って言ったのよ。」
J 「…」
巴 「そしたら真紅が、翠星石だっていつも悪口ばかり言ってる、きっとJUNは傷ついてるって言い返して…」
J 「なるほど…そんな感じで今に至ると。それで、一つ聞いていいか?」
巴 「何?」
J 「最初から聞いてたんだな?」
巴 「…なんか入り辛くて…」
ちょうどそのときのことだった。中からバチン、と大きな音がした。
蒼 「…!翠星石!」
雛 「ぼ、暴力のはよくないの!」
水 「そうよぉ!もっと穏やかに話し合えないのぉ?」
翠 「…う、うるさいですぅ!もう…もういいですぅ!」
次の瞬間、いきなりドアが開いた。
J 「やば!」
巴 「あ…」
翠 「JUM!…それに巴!なんでここに…」
翠星石は一瞬怯んだが、すぐさまJUMの横を駆け抜けてどこかへ走っていってしまった。
…気まずい雰囲気。教室の中はしんと静まり返っている。その沈黙を破ったのは水銀燈だった。
水 「…JUM、巴。貴方たち、聞いてたわねぇ?」
J 「わ、悪い…」
巴 「ごめんね…」
蒼 「何で止めに入ってくれなかったのさ!」
雛 「JUM、酷いの!」
J 「ぼ、僕だけかよ…」
口々に皆が言う中、一人だけ黙っている奴がいた。…真紅だ。右の頬を押さえて座り込んでいる。
J 「…真紅。だ、大丈夫か?」
真 「心配、いらないのだわ。」
口ではそう言っていても、目は少し潤んでいる。どうしよう…
真紅を慰める ←?
翠星石を探す
○真紅を慰める
J 「真紅…なんで、喧嘩なんかしたんだ?」
真 「…聞いていたのならわかるでしょう?」
J 「理由はわかる。でも、そんな些細なことで喧嘩するほど、真紅は子供じゃないだろ?」
真 「…」
J 「普段はそんなムキにならないじゃないか。」
真 「…」
真紅は黙って俯いてしまった。再び沈黙が場を支配する。
またしても、最初に声を発したのは水銀燈だった。
水 「…さてと、私たちは翠星石を探しに行きましょぉか。」
巴 「え?…で、でも…」
雛 「真紅が一人になっちゃうの…」
水 「馬鹿ねぇ、JUMが居るから大丈夫よぉ。ねぇ、蒼星石?」
蒼 「…あ…ああ、そうだね。それじゃ、手分けして探そうか。」
四人とも教室の外へ出て行ってしまった。
しばし時が流れ、ようやく真紅が口を開いた。
真 「JUM…もうちょっと近くに来て頂戴。」
J 「あ、ああ…」
真 「…」
J 「…」
真 「…貴方は、本当に鈍感ね。」
J 「え?」
真 「確かに私は、いつもならあそこまでムキになったりはしないわ。」
J 「…」
真 「ただ…それが貴方のことだったから。JUMのことだったから…つい、ムキになってしまったの。」
J 「…それって…」
真 「ねぇ、JUM?貴方はどうなの?私に命令されるのは、辛い?」
J 「…僕は…」
JUMは、ひとつひとつ言葉を選びながら口にした。
J 「確かに…うるさい、って感じることはあるよ。でも…別に嫌ではないと思う。」
真 「…そう。何故?」
J 「…何故、って?」
真 「無理矢理何かをやらされるなんて、普通は嫌がるものでしょう?何故、嫌ではない、と言えるの?」
J 「…一応、無理矢理って自覚はあるんだね。」
真 「答えて頂戴。」
J 「…真紅を、喜ばせたいからかな。」
真 「え?」
J 「どんな形であれ、真紅の望みを叶えてあげれば、真紅は喜んでくれるだろ?」
真 「…」
J 「真紅を喜ばせるのは僕の望み。だから、真紅の望みを聞くことが、僕の望みを叶えることになるんだ。」
真 「…」
J 「…」
真 「JUM。貴方は馬鹿ね。」
J 「…い、いきなりきついな。」
真 「でも…」
そこで言葉を切り、真紅は…JUMの唇を奪った。
真 「そこが、貴方の長所でもあるのね。JUMのそんなところが、私は好きなのだわ。」
J 「…真紅…僕も、君のことが好きだよ。」
そろそろ他の生徒も登校してくる頃。二人はもう一度、短い口付けを交わした。
Fin
○翠星石を探す
ここは、真紅を慰めてあげるべきなのだろうか。
ただ…教室を飛び出していってしまった翠星石のことも気になった。
どうしようか迷っていると、水銀燈が口を開いた。
水 「JUM。翠星石を探してきてちょうだぁい。」
J 「え…でも、真紅は…」
水 「真紅には、私たちがついてるわぁ。」
雛 「そうなの!翠星石、一人で寂しい思いしてるの!」
蒼 「ごめんね、JUMくん。探してきてくれないか?」
J 「わ、わかった。それじゃ、探してくる!」
JUMは教室を飛び出し、ある場所を目指した。
以前、翠星石が蒼星石と喧嘩したとき…一人で泣いていた場所を。
J 「僕は…もしかしたら…翠星石のことが好きなのかもしれない。」
翠 「んな…!」
J 「あくまで…もしかしたら、だぞ?」
翠 「な、なんで言っちゃうんですぅ!?」
J 「え?」
翠 「酷いですぅ!自分から言おうと思って必死で告白の言葉考えてたのに…」
J 「わ、わ。叩くなよ!痛いってば!」
翠 「もぅ!乙女心のわかんない奴ですぅ!だからモテないんですよぉ!」
J 「な、なんだと?」
翠 「仕方ねーです!翠星石が付き合ってやるですぅ!感謝するがいーですぅ!」
J 「…ぷ。」
翠 「な、何笑ってやがるんですぅ?」
J 「すっかり元気になったな。」
翠 「…あ。」
JUMは、翠星石を強く抱きしめなおした。
J 「お前は、そうやって憎まれ口叩いてるときが一番可愛いな。」
翠 「…JUM…苦しいですぅ…」
J 「じゃ、必死で考えた告白の言葉、聞かせてくれるか?」
翠 「…えと…」
J 「…」
翠星石は、JUMに軽く口付けながら告白した。
翠 「JUM…だーいすきですぅ♪」
J 「シンプルだな。(笑)さて、真紅と仲直りしてこいよ。」
翠 「…JUMもついてきて欲しいですぅ…」
屋上から出て行く二人の手は、しっかりと繋がれていた。
Fin.