※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

翠「…」

机の上でノートを開き、頬杖をついて、ため息をひとつ…

はぁ。
このノートも用無しですかねぇ。
ジュンを引き篭もりから脱却させるために
色々考えた作戦をまとめたノートなのですが──

もうどうでもいいです。
さっさと行くです。

──まぁ、少しくらいはオシャレして行ってもいいかもしれないですけどぉ?

~~~~~

…さ、着替え終わりましたし、街へ出発しますか。
まぁ、デ…デートなわけないですから、別にさっきの服装でも良かったのですが…
どうせジュンは私と行きたくないようですし?

コンコン…

──誰か私の部屋の扉を叩く奴がいるです…

翠「誰ですかぁ?」
紅「私よ…」

真紅ですか…

翠「どーぞです」

ガチャ…

紅「…」

真紅は入るなり、蒼星石のベッドにちょこんと座ったです。

──ずっとこっちばかり見てきやがるです…
気味が悪いくらいに…

翠「何ですかぁ?…私の顔に何かついてるですか?」

──まぁ、何を聞きたいのかは判ってるんですが。

紅「私も下に居て少しイライラしたわ…」
翠「…」
紅「…いつまで経っても喧嘩してばかり…よく仲を保てたものだわ」
翠「今日でその仲も終わりです!」
紅「そう言って何回も仲を取り戻してるくせに…」
翠「真紅は黙ってろです」

ふ~んだ。
何が1人で行ってやる!ですか。
これからも…引き篭もりが治ろうがどうしようが、絶対誘ってやらねぇです!
…絶対、
…絶対。
──はぁ。
テンション下がるです…。

翠「あ、真紅はチビ苺と一緒にジュンの家の警備をしてくれです」

こうなった以上は仕方ないです。
翠星石が1人で行ってやるですから、
チビ人間はチビなりに1人でお留守番してたらいいんですっ!
危なっかしいですからね…

紅「あっ…それは翠星石のやるべきことよ」
翠「いや、翠星石はケーキ買いに行きますから──」
紅「いいから行きなさい。ジュンのところへ」
翠「イ~~~ヤです!翠星石は1人で行ってくるです」
紅「翠星石!」
翠「今度ばかりは本気で怒ってるです!じゃあ行ってくるです。
  真紅はチビ苺を連れて絶対ジュンの家に来るですよ?解ったですね?」

ガチャ!!

さぁ急いでドアを開けて家を出てやるです!

紅「こら!待ちなさい」
翠「妹は妹らしく姉の言うことを聞いてくれです!」

あぁもう、追ってくるですぅ!
階段…
リビングのドア…
玄関の靴…
あっ…あったです翠星石の靴!

ガチャ…

とにかく走って逃げるです!
…走ればこっちのものですよ。
ほら、真紅ももう追って来ないですね。

…まぁ家に帰れば捕まるんでしょうけど…
どーせ妹なわけですし、華麗にスルーすればいいんです~w

~~~~~

…コソコソ

──右…左…右…
…だ、誰も見てないですよね?
こればっかりは誰にも見られるわけには…

ピーンポーン

…イライラ
相変わらず遅いですねぇ
でも今朝はあれをやろうとしたと思われて怒られたですし…
ったく、翠星石はそこまで…短気なんかじゃねぇですのにぃ…
…イライライライラ

ピーンポーン

…イライライライライライライライラ
──た…た…短気なわけ…ないですよぉ?
短気なんかじゃ…短気なんかじゃ…
──くっ…!

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!

…どちくしょぉぉぉ!

──出ないですねぇ。
居るんだったら窓から「五月蝿い黙れ」ぐらい言えばいいですのにぃ…
…よし、もう一度…。

ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン!!

──やっぱり出やがらねぇです…。
まさか…本気で街へ行ったですか…??

はっ…。

…たっ…大変です!
早く追いつかないと…
人の多さに気絶して線路に落ちてもらったりなんかしたら…
うわぁ…考えるだけで背筋が凍るです…。

~~~~~

はぁ…
はぁ…

──走るのも疲れるですね。
ちょっとそこの公園で休むですか…。

…ジュンの奴、そこまで意地張らなくてもいいですのに…。
それとも、あいつなりに頑張って引き篭もりを治そうとしてるんですかね…。
無茶しなくてもいいですのに…。

歩いてでも行けるですが…
やっぱり駅まで一番早く行く方法は…
あっ…向こうにバスが来たです。
走らなくては…

──間に合ええええぇぇぇ!!!

あいつのためなら200円なんて安いもんです。

運『このバスは~23系統…』

アナウンスなんかどーでもいいです!
さっさとドアを開けて乗せろです!

~~~~~

ア『ご乗車、ありがとうございました。終点──』

バスに乗ったらあっという間でしたね。
さっさと200円払って降りるです。

──もぉ…
バス停から駅まで中途半端に距離があるんですから…
再開発してでもこれですか。まったく──

ったく!
あの赤信号、さっさと青に変わりやがれです!

あぁもう…何で券売機にこんなに人が並んでやがるですか。
…イライラするですぅ。

ピンポン!

翠「なっ…」

ガチャン!

自『切符をお入れ下さい』

あっ…入れ忘れてたです。
焦り過ぎると却って遅くなるですね…。

~~~~~

…ホームの上も人でいっぱいです…。
さてさて、ジュンは…と。

──あ。

あんなところにオドオドしてる奴が…
同い年くらいの背の高さに見えますね…。


……。


はぁぁ…あれは完璧にジュンですぅ。
あの眼鏡の形といい服装といい…。

…いやぁ、分かりやすい野郎ですぅ。
だから無理するなって言ったですのに。
しかも、どっからどう見ても挙動不審じゃねぇですかw

──なんて、ぼーっと見てる場合じゃねぇです!

翠「…ジュン?」

ちょっと呼んでみて振り向けば…。

ジ「は…?」

──やっぱりジュンです!

ガシッ!

ジ「…!」
翠「ちょっとこっち来いです」

人のいないホームの端まで何としてでも連れていくです。
こういう所で怒鳴りつけるつもりはないですが…念のため…

ジ「…何だよ…まさかさっきのをずっと見てたのかよ」
翠「ずっとではないですけど、やっぱりお前が1人で出歩くのは無理…」
ジ「無理じゃないよ」
翠「震えてたくせに!」

ホームの端に人がいないからって急に元気になりやがってぇ…

ジ「話はそれだけかよ。じゃあな」

パシーン!!

翠「どーしても1人で行くってなら…意地でも連れて帰るです!」

あぁ…無意識のうちに手を出してしまったです…
ここには人がいないって言ったって、
向こうからは不特定多数の人間が見ているかもしれないですのに…

ジ「じゃあ僕は翠星石から逃げるだけだ」

ガシッ…

翠「そうはさせるかです」

ふん。お前の右手をゲットです。
こうなったら、もう後戻りは出来ないです。
そこまで街へ行く意思が強固なものなら、
2人で行くって言うまで放すもんですか──

ジ「放せ…放せったら」
翠「イヤです!」

ギュウウウウウ…

ジ「痛い痛い!!…何なんだよその握力…」
翠「ふっふっふ…水銀燈を姉にもつ翠星石をナメてもらっては困るです」
ジ「だったら少しぐらい手加減しろ!」

──本当は私にもよく判らないんですが…。
ジュンが弱くなったのか、それとも翠星石が強くなったのか。
どうなんですかね。

でも…そんな事よりもっと大事なことがあるです。

翠「さ、行きたければ翠星石を…」
ジ「…」
翠「…」

乱暴なやり方になってスマンです…
さぁ…お前の口から言ってくれです。
「連れて行く」と。

ジ「…乗り越えろ!か。よし任せろ」
翠「はぁ?」
ジ「──しかしお前強いなぁ。なっかなか解けないや…」
翠「…」

…ブチッ

ジ「よいしょっ…ホントほどけないな…」

…ピキッ

翠「…」
ジ「くそっ…」

──こんちくしょお!!

翠「──お前を…連れて行くです」
ジ「あ?」

…電車が来たです。
ちょうどいいタイミングですね。

翠「乗るですよ──」
ジ「…」

こいつ…次に降りたらボッコボコに叩き潰して──

──あ、ありゃ?
何かラッキーなことに、この電車、ホームの端まで来やがったです。
しかも…めちゃくちゃ空いてるですね。

ジ「あ、これなら座れる…」

席に座ってる客も2、3人しかいねぇです…
凄まじいぐらいの空き具合です!

翠「おぉ!ちょうどそこの2人席が空いてるです♪さっさと乗るですよ♪」
ジ「あれ?何か急に…」

ドアが開いたです♪
何か幸先良いスタートが切れそうです~

翠「つべこべ言わずに、ほらほらぁ…」
ジ「てかお前いつまで僕の手を握ってんだよ」
翠「お前がホームと電車の隙間から落ちないようにするためです♪」

──ジュンと一緒に行きたいからです♪
だから…

ジ「誰が落ちるか!w」
翠「お前のことだから何が起こるか判らんですからね~
  …ずっと前から変わらんです」

ほんのちょっとだけ不安なだけなんですが…。

ジ「お前こそ、昔っから寂しがりやのくせに…
  だからこうやって繋いでんだろ?…幼稚園じゃあるまいし」
翠「──他にも理由があるですよ?」

そうです。他にもちゃんと訳があって…。

ジ「…」

別に謝らなくてもいいですから、せめて──

翠「…」

お願いです…。

ジ「……分かったよ。逃げないから──」

|