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何も無かった。白?違う。無色?それも違う。何も無い。それが一番しっくりくる。

だからどうした?
だからどうなんだ?
だからなんなんだ?

わからない。全部わからない。それは、困るのかな?…わからない。

-おや?こんな場所にお客様なんて珍しい。

誰かの声がする。…ああ、話しかけられているのか。ええと…そういう時何て言うんだっけ…

-どうしてここに?と聞いても無駄なようだね

ここ?…ああ、場所の定義か。これはわかるぞ。僕がいる場所のことを“ここ”と言う。…あれ?“僕”って何だ?

-名前はわかるかな?君の名前だ。

あ、わかる。ジュン、だ。…でも、名前って何だ?

-ジュン。少しばかり君を覗かせてもらうよ。

うわわっ…

-ふむ、成る程。どうやら君は“迷子”のようだ。 

迷子?

-そう、君は迷ってしまったんだ。そして不幸にも、落とし物までしてしまった。

はぁ、そうなんだ。

-さて、どうしたものか…君をここの住人に迎えるのも一つだが、今の君ではな。それは後で聞くとしよう。
そうだな…うむ、ジュン。少し、私の話しを聞いておくれ。私がしてきた、旅の話しだ。

うん、わかった。いいよ。

-まず、私の名前を教えておくよ。私の名前は、ローゼンという。 



プロローグ「旅の仕度」 



「…ふう」
少年が一人、リュックに荷物を詰めている。緑の綺麗な丘の上で。
その丘は山々に囲まれた土地にぽっこりとできており、緑の草に被われている。あちらこちらには花も咲いていた。
「そうねー…あと、私を拭いたり洗ったりするやつが必要よ!これ絶対!」
少女の声がした。だが、その丘には少年しか見当たらない。あとはリュックと、何故か乱雑に散らばって置いてある様々な食べ物、道具、服などがあるだけだ。
「洗う?…“洗う”って?」
少年は聞いた。
「汚れを取る事。汚いのはイヤでしょ?だから汚れたら水で濯いだり布で拭いたりして洗うの」
「ふーん」
少年は適当に返事をして、指示されたタオルをかばんに詰めた。それだけだった。
「そろそろリュックがいっぱいになる」
「あらまー。でももう入れるモノは入れたし…ジュン、君が持っていきたいモノとかあるかい?」
ジュンは辺りに散らばるモノを見渡し、止めた。それだけだった。
「で?何かあった?」
「何かって?」
「だーかーらー、ジュンが持っていきたいモノ!何かあったの?」
「・・・」
ジュンは黙ってしばらく考えた。でも、彼女が言ってる意味がよくわからなかった。
そのままジュンが喋る様子もなく黙っているので、彼女の方から口を出す。
「はぁ…まあ、無いなら無いでいいわ。別に満杯になるまで入れる事もないし、リュックも軽くなっていいかもね。じゃあはい!リュックを閉めて担いで立つ!」
ジュンは、言われた事をやった。すぐに終わった。
「あ、そーだ!大事な事忘れてた!」
「大事な事?」
ジュンが視線を上にやる。
「名前よ!私の名前!何にする?ジュンが決めてね?いいのお願いよ~」
「名前?」
名前。それは呼び名。自分はジュン。あの人はローゼン。彼女は…
「…アリス」
何となく、口から出た。
「へぇ!アリスかー!全然期待してなかったわりには悪くないのが出てきたわね!アリス、アリス、アリス…うん!気に入った!アリスでいいよ。改めてよろしくね、ジュン!」
「うん、アリス」
そう答えると、アリスは『えへへ』と笑った。

-まずは、丘を下りて、分かれ道に行きなさい。その後は、二人で決めるんだ。

ローゼンはそう言っていた。だから、丘を下りよう。
「あら?ジュン、君靴は?」
「靴?」
靴。足に履くモノ。自分の足を見た。何も履いてなかった。
「もー!裸足で旅するつもりだったの?はい!とっとと戻って靴捜す!」
「うん」
ジュンは適当な返事をして、下りてきた丘を再び登る。
アリスが靴を捜せと言った。だから、靴を捜した。

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