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ミャンマー、アングロタウン。地下賭博場。

「コール」
女がけだるそうに言う。
「…ツーペアだ」
女がけだるそうにカードを見せる。
「スリーカード」
「ッ…!このアマ…!!」
堪えてきた怒りも頂点に達した、そんな顔の男が胸に手を入れる。周りもそれに習う。もはや一触即発、いつ爆発してもおかしくなかった。
だが、その女は優雅に組んでいた足を戻し、これまた優雅に立ち上がる。表情も余裕どころか、昼下がりのティータイムを楽しんでいるようにさえ思えるほどだ。実際、彼女は楽しんでいた。
「それで?ポーカーに麻雀にチェスに…他に何か無いのかしらぁ?」
「うるせえ!このインチキ野郎!!」
スパン、ドサ。
軽い銃声、転倒する男。
「誰が野郎よ。口をわきまえなさい」
「くそが!」
ジャカジャカジャカ!
「撃てぇ!撃っちまえ!!」
女は、嬉しそうに微笑んだ。
「おばかさぁん…」

ウイン、ウイン、ウイン…
「ジャック警部補!」
「おー、で?どうだった?」
「何時も通りですよ…誰かがマフィア相手に暴れまくったらしいですが姿は無し。連中も怪我だらけですが今の所死人無しです」
「やれやれなぁ。俺が言うのもなんだが、こんなイカレた街に何の用だが…」
「しかし毎度ながらたいしたモノですねぇ。あれだけ体に撃ち込んどきながら即死させないなんて」
「それだけじゃねぇ。聞いた話しじゃやっこさんは毎度毎度連中の代打ち相手にカモってるそうだ。そんで連中がブチ切れるんだとよ。しかも別品の女ときてる。ふ~…とんだ女神が舞い降りたモンだなぁ」
「あ~そういえば奥様に逃げられたんでしたっけ…」
「おい、鼻の穴増やしたくなかったらとっとと仕事片付けろバカ」
「は、はいっ」
やれやれとばかりにタバコに火を付ける。嫌な事思い出させやがって…だがどう考えてもやっぱりアイツが悪い。浮気の一つくらい男の甲斐性だろうが。それをまったくネチネチと。これだから女は…いや、それにしても。
「女神、ねぇ…とすると、博打と戦の女神か。なるほど、チンピラじゃ敵わんワケだな」 


アメリカ、ワシントン.D.C。ホワイト・ハウス前の桟橋。

断続的な電子音が微かに響く。予定に狂い無し。万事順調。だが、順調過ぎてついカイロを買い忘れたのはいただけない。この寒さは予定外だ…なんて考えていたからだろうか。手元のパソコンから声が聞こえた。
『Are you all right?』
「うん…ズズ。あと少しだから大丈夫かしら」
『Cheer up!』
「どうも。さて、じゃあそろそろイッてみようかしら?」
『O.K,master.Ready?』
返事の代わりにエンターキーを叩いてやる。すると、
「あ~ら大変。あのホワイト・ハウスが停電しちゃったかしら~…って、いくら最終テストでもちょっとやり過ぎかしら?」
『Don't worry』
「ピチカートが言うならそうよね。ただ照明の明かりだけちょっと落としただけだし。あら?メールが…」
『Master?』
「ふふっ、何でも無いわ」
『Are you happy,yes?』
「そうね…さて、私達も早く戻らないといけないかしら」
『I can't stand the awful cold more』
「…ジョークとして受けとっておくかしら」
『Thank you』 


ブラジル、アマゾン川流域。ケシタ村。

「リンダ!早く来いよー」
「待ってよグエンお兄ちゃ~ん」
今日はお仕事はおやすみの日。ですが、お兄ちゃんといっしょにお出かけです。
「仕方ないだろ?母さんの熱が下がらないんだから。少しでも多く魚を捕って、それを売って、薬を買うんだ」
けれども薬はとても高いです。とても私達のお給料で買えません。
「うん…でもそこの川は危ないって村の人が…」
「てことは誰も来て無いんだから、たくさん捕れるハズだ。…ほら!見てみろリンダ!あんなにでっかい魚が居る!よっし、リンダはそこで待ってろ!」
「あ、お兄ちゃん…!」
「待ってろ魚ぁあああ!」
お兄ちゃんの事は好きですが、私の言うことはあまり聞いてくれません。しばらくすると、お兄ちゃんの後ろからたくさんのお魚が近付いてきました。あれはたしか…うん、前に見た事がある。たしか、たしか、たしか…
「…あ!お兄ちゃん!ピラニアだよ!」
「へ?う、うわああああ!」
突然たくさんの魚がお兄ちゃんに跳びかかりました。私は恐くて目をつむってしまいました。でも…
ズバババババババ!
「うひゃあ!?」
聞こえてきたのはお兄ちゃんの悲鳴じゃなくて、凄い水の音でした。水の槍のようなものがお兄ちゃんの周りに降り注いでお魚を貫いたのです。
「お、お兄ちゃん…?」
「ん…助かった…?て!リンダ!後ろ!後ろー!」
「へ?あ…ああ…」
なんと私の前にはとても大きな蛇がいました。私は恐ろしさのあまり声が出せず、その場にへたり込むしかなかったのです。
「リンダー!」
風が吹いた。はじめはそう思いました。それは前髪が少し揺れたからです。でも、すぐ後に目の前の蛇は倒れてしまいました。よく見ると体があちこち切れていて、とても痛そうです。
「リンダ!大丈夫か!?」
「う、うん…大丈夫」
「まーったく、何が大丈夫ですかこのチビチビ兄妹!危うくおっ死ぬトコだったですよ!」
突然の声に二人で振り向くと、そこには大きな如雨霧を抱えた髪の長い女性が立っていました。
「まあまあ、助かったんだから。それに話し、聞いてたでしょ?」
またまた二人で反対側に振り向くと、そこには大きな挟みを担いだ女性…かな?が、立っていました。
「君達?お金が欲しいのは解ったけど、ここは危ない生き物が沢山いるんだ。近付いちゃいけないって言われたよね?」
「は…はい…」
お兄ちゃんが頭を下げたので私もそれを真似します。
「まあそれでもお母さんを助けたい気持ちはよく解るよ。だからお家に案内してくれるかい?ある程度ね診察ならしてあげられる。そのかわり、近くの街への足を貸してくれないかな」
「は…はい!」
お兄ちゃんは本当に飛び上がって喜びました。どうやらこのお姉ちゃん達はお母さんを助けてくれるようです。だからお姉ちゃん達を連れて急いで家に帰りました。
その途中、後ろで『随分体と太刀筋がスリムになりましたね。瞑想とやらの成果ですか?』とか『そっちこそ。随分と繊細な事が出来るようになったじゃないか。羽虫相手はさぞ苦労したんだろうね?』とか話してたんだけど、私にはよくわかりませんでした。


オーストラリア、ウエスタン。ハマーズリー鉄道。

「ああっ、畜生!」
まったくなんてツイてねぇんだ俺は!朝のお祈りも欠かさなかったってのに…しかも今日は客も客なんだぜ?たのむぜマリア様よ…
「どうしたの?」
イカン。この声はご立腹だ。
「おお、すまねぇな嬢さん。見ての通り落石で線路が塞がっちまってんだ。悪いが撤去車が来るまで動けねえなぁ…」
「私は急いでいると言ったハズなのだわ」
「それはそうなんだが…」
うむ…なんだ。この娘さんを見てるとママを思い出すぜ。ああ、ママの尻叩きは痛かったなぁ…
「はぁ…仕方ないわね」
「お、おいおい。どうする気だ?」
このママ似のお嬢さんは何を思ったのか知らんが道を塞ぐ岩に歩いていったんだ。
「ふん…ねえ貴方、危ないから下がっていなさい」
まさか…この岩を退ける気か?
「ちょ!おいおいそりゃ無理だ!何百キロあるかわからん岩だぞ?焦る気もわかるが落ち着いて…」
「ホーリエ、“ボンド(絆)40”」
すると俺のヘソくらいの背丈のお嬢さんは俺の制止を無視してよくわからん事を言い始めた。ついでにいっちょ前に構えまでしてやがる。そういえば怒ったママも俺の言う事は無視してたっけなぁ…だが、そんな考え事をしてられたのは数秒だったのさ。
「紅…拳!」
ズゴン!ガラガラガラ…
「なあ!?」
俺は初めてママよりおっかない女が居る事を思い知ったぜ…俺よりでかい岩を殴って粉砕だぞ!?あんなんで尻を叩かれた日にゃ俺の自慢のナニが月まで吹っ飛んじまう!!
「ふう…30くらいでよかったのだわ。さて、これで発車出来るわね?」
「お、おお…」
とにかく、俺のナニの閉まりが良くて助かったぜ。危うく失禁しちまうとこだった…
「ではお願いするのだわ。…ああ、そう。喉が渇いたから紅茶を湧れて頂戴。5分以内で」
「・・・」
そこで俺は再び閉まりのいいナニに感謝する。だがな、あんなモン見せられた後でこう言われて、しかも手元に紅茶なんか無かった時の俺の気持ちがお前らに解るか?


イギリス、ロンドン。大英博物館。

〇月□日、晴れ。

今日もいい天気でよかった!これならちょっとチビって濡らしちゃった布団も乾いてくれるはずだ。でも、断じて僕が幼いんじゃない。夢に出たマカロニのお化けが悪いんだ。
そして今日も博物館に行く。目的はもちろん、あのお姉ちゃんだ。僕がアレをもって行ったらもう階段に座ってた。うーん、何時からいるんだろ?

『おはようなの。コル君』
『う…うん!苺のお姉ちゃん…』

お姉ちゃんの声は可愛いくて優しくて、名前を呼ばれただけでドキドキする。でも、顔が熱くなるのは何でだろ?
まあそれは置いておいて、早速アレを渡してあげる。僕のお気に入りの玩具、ルービックキューブさ。さあ、今日はどのくらいでクリアーするのかな?
『ベリーベル。』
あの不思議な呪文で現れる細い紐。なんども見てるけどぜんぜん仕組みがわからないや。凄いなぁ。

『…何時でもいいのよ』
『うん。じゃあ、よーい…どん!』
バシャバシャバシャバシャ…
『終わりなの』
カチ。
『えっと…6.88秒!』

あの細い管がヒュンヒュン動いてキューブを回すのは本当に見てて面白いなぁ。そしてついに目標って言ってた7秒を切ったんだ!流石は苺のお姉ちゃんだ!

『やったよお姉ちゃん!おめでとう!』
『ふふ、ありがとうなの』
『それで…さ、よかったら今から…その、家に来ない?だから…お祝い…みたいな…』
『ありがとうコル君。でもヒナはもう行かないといけないのよ』
『え!?お姉ちゃん居なくなっちゃうの!?』
『ごめんねコル君。そのかわり、このリボンをあげるわ。ヒナの大切なリボンだから、大事にしてね?それじゃあ…さようなら、なの』

はあ…誘えなかった上にもう会えなくなるなんて…なんだか胸に穴が開いた気分だったなぁ。また布団を濡らしちゃったけど、別にまた漏らしたワケじゃないぞ。
それにしても、別れる時に振り向いたお姉ちゃんは本当に綺麗だったな…将来お嫁さんになる女の人はお姉ちゃんみたいな人がいいな!だからこのピンクのリボン、大切にしなきゃ!…でもどうすればいいんだろ、コレ?


フランス、リムザール。サン・マスティア教会。

ガシャ、ジャキン。
ボルト・アクション式。さらにストックやフレームが木製の古臭いライフルに弾を込め、構える。しかしその先にあるのは壁であり、的はその向こう側にあるため肉眼では見る事が出来ない。
「準備はいいですよ」
一人のシスターが壁から離れる。それからしばらくして、教会の裏の空き地に乾いた銃声が響いた。
「当たりました。シスター・キラ」
「…ありがとうございます。シスター・アレンダ」
アレンダと呼ばれた女性はこの教会を仕切る高齢のシスターだ。しかし、その目には力強さが伺える。そしてその目が、銃をもつ彼女に向けられた。
「シスター・キラ。本当に良いのですか?その“銃”と、その“目”を使っても」
彼女は片方しか開いていない目を閉じ、ゆっくりと開いた。
「シスター。数多くの命をあやめ、悪魔とまで言われたわたくしを匿っていただいた事には本当に感謝しています。シスターのおかげで、わたくしは変わる事が出来たのですから」
「妹さんのため、でしたか。貴女がソレを捨てた理由は。それで?今、貴女はソレを使わなくてはならない事態だというのですか?」
「はい。今のわたくし…いいえ、私達に必要な力なのです。たとえどんなにわたくしにとって忌まわしいモノでも」
「…仲間のために自分を殺すのですか?」
「いいえ、シスター。わたくしにとって、今の仲間達こそが、自分そのものなのです。わたくしの全てなのです」
アレンダはやれやれとばかりに首を振った。
「まったくねぇ…どんな理由であれ、貴女のそんな姿は見たくなかったのですが。いいでしょう、持っておいき。ですが、ソレを持って行くなら私は貴女をシスターと呼ぶ事は出来ません」
「…わかっておりますわ」
「だから…ちゃんと返しにおいで。その時は紅茶の一つも振る舞わせておくれ?」
例えそれがどんな理由であれ場所であれ、自分を待っててくれる人が居るという事は幸せな事だと思う。だから、笑顔で答えた。
「ヤー、シスター」


南極、ベルグラーノ基地付近。

「隊長、やはり…通信は回復しません…」
「そうか…」
ウチの部隊が吹雪に見舞われ、仲間がはぐれてしまったのが一週間前。基地についてから部下を一人連れて捜索に辺り、無事発見しまたのはよかったんだが、そこで再びの嵐で完全に孤立してしまった。
「ベルグラットの様子はどうだ」
「微かに意識はありますが、そう長くは…」
それは俺達も同じだ。嵐が収まってくれたのは幸いだったが、手元の通信レーダーが不調を起こして使いモノにならない。この雪原をふらふら歩き回るワケにもいかない。つまり助けを待つしかないが、このままでは…
ピピピピピピピピピ!
「ん?何だ?何の音だ?」
もぞもぞ…ぼしゃあ!
「うおっ!?」
死にかけの人間には幻覚や幻聴は珍しいもんじゃない。だから始めはそんなんだと思ったが、幻にしてはやたらリアルだとも思った。だが、どういう状況になれば目覚まし時計を持った女が雪の下からはい出てくる?しかもこの南極で?
「お、おい…」
「・・・」
その女の顔は真っ青だった。そりゃあ雪の中に埋まってりゃ普通は凍死だ。だが信じられん事にその女は死人みたいな顔色をしながらも話しかけてきた。
「貴方達は…?」
「ん…その、なんだ。レーダーが壊れて遭難してしまったんだが…」
するとその女、また雪の中にずぶずぶ入ったかと思ったら通信機、レーダー、医療品、食料もろもろを出してきやがった!
「た、隊長…!」
「おおお!助かった!助かったぞマイケル!ベルグラット!助かった!!」
「よかったね…私が埋まってて」
命の恩人に対しちゃあんまりだが、俺はそこで失笑を抑える事ができなかった。


カナダ、ナイアガラの滝。

「ヤー!ご覧ハニー!見事な滝じゃないか!」
「そうねダーリン!ねえ、私もっと近くで見てみたいわ!」
「おいおいハニー、危ないじゃないか。でも君のそんな大胆な所も好きさハニー!」
「うふふふふ。あら、見てダーリン。滝の近くに小さなボートが居るわ」
「HAHAHA!嘘はイケナイよハニー!そんなワケ…おや?」
ピピー!
『そこの君!危ないから直ちに戻りなさい!!』
制止を無視して滝坪へと近づく小船。そしてそこには、降り注ぐ霧状の水に全身を濡らした胴着姿の少女。
「まあダーリン!きっとあれはジャパニーズ・サムライね!」
「いやいやハニー、サムライは男なハズだよ!でも確かに…あれはジャパニーズ・ソードを持っているね」
「あらまダーリン!あの女の子何かするみたいよ!大道芸でも見れるのかしら!」
「HAHAHA!それを言うなら大滝芸だよハ…」
「柏流“参式”…」
その時、少女は呟き
「“菊葉一門”」
そして、消えた。
ザバアアアアア…!
「オウ…マイガッ…!」
「ダ、ダーリン…滝が…滝が割れて…」
「ごめんよハニー…僕が間違っていた…彼女は間違いなく、ジャパニーズ・サムライだ…」


イタリア、ロゼーン島。作戦会議室。

東ティモールでの白崎、ジュン両名拉致より約三ヶ月。
「ローズ1、およびローズ5。帰島したわぁ」
向こうから打診された時はまもなく訪れる。
「ローズ3、4、そして柏葉巴、只今帰島したですぅ」
皆泣いて、誓って、鍛えて、帰ってきた。
「ローズ6、7、8。今帰島したの!」
どれだけ悔やんでも過去に戻れぬと言うのなら。
「これで全員帰途を確認したかしら。草笛みつ“司令官”」
よろしい。ならば、その過去さえ霞むような未来を作るまでだ。

「ご苦労様、みんな。では、作戦を説明するわ。白崎巡査、桜田ジュン両名奪回作戦を」 

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