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コンコン
「はぁ~い、今行きます」
カチャ
「あっ」
く「のりさんでしたね、ちょっとジュンくんにお話があるんですが…」
「ジュンくんですか?今出かけてますが」
警部「お邪魔してまっていてもいいでしょうか?」
「え、ええっと。」
く「じゃあ、お邪魔します」
「ちょ、ちょっと!」

もう四月も終わるというのに、風がすごく冷たい。
「ジューン!見るです、ヒトデですぅ!気持ちわりーです」
「ほら、翠星石。あんまりはしゃぐと危ないよ」
「二人ともとても仲が良いのね」
「性格が違うといっても、双子だしね」
僕らは近くの海にきている、ちょっと季節が早いが砂浜を散歩するのはとても気持ちがいい
「風が冷たいわ」
「もうすぐ雨が降るかもね」
「…ジュン、いつまでもこうしていられるといいわね」
「…」
「今の生活にとても満足しているわ。友達も出来て、ジュンとこうしていられる、これほど幸せなことは無いわ」
「僕は…」
言ってしまいたかった。
僕が何をしたのか、僕がどれだけ弱い人間か、…全部言ってしまいたかった。

「た、ただいま。誰か来てるの?」
玄関には見慣れない靴が二足あった
「あー、ジュン君お帰り。あのね、刑事さんと探偵サンが…」
姉の後ろに見覚えのある人影が二つ。
くんくん探偵と太った警部。
まずい、何かが告げる。
全身から血の気が引くのが分かる。
「な、何かようですか?」
く「叔父さんは何者かによって殺されました」
ねぇちゃんの顔を覗く、不安そうな顔だ
く「犯人の目星はついているんですが、彼にはアリバイがあるんですよ」
「へ、へぇー。病死じゃなかったんですか。犯人は誰なんですか?」
く「あくまで白を切るか、それもいいだろう。ずばり言うよ、犯人は君だ!」
探偵の指が僕の顔を指す。
今にも口から飛び出そうな心臓を必死に抑え、反論する
「でも、僕が帰ってきたときには叔父さんは
く「学校なんていつでも抜け出せる!大方保健室にいくとでも言って抜け出したんだろう。」
「で、でもっ!叔父さんは病死だったんでしょう!!」
警部「それは私が説明するよ。」
そう言って警部は書類を手にとる。
どうでもよかった、どうせ全て分かってるんだろ。
警部「警察側としてはとても恥ずかしいことなんだが、くんくん探偵が有ることに気付きましてね―…」
再調査の結果、叔父は窒息だということが判明した、という内容をだらだらと説明する。
仕方ない、僕には無理だったんだ。
覚悟はしていたが、とても痛いな。
姉を守るどころか、犯罪者の姉にしてしまった。

く「君が犯人だと思った決め手は…」
「もうやめてください!ジュン君がそんなことするわけないわ!」
姉は今にも泣きそうな顔つきで二人に詰め寄る
「…ねぇちゃん、いいんだ。もういいんだ…。」
く「?」
「僕がやりました。」
姉が視界の片隅で泣き崩れる。
警部は意外だという目を向ける。
楽になりたかった。
何が正義だ、僕は無力じゃないか…。
く「ありがとう、僕も君を追い詰めたくは無かったんだ。」
「やっぱり、法が正義ですよね…。ははっ、僕なんて無力だ」
く「…それは違う、探偵の僕からはこれ以上はいえないが。確かに法律は正義だ。でもそれは万人のための正義、君の正義も立派な正義だよ」
「…」
警部「時として正義と正義はぶつかる。そういう時は私たちは法律という正義を貫く。それだけだ」
「…」
長い沈黙。
「あの、明日、明日僕に時間をくれませんか?」
く「いいだろう、君を信じる」
警部「決して逃げ出したりせぬようにな」
「はい…」

その夜は姉といろいろな話をした。
姉は気付いてたそうだ、叔父を殺したのは僕だと。
そして叔父は肝臓に病気を抱えていてもう長くなかったのだと。
ジュン君は悪くない、寝るまでそう言ってくれた。

まぶしい。
夜の間ずっと降り続けていた雨はすでにやみ、まぶしい日光が降り注いでいた。
この教室ともお別れか、一ヶ月も経たないうちに…
翠星石に蒼星石、一年と一ヶ月かもっと長く一緒にいた気がする。
僕がいなくても、平気だよね。

ガラッ
「どうしたの?こんな朝早くにこいだなんて」
「あっ、真紅。おはよう」
「まったく、今何時だと…ぁっ」
抱きしめる、強く。
「い、いきなりは卑怯だわ!」
そっと真紅を離し、正面に立つ
「真紅、今日はお別れを言いに来た」
「そう…。そんな気がしたわ」
「当分戻ってこれない」
「えぇ…」
「人を殺した」
「そう…」
「仕方なかったんだ。僕は、僕は…」
「ほら、泣かないで、私まで悲しくなるわ」
いつのまにか泣いていた。
何で泣いているのか分からない。感情が押さえきれない
「…ジュン、今度は私の番だわ」
真紅が抱きしめてくれる。
とても優しく、小さな体で僕を包み込む。
「もう会えないわけではないのでしょう?私は待つわ、あなたが戻ってくるまで…」

どれぐらいそうしていただろう。外が賑やかになってくる。
「そろそろ皆が来るわ」
「もう、行くね」
「…気をつけて」
「絶対に迎えに来るよ、真紅」
「まってるわ」
さよならを交わし、校門から入ってくる生徒の波に逆らい進む。
「あっ、チビ人間。おはようですぅ♪」
「おはようジュン君。忘れ物でもしたの?」
ああ、二人にも会えなくなるんだな…
「おはよう、二人とも。」
挨拶をして、彼女たちとは反対方向に駆け出す。
「?どうしたんですかね、ジュンは」
「…翠星石、ジュン君泣いてたよ…」

叔父を殺してしまったことは後悔していない。
後悔しているのは、この生活を自分の手で壊してしまったこと…
一つだけ願いがある。それは犯罪者の僕には許されない願いかもしれないけれども…

―また幸せな生活を持てるだろうか?―

…きっとそれは難しいことではないよね
 僕には待ってくれる人がいるんだから………

『僕だけの正義』  Fin

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