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第四章『複雑よりも単純へ』

届いた本を舐めるように読む。丸一日を費やし三冊読破し終えた時には法医学がどういった流れで真理に達するか、その大まかな流れを掴んだ気がする。
だがまだこれでは安心できない。
それは既存の方法であり、新たな境地がすぐにでも開拓されるかもしれないからだ。
PCを立ち上げる時、あることに気づいて愕然とする。
「この本、ネットで買ってしまった…」
それは些細なミスかもしれないが、完全犯罪を犯すにはそういった小さなミスが命取りとなる。
大丈夫だろうか?本さえ見つからなければ…。
不安は拭えないがとりあえず事を進める。
緻密に練って実行された犯罪は、ちょっとした綻びから破綻していく。
最もわかりにくいのは単純過ぎて目に付かないような方法だそうだ。
確かに、単純なトリックは犯罪の匂いを消せる。
「単純…。これが一番難しいんじゃ…」
単純、単純、単純…………
「うっ、ぅうっ…。寝てしまったのか。」
机には法医学の本が広げられている。見開きで人体解剖のページだ。
その上に突っ伏して寝ていたらしい
「よくこの上で寝れたな」
自分に感心しつつ朝食へと階段を下りていく…

「ジュン!ジュン!」
「…真紅?おはよ…zzz」
「ほらっ!起きて!授業中なのだわ!」
「zzz」
「もう!」

「あなたは何しに学校にきてるの?今日の授業中眠りっぱなしだったわ!」
「真紅の言う通りですぅ!どうしてちび人間は当たり前のことも出来ないですか」
「最近忙しくってね、睡眠時間が取れないんだ」
「何してるですか?」
「それは内緒」
怒っている翠星石を相手にせず、再び眠りに落ちる。
「死んだように眠ってるね」
「ジュンは惰眠を貪ってるからチビなんですぅ♪」
うるせーお前よりはでかいからな、と心の中で突っ込む。
死んだように、死んだように…
ガバッ
閃いた!これは寝てる場合じゃない
「ひぃ!ごめんなさいですぅ!翠星石は、翠星石は」
「蒼星石!ありがとう!!」
「えっ!?何が?」
「真紅!今日は先に帰るから!」
「ちょっと、まだ授業がある…言ってしまったのだわ」

繋がった!
どちらとも諦めていた方法が繋がった!早速注文だ!
家まで走り、乱暴に玄関を開ける。
二階に駆け上がりPCを立ち上げてから一息つく。
「あった」
法医学の本で付箋をつけていたページを開くと同時に、お気に入りに入れていた個人サーバーのホームページを開く。
【シアナマイド液】これだ。
二本の『串』を経由し発送先を予め借りておいた私設私書箱に設定する。
これで完璧とは言わないが、これぐらいの妥協は必要だろう。
これを酒に混ぜて…
そしてこれ、【鼻口閉鎖】…。
組み合わせれば僕でも奴をやれる。
体格的に劣る僕でもやれるはず。
方法は決まった。
薬は一週間後に届く。
執行日はそう遠くない…。
一人小さく、薄く、残忍に笑う。
「ふふっ」
あいつは知らない。
こんな薬があるなんて、
いつもの自分の行動が自分の首をしめることになるなんて、
僕に殺されるだなんて、
あいつは知らない…。
死んだように眠り、そのまま眠り続けるだけ
「ふふっ、ははっ。」

「おはよ~う」
「あら、おはようなのだわ。うちに迎え繰るなんて珍しいわ」
「たまにはいいだろ?」
「悪くはないわ、むしろ嬉しいのだわ。」
「ならいつも来ようか?」
「いえ、そうじゃないわ。あなたが元に戻ったから嬉しいの、最近少し変だったでしょ?」
やっぱり隠し事は出来ないや、でも悪い気はしない

単純にいこうよ、僕。複雑なのはぼろが出るよ

第四章『複雑よりも単純へ』~完~

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