日曜の午後、今日は誰とも遊んで貰えなかった。
退屈な時間がもうしばらく続きそうだった。
突然携帯電話が鳴った、番号を見ると登録してない番号・・・・でもどっかで見たような番号だった。
『もしもし?薔薇しー?』
電話に出ると聞き覚えのある声、だれだったっけ?
「はい?どちらさんですか?」
『私は薔薇水晶ちゃんです!』
私の頭の中はクエスチョンマークでいっぱいになった。
言われてみて気が付いた、さっきの電話番号は今使ってる私の携帯電話の番号だった・・・・・・・・・・・・・
【不思議な電話】
「あの~、どういうこと?」
『えへへ~実は私は一年後の貴方なのだ~』
益々解らない、そんなことがありえるのだろうか?
「悪戯?銀ちゃんかキラキー?もしかしてキム?」
『違うよ~薔薇水晶だよ、じゃあこれから言うことを聞いて、それで信じて貰えると思うから。』
ん~悪戯にしては電話番号が・・それに声も確かに私の声だし・・・
「うん、解ったよ、一応聞いてみる。」
『ありがとう、えっとね、まず一つ目、明日は学校に行っちゃ駄目だよ、たぶん頭痛で行けなくなると思うけど。』
「え~明日は宿題の提出があるのに」
『それも大丈夫、それから銀ちゃんとキラキーが迎えに来たら足止めしてね。』
「???なんでまた?それじゃ二人が遅刻しちゃうよ」
『なんでもだよ、でも・・・たぶん普通に出来ると思うよ、それじゃ次は火曜日の夜に電話するからね。』
tu-tu-tu-
言いたいことを言うと【私を名乗る人】からの電話は切れた、一体全体どうなってるのかさっぱりわからない。
次の日、変な電話の事を考えてなかなか眠れなかった私は、頭痛と共に目が覚めた。
う~頭が痛い、昨日の変な電話のせいだ、今日は学校に行くのは無理かも・・・・。
独り暮らしの私は自分で全部しないとならない、気楽な一人暮らしも病気の時には辛いな~。
もし家に居たら居たで超過保護なパパが大騒ぎして救急車でも呼ばれるに違いないが。
玄関の呼び鈴が鳴った、銀ちゃんとキラキーが迎えに来てくれたんだ。
ふらふらしながら玄関を開けると制服姿の二人が居た。
「銀ちゃん~私今日お休みする、頭が痛くて・・・」
銀ちゃんに状況を話すとそれは大変だとばかりに二人は部屋に上がり込んだ。
「ご飯も食べてないんでしょ~薔薇しーは寝てなさい、私が何か作ってあげるわぁ。」
「薔薇しーちゃん、薬は飲みましたの?・・・いけませんわ、私が家から持ってきて差し上げますから飲んで下さいね。」
「銀ちゃん・・・キラキー・・・ありがとう、じゃあ私寝てるね」
私は二人の友情(さぼりたい口実かもしれないけど)に感謝しながらベットに横になった。
しばらくして銀ちゃんが起こしに来てくれた。ご飯が出来たみたい。
「ご飯が炊いてあったから卵雑炊を作ったわぁ、食べなさぁい。」
私は布団からちょこっと顔を出した、起きるのもおっくうだ。
「食べられない・・・銀ちゃん食べさせて。」
「ふふ、いいわよぉ・・・ふーふー・・・あーん・・・美味しい?」
「美味しい~、銀ちゃん・・・ありがとう銀ちゃん大好き・・」
銀ちゃんに食べさせて貰っていたらキラキーが部屋に入ってきた。
「二人とも大変ですわ、私達が毎朝乗るバスがバスジャックされたらしいですわ、すぐにテレビを」
テレビをつけるとバスが映っていた、乗客の顔も見える、あキムだ、ナイフか何かを突きつけられて泣いてる。
「遅刻して良かったわぁ、私なんか可愛いから犯人に襲われちゃうわぁ」
犯人が銀ちゃんを襲ったら事件はすぐに解決しちゃいそうだけど口には出さない。
するとキラキーが。
「あ金糸雀様が映ってますわ、普段ならもっと早いバスに乗ってらっしゃるのに、ほんとに運の悪い方ですわね。」
これって・・・あの電話の・・・・私は昨日の電話を思い出していた、あの子が言うことはほんとだったんだ。
銀ちゃんとキラキーは学校と家に電話して無事なことを伝え、一時間遅れで学校に向かった。
私は携帯電話を眺めながら着信履歴を確認した、やっぱり私の番号からかかってきている。
試しにその番号に電話をしてみた。
『AUお留守番サービスに接続します』
留守番電話になった、試しに「薔薇しーだよ~」とか入れて電話を切るとすかさず着信ありの表示が現れて私の番号で着信があったと教えてくれていた。
留守番電話を聞いてみる、『薔薇しーだよ~』と聞こえた・・・なに馬鹿なことをやってるんだろう。
お昼過ぎ、バスジャックは解決した、キムも無事だったようだ。
キムの事なんかどうでも良いけど私の頭の中は昨日の電話の事でいっぱいだった。
考えても答えなんか出るはずはない、次の電話が来たらいろいろ聞いてみよう。
あれこれと考えていたら頭痛はすっかり良くなっていた。
火曜日は元気に学校に行った、その日は何事も無く終わった。(そんなに毎日なんかあったら大変だけど)
銀ちゃんからゲームセンターに行こうと誘われたけど、まだ本調子じゃないからと言って断った。
今日だけは真っ直ぐに家に帰った。
何を話そうか、色々聞きたいことが沢山ある、病気や怪我はないか、銀ちゃんと仲良く出来てるのか、新しい友達は、彼氏とか出来てるのか。
一年後の私ってどんな子になってるのか、彼女は私の知りたいことを全部知ってるに違いない。
二時間ほど待つと電話がかかってきた、私の番号だ。
慌てて電話に出る。
『やほ~私!信じて貰えたかな?』
一年後の私はやたら元気が良かった。
「うん、信じたよ、教えてくれてありがとう、危なかった。」
『よかったバスジャックには遭わなかったんだね。』
「キムが人質に取られてた・・・運が悪い子」
『あははは、そうだったね~でも銀ちゃんもキラキーも私も無事で良かったよ。』
「それで・・・色々聞きたいことが・・・」
私が話し始めると一年後の私が台詞を奪った。
『聞きたいことは教えられないよ。』
「え?」
私が抗議の声を上げると一年後の私が至極まっとうに応えてくれた。
『聞いちゃったらつまらなくない?』
「・・・・・・」
『・・・・・・』
私はしばらく考えて、そのとおりだと思った。
「そうだね・・でも1つだけ教えて。」
「・・・・・・・・一年後の私は幸せですか?」
『うん、とっても幸せだよ。』
その答えに私は安心した、一年後私は笑って暮らしているらしい。
『でもね、実は1つだけ言いたい事があるんだ。』
「ん?どんなこと?」
『一年前の私ってちょっと引っ込み思案、色々考えても行動出来なくて・・・』
そう、私は口下手、どちらかというとあんまりしゃべらない子。
『でも貴方はこの一年間で勇気を出して行動を起こしてみて、そうしたら・・・』
「そうしたら?」
『・・・・・私はこの一年とっても幸せだったよ、後悔もちょびっとあるけど。』
『後悔は言いたくても言えなかったことへの後悔、幸せは勇気を出して行動した事へのご褒美だよ』
『私の言える事はこれだけ、一年前の私・・・・頑張ってね。』
tu-tu-tu-
言いたいことを言うと【一年後の私】からの電話は切れた、一体全体どうなってるのか相変わらずさっぱりわからない。
でもちょびっと勇気が出た。