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<あらすじ>

時は戦国の世。備前国に「薔薇乙女」と呼ばれる8人の姉妹がいた。
天下統一の野望を抱く長女・水銀燈は、謀反によって一躍戦国大名にのし上がる。
備前を統一した水銀燈は隣国へ兵を進め、赤松氏を滅ぼして播磨、美作をも平定。
その前途にいよいよ念願の上洛への道が開かれようとしていた。


<本編に登場する主な史実武将>

○足利義輝(あしかが よしてる/1536~1565)
室町幕府第十三代将軍。塚原卜伝より奥義を伝授された剣の達人で「剣聖将軍」の異名をとる。
失墜した足利幕府の権威を取り戻すべく奔走するも、三好三人衆と松永久秀によって襲撃され壮絶な最期を遂げた。
本編では上洛した水銀燈の後押しを受け、三好家に対抗。幕府再興を目指し奮闘するが……

○三好長慶(みよし ながよし/1523~1564)
細川家臣。主家の実権を奪って勢力を拡大、主君・晴元を追放して畿内の掌握に成功した。
嫡男・義興や弟・義賢らの死後は心身に支障をきたし、失意のうちに病没。以後三好家は松永久秀の専横を許すことになる。
本編でも畿内と四国に領地を持つ大勢力であり、上洛を果たした水銀燈の前に大きく立ちはだかる。

○三好三人衆(みよしさんにんしゅう)
三好家中の実力者である三好長逸、三好政康、岩成友通の三人を指す呼称。
将軍義輝を暗殺するなど畿内で専横を極めたが、のちに織田信長の上洛軍によって駆逐され衰亡する。
なお本編中ではそれほど出番は無いが、一応補足のため……

○毛利元就(もうり もとなり/1497~1571)
安芸国に生まれる。大内、尼子の二大勢力に挟まれながら謀略の限りを尽くし、中国十ヶ国の支配者となった希代の謀将。
嫡男・隆元に先立たれながらも嫡孫・輝元を後継者とし、吉川元春・小早川隆景の両川に支えられた万全の体制を残した。
本編では西国における水銀燈の盟友であるが、その腹の内で何を画策しているかは謎のままである。



――年は明け、永禄五年正月。

姫路城にて新しい年を迎えた水銀燈。
妹や家臣たちが勢ぞろいしたほか、領内各地から年賀の使者が相次ぎ、にぎやかな正月となった。
蒼「明けまして」
翠「おめでとうなのですぅ」
家臣一同「おめでとうございます」
銀「おめでとぉヽ(´ー`)ノ」
雛「ようやく笑顔のお正月なのー」
銀「そうねぇ。やっと心から新年を祝う気持ちになれた気がするわぁ」
紅「今や三ヶ国を支配する大大名……それも当然といえば当然なのだわ」
雪「でも、大変なのはこれからですわ。三好や本願寺といった大勢力が当家に目をつけ始めていますから」
蒼「西の毛利や尼子の動きも気になるところだね。上洛の際には背後を衝かれる恐れがあるし……」
金「心配ご無用なのかしらー!」
紅「あら。随分と久しぶりね、マナカナ」
金「金糸雀かしらー! そういうツッコミづらいボケはやめてほしいかしらー!」
ジ「そう言えば今まで何処に行ってたんだ?」
金「ふっふっふ。一足先に京へ上って将軍家に挨拶しつつ、周辺諸国を巡って情報収集に勤しんでいたのかしら」
銀「ご苦労様ぁ。で、例のモノは手に入って?」
金「勿論かしら!」
金糸雀は懐から一通の書状を取り出し、水銀燈に手渡した。
翠「いったい何なんですぅ? そのいかにも怪しげな書状は」
銀「将軍家からの密命よぉ。三好三人衆を討伐せよ、とのね」
三好長慶はもとは管領細川家の家臣であったが、その才覚をもって幕府内で一躍のし上がった人物である。
将軍・足利義輝は表向きは長慶と協力関係にあったが、
裏では三好一門――特に洛中で専横を働く三好三人衆を追い落とそうと画策していた。
上杉輝虎などの有力大名に協力を仰いだのも、そのうちの一手である。
ジ「つまりこれで、上洛のための大義名分を得たことになるわけだな」
銀「そのとおり♪ ま、実際上洛するまでにはまだやらなきゃならないことがあるけどねぇ」

この月、三河の松平元康が今川氏真の支配下から独立。
徳川家康と名を改め、尾張の織田信長との強力な同盟関係を築いたのだった。

――翌月。永禄五年二月。

水銀燈は石山本願寺に対して真紅を使者として送った。
同盟を結ぶとともに上洛の際の摂津への進軍について了承を得るためである。
そして自らは西国の雄・毛利元就と盟約を結ぶべく、安芸国吉田郡山城へと向かったのだった。
銀「お初にお目にかかりますわ、陸奥守殿」
元就「おお、遠いところをよう参られた。話には聞いておりましたぞ。僅か二年で三ヶ国の領主となった才女が居られると」
銀「あらぁ。そんな風に言われると恐縮ですわ」
元就「で、その才女がこのような老いぼれにどのような御用かの?」
銀「では単刀直入に言いますわ。この水銀燈に、力を貸していただけません?」
元就「ほう……つまりは当家と同盟を結びたい、ということかの」
銀「そぉゆうコトですわぁ」
元就「左様か……うむ、よかろう。これより当家と薔薇乙女家とは盟友じゃ」
銀「ありがたきしあわせ♪ 元就殿が御味方とあれば百人力ですわぁ」
元就「ほっほっほ。わしとてそなたのような美人を敵に廻しとうないからの」
銀「まぁ♪ お上手ぅ」
盟約を取り交わすと水銀燈は吉田郡山城を辞し、播磨への帰路を急いだ。

隆元「父上、よろしいのですか? あのような小娘を信用なされて」
元就「なに、信じてなどおらぬよ。だが女子とはいえ備前、美作の国主とあれば盟約を結んでおいて損はない。それに……」
隆元「それに……?」
元就「あの娘、何やら面白いことをしでかしてくれそうな気がしてな。しばしそれを見物してみるも一興ぞ」

――永禄五年三月。

毛利と本願寺を味方につけた水銀燈は、いよいよ上洛へ向けた軍事行動を開始した。
まずは雪華綺晶、薔薇水晶らが先陣として摂津へ進軍。
伊丹城主・荒木村重を降伏させ上洛への足掛かりを築くと、自ら出陣すべく軍令を発した。
銀「みんな、心の準備はいい? 今度の出陣をもって上洛作戦開始とするわ。気合い入れていくわよぉ?」
翠「おぅ! この翠星石にどぉんと任しとけ! ですぅ」
紅「ついに来たのね……お父様の夢を叶える時が」
蒼「ずっと待っていたよ、この時を」
雛「やっと、ヒナも出番なのー!」
金「いよいよ薔薇乙女一の軍師、この金糸雀の本領発揮かしら!」
翌月、水銀燈はおよそ一万の軍勢を率いて姫路城を出陣。
薔薇乙女家の旗揚げ以来、最大規模の動員であった。

――永禄五年五月。

摂津に入った水銀燈は伊丹城へ入城。
雪華綺晶、薔薇水晶と合流すると高槻城へ進軍し、翌月には前管領・細川晴元を降伏させた。

その頃。京都、二条城。
明智光秀「申し上げます。水銀燈殿が播磨より大軍を率いて東上、摂津にまで軍を進めた由にございます」
足利義輝「なんと! そは吉報じゃ。直ちに使者を走らせ、早々に上洛するよう伝えよ」
光秀「はっ」
応仁の乱以来およそ百年。畿内には大小の騒乱が絶えず、領主も民も疲弊し続けている。
足利将軍家の権威は地に落ち、その支配力が行き届くのは今や洛中のごく一部のみというありさまであった。
光秀(だが水銀燈が上洛し将軍家を助けるとなれば、幕府の威信も回復するであろう)
水銀燈の上洛の意向を受け、将軍義輝は三好長慶と断交。
さらに正式に三好氏討伐令を畿内に発し、対決姿勢を鮮明にした。
光秀(しかしこれほど早く京へ上ってくるとは……水銀燈、やはり只者ではない。いかなる野心を秘めておるのか)

数日後。高槻城の水銀燈を幕府の使者が訪れた。
蜷川親長「早々のご出陣、祝着至極にござる。上様も水銀燈殿のお顔を早よう見たいと仰せられておりますぞ」
銀「そは嬉しき仰せ。されど、入京する前にまずは京周辺から三好三人衆を追い払って御覧に入れますわ」
蜷川「それは頼もしき限り……期待しておりますぞ」
使者が帰った後、水銀燈は早速妹達を集めて軍議を開いた。
銀「まずは近江水口城の三好長逸を討つわ。きらきー、ばらしー、金糸雀、巴。一緒に来なさぁい」
雪「分かりましたわ」
銀「真紅ぅ。アナタは翠星石たちを連れて槙島城を攻撃して頂戴」
紅「承知したのだわ」
蒼「この緒戦に勝てば前途は開けるね。京はもう目の前だよ」
巴「ついに三好勢との戦いが始まるのね」

――永禄五年九月。

高槻城から出陣した水銀燈は、四千余りの兵で水口城を囲んだ。
城を守るのは三好三人衆の筆頭・三好長逸である。
薔薇乙女軍は二手に分かれ、金糸雀と巴が搦手へ、水銀燈は雪華綺晶、薔薇水晶とともに大手門へ向かった。
薔「なんか今日の銀ちゃん、ごきげん……?」
銀「ウフフ、わかるぅ?」
薔薇水晶に問い掛けられ、馬上で不適に微笑む水銀燈。
銀「今日の水銀燈は一味違うわよぉ。騎馬隊を率いた私の恐ろしさ、見せてあげるわぁ」

長逸「ふん、何が薔薇乙女だ……田舎娘どもに何が出来る」
だが薔薇乙女軍の攻撃は凄まじかった。
圧倒的な勢いで守備兵を蹴散らし、あっという間にほぼ同時に二つの城門をこじ開けたのである。
大手門を突破した水銀燈は騎馬隊を率いて突撃を敢行した。
銀「突撃よぉ! 邪魔する奴は容赦しないわぁ!」
三好兵「ひえええぇっ!!」
水銀燈の壮絶な突撃の前に蹂躙され、瞬く間に一隊が壊滅に陥った。
雪「今ですわ。私に続くのです!」
金「一番の手柄は頂きかしらー!」
勢いに乗る薔薇乙女軍の進撃の前に、混乱に陥っていく三好勢。
長逸「おのれぇ……いつまでも小娘づれにやらせておくものか! 者ども、押し出せ!」
降り注ぐ矢に寄せ手が怯んだ間隙を衝いて、三好勢の一隊が槍衾を組んで突進した。
巴「ぐっ! 怯んじゃダメよ! 踏みとどまりなさい!」
薔「……やる」
だが長逸の奮闘で一時立ち直った城方も、猛威を振るう水銀燈の騎馬隊によって次々と討ち取られ、
徐々に劣勢に立たされていった。
長逸「こ、こら、逃げるな!」
銀「敵の士気もだいぶ落ちてきたようね。本丸を総攻撃よぉ!」
薔「雪華薔薇隊……」
雪「……行きます!」
本丸に追い詰められた三好勢に、雪華綺晶と薔薇水晶の部隊が一斉に襲い掛かる。
三好兵「と、殿! ここはお退き下され!」
長逸「くそっ! これでは長慶様に合わせる顔がないわ……」
水口城はひとたまりもなく陥落し、三好長逸は逃亡した。

翌日。戦勝に湧く水銀燈の陣営に一報が届いた。
金「真紅たちが槙島城を落としたとのことかしらー!」
銀「さすがは真紅、よくやったわぁ」
雪「これで京周辺の三好勢は壊滅……上洛のお膳立ては整いましたわ」
銀「そぉね。いよいよ、歴史に私達の名を刻む時が近づいてきたわ」

――永禄五年十月。

ついに、薔薇乙女たちにとって念願の日がやってきた。
真紅と合流した水銀燈は一万五千の軍勢を引き連れて入京。
その威風堂々とした軍容を、京の人々は驚きと期待をもって迎え入れた。
「あの陣頭にいるのが水銀燈か……えらく派手な鎧だな」
「三好三人衆を追っ払ったんだってよ。まったく大したもんだ」
「まだ17歳の娘だっていうじゃないか」
馬上から憧れの京の街並みを眺め、姉妹たちの感激もひとしおであった。
紅「ここが京の都……なにか空気の色も匂いも、すべてが華やいで感じられるのだわ」
翠「真紅はなにかと大げさですねぇ。初めて見る都だからってはしゃぎ過ぎですぅ」
ジ「あれ? ついさっきまで『天竺に着いた三蔵の気分ですぅ♪』とか言ってはしゃいでたのはうわ落馬するやめr」

やがて軍勢は幕府の政庁である二条城へと向かった。
ここで水銀燈は第十三代将軍・足利義輝と初めて対面することになる。
銀「和泉守水銀燈にございます。麗しき御尊顔を拝し、恐悦至極に存じ奉ります」
義輝「おお、おお。待っておったぞ。聞けば早速に三好長逸を打ち破ったとか……評判以上の働きぶりじゃ」
銀「恐れ入りますわ」
義輝「そちのことは過日朝廷に推挙しておいた。近々新たな官位が授けられるであろう」
銀「この私めには過分の御沙汰……有難き幸せに存じます」
義輝「そちがこの京におれば幕府も安泰であろう。頼りに思うておるぞ」
その時、広間に明智光秀が駆け込んできた。
光秀「申し上げます! 三好長慶の弟・義賢の軍勢が大和に侵入、多聞山城を落としたとのことにございまする!」
義輝「なんと!」
大和国は幕府に従順な筒井順慶の支配していた要所である。
光秀「三好勢が筒井氏を大和から追い落としたとなれば、次はこの京へ攻め寄せてくるは必定にござる」
銀「それは一大事……すぐに防備を固め、三好勢の来襲に備えなくては」
義輝「うむ、すまぬが頼んだぞ。光秀、この二条城周辺の守りはそちに任せる」
光秀「はっ」

数日後、水銀燈は朝廷より正五位下式部大輔に叙せられた。
だが官位叙任を祝う間もなく、三好軍を迎え撃つべく出陣準備に追われることとなる。
蒼「せっかく上洛が叶ったというのに、まだ戦いは終わらないんだね……」
翠「何言ってるです。私達は将軍の意を受けて京に上って来たですよ? 三好を滅ぼすまで気は抜けねぇです」
銀「翠星石の言う通りよぉ。言わばこれからが私達の本当の戦い……天下に覇を唱えるためのね」

その頃、京に駐留する薔薇乙女軍の宿所。
雛「ねぇねぇ、ジュンってばぁ」
ジ「何だようるさいな、今忙しい……ん? 何を手に持ってるんだ?」
雛苺が持っていたのは、一見何の変哲もない木切れのようであった。
雛「えっとね、槙島城の東のほうで遊んでたときに見つけたのー」
ジ「ちょっと見せてみな。ん、この香り……もしかしてこれ、香木じゃないか?」
ジュンは木切れを持って真紅のもとに向かった。
紅「くんくん……これは『紅塵』ね。聖武天皇の御世に献上されたとされる宝物よ」
ジ「そ、そんな貴重なもんだったのか?」
雛「ヒナ、すごいの見つけちゃったのー!」
紅「そうね。これを所持しているとなれば当家の名声も上がるはず……これは吉兆に違いないのだわ」
上洛早々の幸先の良い発見に、真紅の心は躍った。
それは今後待ち受ける戦いの日々に、かすかな光明をもたらすもののように思えたのだった。

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