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ガチャ

帰ってきた。あの後一時間も何してたんだろう?
いや、何も考えない事にしよう。せめて、今日の事を覚えておいてくれれば・・・・ 

「ただいま。」
「お帰りなさい。・・です。」 

駄目だ、声が震えている。頭が回らない。 

「ん?どうした?何か変じゃないか?」
「・・翠星石はどこも変じゃないですよ?」
「・・・・そうか。気分でも悪いんじゃないかと思って心配したよ。
 そんな状態の人に料理をさせるなんて出来ないからね。手伝おうか?」 

ああ、この優しさ。飾り気の無い、本心からの優しさ。
彼女はここに惹かれたのだ。自分に無いもの、に惹かれたのだ。
ジュンも昔は負けず劣らずの意地っ張りだったが、
いつからか二人の心はそれぞれ相反するように成長した。
しかし、翠星石が全くの冷血人間と言うわけでも無い。
彼女も心の奥底にそういった心があるのだが、
ただ気恥ずかしさからうまく表現できないだけだった。

「・・・・別におめぇなんぞに心配されるほどヤワじゃないですよ。でも、ありがとです。」

思い切って訊いてみようかとも思ったが、徐々に薄れていった。まるで麻薬のようである。

「手助け無用です。後三十分ほどで完成ですから、そこで涎垂らして待ってろですぅ。」 

やっぱり、さっきのは自分が見た幻なんだ、きっと。そして今日の事も覚えていてくれてる。 

「うっし!出来たですぅ!」
「おお!今日もハンバーグかぁ!でも美味そうじゃないか。」
「────え?」
───゙も゙ってどういうことですか?
「ん、どうし・・・!あ、いや・・その・・・・」 

狼狽えるジュン。
こういう嘘を吐けないところも彼らしい。
しかし、今はそんなこと、どうでもよかった。 

「どういうこと、ですか」
「・・・・・・・」 

そう言えば、一昨日は晩ごはん要らないってメールが来てたっけ。まさか・・・・ 

「巴、ですか。」
「なっ!?」
「やっぱり、ですか・・」
「な、何がだよ・・・・」
「いいですよ、しらばっくれなくても。
 今日、二人で帰るのを見たです。その後も。」
「!・・そうか・・・」
「ジュン。」
「な、何?」
「今日が何の日か、覚えてますか?」
「・・・・へ?」
「やっぱり、・・です・・・・かぁ・・・・っ。」

嫌だ。泣きたくない。

「翠星石・・・」
「ジュンは・・ジュンは・・・・・・・・私と巴とどっちが良いですか?」
「いきなり何を言い出すんだ!?」
「答えるです!どっちですかっ!」
「・・どっちも僕にとって大事だ。」
「そ、そんなぁ・・っ・・・・」
「だがな、聞いてくれ翠星石。僕は───」
「もう・・・・嫌です。 
 もう・・・・翠星石はジュンの事が信じられないです。」

そう言って翠星石は部屋を出ていった。

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「はぁ・・・・」 

溜息を吐くジュン。 

「どうしよっかなぁ・・・・」 

プルルルル。プルルルル。 

携帯の着信を見る。・・巴だ。 

「・・・どうした?」
「それはこっちの台詞よ。どうしたの?元気の無い声して。」
「や、何でもないよ。ちょっと疲れてるだけ。」
「そう。ねぇ、今から逢ってくれない?」
「え!?今から?」
「そう、今から。・・・・ダメ?」
「・・ああ。分かった。じゃ、今からお前ん家に行くから。」
「うん。待ってる。」

行かなくちゃ。重い腰を上げる。



『───続いて、海上の波の予想です。
 ・・・・県沖は6メートルから8メートルの非常に強い波となっております。
 海のレジャーなどは控えるようにしてください。────』

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