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吸血鬼。
昼に蠢き、夜に生き、影に潜み、人を襲い、血を啜る。
陽の下へは出られない、暗闇の生き物。
一概に「吸血鬼」と言えど、ピンからキリまであるが、全てにおける共通点は、
『卑しくも他の生き物の血を頂戴し、それを飲んで生きつなぐもの』という点だろうか。
ザコから夜のドンまで、それはもう上を見れば果てしなく、下を見れば・・・
・・・
・・・・・・?
あれ?
一番下って、私?
ゴホン、そんなことは置いておきましょう。

で、私が言いたいのは、吸血鬼といっても、色々なものがいること。
普通、吸血鬼は血がないと活動できない、もしくは行動力ががくんと下がる。
いわば吸血鬼にとっての血は、車で言うガソリンのようなもの。
でも、ひとたび燃料を補給してしまえば、人には出せないような力が出せる。
さらに上位の個体は霧や下等動物に体を変化させたりすることができるそうだ。
しかし私のような半人前の吸血鬼は、血があっても、
(流石に一般人よりは強いが)バリバリ強くなるということはない。
ただし、半吸血鬼は陽の下に出ても、日光によるダメージは小さい。
なので、日陰で休み休みなら、日中でもある程度は活動できる。

ジュンは私に言った。
「お前はおかしいよ」
真顔で、真正面から、私に向かって言い切った。
「背中のソレは一体何なんだ?」
彼は、私の翼を指差して、言った。
「そんなこと言われても、わからないわよぉ」
「吸血鬼にも羽がある奴はいるにはいる。でもそれはかなり上位の吸血鬼だ。
 お前みたいな半人前に羽根があるだなんて、聞いたことがないよ。
 おまけに普通は蝙蝠じみた『羽』だというのに、お前のそれはもう『翼』じゃないか」
「・・・」
私の背に生える漆黒。
血を得たときにだけ、姿を見せる翼。
これは一体、何なのだろうか。
私はいったい、何なのだろうか。



「目くらまし、出来るのですね?」
「ええ、多分うまくいくと思うわぁ」
翠星石と私で、ベットの陰に隠れる。
「具体的には、何をするのですか?」
翠星石は私に尋ねる。
「血をありったけ飲んで・・・」
ここまで言ったところで、となりの翠星石が体をぶるぶると震わせて、
顔を真っ青にして小さく小さく縮こまる。
「ひぃ・・・ひぃ・・・! やっぱりおめぇはけだものですぅ! 化物ですう!」
私は一つため息をつく。
「あんたの血は飲まないわよぉ・・・。で、翼を広げるのするの」
「・・・それで部屋を埋め尽くす、と言うのですか?」
「そういうことになるわねぇ」
「水銀燈の翼が撃たれるかもしれねぇですよ?」
「問題ないわぁ。実は私のこの翼自体はあまりサイズ変わらないのよぉ。変わるのは生えている羽根の量」
「なるほど・・・それならもしかしたらクッションになるかもしれねぇですね。
 暗視スコープのもしかしたら無効に出来るかもしれねぇですし・・・」
「問題は私が正気を保っていられるか、ねぇ」
ここで再び翠星石の顔が青ざめる。瞳孔が開いている。
彼女が私の冗談を、まさか信じるとは思わなかったので、
信じられてしまうほど、信用されてないとは思わなかったので、私は少し笑うことにした。
「冗談よぉ、冗談」
「一度言っちまったら、もう信用は元には戻らないです。嫌なら翠星石を守って見せやがれ、です」
翠星石が、私に少しだけ、身体を寄せる。
やっぱりこの子、百合のケでもあるのだろうか・・・。
でも。
頼られてる、ってこの感じ。
屋敷には、なかったもの。
一人では、絶対に感じる事のなかったもの。
結構、悪くない。
そう思って、私は息を大きく吸い込む。



ジュンは、くずれおちたガレキの一つの上に、どっかと座る。
「どうしたもんかな」
上を見て尋ねども、半月が輝くだけ。当然、誰も答を返してはくれない。
状況は、だいぶまずい。非常に、よくない。
動かせないケガ人(しかもオナゴ)が二人。
水銀燈を狙って、飛び出してった何かが、一体。
なぜか連絡のとれない、部屋で待機中のはずの翠星石、水銀燈。
まず困る点を洗い出してみる。
一、ジュンはこの場から動けない。
一、水銀燈を狙う変なのがいる。しかもなかなか強いかも。さらにそのことを伝えられない。
一、足手まとい(水銀燈)と、足手まとい(翠星石)が一緒にいる。
ジュンが考えていたのは、ここまで。
本来なら、
一、水銀燈、翠星石のもとに正体不明の襲撃者が来た。
ということも上げられるわけだが、彼女らは何故か現在取り込み中。音信不通。
つまりジュンはそのことは知らない。
「どうしようか」
呟きながら、コートの胸ポケットから銀紙で包まれた板ガムを取り出し、口に突っ込む。
しかし、彼の知らないところでは、状況に好転の兆しは、見えていた。



「おまえとジュンは、太陽の人間がいるのを見たのですね?」
「ええ」
「なら、狙撃手は太陽の人間だと考えるのが妥当ですねぇ。
 相手も、私たちVCがここにいることは知っているのでしょう?」
「バレてると思うわぁ。私が吸血鬼であることもアピールしちゃったし・・・
 でも、私たちを襲うワケがわからないわぁ。蒼星石だって『障らぬ神に祟りなし』と言ってけれど、
 相手さん方だって、それは当てはまるんでしょお?
 まさか柏葉と半吸血鬼の子に会いに行く計画がこんなにすぐにバレるとは思わないし・・・」
「・・・もしかしたら、太陽を裏切った柏葉とやらが、VCに助けを求める事を予想して・・・」
「『私たちにとって、いい情報を持っている』って、あんたの説だっけ? あながち間違ってないみたいねぇ」
そして、私と翠星石は沈黙する。
「お前とジュンが見たのは二人、と言ってましたね」
「ええ」
「・・・最低、二人ですか」
翠星石は少し考え込むようなそぶりを見せる。
そして、まだ少しだけ血の残る、わたしのボトルをいぶかしげに眺める。
「これから、作戦を説明するです。とりあえずその血の瓶、不快だからとっとと飲みきりやがれです」
「え、えぇ」
そして私は、血の瓶を一気にあおる。プハァーッとか言ってしまうけど、そこは仕様で。
「生き返るわぁ・・・」
口元についた血を服の袖でこする。
「はいはいはいはいよかったですね。だまってそこで座ってやがれですよけだもの。
 とりあえず、お前は羽根で煙幕が作れるですね? それは最大でどのくらいですか?」

・・・
私は考える。
そもそも、翼を広げたのは、現在のところ屋敷での化猫との戦いが最初で最後であり、
スペックを確認することなんて、なかった。
だから、正直に彼女の問いに回答するならば、「わからない」が正解である。
だけれど、
だけれど。
私には予感があった。
最低でも、「このホテルのこのフロア全ては埋め尽くせる」と。
やろうと思えば、「ここから羽根を伸ばして、狙撃手を直に討てる」と(不確実だし怖いからやらないけれど)。
だから私はこう答えてやる。
「望むなら、どこまでも」
「上等ですぅ」
翠星石はにんまりと笑う。
その笑顔は、あまりにも似合いすぎていて、不気味なくらいだった。



雪華綺晶は、吸血鬼の、つまりは水銀燈の匂いを辿って、屋根の上を跳ぶ。
誰にだって、欲しいものがある。
ヒトはメイヨ(有名になるとか、尊敬されるとか)やカネ(物々交換の時の代用品)を欲しがると聞いた。
彼女の場合、それは人間の血液(出来るならメスのがいい)であり、
普通に活動するには困らないだけの体格と身体であった。
この身体の元の持ち主、雛苺は、満たされていた。
メイヨも持っていれば、カネも十分にあった。
彼女は、空虚なマンゾクで、満たされていた。
そんな彼女が求めていたのは、「異常」だった。
雛苺の脳を支配していたのは、「好奇心」だった。
そして、雛苺自身の「好奇心」の所為で、今、彼女はこんな目に遭っている。
「彼女」とは、雛苺であり、雪華綺晶である。
それでもなお、雪華綺晶はこの状況を悲観しない。
雪華綺晶は、笑う。
お互い、ヤキが回ったのね、などと言いながら、笑う。
自らの肉体すら束縛と思った、究極の自由人は笑う。
雛苺がどう思っているのかは、知らないけれど。
「私のステキなカラダはどこにあるのかしら?」
とてもご機嫌な様子で、美しい歌声で歌いながら、
短い雛苺の手足をフルに使って、屋根の上を跳ね回る。
でもその姿は、美しくもなんともなく。
陸に揚げられた魚が、死ぬまいとして、ぴちぴちと跳ねる姿によく似ていた。
そして、そのダンスの最中に不意に感じた「不自由さ」が気になり、彼女は雛苺の手を眺める。
「ちょっと、無理させすぎちゃった?」
雪華綺晶は、雛苺の手をまじまじと見る。
彼女の、小さくて、柔らかくて、温かくて、綺麗な仄かな赤を宿した肌色をしていた手は。
爪は剥がれ落ちて、指は変な方向にねじれ、骨は肉を裂いて外へと突き出していて、肌は青紫色に変色していて。
それでも、吸血鬼特有の強靭な再生能力のお陰で、中途半端に修復され、そのお陰で余計無残な姿になって。
雪華綺晶、彼女自身はほとんどまったく苦痛を感じることもなく。
雛苺の身体を見ることによって、雪華綺晶は、それを始めて、知った。
「もう、この身体も時間切れかぁ・・・
 役に立たない、上に好みにも合わない、がらくた同然の身体だったけれど、それでも名残惜しいものね」
そして雪華綺晶は、雛苺の身体で、感慨深そうにため息を一つつく。
「早く代わりを探さなくっちゃ」
そう言い、雪華綺晶は、ぼろぼろになった雛苺の身体で、駆け出した。
屋根を踏む音と、骨の軋む音だけが、ある一定のリズムで続いていく。
彼女は、彼女たちは、いつになったら、止まれる?



作戦行動開始。
合図がかかった瞬間、黒い羽根が、私の、翠星石の、頭の上を埋め尽くす。
羽根と羽根がこすれ合い、かさかさと音を立てている。
それはあっという間に部屋を埋め尽くし、月明かりがさしていた仄明るい部屋を真っ暗闇に変える。
「ッッッッッッッッッッッ!!」
ヒトにあらざる者が、ヒトとは思えぬ絶叫を上げる。
私が吼える。
羽根の量の増え方は、勢いを増し、ついにはガラス窓やドアをも突き破り、
フロア一帯を羽根の洪水に巻き込む。
ちょっと調子に乗りすぎちゃったかしら。
すこしだけ、めまいがする。
私は数十秒前を思い出す。

「おめぇはまず羽根でこのフロアをいっぱいにしやがれです」
「それで脱出、ね」
「おめぇはアホなんですね」
「な、なんてこと言うのよぉ!」
「もう既に私たちは相手に先手取られてるです。
 だから、どっちかというと、相手の方が私たちの行動を読みやすいのですよ。
 それにここは閉ざされた場所。やれることなんてそんな多くはねーです。
 それならなおさら、行動は読みやすいし、だから、殺しやすい」
私は、ごくりと唾を飲む。かすかに血の味がする。
「だから、私たちは相手の行動のさらに先を読まないとならんのですよ。
 で、本題ですが。もし私たちが煙幕を張ったとすると、相手はどうすると思いますか?」
「どう・・・って。煙幕が邪魔だからどうにかしようと思うわよねぇ。
 もしくは煙幕を気にせずに私たちをどうこうできる何かをババーッと」
「そのとおり、です。バカなばっかりじゃあ、ないみたいですね。
 翠星石が狙撃手だったら、もう一人くらいはこの部屋の出入り口の正面の窓から狙撃準備させてます。
 そこから、逃げようとする翠星石たちを一気にBOMBするでしょう。
 でも、煙幕を張られてしまって、狙いをつけるなんてことはできない。
 でも、よく考えるです。今、翠星石たちは何をしているか。
 何処にいるか、何をするのか、バレたくないから、煙幕を張ろうとしているんです」
そこで翠星石は一息、呼吸を入れる。翠星石のマシンガントークを久しぶりに拝めた気がする。
「一方的に攻撃できるような場合を除いて、普通煙幕なんてのは逃げるときに使うもんです。
 つまり、煙幕を張ってるってことは、逃げようとしている、と言うようなものなのです。
 それは『今攻撃しろ』という合図を敵に送るようなものなのです。
 でも、煙幕は邪魔ですから、これが邪魔にならない攻撃手段を使ってくるはずです。
 ぱっ、と思いつくのでは毒ガスか、ガトリング砲か、ロケット砲でしょう。
 このうち、毒ガスは相手を殺せてるかどうかは確認しづらいですし、
 この辺の屋根のつくりは、重いガトリング砲を担いで使えるほどの強度はねーはずです」
「つまり、あんたが考え得る内では、ロケット砲一択、と?」
「はいです」
翠星石は、私の目をじっ・・・と、見つめる。
・・・私にどうにかしろ、と?
「えーと・・・もしかして、私に何か期待してる?」
「向かいにいる狙撃手はそんな遠くにはいない、むしろけっこう近いところにいるはずです。
 だから、まずおめぇのやることは、一発目は絶対に、どうにかやりすごすことです。
 避けても、つかまえてもいいですから。
 で、壁穴から相手を翼で狙い撃ってください。
 これで多分、狙撃手はどうにかなるでしょうし、白兵戦ならまぁ負けることはないです・・・よね?」
なんだか翠星石が申し訳無さそうな顔で私を見ている・・・。
信用されてないのねぇ・・・。
「腐っても、吸血鬼だからね」
「根性が?」
「いや体力が」
「それじゃ、健闘を祈るですぅ」
そういえば。
「あんたは、その間何やってるのよぉ?」
「え? 翠星石ですか?」
彼女は、不思議そうな顔をしている。
「翠星石はですね」
そう言い、後ろを向き、大きな黒いケースを手元に寄せる。
「こいつで、狙撃し返すです。先に撃ってきた奴を」
彼女は、その小さな手で、黒光りする管を持っていた。
そして翠星石は似たようなものをケースからいくつもするすると取り出す。
彼女はあっ、という間に、ライフルを組み立て上げる。
スコープのレンズには、半月が輝いていた。
「ミッション、スタート!」
翠星石が、叫ぶ。


第十三夜ニ続ク

不定期連載蛇足な補足コーナー「見た目は子供! 目玉は白薔薇! その名も以下略!」

雪「こんばんわ。欲求不満な雪華綺晶です。
  ところでこのタイトルだと、私が目玉親父みたいじゃあないですか」
雛「出番があるのかどうかよくわからない雛苺なのよー。
  そしてきらきー、心配しなくてもいいのよ。鬼太郎では目玉親父が一番の萌えキャラだから」
雪「そう・・・なの?」
雛「少なくとも作者はそう思ってるのよー。あとねきらきー! ちょっとお説教するの!
  あのね、もうちょっとヒナの身体ていねいに使って欲しいの!」
雪「普通だったらそこは『私の身体を使うな』と言うんじゃ?」
雛「やさーしく使ってくれるなら別に構わないのよー」
雪「御厚意には感謝するけれど・・・。やさしく使えとなると、けっこう難しい。
  やさしく使うと普段の貴女と同じ程度のスペックしか出せないから。
  たぶん水○燈以上の低スペックになってしまう。
  貴女も貴女で普段から身体を鍛えていれば、私ももう少し本気を出せるし、
  貴女の身体もあそこまでぼろぼろになることはないのだけれど」
雛「ヒナはうらわかきおとめなのよー。身体を鍛えるなんてことはしないの!」
巴「けれど! 雪華綺晶ちゃんはよくやってくれたわ」
雪「なぜ貴女が出張るの? そしてちゃん付け?」
巴「私がここにいる理由!? それはね、出番が無いからよ!
  桜田君は『雛苺にもしものことがあったら・・・』と言って、私に婚姻届をくれた・・・。
  そして既に雪華綺晶ちゃんのお陰で十分ぼろぼろ・・・『もしものこと』に十分なっている・・・。
  これで桜田君はめでたく私のお婿さんに・・・うふ・・・うふふ・・・うふふふふふふふふ」
雛「笑顔が怖いの」
雪「それに『もしものこと』ってそういう意味では・・・」

金「この会話はまさかこの子たちのメインキャラフラグなのかしら?
  まだ本編に登場してないカナがいるっていうのに? カナの方が古参なのに?」


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