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        Another RozenMaiden 
          第12話 絆  

紅「分かったわ。ではこの場は引いてあげましょう。」
目を閉じ、ゆっくりとした口調で語る真紅。
紅「でも私は諦めない。貴方のアリスが現れるまでは。」
目を開くと真紅は視線を逸らす。どうやら水銀燈を見つめているようだ。
少しして、もう一度僕の目に視線を移す。
真紅が僕を見つめたのは一瞬で、再び目を閉じると何処かへ飛び去っていった。
真紅は先程までと違い、何故かとても優しい目をしている様に見えた。
JUM「水銀燈。怪我は?」
不可解なことは多かったが真紅は居なくなり、もう安全だろう。
そう思い、再度怪我を確認すべく水銀燈に問いかける。
涙目になり、しゃくり上げている水銀燈は上手く答えられないようだ。
代わりに自分で外傷を探し当てる。
JUM「怪我しているじゃないか。」
良く見ると、水銀燈の腕が少し擦り剥けているのが気づく。
泥が薄っすらと傷を覆っている。このままでは化膿してしまうかも知れない。
水銀燈を抱き寄せると、とっさに患部を口に含み唾液で泥を除けてやる。
JUM「他に外傷は無さそうだし、これでもう大丈夫だな。」
僕を見つめたまま、依然言葉を返してこない水銀燈。
まだ、落ち着きを取り戻せないのかも知れない。少し落ち着くまで待つべきだろう。
僕は水銀燈を雨から護る為に覆い被さり、ついでにその髪を撫でてやる。
僅かに水銀燈が抱き返してくる。僕はそのまま髪を撫で続ける。
すると、少し落ち着いてきたのだろうか、
水銀燈のしゃくりあげていた様子が落ち着き始める。
JUM「・・・・帰ろうか。」もう夜も遅い、頃合を見計らって僕は口を開く。
銀「・・・・のまま・・・・。」水銀燈が何か言ったように聞こえたが、雨で良く聞き取れない。


JUM「困った時はお互い様だからな。嫌だろうけど乗れよ。」
僕は立ち上がり水銀燈に背を向ける。
水銀燈の言葉は拒絶のものだろうが、このまま放ってはおけない。
銀「・・・・じゃない・・・・。」けれども水銀燈は動かず、
また何か言うのだが、やはり雨に掻き消されてしまう。
JUM「ごめんな・・・・・嫌だったよな。嫌いな奴に乗せてもらうのなんて。」
動かない水銀燈。また僕は拒絶されてしまった。
僕はせめてもの償いにと、持ってきた傘を水銀燈へ差し出す。
JUM「これ置いていくから、僕はもう帰るな。」
水銀燈が傘に手を伸ばす。これ位なら受け取って貰えるか・・・・。
そう思った矢先、僕の腕が掴まれる感触がする。
水銀燈がその手で掴んだのは傘ではなく僕の腕だった。
JUM「うわっ!?」水銀燈に掴まれた腕は、無造作に引き寄せられ
バランスを崩した僕は水銀燈に折り重なるようにして倒れこんでしまう。
水銀燈が、そのまま僕を抱き寄せる。
以前より、少しやつれた水銀燈の顔が目の前にある。
銀「置いて・・・・・行かないでぇ。傍に居て・・・・・ほしいのぉ。」
水銀燈が、か細い声で懇願する。ようやく水銀燈の声が聞こえた。
JUM「水銀燈・・・・・・・。」僕は身を起こすと水銀燈の肩を抱き、髪を撫でてやる。
銀「JUMぅ・・・・・。もう少し・・・・このままで。」水銀燈もまた、身を寄せてくる。
水銀燈の言葉通り僕は髪を撫で続ける。どの位そうしていたのだろう。
銀「JUMぅ。」水銀燈が口を開いた。触れれば壊れてしまいそうな、か細い声。
JUM「なんだい?」それを壊さない様に、できるだけ優しく問い返す。
銀「私ねぇ。今、JUMを初めて好きになった時のことを思い出したわぁ。」
JUM「それって、いつの話だい?」
僕はその話に興味を惹かれる。一体いつのことなのだろう。


銀「幼稚園の時よぉ。苛められていた私に、ちょうど今みたいに
  JUMが私を抱きしめて、髪を撫でてくれたのよぉ。」
JUM「そんな昔の話だったのか。」言われてみれば、そんなこともあった様な気がする。
銀「でも私は、昨日のことの様に覚えているわぁ。」
水銀燈が僕を見つめる。堪らず、僕は水銀燈を抱き寄せる腕に力を込める。
銀「その時に言ってくれた言葉、覚えてるぅ?」水銀燈が耳元で僕に囁く。
この問いに、今答えなければならない。そう思い、僕は必死に記憶の糸を手繰り寄せる。
記憶の一部に靄が掛かり、どうしてもそこだけ思い出せない。
諦めかけたその時、水銀燈の髪が視界に入る。銀色の髪。常に僕を魅了してきたもの。
雨に濡れても尚それは美しく、僕の心を奪う。
JUM「綺麗な髪だな。」自然と言葉が出た。その瞬間、僕は全てを思い出す。
銀「JUMぅ。覚えていてくれたのねぇ。嬉しいわぁ。」
銀「あの時もそう言ってくれたのよぉ。こんな白髪頭なのにぃ。」
水銀燈が僕を強く抱きしめる。
JUM「白髪じゃないだろ?銀髪じゃないか。本当に綺麗な髪だよ。」
僕もそれに応え、より一層力を込めて抱き、更に髪を撫でてやる。
銀「JUMぅ。大好きよぉ。あの時からずっとJUMを大好きなのぉ。」
僕は水銀燈を身から離し、顔を向け合う。


互いを見詰め合うと、どちらからともなく目を閉じ、唇を重ねあう。
甘い味がする。心が甘く充たされて行くのが分かる。
その甘さで、傷つき欠けた心が埋まってゆくのを感じる。
やがて全てに傷を癒し終わると、どちらともなく唇を離す。
JUM「・・・・・・帰ろうか。」
銀「うん・・・・。」僕は水銀燈の腰に腕を回し、こちらに引き寄せる。
水銀燈の上体が反れ、倒れかかったところを抱きかかえてやる。
銀「JUMぅ。この格好って・・・・。」
JUM「お姫様抱っこってやつだよ。嫌か?」
僕は水銀燈の返事も待たずに歩き出す。少し歩くと水銀燈が僕の胸を叩く。
何度も繰り返すので、僕は水銀燈の様子を窺ってみる。水銀燈の顔は真っ赤だった。
銀「じ、自分で歩けるわよぉ。」目が合うと水銀燈が口を開く。
JUM「このままでいいだろ?」意地悪かもしれないが、
僕は、このまま水銀燈を連れて帰りたい。僕は水銀燈の目をじっと見つめる。
銀「もぅ・・・・・・JUMのいじわるぅ。」すると、観念したらしく水銀燈が大人しくなる。
JUM「水銀燈。体の方は大丈夫か?」会話が可能になったところで改めて問う。


銀「うん。大丈夫よぉ。真紅、全然本気じゃなかったもの。」
アリスゲームの最中に僕は居なかった。水銀燈がそう言うのなら本当だろう。
JUM「そうだったのか。でも水銀燈を傷つけようとした・・・・。」
何であろうと、これは変わらない筈。
銀「それは違うわぁ。真紅は私に勇気をくれに来たのよぉ。」
では、一体何のために真紅は・・・!?
銀「真紅がJUMと引き合わせてくれなければ、私たちはずっとあのままだった。」
JUM「!!」言われてみれば、確かにそうだ。ホーリエが来なければ、今頃・・・・僕は・・・・。
銀「真紅が私に勇気をくれたから、私は素直になれたのよぉ。」
JUM「そうだったのか・・・・。」僕は愕然とする。それが真紅の真意だったなんて・・・・。
JUM「僕は・・・・真紅に酷いことを言ってしまったな。」
真紅の想いを気づけずに、僕は何て酷いことを言ったのだろう。
銀「大丈夫よぉ。明日、二人で謝りに行けばいいのよぉ。
  また仲直りできたって報告もしないとねぇ。」
僕の胸に手を当て、優しく語り掛けてくれる水銀燈。
JUM「ああ。それが僕たちにできることだしな。」
もう一度口付けを交わし、笑顔を向ける水銀燈。僕もそれに応え笑顔を返す。
二人で帰る道、雨はもう降っていなかった。


翌日、午前8時30分。ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴り、マイクを通して外の声が聞こえてくる。
紅「着いたのだわ。早く支度をして・・・・・・。」
玄関前で待機していた僕と水銀燈は、真紅の言葉も待たずに扉を開ける。
JUM「真紅・・・・。」突然開いた扉に驚いた真紅と目が合う。
紅「き、今日は早いのね。JUM。」真紅が視線を逸らし、口を開く。
銀「真紅ぅ。」叫びを上げると、僕の後ろに隠れていた水銀燈が飛び出す。
そのまま真紅の飛びつき抱擁を交わす。
銀「ありがとぉ。私達、貴女のお蔭で元の関係に戻れたわぁ。」
真紅の胸に抱かれながら、思わず泣き出してしまう水銀燈。
紅「水銀燈、泣かないの。これではどちらが姉だか分からないのだわ。」
そんな水銀燈の頭を撫でてやる真紅。僕は真紅にある種の神々しささえ感じてしまう。
銀「そうねぇ。」真紅の言葉に水銀燈が顔を上げる。
水銀燈はゆっくりと真紅から身を離す。
視界が開け、僕と真紅が向かい合う。次は僕の番だ。


JUM「真紅・・・・昨日はすまなかった。」
声が震える。真紅から差す後光に、思うように声がでない。
紅「そんなことは、気にしなくていいのよ。それよりも・・・・。」
静かに、優しく語りかけてくる真紅。
真紅が後ろを向き、一瞬それに応えるように蒼星石が頷いた様に見えた。
真紅はゆっくりとこちらを向き、そして、


紅「二人とも、幸せになりなさい。」


そう言い、僕らに笑みを返す。それは、さながら女神の笑みであるかのようだ。
言葉が出ない僕は、そっと水銀燈を抱き寄せる。
紅「さあ、行きましょう。授業が始まってしまうのだわ。誰が先に着くのか競争よ!」
突如声を上げる真紅。言うや否や、走り出す皆。僕と水銀燈は出遅れてしまう。
JUM「ま、待てよ!」僕は水銀燈の手を引き、駆け出す。
銀「途中でヤクルト休憩しましょうねぇ。」水銀燈も僕の手を握り返してくる。

二人で歩き出す新しい道。もう僕たちは道を踏み外すことはないだろう。
僕らは、お互いの大切さに気づいた。
それだけでなく、僕らを支え見守ってくれる人々がいる。
真紅、本当にありがとう。

Another RozenMaiden 

Fin

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