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『新説JUN王伝説~序章~』第30話

厳に秘められた過去…それを知ったジュンに突きつけられた決断。
それは何かを守るためには非情に徹しなければならないという現実。
そのことを考え眠れぬ夜を過ごしたジュンは翌日もまた煮え切らない表情であった…

ジ「宜しくお願いします…。」
厳「うむ。」
今日もまたいつものように厳との修行に挑むジュン。
だがその拳には昨日のような覇気はなかった…

ジ「ぐぁああっ!」
当然そんな拳が厳に通用することはなく、ジュンはいつもに増して冷たい地面に叩きつけられる

厳「……」
ジ「くっ…まだまだ…」
泥を拭い立ち上がろうとするジュン。
だがそんなジュンを見据えながら厳は静かに言った
厳「やめだ…」
ジ「…え?」
厳「やめだと言ったんだ。そんな腑抜けた気持ちでは、やるだけ時間の無駄だ。」
ジ「そ…そんなことは…!」
厳「ないとでも言うのか?それはお前自身がよくわかっていることだろう。」
ジ「!」

図星であった。あれからずっとジュンの頭にはあの事が絡み付き、拭い去ろうと思えどその思いは迷いとなって知らず知らずのうちに拳に現れていたのである 

ジ「すみません…師範の言う通りです。
頭ではわかっている…でも、その場に立った時僕に本当にそれが出来るのかわからないんです…
僕は……臆病者です…。」
そう言って顔を伏せるジュン。

厳「ジュンよ……
甘ったれるなぁっ!!」
ジ「ぐぁああっ!!」
瞬間、厳の鋭い蹴りがジュンの体を吹き飛ばした

ジ「ぐ…ぁ…」
厳「言った筈だ!一度闘いを決意したのなら非情に徹しろと、そうしなければ無駄な血が流れると!!
それがまだわからんのか!?」
ジ「し…師範…でも、僕は…」
厳「本当に何かを守りたいのなら、それに伴う重荷を背負うことを恐れてどうする!
守るべきもののためならば、例え己の手が罪に汚れようと厭わぬことが本当の強さというものだ!!
自分だけ何も背負わず何かを救おうとなど、詭弁以外なんでもないのだぞ!?」

ジ「守るために…背負うもの…」
厳「その覚悟もなしに何が闘いだ!
その覚悟すら持てぬようなら今すぐここから立ち去れ!!」
そう言い残しジュンに背を向け去ってゆく厳。
一人残されたジュンは地面に伏したままただ無言で俯き続けた…

その夜、自室に戻ったジュンは一歩も外に出ることなく考え続けていた
ジ「僕は…どうしたらいいんだ…」
この修行の日々の中で味わう最大の挫折。
それはジュンが誰よりも優しいためにのしかかる重圧なのである

ジ「例えこの手を汚し誰かを守れたとしても、そんな僕をみんなは…姉ちゃんはどう思うんだろうか?」
出口の自問自答、いくら考えても答えは出ずついにジュンは二日目の眠れぬ夜を明かした。


そして翌日…
厳「その様子だと、まだ迷いを振り切れていないようだな。」
ジ「……」
対峙した厳の言葉に何も言い返せないジュン。
どんな言い訳を紡ぐより、その沈黙こそが問い掛けの答えを雄弁に物語る

厳「お前には見込みがあると思っていたが…
どうやら俺の買い被りだったようだな。
ならば…致し方あるまい。」
静かに目を閉じる厳。だがその直後…

厳「覇ぁあああああああああッ!!」

ーー轟ッ!

静けさを打ち破り厳の体を紅煉の焔が走る。
それは獅子吼焔流の使い手が本気になった証であった

ジ「くっ……師範…何を!?」
両腕で体を守りながらもその膨大な熱量はジリジリとジュンの肌を焼くように突き刺さる。
凄まじい闘気をその身に纏いながら厳はジュンに向かいゆっくりと構えを取り言った
厳「そのような甘い思慮の者をこれ以上闘わせる訳にはいかん…
せめてもの情けだ、お前がSODOMの者に殺される前に師である俺の手で葬ってやろう!!」
ジ「なっ…!?」
ジュンはその言葉に驚愕する

厳「ゆくぞ、てぇああああああああああッ!!」ドンッ!
ジ「!?」
直後、如き勢いで厳が一瞬でジュンの眼前まで間合いを詰めた
ジ「くっ!」
とっさに両腕を交差しガードを固めるジュンであったが…

厳「覇ぁあああっ!!」
ジ「ぐぅうっ…うわああああああああッ!!」
厳の拳は防御した腕ごとジュンの体を大きく殴り飛ばした

ジ「ぐあぁっ!」
受け身も取れぬ程の衝撃に地面に叩きつけられるジュン。

だが苦痛に歪む顔を上げたその眼前からは大地を深々と切り裂きながら見えない力が猛然と迫っていた

ジ「…っ!!」
ジュンはとっさの判断で素早く前へと飛ぶ。
ーー直後、その力はつい今までジュンがいた場所に断層を作り、ついには後方にあった大木を真っ二つに切り裂いた

ジ「あ…ぁ…」
大きく引き裂かれた地面と鈍い音を立てながら左右に倒れる大木を見ながらジュンは体からサァッと血の気が引いてゆくのを感じた。
ジュンにはわかっていた。
今の一撃は当たれば確実に命を落としていたことを…
そして厳は何の躊躇いもなくそれを自分へと向け放ったということを…

厳「本気で来なければ、死ぬことになるぞ…?」
ジ「師範…本気……なんですか?」
荒ぶる獣のような表情をたたえ冷酷な言葉を浴びせる厳にジュンは問う

厳「言った筈だ…俺はお前を葬ると。
死にたくなければ…この俺を殺すことだな!!」
ジ「!?」

厳の口からはっきりと放たれた明確な答え…
それはジュンにとってあまりにも非情な選択であった

厳「無駄口はここまでだ…ゆくぞ。」
ジ「くっ…」

ジュンは未だその現実を信じたくなかった。
しかし先程の自分へ向けた拳撃は厳の言葉が偽りないものだということを何よりもはっきりと物語っている。
しかし、だからといってこの場でみすみす殺されるわけにはいかない。
ジュンは焦りや戸惑い…いくつもの感情を抱えたまま静かに構えを取った。


続く…。

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