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とある高校のクラスに一人の女の子がいました。
その子は何処にでもいるドジっ子でそれでも一生懸命頑張っていました。
その頑張りが周囲に認められたのか生徒会の会計に見事当選、それもこれも友人の支えのおかげだ。
彼女の名前は金糸雀、友人の名前は雛苺…これはとある友情物語である。


2年生の2学期のある日、一大イベントの準備で生徒会は忙しかった。
そう、一年に一度の文化祭と体育祭が近いのである。
更に2年生には修学旅行も控えていた、イベントが多いのは嬉しいのだが生徒会としては多忙この上ない。
会計である金糸雀はそのため重要なポストに就いたことになる。

 「じゃあ金糸雀君、文化祭と体育祭の軍資金は君に任せるからね。」
 金「わ、わかったかしら…学園一の頭脳派、金糸雀がちゃ~んと保管しとくかしらぁ…」

余りの大役に金糸雀も少し怖気づいていた。微かに震える手で持っている鞄の中に厚みのある封筒を入れた。
それを察してか生徒会長のトウヤは…

 トウヤ「ああ、そんなに固まらなくても大丈夫だって。
     周りは君のことを頼りないと思ってるみたいだけど俺は君には期待してるからな。」

金糸雀に向かって微笑みかけて言う。
トウヤは人望もあり責任感も強く生徒会長ながら模範生も兼ねている絵に描いた優等生だった。
そのため女子たちの人気はとても高くアイドル的存在であった。
それは金糸雀にも例外ではなく片思いというよりも強烈な憧れにも似た恋心を抱いていた。
憧れの彼が今自分の為に、自分の目の前で微笑みかけてくれている。
金糸雀はそう考えただけで顔が赤くなった。
同時に自分を信頼している彼の為にも無事にこの費用をきちんと職員室に届けないとならない責任感が働く。
気がつけばトウヤが自分の両肩に両手を置いていた。


 金「あ、あの…トウヤ先輩…ッ!?(///)」
 トウヤ「あのさ…もし、よかったら俺と付き合わないか?」

金糸雀の綺麗な翡翠の目を見て真面目な表情でトウヤは問いかける。
今…言ったことは嘘じゃない?これは夢じゃない?
憧れの人に夢にまで見た台詞を言われ金糸雀の気持は完全に高揚しきっていた。
力強く金糸雀は頷く、すると間もなくトウヤの唇が金糸雀の唇に重なった。
何時の間にか腕は金糸雀の小さな体を包み込み強く、ただ強く彼女を抱きしめた。
初めての男の腕の中で金糸雀の胸は躍りもはや完全に周りが見えなくなっていた。
このまま時間が止まってしまえばいいとさえ思える熱い抱擁と接吻…。
けれども二人は其処で離れる。

 トウヤ「突然ごめんな、けれど…受け入れてくれて嬉しいよ。」
 金「あ、あの…それじゃあカナはこれで…」

何かいけないことをしたような背徳感が沸いたがそれすらも金糸雀には燃える障害でしかなかった。
顔を真っ赤にしながら生徒会室の扉の向こうへ行く途中に振り返るとトウヤはまた微笑んでいた。
それがただ嬉しくて金糸雀もはにかんだ微笑を返して職員室へ続く廊下を歩いて行く。
先ほどの大役への怖じる気持はなくなり酷く体が軽くなった気がした。


そして職員室…生徒会顧問の先生のところへ封筒を渡しに金糸雀はやって来た。
放課後ということもあり職員の数もまばらで夕日が職員室内を赤く照らした。

 先生「ご苦労さん、じゃあ封筒は預かっておくよ。」
 金「了解かしら。」

持っている鞄の中を探る、ちゃんと中に入れたのですぐに見つかる筈『だった』。
しかし中にはその封筒は無かった、金糸雀の顔が見る見るうちに青ざめて行く。
どうして?なんで無いの!?
焦って鞄の中を全てひっくり返しても其処には筆箱と教科書とお菓子ぐらいしか出て来なかった。
思わずその場に座り込んでしまう。

 先生「お、おい、どうしたんだ?大丈夫か?」

顧問が声をかけるが金糸雀にはもう聞こえていなかった。
金糸雀の頭の中には資金を無くした罪悪感ではなく期待してくれていたトウヤへの罪悪感でいっぱいだった。
その後も顧問と一緒に封筒を探したのだが結局見つかることもなく一先ず家に帰された。
眠れない夜を金糸雀は独り、罪悪感と喪失感に呑み込まれ身が磨り潰される思いだった。


翌日、学校ではもうあのことが噂になっていた。
普段から仲の良かったクラスメイトからは挨拶されても無視されて冷たい眼で見られる。
ただ、一人だけを除いて…

 雛苺「カーナーリーアー!一緒にご飯食べよ!」
 金「雛苺…う、うん。」

雛苺は精神的に辛い金糸雀のことを察してか察してないのかは定かではないがいつもと変わらず彼女と接している。
更に後から真紅とジュン、翠星石と蒼星石もやって来てくれた。金糸雀はそれが嬉しくもあり少し辛かった。
放課後になってから金糸雀は校長室に呼ばれた、ノックをして入ってよいと言われてから部屋に入る。
部屋の中はとても重苦しい空気に満ち満ちて其処には校長だけではなくトウヤの姿まであった。
校長に促され机の目の前に金糸雀は立たされた、まるで死刑判決を食らう裁判に出ている気分だった。
やがて重い沈黙の糸を校長が裁ち切る。

 校長「金糸雀君、残念だよ。まさか君が文化祭と体育祭の費用を盗むだなんて…」
 金「そ、そんな!?カナは盗んでなんてないかしら!?」
 校長「しかし、トウヤ君の証言では君はきちんと封筒を受け取ったそうじゃないか。
    それなのに職員室に行ったらなくなるなんて…普通に考えればわかってしまうことだぞ?
    正直に今ここで告白してくれたら私とて鬼ではないから酌量の余地はあるが?」

校長の鋭く痛い視線が金糸雀に向けられる。
助け舟を求めてトウヤの方を金糸雀は見るが目を合わせようともしない。

 金「ち、違う…カナは…そんな…こと…」
 校長「なら君以外に誰が封筒を盗むと言うんだ!?これは立派な犯罪だぞ!?」

机を叩いて威嚇するように怒鳴りつける。
それでもやってないことはやってない、金糸雀は無意味と悟りつつも抵抗する。

 金「カナはそんなことしない!!」

金糸雀の必死の抵抗に校長は完全に頭に血が上っていた。

 校長「そうか…ならばこっちにも考えがある…。お前はもう退学だ!!」

ある意味で死刑宣告を受けたようなものだった。
昨日と同じように金糸雀は力もなく座り込んで泣き崩れてしまう。
その時、トウヤが校長室に来てから開かなかった口を開いた。

 トウヤ「校長、それは流石に行き過ぎです。
     彼女もこうして十分反省してるじゃないですか。」

金糸雀はまだ希望があると思いトウヤを見つめる。
トウヤは昨日と同じように金糸雀に微笑みかけた、そしてー…

 トウヤ「無期限の停学処分にしてはどうですか?その方が双方にとってよいかと思いますが…」

彼の一言に掴んだワラは希望ではなく絶望へと変貌する。
まるで谷底に突き落とされたような感覚が金糸雀を襲う。
結局トウヤの言った通り、金糸雀は無期限の停学処分に処された。
このことは電話で両親に知らされ金糸雀はもう帰るべき場所を失ってしまった。
いや、まだ可能性はある…トウヤの誤解を解けばきっと…っ

 金「トウヤ先輩!お願い、話を聞いて欲しいかしら!?」

校長室から出て先を歩くトウヤに追いつくため金糸雀は小走りになる。
彼の眼は何か汚らしいものを見るような目になっていた。

 トウヤ「君には幻滅したよ…今度の文化祭と体育祭をどれだけの人が楽しみにしてるか君はわかってるのか?
     本当だったら俺も校長と同じで退学にしてやりたかったけど…停学になっただけでも有難いと思ってくれよ。」

冷たくそう言い放って憧れだった人は行ってしまった。
もう駄目だ…トウヤ先輩にまで見捨てられてしまった、もう学校にも来れない、皆にも会えない…。
そう考えただけで悲しみで胸が苦しくなった。
何と無く金糸雀の足は屋上へ向かっていた。扉を開けると昨日と同じ赤い空が眼前に広がっていた。
風が吹き荒びまるでどこかへ吹き飛ばされるような錯覚に陥る、金糸雀はこの風になりたかった。

 金(もう…この世から消えてしまいたい。)

フェンスに手を足を引っ掛けようとしたその時…


 銀「貴方何してるの?」

振り返ると其処に3年生の不良生徒、水銀燈がいた。
そう言えば屋上は彼女のテリトリーだったっけと金糸雀はぼんやりと思い出しながら再びフェンスに向かう。
ただならぬ彼女の雰囲気に水銀燈も何かあったのだと悟った。

 銀「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!どうするつもりなの!?」
 金「決まってるかしら!カナは風になるの!」

水銀燈の静止も聞かずに金糸雀はフェンスを登ろうとする。
だが水銀燈が金糸雀の背中を掴んでフェンスから引き剥がして飛び降りを阻止した。

 金「止めないで欲しいかしら!もう…カナには帰る場所なんて…」
 銀「あのねぇ…自殺とかするのは勝手だけどせめて人がいないときにして欲しいわ!」
 金「貴方にはカナを止める理由なんてないでしょう!?」

次の瞬間、金糸雀の左頬に一瞬の痛みが走った。水銀燈が金糸雀の頬に鋭いビンタをしたのだ。

 銀「当たり前でしょう!?人を助けるのに理由なんていらないじゃない!!」
 金「す、水銀燈………」
 銀「ねぇ、なんでこんなこと考えたの?ひょっとして噂の所為で誰かに虐められたの?」
 金「それが………」

金糸雀は水銀燈に昨日の事件から先ほどの校長室から出た後のトウヤのことまで話した。
その話を聞いて水銀燈は難しい顔をしている。
金糸雀は一通り説明を終えたら水銀燈の目の前でずっと泣きじゃくっていた。


 銀(あの生徒会長がねぇ………金糸雀を此処まで追い詰めるなんて…)

普段が何事にもめげずに頑張る明るい子なだけにそのギャップは激しい。
ひょっとしたら普段の鬱憤も溜まっていたのかもしれないがそれにしては酷すぎる。
水銀燈は生徒会長であるトウヤに怒りを覚えていた。

 銀「取り合えず…真紅達に話してみましょう、きっと力になってくれるわ。」
 金「ひ、雛苺には…雛苺には言っちゃダメかしら!!」

真紅の名前を聞いて金糸雀は泣き止んで突然そう言った。

 銀「どうして?雛苺は貴方の一番の友達なのに…」
 金「だって…カナが居なくなるのがわかったら雛苺が悲しんじゃうから…」
 銀「………どっちにしろ何時かはバレるのよ?」
 金「それでも…雛苺にはカナみたく泣いて欲しくないから…」

金糸雀本人がそう言うのだから水銀燈はその通りにあえて雛苺には何も言わなかった。


翌日、学校では金糸雀の噂で持ちきりだった。
遂にフォローのしようのないドジを踏んだとか
だから生徒会計にしなければ良かったんだとか
何も知らない一般生徒は好きなだけ言い放題だった。
その誹謗中傷を聞いているだけで真紅達のフラストレーションは溜まる一方だった。
言い返そうにも普通に考えて金糸雀以外に封筒を盗める人はいない。
なので今は何もすることが出来なかった。

 翠「悔しいですぅ…金糸雀は絶対そんなことしてないのに…」
 蒼「うん、仮に金糸雀が本当に盗んでいたらボロを出すはずだ。
   それか極度に緊張状態になってしまうか…。」
 真紅「何にしろ情報不足ね、私達が何を言っても想像の域を越えることはないのだわ。」
 J「そうだよな…せめて生徒会長が金糸雀に封筒を渡した瞬間を目撃した人がいたら…」
 雛苺「ねぇねぇ、みんな何の話してるのー?」

雛苺に内緒で四人で集まっているところを偶然にも発見されてしまう。
四人は急いで話題を変えた、やがて雛苺から話題を出した。

 雛苺「それよりも皆酷いのよ、金糸雀がお金盗んだって言ってて…」
 真紅「雛苺…」
 雛苺「金糸雀は…いい子なのよ、いっつも失敗してばっかりなのに前向きに頑張って…
    前向きに頑張れる人ってそんなズルイことする必要がないのに…」

何時しか雛苺は泣いてしまっていた。
それをあやすように真紅は雛苺の頭を撫でる。
もう、雛苺に金糸雀のことを隠すことは出来ない…改めて雛苺に金糸雀のことを話した。


やがて放課後、生徒会室に会長であるトウヤが残っていた。
文化祭の出し物のプリントを整理している途中、誰かが生徒会室に忍び寄る。

 トウヤ「誰だ?」
 銀「わ・た・し♪」

何時の間にか水銀燈がトウヤの隣の机に腰掛けていた。
トウヤはそれに動じずにプリントの整理を続ける。

 トウヤ「学園一の不良が僕に何の用だい?告げ口とかはした覚えはないけど?」
 銀「そうねぇ、私と貴方は真反対な立場よねぇ…」
 トウヤ「何が言いたい?」
 銀「ふふ、惚けるのが上手いのね?」

終始プリントにばかり眼を通してるトウヤの顎を手で掴んで自分の近くまで持って来る。
行き成りの出来事に流石の相手も驚いていた。

 銀「ねぇ、貴方最近お金遣い荒いんですってねぇ?」
 トウヤ「………なんでそれを…」
 銀「あらら、カマかけたのに…自白してくれて有難うねぇ。」
 トウヤ「な………」
 銀「あはは、悪いことするにはもう少しおつむが必要なのよぉ?」

相手から顔を離しそれだけを言い捨てて生徒会室を後にしようとする。

 トウヤ「それは…脅しなのか?」
 銀「不良の先輩からの忠告よぉ。」

難無くそう言って水銀燈はその場を後にした。
持っていたプリントをワナワナと握り締めトウヤは水銀燈が行った方向を睨んでいた。


翌日、休みの日なので真紅達は真紅の屋敷に集まって金糸雀のことを話し合っていた。其処に水銀燈からのメールが入る。

 真紅「……生徒会長のトウヤが怪しい…?今、お友達二人と一緒に遊びに出てるから尾行すると面白いことがわかるかも?」
 J「生徒会長のトウヤ…金糸雀の話だとトウヤと二人っきりの時があったって言ってたよな?」
 蒼「そ、そうか…二人っきりの時に封筒を気付かれずに取ったならアリバイもない。」
 翠「模範生であるトウヤを疑う教師も生徒もそうそういない筈ですし…それなら辻つまが合うです!」
 雛苺「トウヤ…許さないのー!!」

五人は水銀燈に言われた場所に向かう。
其処は何か危なげなAVとかが売っている場所だった。
流石にジュンを覗く四人は入りにくそうにしていた。

 真紅「げ、下品な…なんでこんなところに来るの!?」
 翠「男はお金さえ入ればあ、あんなのばっか買いやがるんですか!?」

途中二人は文句を垂れるが仕方なく入る。
店の中は眼のやり場に困るものばかりでろくにトウヤを探すこともままならない。
取り合えずレジに張り込んでいれば来るかもしれないと思ってジュンと雛苺だけが残った。
案の定トウヤはAVを持ってレジに現れた、そして何と例の封筒を取り出してその中からお金を出してビデオを買っていた。


 J(あ、あの野郎…本当に学校の金使ってあんなもん買ったのかよ…)
 雛苺(ばっちり携帯のムービーに録画しといたのよ!)

結局そのムービーが何とか決め手となってトウヤが学校を退学処分になった。
あの時、金糸雀に嘘の告白をして彼女に抱きついたときに鞄から封筒をくすねたらしい。
そしてそのお金は殆ど使ってしまい足りない部分は彼の親が負担することになってしまう。
水銀燈の調べによるとどうやら裏では色んな汚いことをやって来ていたらしい。
そのことまで世間にバレてしまいもはや彼の人生に安らぎの時はないだろう。
そして、金糸雀の停学が解かれた…。

 雛苺「カーナーリーアー!!」
 金糸雀「雛苺!!ありがとう…本当にありがとうかしらぁ!!」

金糸雀と雛苺は泣きながら抱き合って再び戻った日常を喜び合った。
そんな二人の様子を見て真紅達は微笑ましく思った。

ねぇ、金糸雀。金糸雀はいつも失敗してばっかりだけどヒナは知ってるよ。
失敗を気にしてない風に見えて本当は金糸雀はそれを忘れない。
失敗しても前向きに考えて頑張ってる金糸雀はヒナにとっては誰よりもカッコイイと思えるから…
だから金糸雀、笑って、ヒナにも勇気を頂戴ね?
ヒナも金糸雀の笑顔を守ってあげるから…。

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