とある街の賑やかなメインストリート、その片隅に実に古ぼけたお店がありました。
お店の名前は『薔薇華園』
第2話【呼ばれてないけどこんにちは】前編
それは、このお店の代理店主をやり始めて1週間位の頃。
一通りの要領を掴んで、気が緩んでいたかな…
その日、僕は奥の倉庫を整理していた。
ろくに掃除もしてなかったらしく半日がかりで片付けていた時に、ソレらを見つけてしまったんだ。
「まったく…掃除位ちゃんとしとけよ…商品の扱いじゃないよな。」
崩れ落ちそうな商品の山と戦いながら、倉庫の歴史を過去へ過去へと遡っている時。
一番奥の隅に金庫のようなものがあるのが見えた。
近づいてみると重厚感漂う立派な金庫だ。
商品…ではないな。
そうなると俄然好奇心が湧いてくる。
こういうのを『魔が差した』っていうんだろうな。
…もっともそんな言葉を思い出したのは後になってなんだけど。
奥から引っ張り出してくると、早速鍵を開けることにした。
…さっぱりわかんないな。
ダイヤル式なんだからどこかに解錠番号貼っておけよ、なんて思った時。
ガチリ
開いたよ。
適当ってのもバカに出来ないな。
僕はちょっとワクワクしながら金庫の扉をゆっくり開いた。
結論から言うと期待外れは否めなかった。
入っていたのは
羽をモチーフにした黒のペンダント
ヴァイオリンとケース
凝った装飾がされた如雨露と鋏
紅い薔薇飾りの指輪
ピンク色の大きなリボン
白い薔薇飾りのイヤリング
紫水晶の髪留め
だった。
値打ち物なのかもしれないけど、わざわざ金庫にしまっておく程価値があるものには見えないよな…
僕はため息をつくとソレらをカウンターの上に置き、金庫を倉庫に引っ張っていった。
気力も削がれた僕は面倒くさくなってソレらをそのままにして、帰る事にしたんだ。
…うん、もし片付けていたら出会う事はなかったと思う。
そして翌日『彼女達』が現れたんだ…
つづく