『ねぇ、…しようよ!』
私は彼の『お姉ちゃん』。
何故かって?―今はお芝居の練習中だから。
姉妹は彼の同級生や幼馴染の役の取り合い。
構わないけど…―どうしてか、少し悔しい。
姉は彼の同級生―そんなに年下扱いが嫌?
妹は彼の幼馴染―傍にいたいのね、可愛いな。
君は私の弟―普段とあんまり変わらない…そう言ったら、君は怒っちゃうかな。
でも、少し違うから。
今日の私はお姉ちゃん―いっぱい甘えていいからね?
君も普段と少し違う?
つんつんな態度、柔らかくなってるよ。
その態度、他の娘には見せないで。
甘えられるのは『お姉ちゃん』の特権だから!
下から見上げられ、鼓動が速くなる。
「姉ちゃん、えと…ありがとう」―その言葉は演技だよね?
何時もの君はもっと不器用だもの。
わかっているのに、胸の疼きが止まらない。
…ウソ?ホント?
うぅん、もうどちらでも構わない。
君への「思い」を「想い」と認識できたから。
君は不器用で無作法な、幼い少年。
いつも私や姉妹を振り回す―振り回してもいるけどさ。
だけども。
貴方は優しくて暖かい、大切な男性(ひと)。
だから皆が惹かれる―どうやら、私も例外じゃない様だ。
お芝居だからか、我が愛しの姉妹はいつもより大胆に迫っている様で。
でも、油断大敵―君が注意するべき相手は此処にいるんだよ。
背中に呼びかけ、そのままぎゅうっと抱きしめてあげる。
これまでは『弟』だった君を―今からは『男の子』な貴方を、ね!
――――――――
「なななななな、何をしているのよ!?」
顔を名前通り朱くして叫ぶ妹。
何をしている、も抱きついているだけなんだけど。
『お姉ちゃん』なんだから、是くらいOKでしょ?
「はははははは、早く離れやがれですぅ!」
姉は視線を此方に向けて、言葉は君に…と。
どうやら錯乱しているのは姉妹だけじゃないみたいだね。
あたふたと慌てている君も可愛いよ。
―もっとぎゅっとしちゃえ。
「……スキンシップも大概にするのだわ…!!」
「……まっとうな道に戻してやるですぅ…!!」
おやおや。
まだ混乱している君に、『幼馴染』と『同級生』は容赦ないみたいだよ。
でも、安心してね―ジュン君。
「ふふ、君のお友達は怖い娘ばっかりなんだね。
しっかりとしっとりと、ボクが―『お姉ちゃん』が、守り続けてあげるね♪」