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「ああなるほど。そういうこと。じゃ、わたしから話してあげるわ。
実はその2週間ぐらい前になんていったかなぁ、白黒に染め分けた頭をした、法外のお金をふんだくるお医者さんに手術してもらったのよ。
その年になるまで受けたくてもうけれなかったから、3年ぐらい余分に入院してたかしら。
代金は私が調合した成長抑制剤でってことになってね。あ、言い忘れてたけど私薬剤師目指してるんだ。
医者になってもいいけど、やっぱり医療ミスとか怖いし、女医はコスプレだけでいいしね。
それでやっぱり手術後は絶対安静でしょ。一週間面会謝絶で、そのあと三日ぐらいへばって返事もおぼつかないような状態だったのよ。
まあその後の四日は退院とまでは行かないけどキャスターっていうのかな?につかまって歩き回れるぐらいには。
でも、水銀燈に心配されるのもなかなかいいもんだったんで、まだ衰弱してる振りをしてたのよ。
で、その日私はアルプスの少女ハイジのクララみたいに水銀燈にいきなり元気になって見せて感動を与えてあげようと思ったわけよ。
そーすると、真紅が予想外の展開に走って。まあ、その後水銀燈に会った時のきまずさったらなかったわね。
そのときの水銀燈は喜びのあまり吐くまで泣き続けて、最後は鎮静剤打ってもらってたもんね。
あのときの水銀燈はかわいかったわね。私にすがりながらめぐめぐぅって連呼して。
で、私はその後数ヶ月たって退院して、今現在通う高校に近いからここに居候させてもらってるわけ。
わかった?」
「ちょっとぉ、ところどころ余計なことが入ってたわよぉ」
「えー、はい。わかりました。で、その後真紅はどうなったんですか?」
「真紅はその後私が生きてることがわかったとたん、じわじわ水銀燈の悪いうわさを流して孤立させた後、徹底的に苛め抜いたらしいわね。」
「ええ。卒業するころには私と真紅が仲良かったことなんて誰一人覚えてないくらい。
もっとも、ただやられていただけじゃなくてもちろん私もやり返したけど。」

やっぱりこの人は強い。僕とは比べ物にならないぐらい。
そして、僕とは違って輝きいている。華があるとでもいうんだろうか。
なんだか、僕と比べること自体おこがましい。
真似したくても出来そうにない。
「あなたに、一つアドバイスをあげるわぁ。」
「え、なんですか?」
「あなたは普段死ぬことを考えてる?」
「いえ、考えてません。」
「でも、いくら必死にがんばっていい大学に入ろうと、世界的な発見をしようと、絶対にいつかは死ぬのよ?
なら、常に考えていずにはいられないはずじゃないの?」
「それは……」
「そう。無意識のうちに忘れようとしているから普段『死』を身近に感じないの。
それと一緒よ。必ずいつか裏切られるものと思って付き合うから『友達』と思えないのよ。
生きていると実感したければ、いつかは死ぬなんて考えていてはいけないの。
友達と思いたければ、いつか裏切られるかもなんてことは、忘れてしまいなさい。
むずかしいでしょうけどねぇ。」
「………はい。」
確かに、そのことについて意識していてはいけない。
裏切られるなんて考えたりしたらいけないことも。
けれど、やっぱり…
「怖いのよねぇ。人を信じて打ち明けた後、なにもかも否定されてしまうのが。」
そのとうり。何でこの人は人の心が読めるんだろう?
なにか、出来ないことはあるんだろうか?

「でも、あなた今私に打ち明けたってことは、私を信じていなかったってことよね。
それは一向に構わないわ。
でもね、蒼星石。
これだけは覚えておいて。
人は、自分が嫌っているものにだんだん似てくるものなのよ。
自分が好きなものではなく、嫌いなものによ。
必ずね。遅かれ早かれ、人はそのことに気づいて自己嫌悪に陥るものなのよ。
あなた、裏切られるのが嫌いみたいね。
でも、今あなた自身がいままで『友人』だと『信頼』してきた人たちを裏切っているようなものよ。
まぁ、真紅のことを包み隠さず打ち明けるのが必ずしも正しいとは言わないわ。
けれど、話さないのと話せないのはまた別物。
人は、自分が嫌っているものに似てくるものなのよ。
それが物であれ、性格であれ、特徴であれ、顔であれね。
これだけはよく覚えておいて。」
何を言っているんだろう。もちろん、話の内容が理解できないわけじゃない。
けれど、『理解』したくないんだ。
裏切られるのが怖くて、僕が先に『裏切って』いた?
そんなことがあるはずがない。
けれど、翠星石や雛苺の信頼を先に断ったのは僕だ。
『理解』しなければいけないんだろう。

今なら、きっとまだ間に合う。
今から、二人に会いに行こう。
「…ありがとう。水銀燈、めぐさん。今から、僕がしらずしらず『裏切って』いた、『友達』に会ってくるよ。」
「じゃあね」
「また遊びに来てね、蒼星石ちゃん。水銀燈も友達いないみたいだしさ。」
「はい。また、遊びに来させてもらいたいです。」
「……いつでもいらっしゃいねぇ」
バタン。
まだ、何も変わっていない。
けれど、扉の音はとても軽やかに、星空の迫り来る、夕焼け空に響き渡った。

「ねぇ、水銀燈。」
「なに?めぐ。」
「嫌いなものに似てくるって、ひょっとして昔の自分?」
「…そうよ。中学のときの私は、真紅を嫌悪していながら真紅そのものだったわねぇ」
「今は私そっくりのいい子だけどね。」
「よくいうわよ。…でも、ありがとう、めぐ。そういってもらえると、とってもうれしいわぁ。」
「ふふっ。どういたしまして。」

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