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「家の両親、海外行くって。僕と姉ちゃん置いて。」
「……そうなんだ。」
「勝手だよな。」
「……そうだね。」
「これからは僕と姉ちゃん二人だけか……。」
「寂しくない?」
「良く分かんない。今一実感が沸かないや。」
「ねえ、JUN君。もし寂しいなら……。」

それは昔の話
私も彼も幼かった頃の思い出……

今日に限って幾ら集中しようとしても上手く出来ない
練習に集中してるつもりがいつの間にか彼の事を考えてる
これではいけないと思い部活が終わった後、一人で残って練習してみたけど、やっぱり彼の事が頭に浮かんだ
これではいけない……
「あらぁ、まだ残ってたのぉ?」
精神集中の為に座して黙祷をしていると誰かが後ろから声をかけて来た
振り返り答える
「貴女こそ、まだ残ってたんだ。水銀燈。」
「あらぁ、悪い?」
「別に。サボり魔の貴女にしては珍しいと思っただけ。」
水銀燈は私と同じ剣道部に所属しているが良く練習をサボっている
「あらぁ、そんなにサボってないわよぉ。昨日も来てたし。」
「でもその前は来てなかったでしょ?」
「あら、そうだっけぇ?」
因みにその前も来てなかったはず
でも彼女のサボり癖は入部当初からの事で最早どの部員も何も言わない
「……それで何か用?」
「あら、冷たいわねぇ。珍しく貴女が残って練習してたから、折角声を掛けたのに。」
多分彼女は暇なのだろう。だから話し相手にと私に声を掛けたのだ
私も煮詰まっていたので丁度気分転換には丁度良いかもしれない
「でも本当に珍しいわねぇ。貴女が残って練習なんてぇ。」
「何となくよ。」
「なんとなくねぇ。」
何か言いたげな言い方で水銀燈は言った
「そんなに変?私が残って練習するの。」
「変ね。」
断言された
「皆言ってたわよぉ。」
「巴が残って練習するなんておかしい。」
「普段は練習が終わったら真っ先に帰るのに。」
「大会前でも残らないのに何でだ?」
「巴先輩が残って練習なんて明日は槍が降る。」
「ってねぇ。」
「……。」
「何かあったのぉ?」
「別にこれと言って……。」
「貴女、嘘がへたねぇ。」
「……何でそう思うの?」
「そうねぇ。女の勘って言いたいけど状況から見て何も無い訳無いでしょ。」
「……。」
思わず黙ってしまった
確かに何も無いとは言えない……
「まあ、いいわぁ。ここじゃちょっと何だしぃ。場所変えましょぉ。」
そう言って水銀燈が私の腕をとって歩き出した
「え?どこ行くの?」
「そうねぇ。とりあえず制服に着替えてどこかでお茶でもしましょぉ。"今日”は用事無いんでしょ?」


若干強引な水銀燈に連れられて喫茶店に入る
「……いらっしゃい。」
「こんにちはぁ、マスター。私何時ものお願いねぇ。巴も同じ物で良いわよねぇ?」
強引だがここは任せておく事にした
「彼女と同じ物でお願いします。」
「……はい。」
静かで落ち着いた店みたい
知らない曲が流れてる
音楽はあまり聴かないから詳しくは分からないけど多分ジャズ
「良く来るの?」
「そうねぇ。皆で遊ぶ時は来ないわねぇ。一人か真紅と二人で来る事はあるわねぇ。」
「へー。」
「意外?私と真紅が二人でお茶なんてぇ。」
確かに水銀燈と真紅はよく言い争ってるから意外と言えば意外かもしれない
「まあねぇ。あの子とはよく言い争ってるものねぇ。」
私の言わんとした事が分かったらしく水銀燈は私が口を開く前に答えた
「でもあの子とは長い付き合いだからぁ。」
何でも真紅とは生まれた時からの付き合いらしい
私と桜田君みたい……
「それにあの子、紅茶の趣味は良いのよぉ。この店もあの子に教えて貰ったのよぉ。」
「お待たせしました。」
目の前に紅茶が出された
「ありがとぉ。」
「……ごゆっくり。」
葉っぱの種類は分からないけど良い香り
「セイロンよぉ。」
又しても私が口を開く前に答えを出された
水銀燈は他人の思考を読むのが上手い
試合でも相手の動きを読み、尚且つ相手が動く前に打つ先手必勝タイプだ
「さて、本題に入りましょうか。」
水銀燈は佇まいを正すとこちらを見て言った
「何があったのぉ?」
「……何も無いわ。」
「嘘おっしゃぁい。」
ピシャリと切り捨てられた
「さっきも言ったけどぉ、誰よりも早く帰る貴女が遅くまで残ってるなんてそう無いことよぉ。」
「私もたまには残って練習ぐらい……。」
「部の皆、満場一致で初めてだ。って言ってたわよぉ。」
確かに普段は家事があるのですぐ帰っている
「それに貴女、昨日も今日も上の空だったじゃなぁい。」
それは……その通りだと思う
「部の皆も言ってるわよ。「巴には良い人がいるんだ、きっと。
だから真っ直ぐ帰ってるんだ。」ってねぇ。」
「そんなんじゃ……。」
私と彼は…
「まあ、皆相手が誰かは分からないみたいだけど。」
私と桜田君は……
「相手ってJUNでしょぉ?」
紅茶を一口飲む
「何でそう思うの?」
多分顔には出てない
声も震えてない
何時もと変わらないはず
……でも
「やっぱりね。」
何故か彼女には分かってしまうらしい
「……なんで分かったの?」
「あら、やっぱりJUNだったのねぇ。貴女の良い人わぁ。」
しまった!やられた!
「ふふふ、上手い具合に引っ掛かってくれたわねぇ。お馬鹿さぁん。」
「卑怯ね。貴女。」
「そうかもね。」
「でもこれと言って話す事なんてけど?」
「なら何で今日はあんなに上の空だったのかしらぁ?」
「それは……。」
「まあ大方、翠星石辺りがチョッカイ出したってところでしょ?」
「そこまで分かるの?」
「だって誰が見ても丸分かりじゃない。翠星石がJUNの事、好きなのわぁ。」
……私はこの前まで知らなかった
翠星石が桜田君の事を好きだなんて
彼女が桜田君にお弁当を作って来るまで……
「まあ、貴女ぐらいでしょうね。翠星石の事に気が付かないなんてぇ。あ、後JUNも気付いて無いわねぇ。」
「貴女、普段からJUNに付きっ切りだから逆に気が付かなかったのねぇ。」
「あ、安心しなさい。貴女とJUNの関係に気付いてるのは私と翠星石ぐらい。」
…私は
「でぇ?どこまでいったのJUNとは?」
「どこまでって?」
「やーねぇ。男と女としてよぉ。」
そう言う事…
「私と桜田君はそんな関係じゃないわ。」
「そんな事言ってぇ。毎日すぐ帰るのはJUNのためなんでしょ?」
今更隠せそうに無いので言ってしまう
「そうね。桜田君の家に行くためよ。」
「そんな通い妻みたいな事してるのよねぇ?」
通い妻……
確かにそうなるかも。でも……
「私と桜田君は唯の幼馴染よ。」
少なくとも彼はそう思ってるはず……
「もしかして本当に何も無いの?」
「ええ、無いわね。」
「呆れたぁ。あなた普段JUNの家で何してるの?」
「桜田君の家、ご両親が海外だし。お姉さんも進学して地方の大学に行ってしまわれて、彼一人しか居ないの。」
「あら?そうだったのぉ?」
「だから家事の手伝いをしに行ってるの。」
「それだけ?」
「そうよ。」
……そう、それだけ
「ふーん。JUNは貴女に手を出さないの?」
「そんな関係じゃないから。」
そう。私たちは幼馴染
之からもずっと……
「ねえ?貴女それで満足?」
「どう言う意味?」
「そのままの意味よ。」
試合の時も笑って竹刀を振る水銀燈が真剣な目をしてる
綺麗な赤い目
「私は今の関係で良いわ。」
だって私は彼の幼馴染
「ふーん、私勘違いしてたみたいね。」
「どう言う事?」
「JUNが子供だから進まないのかと思ったら違ったわねぇ。あなた達は良く似てるわぁ。」
「私と桜田君が?」
「だからあなた達はそれで良いのかもね。」
「理由聞いて良い?」
「駄目よぉ。それはあなた達の問題だもの。私が言う事じゃないわぁ。」
そう言った水銀燈の顔は悪戯を思いついた子供のみたいだった
「……でも可哀想な娘。入る余地なんか無いわね。これは。」
「どう言う事?」
「今のは独り言。貴女とJUNには関係無いは。」
水銀燈は横を向いて黙ってしまった
紅茶を飲む。少し温くなってしまった
やっぱり淹れたての方が美味しい
「帰りましょうか。」
水銀燈が言った


水銀燈と別れて夜道を歩く
別れ際、彼女は私に言った
「本当は言うつもり無かったけど気が変わったわぁ。アドバイスしてあげる。」
「貴女はもう一度どうしたいのかを考えてみなさい。」
「貴女は多分少し勘違いしてるわぁ。」
「そしてJUNにそれを貴女の願いを言うべきね。少なくともあの娘は言うつもりよ。」
……私の願い
私は彼の幼なじみでいたい。彼の傍に居るために……
帰り道、桜田君の家の前を通ったら電気が消えていた
……二人はどうしたんだろう?
私は明日の朝、桜田君を起こしに行って良いのかな……
彼のお弁当を作って良いのかな……
夕食作りに行っていいのかな……
「とりあえず聞いて見ないと……。」
誰にとも無く呟く
帰ったら電話してみよう

家の前に誰か居るらしい
誰だろ?
向こうも私に気付いたらしい
手を上げて近づいてくる
あれは……
「よ。お帰り。」
桜田君だった

第六話 了

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