※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

私が1番不幸だったわ。
この迷路に出口が無いことを知っていたんだもの。
次に貴方が不幸だったわ。
この迷路に出口が無いことを知らなかったんだもの。
その他大勢は不幸ではなかったわ。
自分達が迷路の中にいる事すら知らなかったんだもの。
Hinoichigo tomoekastel

かなりあのなく頃に・祟りかしら編【後編】


【昭和58年・薔薇見沢】

「何なんだよあれは!」
金糸雀の家を見た後、近くの公園に来ていた。
「彼女、名前を『草笛みつ』と言のだけど、金糸雀を病的に溺愛しているの。つぎ込むお金も膨大で、去年とうとう破産寸前まで追い込まれて東京へ出稼ぎに行ったのだわ。でもまさかこんなに早く帰って来るなんて・・」
「でも義務教育を受けさせないなんて学校が-」
「色々と理由を付けて休むですよ。今日は『体調不良』だったハズです。それに登校日数はゼロではないですから、学校側も対応が難しいのですよ・・」
「じゃあ金糸雀が嫌がれば法の適用だって!」
「みっちゃんさんは金糸雀を本当に愛してくれているし、それは金糸雀が1番良く解ってるのだわ。」
「それに金糸雀は雛苺と同じで両親がいないです。そこでみっちゃんさんが他県から引越してきて、金糸雀を養ってくれているのですよ。だからその手前、あの子も遠慮してる部分もあると思いますです」
「くそ・・でもそんなの・・!」
「ヒナ達もこのままじゃ良くないって思って色々手は打ったのよ。だけど・・」
「むしろ逆効果だったのだわ。結局『私の愛が足りないのね!ごめんねカナー!』になるの」

その後も話し合いは続いたものの解決策は見つからず、その場はお開きになった。

 

 

 

-彼は求める。彼女を助ける力を。
「(くそ・・僕が何とかしてやらなきゃ・・守ってやるって誓ったじゃないか!)」
「あ、君!悪いんだが苺神社への道を教えてくれないか?」
「それなら連れていってあげますけど・・」
「それは有り難い。是非たのむ」

-力は与えられた。あとは行使する意志と覚悟。
「ちょっとぉ、遅いわよぉベジータさん・・あら、あなたジュン君ね?」
「あ、白崎診療所の看護婦さん・・」
「水銀燈よぉ。あらぁ、アナタ・・私好みのいい顔してるわぁ。よほど心配なのねぇ、あの子の事が。うふふふ」
「・・・え?」
「どうしてわかったかって?そりゃあこんな小さな村だもの。変化があればすぐにわかるわぁ。それに何かと有名だったしねぇ」
「そうですか・・じゃあ僕はこれで」
「あら、残念。せっかく彼女を助ける方法を教えてあげようと思ったのにぃ・・」
「あるんですか!?助ける方法が!!」
「ぎ、銀嬢!」
「良いじゃないのベジータさん。それに簡単な事だもの。用はあの子に絡み付く愛の茨を断ち切ってあげればいいのよぉ」
「断ち切るって・・まさか!」
「ふふ、そんな恐ろしい事はしないわよ?ただ、教える前に三つ誓ってちょうだい。後悔しない、口外しない、私が教えたなんて・・絶対に言わない」
「・・ち、誓います」

 

-天秤にかかるのは、人の理性と兄の責務。
「(あんな事・・していいのかな・・でも・・)ん?か、金糸雀!!」
「みんなおはようかしら。心配かけてごめんなさいかしら」
「・・金糸雀、体は大丈夫なの?」
「全然平気かしら、真紅。ちょっと寝不足だけど無問題かしら!さ、ホームルームが始まるかしら~」
僕は俯き、拳を握る。
「(ちょっとだって?できた大きなクマを、普段しない化粧で隠してるだけじゃないか!ほっぺの火傷や擦り傷だって!体にも痣や傷があるんだろ!?)」
「ほらジュン、席に着くです・・ジュン?どうしたですか?」
「(・・やってやる!僕がやらなきゃ誰がやるんだ!僕は無力じゃない!金糸雀を助けるんだ!助けられるんだ!!)」

-その刀身に見るのは、彼女の笑顔か自分の狂気か。
「(明日、薔薇流しの時に僕はこの剣で・・)」

『・・この剣は?』
『うにゅー殿にある宝具の一つ、宝刀「メイメイ」よぉ。ベジータさんに手伝ってもらってダミーとすり替えたの』
僕は不思議な感じのする剣を眺める。
『前に薔薇流しの本当の意味は教えたわね?バラシロ様から白薔薇を断ち切ったのがその宝刀。それで薔薇見沢の人を切ると・・あら不思議、貰った白薔薇を体から抜く事が出来るのよぉ』
『薔薇を・・抜く・・』
『みっちゃんさんも薔薇見沢の生まれだから問題無いわぁ。そして薔薇を抜かれた人間は、デレ要素を失いツンツンになるの。そうそれば、あの子への愛も薄れるでしょうね』
『・・・』
『覚悟が出来たら連絡しなさい?アフターケアーはバッテリよぉ。じゃあね、ソレ無くしちゃダメよぉ?うふふふ・・』

「(翆星石には金糸雀を祭りに連れてって貰うように連絡した。あとは・・・)」

 

-そして迎える、運命の日。
「(水銀燈さんに連絡したし、あとはみっちゃんさんが呼び出した場所に来るのを待つだけか・・)」

思えば、他人の為にこんなに努力するのは・・・初めてだ。
前の学校では色々あって、部屋に引きこもるだけの灰色な毎日。
それがここに来て変わったんだ。

-弁当ってこんなにうまかったのか
-放課後ってこんなに楽しかったのか
-月曜日はこんなにも待ち遠しいものなのか
-笑顔って、こんなにも胸をうつものだったのか

それも全部、あいつらが居てくれたからだ。
だから今度は僕の番なんだ。
僕が全てを、あいつらの日常を守ってやるんだ。

「(ん、来たか?良く見ろ、あの髪、あのそばかす、間違いない!いくぞ!)」
忍び寄る必要なんか無い。全速力で近付き、振り抜くだけ!

ダダダダ、スパーーン・・ドサ。

「はぁ、はぁ・・。血も出てないし、切った感触もない。だけど・・」
光と共に、白いモノが現れる。
「これが・・白薔薇・・」


翌日、桜田家。
「ん・・もう昼か。学校行かないと・・」
あの後、水銀燈さんがみっちゃんさんを近くの病院へ連れていった。
僕はなぜかボーっとする頭で帰宅した。よほど疲れていたのか、洗面台の鏡が白くぼやけて自分の顔が見えなかったのには参った。
・・そういえば、今朝もぼやけたな・・・

 

「ジューン!下校時刻に登校とは、良い度胸ですねぇ~」
「みんな!」
「さては昨日の祭の酒で二日酔いしたですね~?」
「あはは、何言って・・」
「ジュンはヒナの演舞見てくれたのー?」
「ええ、皆で楽しく見させてもらったのだわ」

・・え?
「今年はジュンも蒼星石も来たから盛り上がったですぅ。」

誰が・・何だって・・?
「みんな・・何の話しを・・だって昨日は僕-」


祭には行ってないだろう・・・?
誰?その人・・・

「そ、そうだ、金糸雀は?お祭り楽しかったか?」
「・・何を言ってるかしら?昨日はずっと家にいたかしら。」
「な、なんで!?」
「みっちゃんとの先約があったから翆星石の誘いを断ったかしら。色んな服を着せられて、まるで着せ替え人形になった気分だったかしら~」

な!!!!


-狂い始めた世界は止まらない。
「ジュン、あなたさっきから変な事ばかり言ってるのだわ。みっちゃんさんは帰って来ないだなんて」
「そうですぅ。そんなジュンのために今から部活やるですぅ。拒否権は・・ねーですよ?」
「(な、なんだ二人とも・・いつもと雰囲気が違う!)わ、悪い!なんか頭痛いから家に帰るよ!」

-それでも貫くのは、兄としての自分。
「もう一度、やるしなかい・・今度は人目とか、その後とかは気にしないでいい。どうせ僕が捕まったって、もう一人の僕がいつも通りに登校するんだ」
洗面台の鏡は、白くぼやけたまま。
「お前・・ローゼンなのか?なら、一緒に行こう。今度こそ、金糸雀を救うんだ・・」

-最後まで、それだけを思って。
「あれ・・みっちゃんさんがいない?こんな早朝なのに・・」
剣を構えたまま、家を歩き回る。
「ん、あれは・・か、金糸雀!?どうしたんだ!なんでこんな所で倒れてるんだ!?」
「あ・・ジュ・・ン」
「待ってろ!今にーにーが助けてやるからな!」
剣にタオルを巻き付け、急いで金糸雀を背負って家を出た。

 

苺神社、境内前。
「(くそ、こんな時に監督が倒れて診療所が休みなんて!それにベジータさんも。水銀燈さんやラプラスさんなんか行方不明って言ってたけど・・一体何が起きてるんだ?)」
とにかく金糸雀を休ませるため、僕は雛苺の家に向かっていた。
「ジュン、もう大丈夫よ。一人で歩けるかしら」
顔色も良くなってきた。少し安心して金糸雀を背中から下ろす。
「もうちょっとだから頑張れよ。ほら、玄関も見え・・て・・」
視界に何かが入るが、認識するのに時間がかかった。
「ひ、雛苺!どうしたかしら!?何があったかしら!?」
倒れている雛苺に二人で駆け寄る。息はあるものの、意識は無い。
誰か呼ぼうと立ち上がった時、金糸雀が小さな叫び声をあげた。
「ジュン・・その剣は何かしら・・まさかそれで雛苺を!?」
「(しまった、タオルが外れて・・)ち、違う!これはみっちゃんさんを・・」
「みっちゃんを!?そんな、ジュンがなんで・・じゃあ監督も、みんな・・わああああ!」
金糸雀が大声で叫びながら神社の裏へ走って行く。
「待ってくれ金糸雀!違うんだ・・これは・・!」
-お前を助けるために・・・

必死に追い掛けていると、うにゅー殿の前に出た。
「ジュン!」
振り向いた先に見たのは、バイオリンを持ち、うにゅー殿からこちらを睨む金糸雀の姿。
「そちらがその気なら容赦しないかしら!この宝具『ピチカート』で皆の仇を打つかしら!」
「待ってくれ、かな・・!」
言い終わる前に金糸雀が飛び掛かり、弓を振り下ろす。
ガキン!!
無意識にメイメイでガードしていた。
「(なんで・・なんで僕が金糸雀と戦わなきゃいけないんだ・・!守り抜くって誓ったのに・・!)」
金糸雀が片手でバイオリンを回し、弦を弾く。
「スキありかしら!衝撃のパルティータ!」
ズドン。数メートル吹き飛ばされ、体中に痛みが走った。だが、金糸雀に敵意を向けられている事実の方がよほど辛かった。
「ジュン・・前は、本当のにーにーだと思えたのに・・本当に感謝してたのに・・!」
金糸雀が泣く。僕も、泣いていた。金糸雀を泣かせてしまった事、それがなにより悲しかった。
「これで・・終わりかしら。最終楽章!滅びのレクイエム!!」
金糸雀が弓を引き、弦を、鳴らした。

昭和58年6月23日朝刊より。
『22日未明、薔薇見沢で広域災害が発生。薔薇見沢地区水源地の一つ「ろざ・みすてか沼」より化学ガスが噴出し村内全域を覆った。死者は確認されていないものの、村人の大多数が記憶および言語障害などを引き起こす大災害となった。原因は現在調査中でかあるが、村人の協力が殆ど得られず難航が予想される。付近の住民は避難は順調に進みこれ以上の被害拡大は無いとみられるが、十分に警戒するべきであると政府は呼び掛けている』

 

-かなりあのなく頃に・祟りかしら編【後編】、完

|