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『メイメイ飼育日記』第7回

銀「はぁ、はぁ…めぐ!今行くからね…頑張るのよぉ!」
夜の病院を水銀燈が駆ける。
目指す先は親友の病室。先程自宅で受けた電話、それは親友であるめぐが危険な状態に陥ったというものであったのだ。
息を切らし、全身に汗を浮かべながら走り続ける水銀燈。
そして、やがて彼女の前にめぐの病室が見えてきた。

銀「めぐ!」
バンッと音を立てて扉を開く水銀燈。
だがそこにはすでにめぐの姿はなく、代わりにそこにいたのは突然の入室に驚きの顔を浮かべる1人の若い看護士であった。
銀「あの!ここにいた子は…めぐはどこに行ったんですか!?」
水銀燈は有無をいわさずその看護士に詰め寄る。

看護士「こ、ここの患者さんはついさっき手術室に……」
看護士は水銀燈の気迫に押され気味にそう答えた。
銀「手術…室…くっ!」
ここにめぐはいない。そう認識した水銀燈はきびすを返し再び疾走を始めた。

銀「めぐ…めぐ!」
めぐは手術室にいる。今まさに病魔との過酷な戦いの中にいる。
今水銀燈にできることはめぐのそばで彼女の勝利を祈るしかないのだ。
そのことは水銀燈自身がよく知っている。
だから例え自分が無力だとしても、一刻も早くめぐの元に行かなければならない。
その思いだけが体中から悲鳴を上げる水銀燈の体を突き動かしていた。

………
……

どれだけ走ったのだろうか、水銀燈はある部屋の前で足を止めて膝を付いた。
見上げた先には『手術中』と書かれた赤いランプが闇を照らしている。
銀「はぁ、はぁ、こ…ここにめぐが…
めぐ…私はすぐ近くにいるわ。
だから…絶対に死ぬんじゃないわよ…。」

水銀燈はフラフラになりながら辿り着いた手術室の扉に両手を額を当てるとただひたすらに親友の無事を祈るのであった。

…そして、永遠とも思える時間が過ぎ、赤いランプが静かに消えた。

銀「終わっ…た…?」
暗がりの中、灯りを失ったランプを眺めていると、手術室の扉が開き中から医師たちが出てきた。
銀「先生!めぐは…めぐは!?」
水銀燈はその医師の1人に必死の形相で掴みかかる。
銀「先生!めぐは、めぐはどうだったんです!?教えてよぉ!!」

すると医師は水銀燈から目を逸らすと小さな声で呟いた。

医師「残念な結果ですが……ご臨終です…」

銀「……え?」

今この人は何と言った?水銀燈はその言葉の意味が解らなかった。
だが、医師は沈痛な面持ちのまま今度ははっきりと言った。
医師「残念ですが…ご臨終です。」

--ゴリンジュウデス…

この言葉が水銀燈の中で何度も反響する。

銀「う…うそ…嘘よぉ…めぐが……めぐが…死…?」

水銀燈は全身に水をかけられたような感覚と、まるで自分が悪い夢の中にいるような感覚に足をふらつかせる。

次の瞬間、手術室の中から白いベッドが運び出されてきた。
医師「全力は尽くしました…ですが、申し訳ありません。」
水銀燈は医師の横をフラフラとすり抜けると運び出されたベッドのそばに立った。

銀「め…ぐ…」
そこには穏やかな顔で横たわる親友がいた。
水銀燈は無言のままめぐの頬に手を乗せる。
銀「やわらかい…あたたかいじゃなぁい…ほら、また貴女の悪い冗談でしょ?
もうわかってるのよぉ?めぐ。」
彼女の体はまだぬくもりと柔らかさを帯び、ただ眠っているようにしか見えなかった。

銀「ほらぁ…起きなさいよぉ……ひとをこんな夜中に呼んでおいて…失礼でしょ?」
いつもならこの辺りで彼女は「てへっ♪」と悪戯な笑顔を向けて目を開けるはずだ。
だが、彼女は目を開かない。
銀「今なら許してあげるからぁ……
だから…だから…お願い…よぉ…起きて、起きてよぉおおおおおおおおおおお!!」

悲しみが限界を迎えた水銀燈の絶叫が病院に響く。
だが彼女がどんなに叫ぼうが、どんなに涙しようがめぐが目を開けることはなかった。 


それから数時間後、水銀燈は線香の香りが充満した暗い部屋に座っていた。
その目の前には顔に白い布をかけられ永遠の眠りに就いためぐ。
そう、ここは遺体を安置する霊安室である。
先程看護士が言っていたが、めぐの両親は仕事で到着はどうしても明日になってしまうらしい。
だが水銀燈にはそんなことはどうでもよかった。

銀「めぐ…私は一体何なの…?
貴女の親友とか言っていながら…貴女に何もしてあげられなかった…」
水銀燈は紅い瞳を涙で更に紅くしながら枯れ始めた声で語りかける。
銀「貴女が苦しんでいても…戦っていても、私は何もできなかった…支えてもあげられなかった…
親友失格の駄目なジャンクよね…ごめん、ごめんね、めぐ…うっ…うぅぅ…くっ、ひぐっ…」

どんなに謝っても返事はなく暗い部屋に水銀燈のすすり泣きだけが木霊した。

…どれだけ涙を流したのか?水銀燈はいつしかめぐのベッドにすがりつくように静かな寝息を立てていた。

その水銀燈を背後から見つめる小さな影がひとつ… 

メ「ゼットォ~ン…」
メイメイである。

メ「……」
メイメイは無言のままめぐに寄り添い眠る主の顔を見上げる。
その頬には乾いた涙が作る筋がはっきりと見られた。

メ「………ゼット~ン!」
その顔を見たメイメイはしばし黙った後、両手を胸に構えた。
刹那、メイメイに幾重もの光が集まり、その体が凄まじい熱を放つ。

銀「……ん?何…この熱……メイメイ!?」
その光と熱量に目を覚ました水銀燈が見たものは全身から金色の光を迸らせるメイメイの姿であった。
銀「メイメイ!あんた、一体何を…!?」
メ「ゼッ~~トォ~~ン…!」
水銀燈が声を上げるが、尚もメイメイを覆う光はその凄まじい輝きを増してゆく…
そして次の瞬間…

メ「ゼ~ッ…トォオオオオオオン!!」


ーーカッ!!



両腕を前に突き出すメイメイ。
それと同時に室内に溢れた閃光が全てを白く染めた。 

銀「ーー!!?」
その眩い光に水銀燈は両腕で目を覆う。
そしてほんの数秒の後、その閃光は徐々に輝きを失い病室に再び静寂と暗闇が訪れた。
銀「くっ……一体…何が…」
水銀燈が恐る恐る両腕を下げ目を開こうとしたその瞬間…

……トクン

水銀燈の耳に小さな音が響く。

…トクン…トクン…

空耳ではない。
それは確かに自分の背後から聞こえている。

…トクン、トクン…ドクン…
銀「これは…まさか…!」
水銀燈は慌てて背後を振り向く。
なんとそこには全身から金色の光を放つめぐが横たわったいた。

ドクン、ドクン、ドクン!

めぐから放たれていたその音は確かに、そしてだんだんと大きなものとなってゆく。
そう、それは命の音、心臓の鼓動であった。
銀「めぐ!!」
水銀燈がそう叫んだその瞬間、めぐの体から静かに光が消えていった。
そして…
め「んぅ…ぅっ……すい…ぎん…とう…?」
なんと、死んだはずのめぐがゆっくりとその目を開き、水銀燈の名前を呼んだのである。

銀「め…ぐ…本当に…?本当にめぐなの!?」
め「クスッ、可笑しなこと言うわね…。私に偽物でもいるの?」
水銀燈の問いに笑いながら少し皮肉めいた答えを返すめぐ。
それは紛れもなく水銀燈が昔からよく知っている親友の姿であった。
銀「めぐ…めぐぅ…うわぁああああああ!!」
め「きゃっ。」
我慢の限界を迎えたのか、水銀燈は泣きながらめぐに抱きついた。
銀「ひぐ…なによぉ…人に散々心配かけてぇ…ぐすっ…本当にお馬鹿さんなんだからぁ…ひっく。」
め「ごめん、ごめんね、水銀燈…水銀燈の声、ちゃんと聞こえてたよ。」
銀「でもよかった…本当によかったぁ…。」

めぐは子供をあやす母のように穏やかな顔で水銀燈の背中を撫でる。

め「でも、私は一体どうして…?」
銀「えぇ、メイメイが貴女を助けてくれたの…ね?メイメイ。」
水銀燈はめぐから離れると再びメイメイに目をやった。

銀「…メイメイ?」
だがメイメイは両腕を前に差し出したままの格好からピクリとも動かない。

銀「ちょっと、どうしたのよぉ?メイメイ。ほらぁ、こっちに…」
水銀燈がメイメイを抱きかかえようとしたその時…

『ピシッ…』

辺りに何かが割れるような奇妙な音が響いた。
銀「……え?」
しかもその音は水銀燈の目の前…メイメイから聞こえてきたのだ。
そして次の瞬間…

『ピシッ…ビキィッ…!』

なんと、メイメイの体中に無数のヒビが走ったのである。
銀・め「「!?」」
メ「ゼッ…ト……ン…」
メイメイのツノが床に落ち、粉々に砕けた。
銀「メイメイ!!」
水銀燈は慌ててメイメイを抱きかかえる。
銀「メイメイ!しっかりして!メイメイ!!」
水銀燈はメイメイを腕に抱いて叫ぶが、メイメイの体は尚も崩壊を続けてゆく。
め「メイメイ…まさか私のせいで…?」
めぐもまたメイメイのそばで涙を流している。
だがその時、2人の頭に声が響いた…

『ナカナイデ…』

銀・め「「…え?」」
2人はどこからともなく聞こえてきた不思議な声に辺りを見回した。

『ナカナイデ…メグ…ゴシュジンサマ……』
ご主人様…その声は確かにそう言った。
はっとなった水銀燈はメイメイに向かって言う。
銀「メイメイ…メイメイなの!?」
すると声は答える。
『ハイ……サイゴノチカラヲツカッテ…フタリニテレパシーヲオクッテマス…』
聞き間違えるはずもない、その声は確かにメイメイから送られたものであったのだ。
銀「最後のって…あなた、まさかこのまま死ぬ気じゃないでしょうねぇ!?そんなの許さないわよぉ!?」
水銀燈は両目から涙を流しながら叫んだ。
その雫はひび割れたメイメイの体に雨のように染み込んでゆく。
『ナカナイデ…ゴシュジンサマ…
ゴシュジンサマ、メイメイニナマエクレタ…
メイメイトクラシテクレタ…メイメイ、スゴクシアワセダッタ…』
銀「メイメイぃ…」
メイメイの左腕が、右足が崩れて床に落ちてゆく…

『メグ…ゴシュジンサマノタイセツナヒト…メイメイトトモダチニナッテクレタ…
ダカラタイセツ…ダカラマモル…』

め「メイメイ…」

『ゴシュ…ジン……サマ』

メイメイは水銀燈に向かって残った右腕を差し出す。
銀「メイメイ!」
水銀燈はその手を両手でしっかりと握った。

『ダイスキ…ナ…ゴシュジン…サマ……アリ…ガ……ト……』

水銀燈の手の中でメイメイの右腕で砕ける。
そして、その言葉を最期にメイメイの体は全て粉々に砕け床に崩れ落ちた。

銀「メ…メイメイ………メイメーーーイ!!」

崩れ落ちたメイメイの欠片を抱きかかえながら水銀燈の悲痛な叫びが周囲に響いた…。

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次回・メイメイ飼育日記最終回に続く…

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