──ジュンが2階に上ってきたです…
銀「ジュンくんの部屋で話してもいい?」
ジ「…はい」
銀「そ~んな緊張しなくてもいいのよ?」
何か…物々しい雰囲気ですね。
2人だけでジュンの部屋に入っていったです。
2階にこのまま腰抜かして座ってるわけにはいかねぇです…
この場から早く立ち去った方がいいかもしれんですね。
翠星石も巻き添えを食らうかもしれんですからね…
下のリビングのソファの上でくつろいでやるです。
いやぁ…しっかしジュンの奴も何で水銀燈に怒られなきゃダメなんだ?
って思ってるでしょうね。
ざまぁみやがれです!最後の最後に翠星石に冷たくした天誅が下ったのです!
おーほっほっほ──
──前言撤回です…。
やっぱり早く家に帰らずに寝てしまったのは翠星石が悪いんですから、
ジュンは何も怒られる必要はないはずです…
ガチャ…
リビング…誰もいませんね。
ソファでくつろぐには持って来いの環境ですね。
ちょいと横になってみますか…よいしょっと。
はぁ…
こうやって天井を見つめてると、ジュンの顔が思い浮かんでくるです…
このままだと前期の栽培委員も翠星石1人だけですね。
ふざけて水の掛け合いばっかやってた野郎だったですのに…
何でジュンが──
男がお裁縫をして何が悪いんですかね…
服なんてメンズだけしか作ったらダメなんですかね。
翠星石たちがジュンと幼馴染であることもダメなんですかぁっ?!
翠「!!」
飛び起きて、自分が寝てたソファをぶっ飛ばし…やっぱりやめたです。
翠「はぁ、はぁ…」
ちょっと違う方向に思考が行ってしまいましたが…
それでも、あいつらに馬鹿にされたような気がして胸糞悪ぃですぅ!
ていうか、苛める人間ってのは苛められるのを怖がって苛めてるんですよ。きっと。
つまり、何かしら人に知られたくない弱みがあるはずです。
ふひひ…
そうと決まれば、さっさとそれを見つけ出してやるしかないです…
その証拠を突きつけて、もう苛めから足を洗うことを約束させてやるですぅ…
ぐひひひw
でも対抗勢力同士の争いが始まる前に解決しねぇと大変ですぅ。
今までの雰囲気から察するに、蒼星石や巴は絶対に武力闘争に加わるですぅ…
…ったく、まず蒼星石の“悪と立ち向かう姿勢”が問題なんですよ。
中学から剣道部に入ってから翠星石より強くなりましたもんね。
いまや翠星石は守られる立場になってしまいましたが、
翠星石はあなたの姉なんですから…立場は変わっても怪我だけはホントに心配なんですよ?
どうもあなたが争い事に巻き込まれる度にヒヤヒヤさせられるです…
やめてくれってお願いしても聞く耳を持たないんですから…
普段は優しくて良い子ですのに、こういう時に限ってはホント、おバカです!
巴も、蒼星石の影響をまともに受けてしまったようで、ガッカリですぅ…
何でこう危ない方へ進むんですかね。
この問題がキッカケでそこらへんのヤンキーに目をつけられるのが心配ですぅ…
「××中の女、最近良い調子こいてるらしいぜ?」なんて噂が立ったりなんかしたら──
あぁ、2人が怪我をする前に何かしら解決への糸口を掴まないと…
ドスン!!
ひっ!…上で何か落ちる音がしたですね。
水銀燈がキレたんですかね…。
まずい事が起きてる予感がするです…
トットットットッ…
タッタッタッタッ…
おやおや、追いかけっこが始まったみたいです…
ドスン…トットットットッ…
ドスン…タッタッタッタッ…
それにしても…ジュンも頑張りますねぇ…
ドスン!…バタン!…トットットッ…
ドドドド…ドドドドドドド…
う~ん…でもあんまり長いとイライラしてくるです…
ほんと…横から叱り付けてやりましょうかね──
ジュンを叱りつける水銀燈。そしてそれを叱る翠星石…ププッ
滑稽にも程があるです…w
~~~~~~
2階に上ると、部屋着に着替えたのりがジュンの部屋の前で行ったり来たりしてたです。
の「ねぇねぇ、ジュンくんの部屋を見てきてくれない?
さっきまで騒がしいなって思ってたら急に静かになって…」
あたふたして上ずった声になるのり。
気持ちはよ~く判るです。翠星石も今向かおうとしてたところですし…
翠「任せろです。逆に水銀燈を叱りつけてやるです」
ジ「ぎゃぁぁぁぁ!!!」
いきなり断末魔のような叫び声…本気でヤバそうです…
何の躊躇もなくジュンの部屋に飛び込んだです…
ガチャッ!バタン!!
翠「ジュン!」
…あっ──
銀「…」
ジ「…」
…ドアを開けた瞬間コレですか…呆れたです…
説教してなかったんですかね。水銀燈は…
ジュンの背中に乗って…腕もジュンの首に絡めて…
その状況下でジュンも本気で振り払おうとせずにじゃれあってる感じですし?
一体何をしてやがるですかねぇ…
翠「…お、おめぇら…ドタバタうるせーです!ばらしーたちと変わんねぇじゃねーですかッ!」
ジ「あ、いや…」
翠「言い訳は無用です。さ、何してたんです?」
ジュン、しかもおめぇ…さっき翠星石の隣に寝てくれなかったじゃねーですかっ!
ここまでやられると…怒りを通り越して悲しくなってくるです…
…なんて考えてたら、ジュンと水銀燈は既に立ち上がってて、
お互いを見つめ合ってたです…
…本気ですか?…やめて…やめてです──
銀「ジュンくん?」
ジ「?」
銀「なっ…何キョトンとしてんのよ?…おばかさぁん」
ジ「…あっ…今日翠星石が泊ま──」
銀「そ~いうことじゃなくてぇ~」
ジ「?」
銀「頑張るのよ」
はっ…!
…ジ…ジュンに抱きつくなです!
そんでもって翠星石を無視するなです!
翠「水銀燈!尋問はまだ──」
銀「翠星石、早く帰りましょ」
翠「えぇぇぇ?」
ジュンから離れてスタスタと歩いて戻っていく水銀燈。
のりと何か話しながら…1階へ下りていくみたいですね。
…はぁ。
水銀燈の悪ふざけもほどほどにしてほしいですぅ…
こんな事の後でジュンと2人きりだなんて、居心地悪いことこの上ないです…
翠「…じゃあ翠星石も帰るです」
ジ「あ、そうか。それなら僕も下に下りるよ」
何事もなかったように戻っていくジュン…
もう我慢も限界です!…出口に立ち塞がって、ひとつ問い詰めてやるですかね。
翠「言いやがれです。さっき水銀燈としたことを──」
ジ「鬼ごっこだよ」
翠「…翠星石にはそうは見えなかったですよ?」
しかも怒られて追われてたようでもないみたいですしね…ったく。
ジ「あ、最後のはだな…その…」
この如何にも動揺してること丸出しのところが、さらにムカつくです…
翠「…ま、ど~でもいいですけどぉ?」
ふん!
翠星石はお前のことを幼馴染としては認めてやるですけど、
ジュンのことを好きになるとか、付き合いたいとか──そんなことは一切ないですよ?
ないですよ~…断じて無いですからね~……イライラ
…それにしても、身内にだけあんなにはっちゃけることが出来るんですね。
だーかーら、引き篭もりになるんです。
学校でもあれぐらいはっちゃけることが出来たら、男子どもと馴染めるはずですのに…
でも、あの奴らとだけはつるんで欲しくないですね──
~~~~~~~
玄関でジュンとのりがお見送り。
今日は色々ありましたね…
の「それで、翠星石ちゃんは泊まってくの?」
翠「え?泊まってい…」
銀「ダ~メ。泊まるのは週末だけにしなさぁい。それに今日は──」
翠「……わ、判ったです。さっさと帰るです」
の「そう、それじゃ仕方ないわね」
ジ「あ、あと…」
ジュン…何をもじもじしてるですか?
ジ「朝はごめん」
の「…」
…。
の「ジュンくん…」
銀「ふふ」
ジ「ま、そういうことだから…」
ぷ…相変わらずジュンは素直じゃねぇです。
兎にも角にも、仲直りが出来て良かったですね。
翠星石も蒼星石と話し合いで解決せねば…
銀「さ、姉弟のすれ違いも解決したみたいだし…」
ジ「…あぁ」
銀「それじゃ、また明日ね」
あっ…言い忘れてたです。
翠「──あの…」
いざ言うとなると言いにくいです…
銀「ん?何か言いたいことでもあるのぉ?」
翠「…お前の服、待ってるですよ」
えぇい!ココまで言ったなら全部言ってやるです──
翠「あと、時々お前を見に来るです。朝に起こしに来たり、
クッキー焼いたり、ああ…それと…」
銀「ばっかねぇ…これからずっと会えないってわけじゃないんだから」
の「そうよ~。来たい時にいつでも来ていいのよ」
翠「…そ、そうですね…あはは…」
ジ「まぁ、好きにしろよ」
翠「…」
…さっきそれを実行したですよ?
でもお前もちゃんと動いてくれねぇと意味無いんです…
銀「それじゃ」
の「うん、またね」
翠「…」
ジ「何だよ、元気ないな」
翠「…そんなことねーです。お前こそ元気出しやがれです」
ジ「…そうだな」
翠「それじゃ、また明日~です」
ジ「うん」
の「ふふ…じゃあね」
バタン
また明日…ですか。
明日も学校で鬱なひと時を過ごさなければならないんですね…
~~~~~~~
それから、少し歩いてからのこと…
銀「遅くなったわねぇ…私まで怒られそう…」
翠「…」
銀「あ、もう家には電話したのぉ?」
──あ…忘れてたです…
翠「…」
銀「はぁ…」
…そんな…溜息つくなです…
携帯でさっさと掛けるです。
翠「…今から電話するです…」
銀「…まぁ、掛けないよりはマシだろうけど」
Tururururu...Tururururu...ガチャ
薔『もっしー?』
翠「もしもし?ばらしーですか?」
薔『そーだよ』
翠「お母様に今ジュンの家から帰ってるって伝えておいてくれです」
薔『おっけー』
翠「それで、そっちでは何か変わったことはないですか?」
薔『え?──あ、蒼星石が怖い顔して帰ってきたけど』
翠「…そうですか」
薔『ジュンが引き篭もりになったってお母様と話してたよ』
──話しちまったですか。
まぁ、いずれは広まるもんですから仕方ないですね。
お母様の対応がジュンを刺激するものでなければいいのですが…
翠「じゃあ、その事で──」
薔『あ、結構心配してたよ』
翠「…そ~ですか。それだけですか(先読みしすぎですぅ…)」
薔『うん』
翠「なら、いいです」
薔『じゃ、早く帰ってこいよー』
翠「判ってるです!それじゃ切るですよ」
薔『あいよー』
ブチッ…プツッ…ツー、ツー…
翠「…(向こうから切りやがったです…)」
銀「どうだった?」
翠「どうやら翠星石たちが遅くなった理由が判ってもらえそうです」
銀「そう」
翠「…」
銀「…」
翠「そういえば、ジュンも変わったですね。まさかお裁縫が出来るようになったなんて…」
銀「ま、翠星石のおかげじゃなぁい?」
翠「…」
翠星石は…別に…そばに居てやってるだけですよ?ほんとに──
銀「ふふ…なぁに赤くなってんのよぉ」
翠「何でもないです…」
銀「…ふ」
翠「それに、もうチビじゃないです。気がつけばもう背の高さが翠星石と変わらんのですよ」
銀「それじゃ、今度はジュンくんが“チビ人間”って呼ぶ番ねぇ」
翠「ジュンはそんなこと言わねーです。あいつは中身で人を判断する奴ですから…」
銀「…」
なっ…何をそんなに訝しげに見つめやがるですか…
銀「…あ、そうねぇ。たしか“性悪”って言われてたんだっけ?」
翠「うるせぇです!」
だ~れが性悪ですかっ!ジュンの奴はちゃんと翠星石を見てないんです!
銀「確かに人を見る目があるわねぇ。そのまんまじゃなぁいw」
──え…
翠「…」
銀「あっはw」
翠「…」
銀「まぁ、気をつけなさいよ」
はっ…
さっきの夢に出た…ジュン!
翠「…」
銀「さ、家が見えてきたわぁ」
翠「…」
ジュン…
まさか…今までふざけて言ってただけじゃないんですか?
翠星石に…どうなって欲しいんですか?
ジュンの理想の翠星石ってどんな奴なんですか…?