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井の中の蛙は幸せね。

井の外に何も興味がないんだもの。

井の中の蛙は幸せね。

井の外で何があっても関係ないんだもの。

そしてあなたも幸せね。

井の外で何があったか知らないんだもの。

Hinoichigo tomoekastel

 

カナカナカナカナカシラ・・・

カナカナカナカナカシラ・・・

 

かなりあのなく頃に・祟りかしら編【前編】

 

【昭和58年、薔薇見沢】

 

 

「さあみんなー、ご飯にするですよー!!」

委員長の翠星石の号令で机をくっつける。これがうちのクラスのお昼ご飯のスタイルだ。

「おお、相変わらず真紅の弁当は豪華だなー」

「当然なのだわ。ほら、何をしているの?早く紅茶を淹れなさい」

真紅は弁当を自分で作るらしいが、バリバリの洋風メニューだ。弁当箱にナイフ、フォーク、スプーンが標準装備されているのにはさすがに引いたが。

「ふっふっふ、翠星石も今日は凄いですよー」

翠星石は打って変わって純和風。うーん、あのがさつな性格からこの温かみのある味が作り出されるとは・・。手料理で女を判断するのは危険ということか?

「カナたちのお弁当だって負けてないかしらー!!」

「今日はヒナが作ったのー」

なるほど、苺付きのとても可愛らしいお弁当だ。この二人は交代で作っているらしいが、金糸雀が作ると弁当箱が黄色に染まる。

そんな栄養偏りまくりの弁当に翠星石が業を煮やし、おかず交換が始まったとか、違うとか。

「うーん、雛苺の作るご飯は相変わらずうまいなー」

様々な料理が、赤みがかってほんのり甘酸っぱいのは気にしたら負けだ。

「カナ達にかかればこんなの楽勝かしら~」

「ていうか、お前は何もしてないだろ!どうせ卵料理以外つくれないくせに」

「な、何を言うかしら!これでも雛苺と交代で夕飯を作ってるかしら!」

「ん?夕飯・・・?」

~5時間前~

「ジュンく~ん、お姉ちゃんラクロスの遠征で東京に行かなくちゃなのぅ~。すこしお金は置いていくけど、お夕飯とか自分でつくってね~?」

「ん~?あーはいはい・・・」

「あ!でも本当は作ってあげたいのよぅ!?だけどこの『思春期の育て方』には、自炊や経済観念を学んだほうがいいって!だからぜったいにお姉ちゃんのジュン君への愛が薄れたとかじゃ―」

はい、回想中止。

「そうだ!今日から自炊しなきゃいけないんだったー!」

「なら腹を決めて自炊するかしら。ジュンでもシュウマイくらい作れるかしら?」

「あのな!出来たとしても三食シュウマイなんて食えるかよ!所詮シュウマイなんてジャンク・・」

「あ!ダメですぅ!しー!」

ガラガラガラ!教室のドアが開き、包丁を持った薔薇水晶先生が現れる。

「・・・今・・・シュウマイの悪口言ったの・・・誰・・・」

「き、気のせいなのですだわ!誰もそんなこと言ってないのですだわわ!!」

真紅がここまで動揺するのも頷ける。今油断したら・・やられる!!

「・・・そうですか・・・私の聞き違いでしたか・・・」

ガラガラガラ、ピシャリ。

「ジュン・・この薔薇見沢で生きたかったら・・シュウマイの悪口は止めなさい・・」

「おk・・把握した・・」ガクガクブルブル。

「・・あ、そうかしら!ジュン、明日のお弁当で勝負するかしら!」

「なに!?くっ・・いいだろう!僕も男だ!売られた喧嘩は買ってやる!!」

だが、『あんなこと言わなければ良かった』そう思い知らされるのにたいした時間のかからない、ダメダメなジュンであった。

 

~数日後~

「はあ、こうして今日も夕飯を手伝ってもらうハメになろうとは・・」

「カナ達が来なかったら初日で火事になってたんだから感謝するかしら」

「ジュンは家事の出来ないダメな男なの。将来はきっとヒモになるの」

ぐふっ!毒舌ならぬ毒苺か・・・でもちょっと気持ちいい・・いやいや!!

「でもこうして三人で食べてると、ローゼンと一緒だった頃を思い出すの」

最初の夜に雛苺に教えてもらった金糸雀の兄、ローゼン。今は家出中と聞いた。

「懐かしいかしら・・今どこで何をしてるのやら・・あ!ローゼンはカナのにーにー・・じゃなくて!お兄ちゃんかしら!!」

そして雛苺から、出来る範囲でローゼンの代わりになって欲しいとお願いされた。

「ははは。でも、僕お前のこと誤解してたよ。つらくても頑張ってるんだな。偉い偉い。」

あの時も二つ返事で返したが、今はもっと強い思いがある。

「なあ!そ、そんなに褒めても何もでないかしら~!!」

かたく誓った。ローゼンのいない間、僕がこいつを守り抜くと。何があっても、何をしてでも。

夕食後、雛苺は明日の準備があるといって先に帰った。時間も遅いので送ってやると言ったら、生意気にもお断り頂いたので、

「あ~もう!ずべこべ言わずにーにーの言う通りにしろ!!」

と言って頭を撫で回してやった。

「ふふ、ありがとうかしら。たぶん・・雛苺に頼まれたんでしょ?にーにーの代わりになってくれって。あの子、なぜかカナに気を使うかしら。だからジュンも気にしないでかしら」

にっこり笑う。いや、笑おうとしている。

「僕は僕だよ。おまえのにーにー、ローゼンじゃないさ。」

弱弱しく、されど強く微笑みながら金糸雀は帰っていった。

なあ・・ローゼン。僕はもう金糸雀のあんな悲しい顔を見たくないんだ。早く、帰ってきてくれよ・・。

 

 

―数日後、バーベキュー会場。

「くそー、なんで僕がこんな事を・・・」

先日、薔薇見沢で野球の試合があった。その試合に僕らも参加したわけだが、

「さあチャンスでカナの出番かしら!必殺のゴールデンボールで一撃粉砕してやるかしらー!!」

そう言ってバッターボックスに立った金糸雀。確かにその通りになった。猛烈なライナーが相手ピッチャーの(ピー)を強襲することによって・・・

「確かにゴールデンボールですね・・・」

「これはひどい」

「カナ鬼なのー」

「なんでこうなるかしらー!」

「無様ね・・・」

結果的には試合に勝ったので、チームの監督からバーベキューのお祝いとのこと。しかし・・

「私が『薔薇見沢メイデンズ』の監督の白崎です。あなたがジュンさんですね?いや~いい体してますねぇ!ぜひともあなたのムチに打たれてみたいですねぇ!」

「監督やめるかしら!カナ、ジュンのボンテージ姿なんて見たくないかしら!!」

金糸雀のことを大切に思ってくれている事と同時に、極度の変態であることも良く分かった。

そして今、ゲームに負けた僕はプレートを洗っているわけだ。

「はい、スポンジとクレンザー。まったく、大人にまかせればいいのにとんだお人良しだねジュン君は」

「お、サンキュー蒼星石。しかしマネージャーなんだから試合に来いよ。まあ、金糸雀の一撃で勝ったからいーけどさ」

「ふふ、ローゼン君とは大違いだ。きっと運動神経は金糸雀に取られちゃったに違いないね」

「ああ、ローゼンってあの野球チームに居たんだってな。去年あたりに転校したんだっけか・・」

さっき監督がそんな事話してたな。

「誰が・・・」

突然空気が凍りつく。声というより、後ろからの強烈な威圧感で振り返る。

「誰がそんなこと言ったんだい?ローゼン君が転校届けを出したのを誰かが見た?聞いた?別の学校にいるのを誰かが見た!?」

鬼気迫る、とはこの事か?いや、それよりも―

「そ、蒼星石!!」

この異常な状況に耐え切れず、とにかく名前を叫んだ。

「・・・ごめん、ジュン君。でも、証拠もないのにそんな事言わないでね?あ、そのプレートで最後みたいだよ?じゃあ、またね。」

ジャバジャバジャバ。去っていく蒼星石の後姿を見つめる。蛇口の水の音がやけに大きく聞こえた。

そして、何かを感じた。楽しい日常が崩れるような・・不安。でも、この時に感じた不安なんて、明日みんなに会えば晴れると思っていた。そう、みんなに会えれば・・・

 

 

「今日、金糸雀はお休みするの・・・」

教室に入ってくるなり、雛苺がそう告げた。

「どうしたんだ?風邪でもひいたのか?」

「・・・金糸雀の親戚が帰って来たの。今はその人の家にいるの・・・」

その言葉にみんながざわめく。僕の心も。

「それと金糸雀が学校に来ないのと、何の関係があるんだ?」

みんなが答えるのに渋っているのがわかる。くそっ、なんだってんだよ。

「あのですね、ジュン・・・その人は金糸雀を嫌ってるとかじゃないんです・・・だけど・・・」

「だけど、なんだよ!?」

昨日の不安もあいまって、ついつい強い口調になってしまう。

「ジュン、あまり翠星石をいじめないで頂戴。今日の放課後、みんなで金糸雀の家に行きましょう。いい?雛苺」

「ういー、わかったの・・・」

「・・・去年ローゼンが家出したって言ったけど、それもその人が原因なのか?」

「違うと言えば嘘になるけれど・・他にも原因はあったようね。ただ、誰にも話してはくれなかったけれど・・」

どうにも良くわからない。みんなの暗い表情が余計に不安を煽る。

「・・・みなさん、ホームルームを始めます・・・」

先生が来たので慌てて翠星石がみんなに声をかけ、号令をする。

その日はいつもの賑やかさはなく、皆が不安を隠せないようだった。

 

放課後、部活を中止して金糸雀の家に向かう。金糸雀の家は、今まで雛苺と二人で住んでいた家とは離れた場所にある。

「あそこなの。」

雛苺が一軒の家を指し示す。

「なんだよ・・・これ・・・」

そこに立っていた家には、女の子用の服の山、山、山。その他様々なグッズで埋め尽くされていた。そして・・・

「いやああああああああん!!カナその服も可愛いよ!!超可愛いからああああああ!!」

「きゃーーーー!!!みっちゃんほっぺが!まさちゅーせっちゅでほっぺが剥ぎ取られるかしらああああ!」

「あああ!!!涙目のカナもかぁあいいいいいいいい!!お持ち帰りぃいいいいい!!!」ぎゅ~!!!

「お、お腹の中身が出ちゃうかしらぁあああああ」

呆然と立ち尽くす僕に、真紅がゆっくりと言った。

「こういうことよ、ジュン。」

 

 

かなりあのなく頃に・祟りかしら編【前編】、完

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