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あなたの渇きを癒せないのですぅ。
真実を欲するあなたがそれを認めないのですから。
あなたの渇きを癒せないのですぅ。
あなたの期待する真実が存在しないのですから。
それでもあなたの渇きを癒したいのですぅ。
あなたを砂漠へ放り出したのは私なのですから。
Hinoichigo tomoekastel

カナカナカナカナカシラ・・・
カナカナカナカナカシラ・・・

かなりあのなく頃に・薔薇流し編【前編】

【昭和58年、薔薇見沢】



「薔薇流し?」
聞きなれない単語に箸を止める。
「あ、ジュンは最近引っ越してきたですから知らんのですか。来週あたりに苺神社でやるお祭りですぅ」
「雛苺が巫女さんの格好するかしら!とっても可愛いかしら!」
「そうね、夏の風物詩と言ったところなのだわ」
「最近はお祭りのおけいこで体が痛いのー」
ふむふむ、皆の意見を聞くに催し物のあるお祭りみたいだな。あれか?ハクセンやネクタイを結んで川にでも流すのか?
「ジュンがはるか昔のこと考えてるですぅ。おめーはいくつですか」
「な、なんで僕の考えてることが解るんだ!?」
「そういう顔をしているのだわ」
金糸雀が『こんな顔かしらー!』と言って見せてくれた。納得・・・できるやつがいたらここに来い。変わってやるから。
「しかしまあ、とりあえず楽しそうではあるな。ただめんどくさ・・」
「当たり前ですぅ。行かないなんていったら『スク水ウサ耳首輪付きの刑』ですよ~」
はい、行くことに決定。僕もまだ死にたくない。 



翌日のとあるおもちゃ屋さんにて。
「おじじ!さっさと準備するです!部活メンバーは薔薇祭り前哨戦ですぅ!」
いきなり翠星石から召集がかかったと思ったら親戚の経営するバイト先のおもちゃ屋の在庫処分に付き合わされるらしい。
「やたら人がいると思ったら、そーゆーことか。グループに分かれて戦って、勝ち抜いたら景品ゲット。負けたらそのゲームを買わされる、と」
「もうすぐくんくんグッズの発売日なのよ!負けられないのだわ!」
甘いな真紅。ゲーム界のKとうたわれた僕の実力をみせてやろうじゃないか!元ヒッキーをなめるなよ!!
ゲーム大会終了。予想通り、上位は部活メンバーで占められ、そして・・・
「あー!翠星石がジュンに負けるなんて一生の不覚ですぅ!」
「悪いな性悪人間!この景品は僕のものだーって・・『スーパードルフィーくんくん人形』?」
「あはは、ソイツは傑作ですぅ!そんなの持ってたら、ちび人間どころかただの変態人間ですぅ!」
「う~ん・・ほら、やるよ真紅。だから涎を垂らしながら鷹の目でこっちを見るのをやめろ」
「ああ!くんく~ん!!お持ち帰りなんてせずに、今ここで私と一つになるのだわ!だわー!!」
暴走した真紅を金糸雀が泣きながら止めている。にしても、いったい何をする気だったんだ、あいつは。
「ま、オヤジ99%の翠星石はこんなのいらないよな!」
「あ、当たり前ですぅ!こんな乙女なモノ、この翠星石に似合うわけ・・ないですよ・・・」

また翌日の薔薇骨市、メイドカフェ、バージン・モート前にて。
「(ううう、いきなり不良に絡まれるなんてえええ!何言ってるか解らないし・・ナメック語か?逃げられもしないし、もうダメか・・)」
「待て!!!」
ひゅんっ!しゅぱん!突然現われた鋏が不良達の服を切り裂く。
「な、何だコイツ!やべえぞ!ずらかれ!」ドタドタドタ・・・
「ふう、まったく。多人数でいじめるなんて悪い人たちだ。おっと、大丈夫かい?ジュン君?」
「あ・・ありがとう。君は?(あれ?翠星石か・・・?)」
「僕かい?僕の名は、蒼星石でsu・・・だよ!は、はじめまして!」
「(・・・・だな。)」

―その人との日々はとても甘かった。
「この服・・どうかな?ジュン君」
「僕っ子メイドktkrwwwwwww!!」
「え?」
「あ!その、とても可愛いよ!それに蒼星石は何を着ても似合うからな!」
「ふふ、ありがとね、ジュン・・・君。じゃあ精一杯ご奉仕しなきゃだね!」
「ここからが本当の天国だああああ!!」

―幸せだった。だが、少女の心を知るには少年はあまりに幼かった。
「ねえ、ジュン?最近、翠星石が傷つけられたのだわ。その痛みに耐え切れず、私に電話してきたのよ」
「傷ついたって・・何のことだよ!?」
「さあ?自分で考えることね。それがあなたの務めなのだわ」

―少年は努力する。大切な人のために。
「(どうして変装するのか、何に傷ついたのか、解らない事だらけだけど・・僕にできることは・・)蒼星石、プレゼントしてやるよ!その・・前に渡せなかったしな」
「わあい!ありがとうジュン君!じゃあこれがいいな。店員さーん!これ包んでくださーい」
「はいはい、ちょっと待つですよーって・・・蒼星石!?なんでジュンといるですかー!?」
「は!?え!?翠星石!?じゃあ・・・おまえ誰!?」
「やだなージュン君。僕は翠星石の妹の蒼星石だよ?ふふふ、はじめまして・・・かな?」
「翠星石の・・・双子の妹ー!?」



そして時は過ぎ、薔薇流しの夜へ。
「うーん、せっかく雛苺の演舞なのに人が多くて見えないな・・・」
人ごみの中でもがいていると、誰かに腕を引かれた。
「(蒼星石?え、こっちに来い?よく見える場所でもあるのか?)」
蒼星石に連れられて神社の奥に歩いていくと、うにゅー殿の前に水銀燈さんとべジータさんが居た。逢引か?
「って違ーう!僕は雛苺の演舞が見たいんだー!」
必死の訴えもむなしく、(ついでに二人にも見つかり)うにゅー殿不法侵入の共犯にさせられてしまった。 

楽しそうに中をカメラで撮っていた水銀燈さんが思いついたように話しかけてきた。
「そういえば、あなた達はこのお祭りの事をどこまでしってるのぉ?」
「えと、確か一年の無事を祝って、白い薔薇をバラシロ様へ感謝の意を込めて川に流すんですよね?」
「ああ、僕も真紅にそう聞いたな」
水銀燈さんがくすくす笑いながら、一冊のジャンク帳を取り出した。
「うふふ、じゃあお姉さんが教えてあげるわぁ。薔薇流しの本当の意味を」
その時聞いた話をまとめるとこうなる。
昔、この村にある『ろざ・みすてか沼』から沢山の乙女が現われた。しかしその乙女はツンツンしていたので村人と口げんかがたえなかった。
そこでバラシロ様は自分の体に咲く、デレ要素の詰まった白い薔薇を摘んで川に流し、乙女たちに優しさを与えた。こうしてツンデレとなった彼女たちは『薔薇乙女』として村人と平和に暮らした。
「そして村人たちはバラシロ様に、愛情を込めて育てた白薔薇を返還の意を込めて川に流すようになったの。だから薔薇流しの『薔薇』は、昔は『デレ』と読んで『デレ流し』と言われたそうよぉ?
そしてこの恐ろしい刃物はバラシロ様から白薔薇を切り落とすための神具ってわけぇ」
しかし、村の掟をやぶった人は鬼のようにツンツンしてしまった。これを村人は『バラシロ様の祟り』と呼ぶそうだ。
「掟の内容は『村から出ない、人を恨まない、うにゅー殿を侵さない』さぁて、私達は大丈夫かしらねぇ?うふふふふふ・・」
まあ僕は祟りなんて信じないけど、気味の悪い事には変わりない。ん?蒼星石がち近かずいて来る。
「ねえ、ジュン君?あの鏡に白い何かが映ったような気がするんだけど・・ジュン君は見てない?」
「まったく、そんな事言って脅えさせようなんて考えてもダメだからな。それに何も映ってないじゃないか」
「うーん、じゃあさっきのは僕の見間違いかなぁ・・・」
その後、べジータさんに呼ばれて、物足りなさそうな水銀燈さんをひっぱってうにゅー殿を出た。
「あー、空気がうまい」
外に出ると改めてあの部屋の空気が悪いことに気付く。蒼星石は水銀燈さんと楽しく話をしている女の子はつよいなあ。
「すまんな、ジュン君。しかし銀嬢の趣味にも困ったものだ。こんな薄気味悪い部屋の何が面白いのだろうな?」
「まあ、趣味は人それぞれですからね」
「中にあるのは古びた刃物に、わけのわからんガラクタ。それに君達がいた近くの鏡なんて白くぼやけていたじゃないか。だいたい・・・」
その後に聞こえたのは、セミの鳴き声と、自分の心音だけだった。


かなりあのなく頃に・薔薇流し編【前編】、完

 

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