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最近、蒼星石はジュンと急接近していた。
偶然席替えで隣の席になって、テレビ番組の話題で盛り上がって、
翠星石の場を混乱させる力も手伝ってジュンと蒼星石は互いに好意を抱きあう関係・・・
・・・だと、まわりにはバレバレなまで2人の距離は近づいていた。
そんな2人のある週末のおはなし。 



今日は学校が終わると翠星石が真紅の家にお泊りに行った。
ボクも誘われたんだけど、今日は行く気にならなかった。
なんだか今日のジュン君の様子がおかしかったからだ。
顔が紅潮しているように見えたし、声が裏返ったりどもったり。
とてもおかしかった。

だけどボクもたまにそんな風になることがある。
ジュン君をお弁当に誘うときなんていつもどもってしまうし、
2人きりでいるときはいつも顔が熱いから、
今日のジュン君みたいに赤い顔をしてるんじゃないかと思う。

だから、だからボクは今日一日とてもそわそわとしていた。
ジュン君がボクに何か言いたいことが、もしかしたら、デートの誘いとか。
いきなり告白だとか。プロポーズだったりとかするかもしれなくて
そんなことを考えるたびに期待するポジティブな自分と
そんなはずないというネガティブな自分が戦っていたりしたのだけど。
結局ジュン君からは何事もなくて、なんだか肩透かしなまま帰ってきちゃったんだけど。


だけどボクはまだあきらめきれてなくて。
今日のジュン君の態度には絶対に何か、大切な何かが隠されていて。
もしかしたらそれでボク達の関係が大きく動き出すかもしれなくて。
ボクは思い切ってメールをすることに決めていた。

  [Sub]
  ジュン君、こんばんわ。
  今日のジュン君、なんだか
  変だったよ?
  もしも何かに悩んでいるん
  だったらボクでよければ相
  談に乗るからね。
         ☆蒼星石☆
  
送った。心臓が止まるかと思った。
結局この文章を考えるのに夕方から10時すぎまでかかってしまった。
しばらく正座して待っていたけど、返事はなかなか来なかった。
そして12時になろうかというときに携帯が鳴った。
ジュン君からのメールだ。

  [Sub] Re:
  そんな風に見えたかな?
  心配かけてごめん。
  実は明日のことなんだけど
  さ、蒼星石は明日暇かな?
           JUM 

返事を待つ間、何度も何度も頭の中でシミュレーションした。
その一つがついにボクのもとにたどり着いてしまった。
携帯のキーをうつ指が、携帯を持つ手が、言葉をつむぐ頭が、
何もかも震えているのがわかる。

  [Sub]Re:Re:
  ボクは明日は暇だよ。
  翠星石も明日は家にいない
  しね。
         ☆蒼星石☆

何分かかったのかな?ジュン君のメールを見て、このメールを送るのに。
とても長かったような気がする。すごくすごくドキドキしてしまったから。
なるべく平静を装った文面にしたつもりなんだけど。。。
こういうのって送ってから心配になってくる。
なんか下心あるっぽいかな?大丈夫だよね?本当に翠星石はいないんだし。

1人で汗をかいたり顔を赤くしたりしていたら、すぐにジュン君からの返事が届いた。
ボクは一回深呼吸をして、メールを開ける。

  [Sub]Re:Re:Re:
  そうなんだ。僕は明日はデート
  の予定なんだけどさ。じゃあ


一回読んでも意味がわからなかった。
二回読んだらどうしようもなく不安になってきた。
三回読んだとき、ボクの目には涙が浮かんできた。

ジュン君は明日デートをする。もちろん相手はボクじゃない。
ジュン君が今日おかしかったのはボクじゃない誰かをデートに誘うからだったんだ。
そしてジュン君はちゃんと誰かを誘った。ボクじゃない誰かを。

『じゃあ』

メールをしめくくった別れの言葉。
とてつもない寂しさを感じ、ボクはベッドにもぐりこんで泣いた。

声をだして泣くなんて、小学校に入る前以来だ。
隣に翠星石がいたらすぐにかけつけて慰めてくれただろうか?
そんなことを考えられるようになったとき、時計を見ると5時になっていた。 

床に落ちたままの携帯に目を移す。
「恋だったのに。好きだったのに。」
そうつぶやいてボクはまた布団を被りなおした。

今はただ眠りたい。この痛みが嘘であるように。
祈るときのように、ゆっくりとまぶたを閉じる。

眠ったらまた夢を見るんだろう。いつだってジュン君が出てくるボクの夢。
どうか夢だけでもボクに優しくしてほしい。
そんな願いすら吸い込むように暗闇の中にボクの意識は落ちていった。




「ただいまです~おーい蒼星石やーい」
階下からの声に目が覚める。
夢は見なかったようだ。
「蒼星石ー部屋にいるですか~?」
声の主は階段を上がって、ボクの部屋の前で止まった。 

「入るですよ」
返事も聞かずに翠星石が部屋に入ってきた。
ボクは布団にまたもぐりこんでいた。
「もう夕方ですよ?」
「今まで寝てたですか?」
「どこか具合が悪いですか?」
翠星石の質問が次から次と口から飛び出してくる。
ボクの目にはまた涙がたまっていた。

「黙ってちゃわからねーです!」
返事もせずすすり泣くボクに業を煮やした翠星石が布団を勢いよくはぎとった。
それでもボクはベッドの上で丸くなったままで。あふれ出てくる涙をふくこともできず。
ただただ、泣いていることしかできなかった。

「いったい何があったです?翠星石にちゃんと話すです」

「ジュン・・・君が。・・メール・・・ぐすっ」
ダメだ。ボクはもうダメなんだ。
メールの文面を思い出しただけで。こんなにも切なくて痛くて。

翠星石が床に落ちていたボクの携帯をひらう。
画面はボクが開いたメールのままのはずだ。

「なっ、これは」 

「電源が落ちてるです(汗)」
そう言うと翠星石はすごい勢いで自分の携帯(同一機種)とバッテリーを交換
・・・・電源をいれる。
そして昨日の夜のボクとジュン君のメールのやりとりを読み終わると翠星石は怒りをあらわにした。
「ジュンのバカは何てメールを送ってきやがるです!乙女の気持ちを何にもわかっちゃねーです」
「せっかく蒼星石が勇気を・・・勇気を出したっていうのにです・・・」
翠星石の語気がだんだんと沈んでくる。そしてボクと同じような暗い顔になっていく。
「こんな・・・いつもと違うです・・・いつもなら・・・!!!?」
蒼星石これなんかおかしいです、と翠星石は何かに気づいたようにボクにメールを見せる。
「ジュンはいつもチビ人間の癖にいっちょまえに署名を入れるです!」
「これにはそれがないです、やっぱり変です」

ジュン君はメールの最後に自分の名前を打つ。いわゆる署名というやつだ。
自動ではなく手動でこれをいれるのがジュン君のこだわりだという。
打ったメールの内容を確認する意味で送る前に一呼吸いれるため・・・なんだそうだ。
これを聞いてからというもの翠星石は同じように署名をいれるようになった。
しかも☆で名前を囲んでるからジュン君のより格上・・・というのは本人談。
そしてボクも翠星石にひきづられる形でこの署名を入れるようにしている。
ジュン君と同じというのがとてもこそばゆかったけどなんだか嬉しかった。

ジュン君の最後のメールにはたしかにその署名が無かった。
ボクが感じた寂しさは『じゃあ』という言葉のせいじゃなかった。
『JUM』という名前が見えなかったことに寂しさを感じていたんだ。 

「蒼星石!電源はいつから落ちてるですか?」
翠星石の問いに『わからないと』だけ答える。
「翠星石も夜中にメールしたです。そのメールが来てないってことは」
ジュン君のメールを受け取ったすぐ後にこの携帯の電源が落ちた可能性が高いと翠星石は興奮気味にそう言った。

「センター問い合わせするです!はやく!問い合わせです!」
何がなんだかわからない、ただ混乱する思考をなんとか落ち着かせてボクはメール問い合わせを実行する。
受信メールは3件だ。
うち2件は翠星石。それにはさまれるように【ジュン君】の文字がメール欄の上部を埋めた。

「来てるっ!ジュン君のメール」

「早く開けるです!はやく!」
怖い・・・これに期待するのが怖いの?
ううん、それよりも。これがもしも・・・もしも・・・

  [sub]途中送信しちゃった
  そうなんだ。僕は明日はデート
  の予定なんだけどさ。じゃあ蒼
  星石にその相手を頼もうかな~
  なんちゃって(><)
  本当はノリの誕生日が近いから
  プレゼント選ぶの手伝ってもら
  いたくてさ。蒼星石暇だったら
  でいいんだけど、明日の朝10
  時に駅前の時計のとこで待って
  るから来てくれないかな?
             JUM 

ボクは・・・ボクは!!
なんてことをしてしまったんだ。ジュン君はやっぱりボクを誘ってくれていたんだ。
ボクは勘違いして!落ち込んで!気づかなくて!・・・ジュン君!!!

「ちょっと!翠星石何をいきなり脱ぎだしてるですか!(///)」

パジャマを脱いでクローゼットを開ける。
一番手前にあった服を引っ張り出すと慌てて袖を通す。
急いで階段を降りて靴を履いていると後ろから同じように急いで翠星石が降りてきてボクの頭に帽子をかぶせた。

「そんなボサボサ頭で行くつもりだったですか?一応・・そのっデートなんだから、これ被っていくです!」

ありがとう。いってきます。
そう言うと僕は勢いよく家を飛び出した。
駅前につくころには六時にはなるだろう。
だけどジュン君は待っててくれている。
ジュン君が待っててくれたなら。ボクは今度こそ。
ボクの気持ちをジュン君に伝えるんだ。 


一度も立ち止まらずに走り続けて、ようやく駅が見えてきた。

土曜の夕方は人気が多い。

だけどボクは間違えたりしない。

見失ったりしない。

時計の下で俯いて立ち尽くしているジュン君がはっきりと見える。

『ジュン君』と出せるだけの大きな声で叫ぶ、ジュン君の顔があがりボクを捉える。

ボクはジュン君の前まできて少し息を整えて、ジュン君を見つめる。涙腺が緩んでいくのがわかる。

浮かんでくる涙を隠すようにボクは「大好き」と言ってその胸に飛び込んだ。

ジュン君はとっても驚いてあたふたして周りをきょろきょろと見回して。

上を向いたり、下を向いたり、段々と顔が赤くなってきて、それから決心したように口を一度への字に結んで。

そっとボクの背中に手をまわしながら「・・・僕も」と言ってくれた。

           了

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