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懐かしい思い出

真紅の一件からまた数日たったある日。これは実は一番大変(?)だったかもしれないっと思った時の話だ。

「無邪気な少女」

ゆっくりと時を刻む時計の音。ゆったりした時間だ。掛けた時計は以前と同じように動く。
なんだか今日はのんびりできそうな気がする。
…しかし退屈を破壊するものはいつものようにあらわれる。

「猫さんなの~。綺麗な黒い毛なの~。」

……ははは。外で誰かが何かを言ってるけど僕には聞こえない聞こえないったら聞こえない。
声からして小学生低学年くらいだとは思うけど…。いや聞こえてない聞こえてないんだ。

「猫さんの家はここ?勝手に逃げたりしたらめっめっなのよ~。」

止めてくれ。そいつは僕の家の猫じゃない。ついでに猫って言うのはそういうもんだよ。

「ヒナじゃ届かないの~。」

どうやら呼び鈴まで届かないようだ。呼び鈴が鳴らなければ家の人間が出る道理は無い。
今日は回避できそうだ。

「えっ?猫さんが押すの?あいとあいと~なの~。」

…今なんと?猫が呼び鈴を押す?いややつならできる…。あの黒猫…どこまで僕を馬鹿に…。
もう奇妙な動物としてテレビ局に送ってやろうか…。 

そして呼び鈴は鳴った……。

「猫さんすごいの~。」

出なければいけないんだろうか…。いや出たほうがいいか。くそ、僕はいつからこんなに律儀になったんだよ。

「どなた…ですか?」
「初めましてヒナは雛苺。この猫が逃げてたからヒナが捕まえてあげたの。えっへんなの。」

黒猫を抱いて玄関に入ってきたのは金糸雀くらいの女の子。真紅と同じ金髪だ。
というか捕まえたは違うでしょ。
まあいいか。ややこしくならないうちに本当のことを伝えてしまえば。

「雛苺。僕は桜田ジュンだ。それでな。その黒猫はこの家の猫じゃあ…」
「あっ猫さん待つの~。」

って全然聞いちゃいないよ。ていうか黒猫のやつこの頃我が物顔で僕の家に入ってくるな…。
まあそれが猫だけならいいんだが…

「逃げないで待つのよ。猫さん逃げ足速すぎるの~。」
「ちょっと勝手に家のなかに…」
「捕まえたの~。猫さん観念しなさい。」

あれ?あの黒猫が五分も経たないうちに捕まった?小さな女の子に?おかしいな金糸雀がドジすぎたのかな?
いや逃げ方が…というか走り方がいつもよりおかしかったような…。 

「おい。そいつ足に怪我してないか?」
「うゆ?そういえばさっき着地がうまくいってなかったの。猫さん大丈夫?」

猫が着地ミスねぇ。マンションの十階から落ちても大丈夫って聞く猫が…。おかしな話だ。

「ジュン。包帯を貸してほしいの。このままじゃ猫さんがかわいそうなのよ。」
「んっ?ああ物置にあるから待ってろよ。雛苺包帯使えるのか?」
「これでもヒナはピンクの救急車で通ってるの。任せてほしいのよ。」

服がピンクだからピンクの救急車?誰だよそんなださい名前付けたのは…。
ああしかしこの頃の僕…その場の流れに流されまくってる気がする。

「これをこうして、こうやってこう…できたの~。猫さん大丈夫?」

固定だけとはいえうまくそれでいて手早く済ませた雛苺。
こんな小さな子が包帯を扱うのを手慣れてるのも驚いたがなにより黒猫がまったく抵抗せず怪我の処置を受けていたのに僕は心底驚いた。
本当、この黒猫は妖怪じみてるのか頭がいいのか…。

「よく我慢したのよ。偉い猫さんなの。」

まっ、そんなこと気にするよりも早くこの子に帰ってもらわないと…。 

「雛苺。流されたからもう一度言うけどな。この猫は…」
「ジュンこんな偉い猫さんどうやって育てたの?」
「いやだから、この猫は…」
「あっ、また逃げたの。走り回るのは怪我に響くからめっめっ。なのよ~~。」

…あの黒猫め。こっちの話し完全に理解した上で邪魔してるな。絶対そうだろ…。

「ふふ。捕まえたの~。」
「あ~も~いいよ。好きなだけ遊んでくれ。そして飽きたら帰ってくれ。」
「了解なの~。猫さんあっちで遊ぶのよ。」

顔が心なしか笑って見えるぞ黒猫。まじで猫又か?
…こんど笹塚にでも調べさせようかな…。

「さて時間は一時半か。昼寝でもしようっと…。」

浅はかなり…こんな言葉が今にも聞こえてきそうだ。
そうだよな。小さな子供が静かに遊ぶわけ無いよな。
…ドッテンガッシャンドッテンガッシャンうるさい。眠れない。もどかしい。

「ああ~~~もぉ!うるさいぞ。静かに遊んでくれ!」
「は、はいなの!猫さん。あっちで遊ぶの。そ~っとそ~っとなのよ。」

おっ。本当に静かになった。何して遊んでるか知らないけどこれでゆっくり寝られるな。

………… 

「ふわぁぁぁ。よく寝たよく寝た。時間は……三時半か。少し遅いけどおやつでも食べるかな。」

おっと雛苺はどこだ?ありゃ?隣で寝てる。元気に遊んだあとは昼寝か子供らしいな。
起こさないようにいくか。

「…猫さんダメなの。包帯とっちゃダメなのよ…。」

お、起きたか?……なんだ寝言か。
動いた瞬間に寝言を言うのは止めてほしい。心臓に悪いというかなんというか…とにかく止めてほしい。

「今日のおやつは……なんかあったかな?そういえば苺大福が…」
「うにゅ~なの~~。ジュンうにゅ~はどこにあるの。うにゅ~うにゅ~」

な、何が起きたんだ。苺大福と言った瞬間飛び起きやがった。

「な、なんだうにゅ~って?もしかして苺大福のことか?」
「そうなの。うにゅ~が食べたいの。」

うにゅ~うにゅ~言って何の祭りが始まったんだ…。
仕方ない。苺大福くらい食べさせてやるか…。

「ちょっと待ってろ。今持ってくるから。」
「わかったの。やったぁうにゅ~なの~。」

頭のなかうにゅ~でいっぱいだな。目が眩しいくらい輝いてるよ。ついでに涎が垂れまくってる…。飢えた野獣…? 

あれ?そういえば黒猫はどうしたんだ?見当たらないな。まあいいかうにゅ…じゃなかった苺大福、苺大福。
たしか台所に……

「って何でお前が!?」

なぜ僕が叫んだか説明しよう。それは苺大福が入っている袋をくわえた黒猫が窓から逃げているからだ。
恩を仇で返すとは…。
しかしどうしよう…あんなに目を輝かせていた雛苺に「苺大福はありません。」なんて言ったら暴走しそうだな。

「ジュン~~。うにゅ~はまだなの~。」

げっきちゃったよ。ええい。こうなったら自棄だ。

「苺大福は猫が持ち去っちゃった。だからもう無い。」
「えっ!?」

ほらみろ。こんなに悲しい顔になっちゃったじゃないか。いや待て悲しい顔……?

「ゆ、許さないの。ヒナからうにゅ~を取るなんて…いくら賢い猫さんでもぜぇったぁいに…許さないの~~!!」

うわ怖。オーラでてるよ。これはもはや苺大福中毒だろ。
黒猫。貴様一生恨む…。

「ジュン。玄関をあけるの。ヒナのうにゅ~を取り返すのよ。」

とにかく玄関にむかうか。これ以上オーラを浴びたら殺られそうだ。 

そんな空気の中神は救いの使者を僕に送ってくれた。……まあ簡単に言えば呼び鈴が鳴ったんだ。

「雛苺まずその負のオーラを消せ。事が済んだら買ってきてやるから。」
「うゆ~。仕方ないの。」

こいつ苺大福にたいして純粋すぎるだろ。あっ玄関を開けなくては…

「は~いどちら様ですか?」
「桜田君こんにちわ。今日ちょっとこっちに来ててそのついでに桜田君に会おうかな…て思ってきたの。」

玄関を開けると何かを入れた袋を持った柏葉がいた。何しにきたんだ?

「ああ柏葉。今ちょっと取り込んでるんだけど…」
「そう。お土産に苺大福持ってきたんだけど…」

これはなんということだ。柏葉さんあなたタイミングバッチリだよ。本当に救いの使者だよ。

「柏葉。」
「えっ?どうしたの桜田君。」
「最高のタイミングだよ。ありがとう」
「えっ、そんな…苺大福くらいで喜んでくれるなんて…。あれ?雛苺……?」
「あ~~トモエなの~。」

へっ?二人は知り合い?どういう事か誰か説明お願いします。って何言ってるんだ僕は…。

「二人は知り合いだったのか?」
「えぇ雛苺は私の友達だけれど…」
「あ…そ、そうなんだ…。」
…ならたぶんピンクの救急車と命名したのは柏葉だな…。実際どこか抜けてるから柏葉は。 

しかし僕って何をしてたんだろう…結局あの黒猫に翻弄されまくっただけじゃないか。

「トモエそれもしかしてうにゅ~?」
「そうよ雛苺。あなたの分もちゃんとあるわよ。」
「つまり用事ってこの子の家に行くこと?」

だとすればこれはタイミングがいいんだろうか悪いんだろうか…。

「その通りよ。桜田君」
「…そうか…まあいいや。上がりなよ。」
「お邪魔します。」
「早く早くうにゅ~うにゅ~」

はぁ。このうにゅ~中毒者め。そういえば黒猫は柏葉が来ることさえ予想してたのか?
…いやまさかな。まっ今は柏葉の持ってきた苺大福でも食べて落ち着くか。

…………………さて現在あれから六年経ったわけだが…

「ジュン。うにゅ~なの~。」
「わかったよ。わかったからちょっと離れてくれ。」
「雛苺は本当に苺大福が好きね。まあ私はここに来る口実になってるからいんだけど…」

んっ?いま柏葉がボソッと何か言わなかったか?…気のせいか。
はぁしかし高校生になってもうにゅ~中毒とは…。
しかしなんで僕の家に来て食べるんだろう…。そこが一番の謎だ。
柏葉が手を回して…それは無いか。まあこう賑やかなのも悪くないかな。

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