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蒼・翠「「MY FAIR FRAGMENT」最終回。はじまります。」
「MY FAIR FRAGMENT」第9話「事の顛末。そしてはじまり」


雛「翠星石はどこいったなのー?」
蒼「いたたた…手だけで引っ張られたらやっぱり痛いよ」

勢い込んで駆け出して来たは良いものの、途中、何処へ行ったかを見失って立ち往生する3人。

雛「ごめんなのー。…あ!階段の踊り場にじょうろが落ちてるのー!」
金「なら、きっと上かしら!人間追い詰められると上へ逃げるものなのかしら~」
蒼「上…ここより上っていうと、やっぱり屋上?」
金「早速行ってみるのかしら!」
蒼「うん!…お手柔らかにね?」

そして屋上入り口。
扉を開ける前、二人は小声で蒼星石を励ましてくれた。

雛「蒼星石、がんばるのー!」
金「6時間目の授業の事は気にしなくて良いかしら!だからゆっくり話すといいかしら!」
雛・金「れっつごー!なの!(かしら!)」

そして蒼星石は屋上へ押し出される。
外へ出ると、傾きかけた太陽と広い空が迎えてくれた。
見渡した限りでは、翠星石の姿はない。階段の出口周りを一周してみたが、やはりその姿は見えなかった。
蒼星石がため息をついて、別の場所を探そうと階段へ戻ろうとした時。

翠「…翠星石を笑いにきたのでぃすか?」
蒼「え!?」

辺りを見回したがやはり姿は見えない。

翠「上です。」

見上げると、階段の入り口の上、給水塔のあるあたりに翠星石が腰掛けていた。

蒼「翠星石!僕…」
翠「いいのです。どうせ翠星石は変態なのです。だから…嫌われて当然なのです」

最後の辺りは涙声だった。しかし、涙を見せないように翠星石は後ろを向いてしまう。

蒼「ねえ、聞いてよ翠星石!僕は…!」
翠「同情なんていらねぇです!!」
蒼「同情じゃないよ!!」

蒼星石は、痛む足を引きずりながら、給水塔へ続く鉄製の梯子を上り始めた。
片足が使えないので時間はかかるけれど、なんとか上に上ることが出来そうだ。

蒼「あのね!翠星石!ここまで来る途中…短い間だったけど、ちゃんと考えたよ!」

翠星石は、振り向けない。怖い。蒼星石に拒否されるのが怖い。
彼女の発する一つ一つの言葉に期待をかけるが、しかしその期待が裏切られるのが怖い。
聞きたくない、でも聞きたい。相反する気持ちにさいなまれて、翠星石は動けなかった。

蒼「僕は翠星石のことが…」

肝心な所。翠星石は、耳をふさごうと、両手を頭の横に上げる。

蒼「好きだよ!!」
翠「!!」

翠星石の目が見開かれ、そのセリフが聞けた嬉しさと共に上げた両手がゆっくりと下ろされる。
しかし、途中で何かを思い出したようにその手は固く握りしめられ、そして翠星石は叫んだ。

翠「嘘です!蒼星石は、翠星石と違って普通だから…普通だから、
  双子の姉で女の翠星石より男の方いいのです!!昼間、いってたじゃないですか…!」
蒼「あれは!今までも無かったし、これから先も僕が男の人に本気で告白されるなんて思ってなかったから…
  だから、ありえない話として、冗談のつもりで言ったんだよ!?」
翠「だったら、もし告白されたらどうするんです!」
蒼「それは…!」

考えていなかった質問。しかし、一瞬逡巡した後蒼星石はしっかりと答えた。

蒼「断るよ!今までも、これからも僕は翠星石が一番だから!!」

そして、やっと梯子を上り終える。

翠「それは…本当ですか…?」

まだ後を向いたままの翠星石から、弱々しい声でそんな言葉が聞こえてくる。

蒼「本当だよ!」

やっと、後ろを向いていた翠星石が振り返った。真っ赤に泣きはらした顔が痛々しい。

翠「じゃあ、昼間に女の子に告白されても断る、って言ったのは?」
蒼「そのときは、まさか翠星石のことを言ってるんだとは思わなくて…!
  他の子の事を聞かれたんだと思ってたんだ。」

さっき手紙をやりとりしたときに、金糸雀はきっと気が付いていたんだろう。
翠星石は、話した全部に対して怒った…今ならやっとわかる。
それから翠星石は感じてた疑問を全部ぶつけてきた。
蒼星石は、それに対して一つ一つ誤解をとくように答えていく。

翠「なら――!」
蒼「それは――!」
翠「だったら――!」
蒼「だって――!」
翠「ウホッいい蒼――!」
蒼「やら――!」

ちょっとまて。今なんか変なもん混じった。

蒼「ちょっと翠星石…僕真面目に答えてるのに…」
翠「あは…」

いつの間にか、泣いていた翠星石が微笑んでいる。涙をぬぐって立ち上がり、蒼星石に近づいてゆく。

翠「一番なんて…物足りないけど…今はそれで許してやるですぅ!」

いつものように、ちょっと偉そうな口調で。

蒼「うん!」

嬉しそうに微笑んで、倒れこんでくる翠星石を抱きとめる。
今は体重をかけ続けられると足が辛いので、そのままそろそろと腰を下ろす。
肩に顔を埋めた翠星石は、授業終了のチャイムが鳴ってもしばらく顔を上げなかった。
普段は真面目な蒼星石も、この時ばかりは何も言わず翠星石を抱きしめる。
そのまましばしの時間が流れて…

蒼「…ちょっと風が強くなってきたね。戻ろうか」
翠「もうちょっと…このままでも…」

消え入りそうな声が聞こえてくる。

蒼「でも、だんだん寒くなってきてるし。風邪引いちゃうよ?」
翠「蒼星石が看病するです!」

顔を上げた翠星石がそんなことを言う。

蒼「二人揃って風邪引いちゃったら誰が看病するのさ」
翠「…仕方が無いですね。なら…ちゅーしてくれたら戻るのです」
蒼「ええっ!?」
翠「嫌なのです?さっき好きだって言ったのは嘘だったですか!?」

睨む翠星石。しかし、顔を真っ赤にした蒼星石は、あたふたするばかり。

蒼「嘘じゃないけど!でもちょっとほら。なんていうか…恥ずかしいというか…」
翠「気にするなです!誰も見てないのです。」
蒼「う…わかってる、けど…」

蒼星石には一つだけ心配事があった。ここまで連れてきてくれた二人のことである。
あの二人は、噂話だのクラスの恋愛話だの、そういった話題が大好きだ。
下手すると、どっからか覗いてたり聞いてたりするんじゃないかと気が気ではなかった。
しかし、さっきまで叫びあってたことを考えるともうどうにもならないといえばならないけれど…

翠「してくれないと、動かないのです」

ぷいっと横を向く。このままだと、また翠星石がへそを曲げそうだ。
仕方が無い!恥ずかしいけれど…
蒼星石は、そっと体を寄せると、翠星石の頬にちゅっ!と小さくキスをする。

蒼「ごめん…えっと今はコレだけでもいい?」
翠「し、仕方ないです。今はコレで許してやるです。帰ったら…ちゃんと口にするですよ!」

お互いに顔を紅く染めながら、なんともぎこちない会話。

蒼「…よし!じゃあ、戻ろう!」

恥ずかしいのをごまかすように蒼星石が言ったのを皮切りに、二人で鉄製の梯子を降りる。
そして、屋上の扉に手をかけて…

蒼「あ、あれ?あかな…い…?」
翠「え?…ほんとです!あかないです!!」

ガタガタと揺らしても、一向に開く気配が無い。どうやら鍵がかかっているようだ。

蒼「もしかして…」

その頃。HR直前の教室にて。

紅「…あの二人、遅いわね。一体何をやっているのかしら…」
金「きっと、今頃屋上で仲良くやってるのかしら」
雛「ヒナ、ちゃんと鍵も閉めてきたし。翠星石も逃げられないのー!」
紅・金「「は?」」
雛「屋上の鍵、職員室から借りてきて閉めたなの」
金「そういえば、屋上から戻る途中で、雛苺は用事があるとかで職員室に向かったかしら…」
紅「雛苺……」

真紅は頭を抱える。そして能天気に微笑む雛苺。

紅「雛苺。それでは二人とも戻って来ようにもこれないのだわ…」
金「仕方が無いのかしら、HRが始まる前にすぐに開けに行くのかしら!」

金糸雀がそう言って立ち上がったとたんに、ガラッと開かれる教室の扉。

梅岡「おーい。HRはじめるぞー!全員席つけー!」
金「ま、間に合わなかったかしら…」


屋上では。

翠「チビチビ苺も金糸雀もっ!なんて事をしてくれるですかー!!」
蒼「仕方がないよ…きっと、真紅が後で開けに来てくれるって…」
翠「こんな寒い屋上に閉め出すなんて!!あとで覚えてろですぅーーー!!」

エキサイトする翠星石と、半ば諦めたような表情で座り込む蒼星石。
うろうろと歩き回る翠星石を眺めながら、蒼星石は。

蒼「ねえ、翠星石。」
翠「なんですか!」
蒼「あのさ。僕、まだ色々実感とか沸いてないし、
  本当に翠星石と同じ気持ちなのか、とかまだ自信は無いけど…
  でも、生まれる前から一緒だし…これからもずっと、一緒にいようね。」

特に何とはなしに思ったことを言ったのだろう。蒼星石はにっこり微笑んでいる。
それに対して、真っ赤になった翠星石は、歩くのをとめて蒼星石をびしっと指差した。

翠「恥ずかしいセリフ禁止です!」
蒼「ええっ!っていうかそれはネタが…」
翠「禁止!とにかく禁止です!…そんなの、当たり前なのです……!」

屋上の広い空の下、冬の風と傾き始めた太陽だけがそんな二人を見守っていた…。


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