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翠星石の胸にはまだ水銀燈の言葉が突き刺さっていた。

翠「ジュンと翠星石は両想いですよぉ…相思相愛の仲に決まってますぅ…」

ダイニングの壁に掛けてある時計からカチカチという音が聞こえる。
2階が何やらドタドタと騒がしい。

翠「…起こしてしまったですか…うぅ…いつまでも泣いてばかりはおれんです…」

翠星石は涙を拭って立ち上がり、手を洗い直してから食パンをトースターにセットする。

翠「妹達に涙を見せるわけには…」

もう、後ろを向いてはならない──

翠「(ジュンにも…こんなところを見せるわけにはいかねぇです…)」

前へ進むしかない──

蒼「…おーい、何があったの?」
紅「朝から騒々しいわねぇ…」
翠「…あ、おはようです~」

2階からパジャマのままの蒼星石と真紅が下りて来た。
どうやら先ほどの水銀燈との口論で目が覚めたらしい。
しかし、翠星石は真剣な表情の2人と目を合わすことが出来なかった。
朝っぱらからジュンのことで怒鳴り散らしてただなんて恥ずかしい──

翠「別に何でもないですよ?」
蒼「そんなはずはないと思うんだけど…」
紅「水銀燈とどんな喧嘩してたわけ?」
翠「と、とりあえず学校へ行く用意をしてからテーブルで座って待ってろです」

問い詰められて戸惑う翠星石の様子を訝しげに見つめる蒼星石と真紅。
卵を割ろうとするも、手が震えてうまく割れない。

翠「あぁもう!さっさと──」
蒼「分かったよ。その代わりまた後で聞くから」
翠「…わ、分かったです…」
紅「…」

昨日の晩と同じ口調の蒼星石に翠星石はムスッとした顔をした。
真紅はそんな2人を見て何か言おうと口を開いたが、
躊躇してそのまま2階へ上がっていった。
上で部屋のドアを開けたような音がした後、翠星石は卵を一旦置いてダイニングへ向かい、
そのまま椅子にドスッと腰掛けて溜息をつき、しかめっ面でテーブルに頬杖をついて黙り込んだ。

翠「…(寝る前から思ってたんですが、どうも癪に障るです…)」

ある程度時間が経過すると、翠星石は再びキッチンに戻り、卵を割り始めた。

翠「何で蒼星石はあんなに必死なんですかねぇ」

もう1つ卵を割る

翠「いったい今まで何を見てきたんですか…」

そして卵を溶く。

翠「心配しなくても…ジュンが…だ…だ、だだ大好きなのは変わらんですのにぃ」

顔が熱を帯びていくのを感じつつ卵を溶く。

翠「もちろん、カラオケの帰りに…言うつもりですぅ~?…あ」

卵を溶く手がピタッと止まる。
チン!とトースターが鳴った。

翠「…ま、まーっさか………蒼星石に限って…あ…あははは……」

翠星石はトーストを皿に乗せダイニングに運び、
またキッチンに戻ってバターとジャムを冷蔵庫から取り出し、
それもまたテーブルに置き、そしてキッチンへ戻る。
何だろう…身体に何かゾクゾクっとくるこの感覚は──

翠「…まさかですね…」

翠星石は溶いた卵に塩と砂糖を加え、
菜箸でかき混ぜながらフライパンに流し込んでいく。

翠「いや、ちょーっと待つです…カラオケに蒼星石が来るのは…」

丁度その時、蒼星石と真紅が制服に着替えて下りて来た。

紅「あら、香ばしい香り──」
蒼「もう焼けたんだね」
翠「(ひっ!)そ、そうです。さっさと食べるです」

翠星石は薄く延ばした卵を慌ててクルクルっと巻いた。

翠「(危ねぇです…卵焼きが台無しになるところだったです…)」

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