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『保守かしら』
2007年6月18日 あめ
 
 おねえちゃんが日記を見つけてくれた!
 てっきりフランスのどこかで落としたんだと思ってたけれど、食器だなの裏にはさまってたわ。
 これは策士でも気づけない盲点ね。
 「どうしたらそんなところに落とせるのよ?」って聞かれたけれど、自分でもちょびっとふしぎ!?
 
 「一生付き合っていくことだってできるのよ?もっと大切にしてあげなさい。」っておねえちゃんに言われた。
 返す言葉もございませんかしら…。
 この日記は中の紙を取りかえて、一生使っていくことができるんだって。
 おねえちゃんからもらった日記帳、もちろんずーっと使っていくかしら!
 
 そのために日記帳さん、あなたに名前をつけてあげる。
 名前は…そう、ピチカートかしら。
 ピチカートはいつもカナの近くにいてね。
 きっとずーっといっしょよ!





2007年6月20日 あめ つゆ
 
 今日は千客万来の日。
 いつもどおり部室でばらしーちゃんとチェスをしてたら、蒼星石が訪ねてきたかしら。
 蒼星石は雨ばっかりで、園芸部の仕事ができないって、こぼしてた。
 
 家に帰ると、おねえちゃんのおきゃくさまが何人もいたかしら。 
 家で夜会を開くための打ち合わせのためにいらしてたんだって。
 おねえちゃんってば、はりきっちゃって家中をひっくり返しそうないきおい。
 カナまで慌てちゃいそうかしら。
 
 そ う いえば、 蒼星石とのチェスはこれでカナの32連敗。
 
だいじょうぶよピチカート。この冷静乙女金糸雀は敗北もクールに受け止めるわ、ぜんっぜんくやしくないかしら!
きっと33回目は負けないもん…!





『保守かしら』
2007年6月21日 あめ
 
巴が雛苺がもうすぐ帰ってくるって教えてくれた。
あんなことがあったフランスを離れて、退院後はこっちの学校に戻ってくるんだって。
 雛苺がフランスに転校したときはすごく残念だったけれど、こんな形で戻ってきてくれても、うれしくないかしら。
巴もふくざつな気持ちだったみたい…。
 
今日はおねえちゃんに会えなかった。
  オーダーメイドの仕事もいよいよ山場なのかしら?
カナはヴァイオリンをアトリエに向けて弾くだけかしら。





『保守かしら』
2007年6月24日 はれ

ピチカート、今日は色々なことがあったかしら!

今日はおねえちゃんが準備してた夜会の日。
近くの町で開かれる人形展覧会の出品者の方々の交流会。
カナも黄色とオレンジのドレスを着て参加したかしら。みっちゃんお手製の髪飾りもばっちり。
たくさんの人がきれいなドレスを着てて、お家が不思議の国みたいなふいんき。

けれど、みんなの視線を集めたのはやっぱり、おねえちゃん。
黒のドレスに銀の髪…おねえちゃん自身が絵から抜け出してきたみたい。
ほんとに、おねえちゃんってきれい。
おねえちゃんはお客様とあいさつするたびに、たくさんたたえられていたかしら。

カナは夜会のBGMで「金と銀」や「ピチカートポルカ」とかを弾いたの。
お手伝いは食器を出したりとかのほうが良かったんだけれど、専門の人が来てたからしかたないかしら。

BGMのつもりで弾いてたんだけれど、やっぱりばらしーちゃんは熱心に聴いてくれてた。
ばらしーちゃんは紫のドレスに、紫薔薇の眼帯をしてた。ひょっとしてキラキショウのえいきょう?
槐さんはいつもの作業着。あんまり自分の服装に興味がないみたい。ばらしーちゃんはそこにちょびっと不満そうだった。
白崎さんは…ウサギのお面がよく出来すぎててちょっと怖かったかしら。

槐さんは、この家を懐かしがってた。槐さんが一人立ちする前は、ここで修行していたんだって。
「今でもあの地下設備は使っているのかい?」って槐さんが言い出して、家の地下に行ってみることになったかしら。
危ないから近づいちゃだめって言われてたから、正直どきどき。

家に地下があることは知っていたけれど…こんなにすごいとは思わなかった。
カナには、よくわからない大きな工作機械がたくさん。カナの頭より大きい丸カッターがぶら下がってるし、一体何に使うのかなって思っていたら、槐さんが色々説明してくれた。

「なつかしい。よく粘土を練らされたものだ」
「これがボールミル」「これは混合貯蔵タンク」「これはプレス機…取り扱いには注意が必要だ」
ここには釜以外の、人形を作り、加工するための設備がそろっているんだって。
「人形師でもここまでこだわっていたのは、師匠ぐらいのものさ。なっとくできる素材ができなければ、何日だってここにこもっていたよ。
ここは師匠の第二のアトリエと言えるかもしれない」
お父様のもう一つのアトリエ。
お父様の残した欠片がこんなところにあったなんて、ぜんぜん知らなかった。
人形師が集まった日に、お父様のことを教わるなんて、何かの運命かしら。 

地下から戻る途中に、不思議なお客様にあった。
シルクハットを被っていて、顔はわからなかったけれど…
そのお客様は人形劇を見せてくれた。
糸で吊った人形をあやつる、やさしい手つき。
カナにまで、とっても人形を大切にしていることが伝わってくるみたい…。

劇は悲しいお話だったの。
静かに、みんなが沈んでいく話。
みんながみんな、わかりあえずに色んな物を失くしてく。
受け入れられなかった商人が「おおい音楽、しっかりやれよ!新しいご領主様のお通りだ!」
って嘆いて叫ぶのが、いまでもはっきり耳に残ってるかしら。

劇が終わってから、廊下はしん、としてた。
「さ…おじょうさん、これで人形劇はおしまいだよ」
お客様はそういって、カナを送り出してくれた。
カナはお客様もいっしょに戻ろう?って誘ったんだけれど、お客様は「もう戻れないんだ、私はもう行かねばならなくてね」って。
なんでだったのかしら、その人の声を聞くとすごく悲しくなって、涙がぽろぽろこぼれた。 


「また会える?」って聞いたら、「それはね…」ってその人の返事が、なんて言われたのか思い出せないかしら。
あの時、ピチカートにすぐ聞いてもらえばよかった。

お客様が階段に消えていくのを見送って、槐さんも白崎さんもばらしーちゃんも、いなくなってた。
いつのまにか、みんな先に広間に戻っちゃってたみたい。
広間に戻ったら、カナがはぐれたことになっているし、みんなはくじょーかしらっ。
そういえば、時間も20分くらいしかたってなかったし、長い劇を見たと思ったけれど、集中してたから、そう感じただけだったのかしら。

広間に戻ってから、おねえちゃんとおじいさんが真剣そうな調子で話していたから、ちょびっと気になって近づいたけど、すぐ二人ともカナに気づいたかしら。
お話したら、おじいさんは蒼星石のおじいさんだった。
そうそう、蒼星石にはお姉さんがいるんだって。初耳かしら。
ほんのちょっぴり「まだ知らない」「もうすぐ」って言葉だけが聞こえたけれど、どういうことなのかしら?

ねぇピチカート。
カナは夜会なんて初めてだったけれど、とっても不思議な感じのするものなのね。
おねえちゃんはまた、アトリエにこもっちゃった。
きっと他の人形師の方々と触れ合って、創作意欲が刺激されたんだわ。
カナもあと一曲、お姉ちゃんに向けて弾くかしら。
そう…「天体の音楽」にしましょ。ちょっとうるさいかしら?




『保守かしら』
2007年6月25日 はれ 

昨日遅くまで起きてたせいか、目が覚めたらお昼だったかしら…。
おねえちゃんも、まだ寝てた。
あわてて制服を着て、遅刻届を取りに職員室に向かったのよ。 

今期2度目だから、反省文までリーチよ、って先生にしかられちゃった。
今日の給食にはプリンがあったのになぁ。
って考えていたら、後ろから制服のそでを引かれたかしら。
いっしゅん、ばらしーちゃん?って思ったけれど、振り向いた先に立っていたのは、雛苺だったかしら!
もちろん横には巴が立ってた。あっさり授業を抜けてこられるのは、やっぱり委員長パワーだったのね。 

雛苺は、退院してから、すぐこっちに帰ってきたんだって。
もう一度、この学校に通うために、まずはあいさつに来てたところだったかしら。
「もう少しで、かなりあとは、すれ違いになるところだったの」
って言って、雛苺は笑ってた。危ないところだったかしら。
復学まではもう少しかかりそうなんだって。きっとまだ体調がよくなかったのね。 顔色が、まだ白かったもの。
いろいろなことを話したけれど、フランスの話は全然しなかった。
それよりも、これからの話をしたかしら。
けれど、雛苺を正門まで見送った別れ際に、雛苺がちっちゃな声で「うにゅーをありがとう」って、耳元でささやいたかしら。 

雛苺の乗ったタクシーが見えなくなったくらいで、巴が深こくそうな顔をしてた。
「だいじょうぶ、これからは楽しいことばっかりかしら」ってはげましたんだけど。
巴は深こくそうな顔のまま、
「いえ、そのことじゃなくって。カナリア、あなた遅刻してきたのよね…。
1時間たった今では、サボリもやったことになるんだけど」
だって。 

反省文ってなんであんなに書くのが難しいのかしら…。
先生に「遅刻にサボチュードだなんて、あなたはなんて不良なの!」って言われるし…。
巴のはくじょうものー。けん力の犬―。
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