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   「祭りの夜」

   「第6話」


 むかぁしむかしのはなしです。

では続きと参りましょう……

 それは大変な騒ぎになりました。
なにしろ女の子が2人になって戻って来た上に、片方は【神さま】だというのですから。
【神さま】はみんなの前で天に手を翳しかき混ぜる様に回しました。
すると渦が出来るように雲が現れたではありませんか。
それはみるみるうちに稲光を宿した黒雲に変わって、程なく雨が降り始めました。
【神さま】は喜ぶ村人を満足げに見回すと、女の子に顔を向けて嬉しそうに笑いました……




 「………………………」

4人は神社の境内の隅に座り込んでいました。
射的屋のおっちゃんは、雪華綺晶はずっと応援しながらリンゴ飴を食べていたと言いました。
ですが金魚すくいのおばちゃんもジュンと一緒に雪華綺晶が来たと言うのです。 

「一体どうなっているのかしらぁ……」

水銀燈がポツリと漏らした言葉に雪華綺晶がビクッと震えました。

「いつもと調子が違うし、左目に眼帯していておかしいなとは思ったんだけど……」
「一体何者なのかしら……」

真紅は人混みを見つめて呟きました。
お面を付けてはしゃぐ子供や恋人同士が目の前を通り過ぎて行きます。
ですがさっきまでの楽しい気分は得体の知れない不気味さに変わり、沢山の人の中にいるのに取り残されたような気持ちでした。

「取り敢えず帰らない?今日はもう此処にいない方がいい気がするわ。」

水銀燈はいつになく真剣な様子で雪華綺晶の手をひいて立ち上がり言います。
一同は人の流れの中を神社の出口に向かいました。 


「ありがとうございます。もうそこですから一人で大丈夫ですわ。」

家まで送るというジュン達を雪華綺晶はやんわりと断りました。

「顔色がすぐれないわよ?無理しない方がいいわ。」
「これはリンゴ飴を食べ過ぎただけですから。心配かけてすみません、ではまた明日…」

そう言うと雪華綺晶は一人で行ってしまいました。

「随分無理して笑っていたわね。」
「無理もないわ、私だって怖いもの。」

水銀燈は真紅の呟きに返すとジュンに向き直りました。

「何か心辺りは無いの?昨日も今日もジュンだけがニセモノにあってるんだから。」
「そんな事言われても…僕もさっぱりだよ。」
「神社に戻ってみない?ニセモノがいるかもしれないわ。」

只話していても仕方ないので水銀燈達は再び神社へと足を向けました。 





その頃、雪華綺晶は家の手前の十字路に差し掛かっていました。
家が見え、雪華綺晶は大きく溜め息をつきます。
強がっていましたが、何かに出くわさないかビクビクしていたのです。
その時急に声を掛けられました。

「雪華綺晶」
「はひゃあ!ど、 どなたですか!?」

驚きで声が裏返りましたが返事をして振り返ると、今通って来た道の奥に誰かが立っていました。

「水銀燈?真紅?ジュン様ですか?」

暗がりに目をこらして見ると人影が見えます。

「ちょっと、悪趣味ですわよ!驚かそうとしてるんですか?」

語気を強め声を掛けると、人影はスッと見えなくなってしまいました。

「全く、何かの悪ふざけでしょうか?」

腹を立てていると

「雪華綺晶」

と、右手から声がします。




慌てて見ると奥の街灯の下に誰かが立っていました。
薄暗い明かりとはいえ、よく見えないなんてまるで真っ黒な人間のようです。

「だ、誰なんですか!返事をなさい!」

なけなしの勇気で怒鳴りつけると、闇に溶け込むように見えなくなってしまいます。

「そ、そんな…」
「雪華綺晶」
「ひぃぃ!?」

後ろから声が掛かりました。
振り返るとさっきよりも近くにダレカが立っています。

「あ…い、嫌…こないで…」

後退りする雪華綺晶は一つの事に気づきました。
自分は十字路の真ん中で、周りを塞ぐようにダレカは近づいていると。
次は…そう考えると、雪華綺晶は走り出していました。
自宅の門をくぐり抜け玄関の扉に手をかけた瞬間

「 雪 華 綺 晶 」

耳元で声がして雪華綺晶の体から力が抜けていきました…
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