潤が旅に出て幾許か時が過ぎた頃。
とある山に、鬼と女が居た。
女の腕には、赤子が抱き抱えられている。
時々、鬼にむかって「とぉ~」と、笑顔を浮かべながらその小さな手を伸ばす赤子。
鬼は、困った様な笑みを浮かべつつ赤子の頭を優しく撫でる。
それが嬉しいのか赤子は、また「とぉ~」と言って鬼に小さな手を伸ばすのだった。
「■■■■」
「ん? あぁ……そんな悲しそうなツラすんじゃねぇよ」
■■■■と呼ばれた鬼は、自分の名を呼んだ女の顔を見てそう言う。
「うん……」
「だから、辛気臭い顔するんじゃねぇって言ってんだろうが」
苦笑しながら、鬼は女の頭を乱雑だが優しく撫でる。
頭を撫でられ女は、少々赤面した。
「■■■■」
「ん……わぁってる。だから、俺がわざわざ封印されるんだろう?」
な? と、笑みを浮かべる鬼。
相変わらず赤ん坊は「とぉ~」と言いながら笑顔を浮かべ手をパタパタと動かしている。
「僕が見たのは、現実に起こらない事かもしれないんだよ?」
「なんだ? 此処まできて怖気づいたか?」
「違う……怖気ついた訳じゃない……」
「わぁってる……なぁに。元々こうなる運命ってヤツだったんだろうよ」
鬼は、ドカッとその場に座るとさ、はじめてくれや。と目を瞑った。
女は、一度軽く頷いた後赤子を片手で抱き、自由に動くよう担った方の手を鬼へと向ける。
そして、女は口を開き術を紡いだ。
鬼の身体が、徐々に石と成り果ててゆく。
女は涙を流しながら、術を紡ぎ続ける。
「おう」
完全に石になる前に鬼は、口を開く。
「ちゃんと■■■の面倒はみてやるよ。じゃぁあの世でな……■■■……いや、美衣」
鬼は、ニカッと笑みを浮かべた後完全に石となった。
「とぉ~?」
「お父さんはね……遥か未来を護る為に石になったんだよ?
「とぉ~?」
「そう、美音を護る為でもあるし……遥か未来の■■■を護る為になんだよ」
女は、顔を上げ空を見る。
闇空には、綺麗な星々と月が浮かんでいた。