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『メイメイ飼育日記』第4回

銀「はぁ、最近食費がかさむわぁ…」
学校からの帰り道、水銀燈は近所のスーパーの精肉コーナーで安い生肉を大量に買い込んでいた。
食費がかさむ…そう嘆く彼女だが自身はげんなりとした様子でどこから見ても大食をはたらいているようには見えない。
そう、この大量の生肉は水銀燈が食べるためのものではなく彼女のペットであるメイメイの餌なのだ。
ゼットン飼育マニュアルには「餌は与える必要はない」と書かれているにもかかわらずの行動…それには深い理由があった。しかしそれは当然メイメイが可愛いからというものではない。
銀「でも…餌をあげなきゃまた部屋が大変なことになるし…はぁ…」
その理由は簡単である。メイメイは放っておくとどこからともなく獲物を狩ってきてはたびたび水銀燈の部屋でそれを貪り喰うのだ。
あるときはカラスの羽が部屋に散らばり、またあるときには獣の体毛や血痕があちこちに散らばっていたこともあった。

銀「このままだと…いつか人間の連続失踪事件になりかねないわねぇ…」

水銀燈の脳裏にそんな洒落にならない考えが浮かぶまでそう時間はかからなかった。

それ以来水銀燈は近所のスーパーで安い生肉を買い込んではメイメイの餌にしているのである。


銀「はぁ…」
水銀燈は溜め息を吐きながら財布とは対照的に重くなった買い物袋をぶら下げて帰路を歩く。
すると近所のおばさんが彼女に話し掛けてきた。
おばさん「あぁ、ねえねえ水銀燈ちゃん?」
銀「はい?何ですかぁ?」
おばさん「さっきからウチのロンちゃん(犬)が見当たらないのよ。水銀燈ちゃん、見なかった?」
銀「いえ…見てませんけどぉ。」
おばさん「おかしいわねえ…ついさっきまではいたのに、本当に消えちゃったみたいにいなくなって…」
銀「消えた…みたい……(ハッ!!)」
水銀燈はその言葉にギクリとした。
銀(ま…まさか……メイメイが…!?)
十分に有り得る話だ。メイメイならば犬くらい一瞬で仕留めた後すぐにテレポートで現場から姿を消すことは造作もないことなのだから。
そう考えれば考えるほど水銀燈はガクガクと震え全身から血の気が引いていった。
おばさん「水銀燈ちゃん?顔色悪いけど…気分でも悪いの?」
銀「(ビクゥッ!)い…いえ!何でもないわぁ!じ…じゃあ私はこれで……うふふふふふ…」ダッ! 

そう言うなり水銀燈は家へ向かいダッシュした。
やがて眼前に自宅の門が見えてくる。そしてそのドアを開けると一目散に自室へと駆け込んだ。
銀「メイメイ!!」
肩で息をしながら部屋の中を見渡す。
最悪変わり果てた犬の死骸が転がっている光景を覚悟した水銀燈であったが部屋の中は登校前と変わらぬいつもの整った状態のままであった。
銀「ふぅ…とりあえずは安心ねぇ…でも、早くメイメイを見つけないと…
メイメイ!出てきなさぁい!」
水銀燈は大声でメイメイを呼ぶ。
だが一向にメイメイが現れる様子はない。
銀「おかしいわねぇ…いつもなら呼んだらすぐに出てくるのに……ん?」
そのとき、彼女の目に信じられない光景が飛び込んできた。
銀「メ…メイメイ?」
メ「……」
なんと自室のベッドの脇でメイメイがうつ伏せになって倒れていたのだ。
銀「ちょっとぉ、そんなとこで寝てんじゃないわよ…」
水銀燈はメイメイを掴んで起こす、しかしメイメイは一向に動く気配はない。
銀「メ…メイメイ………?」
メイメイの胸と顔の発光器官は今や輝きを失い抱え上げられた体から両腕は力なくだらりと垂れている。 

銀「メイメイ…まさか…本当にジャンクになっちゃったのぉ…?」
あれだけ鬱陶しがっていたにも関わらず、あまりにも突然の出来事に水銀燈の胸には徐々に寂しさが湧き上がってきた。
銀「メイメイ…お墓…作ってあげなきゃね…」
水銀燈はメイメイを抱きかかえると階段を下り庭へと出た。
やがてスコップで庭に大きな穴を開けると傍らに横たえていたメイメイを抱き上げた。
銀「ふぅ…あんたには本当に手を焼かされたわねぇ…でも、せめて安らかに眠って頂戴…」
そしてメイメイの体を穴の底に預けようとしたそのときである!

ドクン…ドクン…ドクン…

水銀燈の耳に異様な音が飛び込んできたのだ。
銀「な…何?この音…」

ドクン…ドクン…ドクン!

しかもそれは徐々に大きくなってゆく…そして次の瞬間、メイメイの発光器官が激しい光を放ちながら点滅を始めた。
銀「きゃあっ!な…何ぃ!?…熱ッ!!」
途端にメイメイの体が触れていられないほどに熱くなり、たまらず水銀燈はメイメイを離した。
そして衝撃の瞬間が訪れた…

『パリ…ペリリ……ベリィッ!!』

銀「!?」 

メイメイの背中に小さな亀裂が入ったかと思うと、その亀裂が縦に大きく割れた。
そして…

「ゼットォ~ン…」

ヌチャア…と粘着質な音と共にそこからメイメイが姿を表したのである。
銀「き…きゃああああ!きゃああああああ!きゃぁぁぁああああああああああああ!ッ!」
そのあまりにも凄まじい光景に水銀燈は喉が破れんばかりの悲鳴を上げた。
そう、メイメイは死んだのではなく脱皮のため一時的に仮死状態になっていただけだったのだ。
しかしそんなことを考える余裕もなく水銀燈はその場で意識を失った…。



銀「ぅ…ん…ここは…」
目を覚ました水銀燈は自室のベッドの上にいた。
銀「私…どうして…」
メ「ゼットォ~ン…」
銀「ひいぃっ!!」
その自分を見下ろしていたメイメイに驚き慌てて飛び起きた水銀燈であったがコホンとひとつ咳払いをすると落ち着いた様子でメイメイに話し掛けた。
銀「あんたが…運んでくれたのぉ?」
メ「ゼットォ~ン…」
メイメイが頷く。
銀「そ…そう、ありがとう…でも脅かさないでよねぇ…だいたいあんた……ん?」
そのとき水銀燈はあることに気付く。
銀「あんた…なんか大きくなってない…?」
メ「ゼットォ~ン…」 

脱皮とは生物が成長するための現象である。
当然例に漏れずメイメイの体は以前より一回り大きくなっていたのだ。
銀「あんた…一体どこまで大きくなるのよぉ…?」
水銀燈はげんなりとしながら今日何度目かも知らないため息を吐きうなだれる。
メ「ゼット~ン…」
するとメイメイは一瞬で部屋から姿を消した。


そして数分後…
メ「ゼットォ~ン。」つ?
銀「ひいいいぃっ!!」
再び戻ってきたメイメイを見てまたも水銀燈は絶叫した。
なんとメイメイはその手に生きた犬をぶら下げて帰ってきたのだ。
犬「ギャウンギャウン!!」
メ「ゼ~ッド~ン…」
騒ぐ犬に向かいメイメイは威嚇するような低い声を出す…
犬「(ビクゥッ!)ク…クキュ~ン…」
そのとき水銀燈はあることに気付いた。
銀「あんたその犬……近所のおばさんとこのロンじゃなぁい!!」
メ「ゼットォ~ン…」コクコク
メイメイはさも当然のように胸を張って頷いた。
銀「い…今すぐ返してきなさぁぁああああああああああい!!」
再び響く絶叫…

後日近所のおばさんからロンが見つかったとお礼の連絡が入ったが、果たしてメイメイの行為が水銀燈を元気付けようとした行為であったのかは謎である……。

続く

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