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 冬の面影が消え春が芽吹き……
 春と言う準備期間を終え……熱い祭りの夏が来る。
 祭りが終われば、少々寂しげで……それでも温かな秋がやってくる。
 秋と言う豊穣と眠りの準備が終われば……
 雪が降り寒い冬がやってくる。

 千余年ばかり……旅をした。
 当初の目的は、覚えていない。
 何故旅をしようと思ったのか……明確な理由と目的はわからないが……
 多分、旅を行なう事によって……人間や動物……自然と触れ合いたかったのかもしれない。
 狭い島国を北から南へと旅をした。

 成り行きで人を助けた事もあった。
 成り行きで人を恐怖させた事もあった。
 狭い島国を一通り旅した後……海の向こうを旅してみたくなる。
 何か新しいモノを見たい感じたい。
 まるで人間の様だと……笑った事を覚えている。

 その身を海の生き物と変化させ海を渡った。
 一番最初に足を着いた場所は、今で言う朝鮮半島。
 其処の人間達は、やっぱり賑やかに今を謳歌していた。
 汗水流し畑を耕す。笑いあい助け合い……
 時には喧嘩して時には悲しみあい……
 それは国境なぞ其処には無かった頃の話である。 

 何年か朝鮮半島を旅し……今度は中国大陸へと足を踏み入れる。
 広く複雑で……まだ中華人民共和国となる前……幾多の国があり争っていた。
 夜盗に襲われた事もあるが……別段問題ではなく……なんか、仲間にしてくれ! と頭下げられた事もあったな。
 まだ中国の半分も旅していない頃、一人の少年と一人の少女と出会う。
 何の因果か……その少年と少女と共に旅をする事になった。
 名前は……覚えていない。覚える必要性が無かったのかもしれない。
 ただ……その少年と少女に【潤】と呼ばれるのは、何処か嬉しかったと言う事を覚えている。

 中国の四分の三を旅した頃。
 私の傍に少年と少女は、居なかった。
 人間達の争いに巻き込まれる形で、少年と少女は死んでしまった。
 戦場を避けて旅をしていたのに……二人を護れなかったと言う事に
 私は……気がつけばあたり一面に死体の山が出来ていた。
 何をしたのかは覚えていないが……何をしてしまったのかは……十分にわかった。

 私は、巨大な木の下に二人の亡骸と共に鬼である私の右角を折り埋めた。
 何故、こんな事をしたのかは覚えていないし理由もわからないが……
 そうしなければいけないと何故かおもったのだ。 

 中国を総て旅し終わり……今度は、北の方……現在のロシアへと足を進めた。
 モンゴルの広大な草原を越え……ロシアに足を踏み入れれば其処は極寒の地。
 しかしながら……やはり、人々は賑やかに暮らしている。
 凍える大地。凍る空気。
 ロシアは、そんな所だと認識しつつ旅を続ける。

 ヨーロッパ方面へ足を伸ばす。
 第一次世界大戦とか空と大地が煩くなる。
 丁度その頃、西洋の化物と初めて出会う。
 旅を始めて早数百年。初めて同類……まぁ正確には違うが……と、出会った。
 それは、俗にヴァンパイアと呼ばれる存在。
 ドラキュラ公ことヴラド・ツェペシュでは無いのであしからず。

 まぁそのヴァンパイアと何をしたかといえば……別段なにもしなかった。
 しかし、まぁ……なんで幼女の姿なのか? とか疑問に思った事はある。
 二十七とか寝てるとか千年城とか訳のワカラン事を聞いたが、興味は一切無かった。
 そんなヴァイパイアと別れを告げ更に旅をする。

 エジプト、アフリカ、イラン、インド、インドネシア、オーストラリア、南極……
 南アメリカ、北アメリカ……
 一通り旅をして……私は、思った。
 人間の様に生きてみたいと……
 ひ弱で平凡だが……一生懸命に生を謳歌し子を残し色々な事を後世へと残していく人間の生き様に憬れた。 

 私は、人間ではない。
 だが……人間の様に生きてみたいと思った。
 丁度時代は、第二次世界大戦終了後……人間としての戸籍を作る事は容易だった。
 あの狭い島国で、私は人間としての名前と戸籍を作り……
 何十年か事に場所を変えある時は大工。ある時は医者。
 ある時は洋服屋などと転々として過ごしてきた。

 知り合った人間は、皆年老いて死んでゆく。
 鬼として生まれた私に明確な歳も老いもない……
 一生懸命に生を謳歌する事が出来ない……と、でも言えばいいのだろうか?
 私は、落胆した。
 やはり、私は人として過ごせないのかと……
 人間見たく生きる事は出来ないのかと……

 そんな時私は、一人の不可思議な少女と出会う。
 少女……と、言うのは外見だけの話……実際中身が何なのかはわからなかった。
 少女はその小さな口を開いて私に言う。 

「人は人。貴方は貴方……ならば、貴方は貴方の思う様に生きていけばいい。
 貴方は十分人間。笑えるし涙を流せるし他の人の痛みもわかる。
 だから、貴方は十分人間。だから、落胆なんてしないで……前を見て進みなさい」

 それだけ言うと少女の姿無くなっていた。
 私の思う様に……か……と、私は苦笑したのだった。
 かくして年月は流れる。
 とある高校の歴史担当教員として働く私。
 教員として働いて何度目かのクラス受け持ちになった。

 そこで私は、酷く懐かしい存在に出会い……今に至る訳なのである。

「でも、まさか……八乙女全員がウチのクラスに入るのは……何かの陰謀を感じるんだがなぁ……」

 そんな呟きに何処かで誰かがくしゃみを一つするのだった。

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