※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

 さて、ここ連日で桜田潤の正体が、八乙女(ヤオトメ)の八人内三名にばれてしまった訳だが……
 桜田潤の生活は、あまり変化していなかったりする。
 何故か? と、言われれば一番最初に潤の正体を見た水銀燈は、今の自分では祓えないと自覚してしまったし
 二番目に潤の正体をわかってしまった雛苺は、潤なんてお構いなしに動きまわる。
 さらに三番目に潤の正体を知った薔薇水晶にいたっては……潤の顔を見るだけで己の顔を紅くして俯いてしまう始末。
 まぁ薔薇水晶に至っては、箱入りお嬢様を絵に書いた様な生活をしていた為……
 免疫が完全にないのである。故にしょうがないといえるが……んじゃ水銀燈と雛苺は? と言う質問はしないで欲しい。

 それは兎も角投げ捨てて……現在桜田潤は、茶道部の部室に居た。
 茶道部の部活動がある為潤は、顧問として然りと参加している訳である。
 よく全裸(本人不本意)になる潤だが……何百年も生きている鬼ゆえに、総ての事柄に詳しいのである。
 茶道、各国料理(古い時代の物も含め)、武器、防具、術系列、技系列……まぁ、そんなの覚えていても使う機会は殆どないのだが。
 何はともあれ、潤は現在茶道部の部室に居た。
 そして……

「潤。紅茶を淹れて頂戴」

 畳の上で優雅に高価なティーセットで、紅茶なぞ飲む八乙女が紅乙女の真紅がそう言い放った。 

「真紅君? 毎度毎度言っているがね?」

 と、潤は苦笑しながらやっぱり紅茶を淹れ始める。

「あら、そんなのわかっているのだわ。だけど、此方のほうがシックリと来るのだわ……不思議なほどに」

 真紅は、そんな事を言いながら潤の方を向く。
 青色の瞳が、紅茶を入れている潤を見入る。
 真紅としては、本当に不思議なくらいに今紅茶を入れている茶道部顧問を「桜田先生」と呼ぶよりも「潤」と呼ぶ方が
 何故かわからないが、本当に不思議なくらいにシックリと……そして心地よく感じるのだ。

「ふう……これで良いかね?」
「ありがとう。良い子ね潤」
「だから……何度も言っているだろう? 真紅君……私は君より年上で君の担任でこの茶道部の顧問であると……」
「あら……いいじゃない。どうせ私以外の茶道部部員はいないのだから」

 そう言う問題じゃないのだがなぁ……と、潤は顔を顰めつつ肩を落とす。
 まったく……初代そっくりだ……と、潤はため息を一つつきつつ……自分で抹茶を点てはじめる。
 無駄の無い動きと共に小気味良い茶を点てる音が、部室に響く。 

「流石、潤と言った所かしら? その歳にして見事な手際なのだわ」

 相変わらず優雅に紅茶を飲みながら真紅は、そう呟く。
 潤は潤で、自分で点てた茶を静かに飲み始める。
 静かに茶は飲み干され、トンッと静かな音と共に茶器は畳の上に置かれた。
 その後潤は、別に茶を点てる訳でもなく……ただただ、部室の畳の上で御座を掻き時間が淡々と流れていくのだった。
 時折、真紅が紅茶を淹れて頂戴と言う以外何も無く、静かな時間が過ぎて行く。
 そして、部活動の終了を告げるチャイムと共に潤は立ち上がると真紅もそれに続く。
 茶器とティーポットを台所に置き、軽く水を注いだ後潤は部室を後にする。
 既に真紅は部室の外に出ており……部室の外に出た潤は、部室の扉を閉め鍵をかけた。

「じゃぁ途中まで一緒に帰るのだわ」
「ん、まぁ個々最近変質者が出没するらしいからね」

 まぁ八乙女である真紅が変質者相手にどうにかなるなんて思わないが……教師の立場として潤は頷いた。
 その後は、真紅と共に途中まで帰路につきそのまま自宅へ……着けばよかったのだが……

「はぁ……個々最近は総て厄日なのだろうか?」

 ほんと……平穏のへの字も無いよな。個々最近とちょっぴり涙を流す潤。

「随分余裕ね? 潤」
「現実逃避しているんだよ。真紅君……なんだいこの摩訶不思議ドッキリアドベンチャーみたいな展開は」

 と、真紅と潤の目の前に存在する巨大な化物を指差して笑う潤。
 そんな潤を見て、あぁ錯乱しているのね。と、簡単かつ簡素に結論付ける真紅。
 潤は、此方の世界とはまったく関係の無い一般人なのだからしょうがないわね……と、真紅は考えた。
 実際、潤は此方の人間……と言うよりも化物であり……演技にしかすぎないのだが…… 

「どうやら、ここで死ぬわね潤は」
「私がかね?!」
「えぇ……だから、さっさと逃げなさい。私ならどうにかできる」

 それは、八乙女が紅乙女である為に出た言葉。
 巨大な化物を背にして、潤を見る真紅。
 そんな真紅を見て潤は、不本意ながら小さな笑みを浮かべてしまった。
 そっくりだ。本当にここまでそっくりだとは思わなかった。
 まるで生き写し……もしくは、輪廻転生したのか? と、初代紅乙女と現代紅乙女の真紅を見て小さく笑う潤。

「さぁ! 早く逃げるのだわ!」

 と、真紅がそう言った瞬間巨大な化物は、凄まじい風圧と共にその巨大な拳を真紅目掛けて振り下ろす。
 ハッとして、真紅はいつの間にか手にしていたステッキにて巨大な拳を受け止めるが……
 質量の差がありすぎた。真紅が潰されると言う事は免れたが……真紅の身体は、弾かれ蹴り上げられたボールの様に宙を舞う。
 そんな真紅を、なんとかキャッチしその場に踏ん張る潤。

「さっさと……逃げるのだわ……逃げなさいなのだわ……」

 潤の手を振り払い、ヨロヨロとその場に立つ真紅。
 そんな真紅を見て……潤は……大きな笑みを浮かべ……真紅の身体をグイッと強引に掴み自分の方へと引き寄せる。
 突然の事に真紅は、驚くが……潤の方を向いた時真紅は、ゾクリとした背筋を駆け上がる何かを感じた。
 それは、殺気だとか威圧感だとか言われるモノ。

「真紅君。いいかい? 君は生徒で私は教師だ」

 そんな当たり前の事を言う潤に、真紅は何か言おうとしたが言う事が出来なかった。
 潤の顔を見ていると……何も言えなかった。
 哂っている。 

「そして……君は八乙女で私は……」

 ズズズッと聞こえないはずの音を立てて潤の姿は、段々巨大な物になっていく。
 布が千切れる音と共に現れたのは……巨大な……そう、真紅に巨大な拳を繰り出した化物よりも大きな……鬼。

『圧死しちまえ』

 ボソッと呟いただろう言葉は、空気を震わせ人間百人が大声で叫んだ音量以上の音量を発していた。
 咄嗟に耳を塞いだ真紅は、クワンッと頭を揺るがせたが何とかその場に立ちとどまる。
 そして……真紅の丁度後ろに存在した巨大な足が、巨大だった化物をあっさりと踏み潰した。
 亀裂と共に陥没するアスファルト。風圧により巻き上がる大量の砂埃。
 ただ踏み潰したと言う行為だが……ソレにより発生した風圧に吹き飛ばされない為に真紅は、その場で足に力をいれ
 吹き飛ばされない様に踏ん張る。

 そして、巨大な鬼は揺らめき……元のサイズ……つまるところ潤に戻る訳で……やっぱりダイゼンラーじゃなくて全裸。
 そんな潤を見てピキッと体を固める真紅だったが、直ぐに持ち直しステッキの切っ先を潤に向け睨む。

「まさか、潤が化物だったなんてね」
「伊達に、何百年も人化の術を使って来た訳ではないのだよ? 八乙女である君にもわからなかっただろう?」
「まったくね……臭いも気配も総て人……」

 スゥッと目を細める真紅とは、対照的に困った様にだが目線を外さず潤は、頭を軽く掻く。 

「私を祓うかい? 祓えるかい?」
「……無理ね。多分私達八乙女が一緒になって戦っても祓う事も封印する事もできないのだわ」
「なら、どうするのかな?」
「祓う事も出来ず封印する事も出来ない……でも、私は八乙女の紅乙女なのだわ」
「あぁ……本当にソックリだ」

 クックックと潤は、口元に拳を当てて笑う。
 それが、癪に障ったのか真紅はステッキを無動作で潤の喉目掛けて突く。
 しかし、喉目掛けて突きを放ったステッキは……潤の人差し指一本で押し止められてしまう。

「言動。行動。性格。瞳の色。髪の色。身長。そして……私の呼称。総てそのままそっくりだ……」
「何がなのだわ」

 ステッキを素早く元に戻し構える真紅を見て潤は相変わらず笑みを浮かべたままだった。

「初代。そう初代真紅にそっくりだ。まるで間違いを見つけてくださいと言うのが難しいな」
「……潤……貴方……」
「そう、君達八乙女が創られた時と同じくして生まれた生み出された生み落ちた……鬼なのだよ」

 ゆえに、君達の事は……正確には八乙女を君達以上に知っているかもしれないね? と、潤は笑う。

「………」

 真紅は、無言でステッキをしまうと……口を開く。 

「貴方は祓う事は、出来ないのだわ。と、言うよりしないのだわ」

 へ? と潤は、笑みを止めて眼鏡のズレを直す。

「他の八乙女は知らないけれど、紅乙女には代々伝わっている口伝があるのだわ……
 曰く私達を良く知る鬼を祓うな。その鬼は私達を護る鬼である。
 曰くその鬼は、私達をからかうのが好きだ。
 曰くその鬼を出来る事なら………」

 何故かその部分で、顔を紅くする真紅。
 そんな真紅を見て怪訝に思う潤だが……なんて口伝残してるんだ初代……と、潤は頭を痛めた。
 護るってなんだ護るって……そんな約束した覚え……あー……そう言えば戯れにした様な……
 アチャー……と、肩を落とす潤。

「曰く……その鬼を出来る事なら……」

 真紅は、顔を紅くしたまま俯いてしまう。

「………」
「?」
「とりあえず、服なりなんなり着るのだわ!!!! 猥褻物陳列罪!!」

 忘れていたが、現在潤は全裸である。
 眼鏡以外の装着品は無い。まさに眼鏡のかけた変態そのモノである。

「……いや、ごめん。無いんだ家に帰らないと」

 潤の間抜けた答えが、周囲に痛いくらいに響くのだった…… 

「初代は何を考えているんだわ……」

 と、あの後色々あったが……なんとか自宅に到着した真紅は、ベットの上でくんくん人形を抱きしめて呟く。

『曰くその鬼を出来る事なら……お婿さんにしなさい! もしくはするのだわ!』

 なにその確定系……と、真紅は聞いた当初呆れたものであるが……
 まさかその鬼が現れるおもわなかったし……まさかまさか……自分が好意を持つ相手だとは思わなかった。
 不意に、潤の顔と……あの時気にしてはいなかったが……潤の全裸が脳裏に浮かび上がる。
 アァアー!! と真紅は、ベットの上で転げまわるのだった。

 ちなみに、どうやって潤が自宅戻ったかと言うと……真紅に人払いの結界をいちいち張ってもらい自宅まで移動したのである。
 なお……潤は、安易に自分の正体をばらしてしまった事に酷く後悔。
 なんであんなに安易に自分の正体をばらすんだ……ションボリしつつ酒を飲んでいたりする。
 初代の面影が濃い真紅を見て懐かしかったのはわかるが……個々最近八乙女を中心として正体バレすぎだ。
 四人目だよ四人目。二分の一にばれちゃったよ……
 と、潤は結構古い付き合いの環境植物であるサボテンにそんな愚痴を呟いていたのだった。





『NGシーン』
「言動。行動。性格。瞳の色。髪の色。身長。そして………そのTHE☆貧乳! 総てそっくりそのままだ!!!」
「死ねっ!!!!」

 紅乙女最終奥義 轟・絆の拳 により潤の身体は大きく吹き飛び……そのまま星となったのだった。

|