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 七百八十二年 平城京

 旅支度をした一人の男性が、羅城門をくぐり平城京を出ようとしていた。
 そんな男性を、羅城門に背を預けるように立っていた男が声をかける。

「おい。何処行くつもりだ?」
「ん? 旅に出るに決まってるだろ?」
「はぁ? 旅ぃ?」
「そ……こんな狭い所で何が出来る?」
「何って……人間どもを恐怖に落とすぐらいできるだろ?」
「この狭い場所の人間達はな」
「……んだよ。別にいいじゃねぇか」
「井の中の蛙ってな。人間の諺だ。俺は色々と知る為に……旅にでる」
「……止めても無駄だろ?」 

「お前が、綺麗な女だったら止まったかもな」
「けっ……止めてくれる女なら八人丁度いるじゃねぇか」
「やめてくれ……ありゃ止めるんじゃなくて祓う為に居るだけだろうが」
「ま、そりゃそうだな」
「まぁそう言う訳だ」
「しょうがねぇなぁ……じゃぁその旅から帰って来た時土産話でも聞かせてくれや」
「あいよ。んじゃな」
「おう、またな」

「潤」
「部侍威蛇」

 旅支度の男こと潤は、そのまま平城京を後にし……
 羅城門に背を預けていた男こと部侍威蛇は、頭を軽くかいて潤を見送った。 
 時は流れ西暦二千余年。
 あの潤は、何の因果か日本で歴史担当教師として働いていた。
 なぜ潤が此処世まで生きているのかといえば、潤は人ではなく化物。
 それも、鬼と呼ばれる化物であるからだ。
 それに、潤は戸籍上三十七歳となっており、容姿もその歳に見合った容姿をしている。
 単に人化と呼ばれる人間に化ける為の術を使っている為なのだが……
 なにはともあれ、鬼である潤は桜田潤と名前を名乗りとある高等学校の歴史担当教師として働いている訳である。

 鬼としては平穏で充実した毎日を送る潤なのだが……頭を抱える程の悩みがある。
 それは……八乙女と呼ばれる日本の代表格たる退魔の当主が、この学校の生徒である事。
 それだけならまだいいのだが……その八乙女全員が、潤の担任しているクラスの生徒であると言う事。
 年季の入った人化の術のおかげで、潤の正体は八乙女の誰にもバレてはいないが……
 正直、潤の精神状況に良い環境ではないと言う事に変わりなく……
 個々最近の日課といえば、一日三食後の胃薬だったりする。
 まぁそんな事は、投げ捨てておくとして……歴史担当教員桜田潤の苦難は始まったばかりである。

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