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『止まらない世界』
じゃあね。彼女はそういって歩きだした。僕は君においすがる。

ジ「蒼星石ー!ごめんまった?」
僕は桜田ジュン。大学4年生だ。
蒼「そんなことないよ。じゃ、いこうか?」
彼女は蒼星石。中性的な顔立ちをした、とても気立てのいい、
ジ「そうだね。じゃぁ、早速買い物に行こうか」
…僕には持ったいなすぎる女性。正直、どうして僕なんかと付き合ってるのかわからない。
蒼「うん。今夜はご馳走を作るよ。」
今日は晩御飯をつくりに来てくれる。料理もとても上手で、正直、どうして(ry
ジ「あれ?あれベジータじゃないか?」
蒼「そうみたいだね。相変らず、元気ないね」
ジ「ベジータ!!」
ベジータとは、僕らの大学での友人だ。僕は中学からずっと腐れ縁だ。
最近ベジータは付き合っていた一つ年上の彼女が、大学を卒業して地元に帰ってから元気がない。
もっとも、知り合いが見てないところでは、だが。僕らの前では何も変わらないように振る舞っている。
僕もこの間紹介されて、今度蒼星石にもあってもらおうと思っていたところだったのに。
なんでも就職が急に決まってしまったとか。今では音信不通になってるらしい。
確かに、あんなに美人で気立てのいい彼女と別れることになったら誰でもへこむだろう。
いや、並の男なら首をくくるだろうな。
たしか、水銀燈とかいったっけ…
べ「ん…?おう!ジュンに蒼嬢か!相変らず熱いな!」
ジ「はは、冷やかすなよ。」
べ「いやー、うらやましいな!今夜は一緒に晩飯食うんだろ?あんまりヤり過ぎるなよ!」
ジ「おいベジータ、俺たちはまだ…」
べ「フハハハハ、わかってるとも!じゃあ、またな!」
蒼「いっちゃたね…。」
ジ「行っちまったな…」
蒼「さぁ、気を取り直して買い物しようか」
ジ「そうだな。うん。確かにまだ買い物終わってなかったもんな。」



相変わらす、蒼星石の料理はうまい。
蒼「どう?おいしい?」
ジ「ああ、うまいよ。相変らず。」
蒼「本当?よかった。」
ジ「それにしても、舌平目のムニエルなんかよく作れるよな…」
僕はカレーで精一杯だってのに…
蒼「今度教えてあげるよ。結構簡単なんだよ」
ジ「ありがとう。」
たわいない話で、いつもどうり盛り上がっていたとき。



  ブーンブーンブーン
蒼「ちょっとごめん」ピッ
電話が鳴ってきて。運命がきしみ始める。そして僕は気づくんだ。
変わらぬものなど何も無いと。
すべてのものは、光なんか目じゃないぐらいの速さで、未来に向かって疾走してるんだって。

蒼「お父さん?!?」
蒼「うん…でも…うん…うん」
蒼「わかったよ。」
ピッ


ジ「お父さんはなんのようだったの?」
事の始まりは一本の電話だった
なにやら、蒼星石の様子がただ事ではない
蒼「うん…、大学はもういいから帰ってこいっていわれたんだ…。何でも庭木の世話をする人が足りなくなっちゃったらしくて…」
なかなか口を開かなかったけれど、しばらくしてもう一度聞くとぽつりぽつり事
情を話してくれた。
蒼「大学に入った時からいわれてたんだ。家業の造園業を手伝えって。」
姉の翠星石は造園ではなく地元で花屋をやっているらしい。
いわゆるよせ植えが評判で親も花屋を続ける事を容認しており、結局蒼星石が手伝いに戻ることになったとか。
蒼「大学に入ったときからわかってはいたことなんだけど…」
僕は来年から大学院にいく。名門の。海外から誘ってくれている大学もある。学者として生きていこうと考えていた。
とにかく、僕が行こうと考えている大学院はすべて彼女の実家から遠い。
蒼「明後日の朝にはつくように帰ってこいって。あいさつにはまたきたらいいからとにかく帰ってこいって。
たぶんもうこっちにはこれそうにないよ。どうしよう?」
こころなしか彼女の瞳がゆれている。気のせいかな?気のせいだろう。
僕でも気丈な彼女が泣いてる姿は数えるほどしかみたことないんだから。
……でも、ないてるとしたら?
僕は今なんて声をかければいいんだろう?よかったななんていえそうにない。
そんなのいやだだろうか?俺はどうなるんだか?それじゃあ仕方ない、か?
それとも頑張れよとでもいっておくか?どうすりゃいいんだよ。明日だって?
いくら何でも早すぎだろう?たのむよ、もう少し時間をくれよ。
いっその事俺と一緒に外国にいこうと叫ぼうか?いや、そんな勝手なことは…。
そんな、僕の顔を見て、なにを思ったのか寂しげなため息を君は吐いて
蒼「僕、帰るよ。明日の用意もしなくちゃいけないしね。家具は午前中に宅配便にだしとくよ。もともと多くないし。きっと、一人で片付けられる。」
ジ「そうか。」
気が付くとそういっていた。畜生、もっと他にいうことがあるだろう?何してるんだよ俺は。せめてもう少し気のきいたことがいえるだろう?もっと大切なことがあるだろう?

ジュン君の家で食事を作り、どうしようもない話で盛り上がっていると携帯に電話がかかってきた。
きっと翠星石だろう。今だに妹離れできてないんだから。翠星石もなんとかしなくちゃ。
電話に出ると、懐かしい声と、忘れていた約束が聞こえてきた。
元「蒼星石か?」
蒼「…お父さん?」
元「元気そうだな。安心したよ。ところで、大学に入ったときの約束、覚えているか?」
蒼「……………うん」
元「それなんだが、悪いがすぐ来てもらわないといけなくなったんだ。明後日の朝には着くようにかえってきてくれ。」
蒼「そんな!いくら何でも急すぎるよ!そ、それにほら、えーと、そうだ!友達にもあいさつとかしなくちゃならし…」
元「また行ったらいいじゃないか。じゃあよろしく頼むぞ」プツッ
電話もきられうかない顔をしていると、ジュン君が声をかけてくれた
―どうしたんだ?
お父さんからだった

彼の顔がわずかに陰る
―それでお父さんはなんのようだったの?
かねてからの約束を話す。僕自身忘れていた約束を。それから翠星石の話をする
。話している間に腹が立ってきた。なぜ僕が?姉さんだけなんで好きなことがで
きるのさ?僕もしたいこと、一緒にいたい人がいるのに!ああ、泣きそうだよ、
助けてジュンくん。お願い、安っぽいメロドラマは嫌いだけど、でも、何かいってよ!
…彼の方を向くと、黙ったまま何か頻りに考えている。まるで僕なんていないみた
いに。そうか、彼にとって僕はその程度の存在だったのか。思わずため息が漏れ
る。帰るよ。そういっても彼は動かない。帰るよ。もう一度僕は言って、家まで走って帰る。
荷物を片付けながら、喉が破れるくらい、泣いた。




彼女は帰っていった。僕はしばらく立ち尽くしていた。カノジョガイナクナル?
そんな馬鹿な!彼女は『僕の魂の一部』なんだ。悪い夢だ。朝はいつ来るんだ?
現実から逃げようと鏡に写る自分の顔をたたきわって片っ端からCDをかけてみる。窓ガラスが震えるぐらい音量を上げて。

オカシイナ。夢じゃないのか?朝日が昇ってくる。
蒼星石の話を思い出す。背筋が凍る。


夢から覚めると昼過ぎだった。いつのまにか眠っていたらしい。
やっぱり昨日のことは夢だったんだ。そんなことあるわけないのに。…念のため、電話してみるか。
ジ「もしもし?僕だけど」

蒼「………」
どうしたんだ?彼女の声が聞こえない。もういないのか?やっぱり昨日のことは夢じゃないのか?
じわりと赤い手が心臓をつかむ。
真っ黒な爪が心臓に、脳に、肺に食い込む。
あまりに情けない悲鳴がのどもとに駆け上がってくる。
感情が破裂しかけたとき。

蒼「ジュン君?」

ああ、彼女は、蒼星石はまだいるんだ。安心感が血液とともに全身に駆け巡る。
ジ「やっぱり、実家に帰っちゃうの?」
自分の口下手さを呪う。
蒼「…うん。仕方ないよ」
蒼星石の声は仕方ないとは言ってない。
ジ「やっぱり昨日のことは夢じゃなかったんだ…」
蒼「夢ならよかったのにね。僕も信じられなくて、朝おきてから確認の電話入れたぐらいだよ」
ジ「そうなんだー。あ、そうだ。何で帰るの?」
これだけは絶対に聞いておかねば。
蒼「うん。お金振り込んでくれてあったから特急で。」
ジ「おお、すごいなww」
蒼「でしょ?wwww」
はあ、夢じゃねーのかよ。仕方ない?そんなわけない。夢?残念ながら違うらしい。
ジ「あのさ、もしよかったら駅まで送っていくよ」
違う違う違う!そんなことがいいたいんじゃないんだ『蒼星石』!
言いたいことは、伝えたいことは山ほどあるんだ。
けれど、けれどなぜかそれ以上の言葉が思いつかない。

ジ「ボストンバッグも宅配便で送っちゃいなよ。手荷物だけ持って玄関に立ってて。四時には着くように行くから」

うん、という声が聞こえ電話は切れた。そっと目を閉じ、さっき見ていた夢を思
い出す。とても、美しい夢だった気がする。蒼星石もでてきたようなきもするが
はっきり思い出せない。くやしくて、目から汗が流れてくる。
この部屋は暑い、窓を開けよう。



ジュンくんから、電話がかかってきた。
もうかかってこないと思ってたのに。
しばらく答えに迷っているとジュン君はうろたえていた。
返事をしてあげよう

―電話を切った。なぜか安堵のため息が出る。
荷物を送って外に立っていよう。
やっぱり僕は、一人じゃないんだ。


二雨目へ
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