「ジュン君ジュン君、おままごとやろぅ?」
「またぁ?僕はウルトラマンコスモスごっこが…」
「おねがーい!ね?いいでしょ?」
『ダメ……かな?』
「うっ……わかったよ」
「やったー!ありがと!じゃぁ、私がお母さんねぇ」
「ん~、僕は~「ジュン君は私のお婿さん!」
「……お婿さん?巴ちゃん、なぁにそれ?」
「へへ~~、秘密だよぉ/// 大人になったらホントに私のお婿さんに……」
…
…ピピ
……ピピピピ
………
…
「……んっ…うー…朝?」夢……か…
懐かしい夢だった。私達がまだ幼稚園の頃の、桜田君がこ~~んな小さくて可愛かった頃の
「……クス」
昔の事を思い出すと思わず笑ってしまう。
小さいときはよく桜田君に私の洋服を着せて遊んだなぁ。スカート穿かせたら泣いちゃったっけ
「巴さん?御飯ですよ。寝てるのですか?」
「……」
私が思い出に浸って別の世界にいられたのは、ほんのわずかな時間だった。
私は、今では中学生だ。
毎日、桜田君と遊んでいた頃とは違う。
本当はやりたくない剣道や委員長、期待や責任、重圧…そんなものにがんじがらめにされながら毎日を過ごしている。
「あの頃に戻りたいな…」
無意識に呟いていた。
「巴さん?」
「あっ!はい、今行きます。」
居間に行くと父と母はもう座っていた。
私が無言で椅子に座ると、父が箸を持ち食べ始めた。私は小さく
「いただきます」
と言って食べ始めた。
それにしても昔の私は大胆だったなぁ。
お婿さんになってなんて……///
「巴さん、何か良いことでもあったのですか?」
ふぇ?
声が裏返ってしまった。
「さっきから笑ってらっしゃるから」
「え?えと、なんでもないです!ごちそうさま!」
逃げるようにして家から出てきた。
どうやら、一人でニヤけていたようだ。
「恥ずかしいなぁ…」
朝呆けてた時間を合わせれば丁度いい時間になっていた。
「もうすぐ夏だなぁ」
そんなことを考えながら歩いていると、前方に未来のお婿さん(笑)がいるのを発見した。
いつもの私ならそのままのペースで付かず離れず距離をとっていたと思う。
でも、今日はあんな夢をみたせいだろうか?
なんとなく違う自分になれる気がした。
彼に駆け寄り、肩を叩き
「ジュ~ンくんっ?」
思わず名前で呼んでいた。私は自分自身に驚いた。言った本人ですら驚いたのだから、彼は更に驚いた顔をしていた。
「え?柏葉……?」
「どうしたの?鳩が豆鉄砲くらったような顔して」
「え?だって…今、ジュン君って、え?どうした?」
「どうしたって別に?昔はジュン君って呼んでたんだから、いいでしょ?」
「確かに…そうだけど…」
当たり前だが戸惑ってるようだ。
私だって戸惑ってる。どうしてこんなこと言えたのか?どうしてこんなにスラスラ言葉がでるのか?
次の台詞だって頭に浮かんできている。
『ダメ……かな?』
「うっ……わかったよ」
「ふふっ」
「何笑ってるんだよ?」
彼が昔と同じ反応を示したのが可笑しかった。
「なんでもないよ。そうだっ、私が昔の呼び方にしたんだからさく……じゃなくて、ジュン君も昔みたいによんでね?」
「はぁぁぁ!?おい、柏葉マジでどうしちゃったんだ?」
さぁ?私にもわからない。けど、なんだか楽しい気持ちなのは確かだった。
「柏葉じゃないでしょ」
「嫌だね!僕は絶対呼ばない。」
「絶対?」
「そうだ!」
「……どうしても?」
「どうしてもだ!」
「……ウッ…ジュン…君、ひど…いよっ…」
「えっ!おい?柏葉?おい、まさか?わかった!わかった!呼ぶよ、呼ぶ呼ぶ!だから…なっ?」
「……本当?」
「あぁ。本当だ」
「…フッ……フフッ………」
「おい、どうした?」
「ジュン君引っ掛かったでしょ」
そう言って満面の笑みを見せた。(少なくとも自分は満面の笑みのつもりだった)
「う…嘘かよぉ? なんか、今日の柏葉は小さい頃の柏葉みたいだな。あの頃は良くいじめられたよなぁ、柏葉に」
「ジュン君話そらそうとしてるでしょ?約束」
「ッチ……やるのか?」
言葉の代わりに笑顔を返してあげた
「とっ…巴ちゃん」
「ふふっ、よろしい~」
「ホントどうしたんだか?」
「いいでしょ?たまには」
「…たまにならな」
「あっ!そうだ!大事なこと忘れてた」
「どうした?」
「大きくなったら私のお婿さんになってね?ジュン君」
「はぁぁぁぁぁぁ!?」
終わり