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頑張ればらしー

「うんっと……えっとぉ…今月は、貯金が……6千円だ…えへっ」

冷たく凍える氷雨が細い霧のように降り注ぐ真夜中。
言葉すら喋れない幼い子供が病院の前に捨てられていた。

「…これで5万円…貯金できたよ……私、偉い…」

その捨て子は薔薇水晶と名づけられ、施設へと預けられた。
ほどなくして彼女は小学校へと通うが、親のいない彼女は格好の標的とされ
、イジメの毎日を過ごしていた。
下駄箱から靴が消える。給食のオカズに消しゴムが入れられる。遠足などは
いつもみんなと離れて一人でおにぎりを食べていた。
無視には慣れたはずの薔薇水晶だが、不意にとめどなく涙が溢れてくる日が
ある。それは自分の誕生日だった。
いつ?どこで?私は生まれたの?当たり前の事すら解らない。
施設で祝ってもらう誕生日パーティー。
彼女にとってそれは自分の存在意義すら解らなくなる。
ありがとう。祝ってくれる施設の人にはそう笑顔で答えるが、心の中ではい
つもあの日と同じ冷たい氷雨が降り注いでいた。
涙がこぼれないように顔をグイッと持ち上げてみる。
その目に映る空は青くどこまでも広い。

「…あと10万円……貯めるもんッ」

ある日、彼女は眠る前にラジオから聞こえてきた音楽に心を奪われた。
それは今となっては誰が歌っていた曲なのか定かではない。
ただ、その時の薔薇水晶の胸に沁みたメロディーに始めて音楽のもつ暖かさ、
そして心強さを聴いていると不意に心の中に風景が浮かびあがった。

「…高校に入ったら…バイトするもん」

いつしか薔薇水晶は絵画に夢中になっていた。
相変わらずイジメの対象であったが、心の中で思い浮かんだ風景を絵にする
と、不思議とイヤなことから逃れることができた。
絵を勉強してみたい。ステキな絵を描いてみたい。
そう思った薔薇水晶はその日から少ない小遣いを全て貯金と美術関係の本
に費やした。「…私、元気…勇気がでる…楽しい絵を書きたいだもんッ!!」

夜、ベッドに入り眠るひと時。彼女は必ず頭の中で想像することがあった。
それはいつの日か自分の書いた絵で誰もが心豊かになれる。そんな絵を描い
ている自分の姿であった。

「絶対に…あきらめないもんッ!!」

彼女はそう言いながら静かに目を閉じ、愛らしい寝顔をみせていた。
今、薔薇水晶が見ている夢は名も知らぬ多くの人々が彼女に絵に笑顔を
見せている。そんな夢であった。
ただ、その夢が3年後に現実のものになろうとは、この時点では誰も予想し
ていなかった。
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