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スマイル一番イイ♀~眼帯をした少女とその笑顔の虜になった僕~



早いものであれからもう三週間が経ち、今はもう三月だ。
三月と言えどまだまだ寒い。春風…とはまだ言えない冷たい風が、道行く人をの体を震わせる。

 

そんな、まだ寒さが残る日のこと。

 


PCを前に何やら悩んでいる様子の少年、桜田JUM。



「あー、ホワイトデーか……どうしよっかなー」


「水銀燈…はとりあえずなんか渡さないとうるさいな…」


「あー、もうヤクルトでいいか…いや、さすがに駄目だろ水銀燈的に考えて…
『JUMのお馬鹿さぁん!』とか言われそうだし…」


「金糸雀…は、もう玉子でいいね。うん、異論は認めない」


「翠星石…なんか甘いもので系いいかな…?」


「蒼星石…う~ん、なんだろう…欲しそうな物が一番わからないな。よし、後に回そう」 

「真紅…は、紅茶でいいですね。はい決定」 


「雛苺…はいはい苺大福苺大福」


「雪華綺晶…まぁ、なんか食べ物渡せばいいよな…」


「柏葉…無難にクッキーとかでいいか」


「さて、本題は……薔薇水晶だな。あー、どーしよ」


「薔薇水晶は何が一番喜ぶかな…」


「うーん、まず女の子って何が喜ぶかよくわからないからなー」

 

僕は何も思いつかないままその日を終えた。


もう来週にはホワイトデーが来るのに、少し歯痒かった。



軽い憂鬱に浸りながら学校へと歩く。


そして、いつも通りにみんなが揃う。
僕はまだ、何が喜ぶか、そのことばかり考えていた。

 

「…おはよー」


不意に意識を戻される


声の主は薔薇水晶。
僕も、とりあえず挨拶を返す。


「おはよ…まだ寒いな」


「もう少ししたら、暖かくなる…」


「それまで我慢、か」


「うん」

 

何気ない会話をしながら、学校へ着く



授業なんて聞いてない。


気付けば放課後、昼休みの後は睡魔に負けた。

 

グイ と誰かが僕の制服を引っ張る


「…JUM、時間ある?」


「あ、うん…平気だけど?」



びっくりした。
いつから後ろに居たんだろ…?



「じゃ、れっつごぅ」


「え?はい?」

 


そう言って薔薇水晶が向かったのは駅…ではなく駅ビルの中。



「何が見たいんだ?」


「…JUMの全て」


「デコピンされたくなかったら真面目に答えなさい?」


「ごめんなさい…」


「で、何が見たいんだ?」


「アイピロー」 

「何それ?美味しいの?」


「…目に置くクッション、気持ちいいよ」


あ、ツッコミいれてはくれないんだ


「へぇ…最近の若い子はわからないな」


「JUM老けた」


「ひどいぞ…」


「…着いた」


「無視か」
 


おー、なんとも男の僕一人では決して入ることのできないメルヘンな……

 

「…ここ」


「おー、すごいいっぱいあるな…」


「…ね」



そう言って、薔薇水晶は
黙々とアイピローを見ていた

 

少しして、薔薇水晶が僕を呼んだ。


「こっちとこっち、どっちがいいと思う?」


「んー?僕に言われてもなー…迷ってるのか?」


「…うん」


「迷ってるときはやめたほうがいいんじゃないか?」


「え…?」


「いや、『コレに決めた!』って感じじゃないなら、やめたほうがいいんじゃないかって」


「…ん。そうだね、そうする」


「お、我慢できるくらい大人になったか」


「む…もう子供じゃないもん」


「はいはい」

 

薔薇水晶を送っていく途中の道で、薔薇水晶のお父さん、槐さんに会った



「あ、お父様…」


「こんにちわ」


「ん?薔薇水晶にJUM君か、今帰りかい?」


「…はい、お父様は?」


「ん?僕かい?散歩だよ、仕事の休憩ついでにね。
暖房のついた部屋で仕事に熱中すると少し暑くてね、熱冷ましの散歩かな」

 

そう言い、槐さんは額の汗をハンカチで拭う。
仕事に真面目なことがよくわかる人だ。


「それくらい仕事に熱中できるなんて、いいことですよ」


「好きじゃないと続かないからね、仕事っていうのは」



こういう発言は、やはり僕らと違って 大人だな と感じる。


「…この前サボってた」


「ち、違うんだ薔薇水晶、あれは脳を休憩させていたんだよ」


前言撤回
やっぱりこの人薔薇水晶の親だ、全然子供っぽい

 

薔薇水晶を送り、僕は多少の寄り道をして、帰路に着く。
帰りぎわに見た槐さんは、まだ
「いや、薔薇水晶…あれはね」と、まだ言い訳を続けていたようだった…



僕は帰ってくるなり自分の部屋に行き、PCを立ち上げる。


アイピローについて調べてみる。
そう、お返しは決まった。

 

とりあえずアイピローとやらを作ってみることにした。


作るにあたって必要な綿などは、薔薇水晶を送った帰りに買っておいた。

 


さぁ、……やるか


作り始める前に、ある壁にぶつかった。


「……どんな感じにしよう」


「アッガイアイピロー……駄目だ、気分悪い」


「シュウマイアイピロー……いや、それは無いな」


「…くんくんでいいかな…?うん、いいよね。気持ちが大事だ」


そう言い聞かせて作業にあたる。



現在、夜七時
夕方に始めてから大体はできた。


今はもう仕上げの手前だ。



「よし、できた」


「案外早く終わったな…」



何か物足りない…
他に何かないか…


今日あったことを回想してみる……

 


…!
あぁ、いいのがあった


「ありがとう、槐さん」



僕はそう呟いて、新たに作業にかかる。

 

夜の十時
ようやく全ての作業が終了した。



そこにあるのは濃い紫を基調とした布に
淡い、薄紫の薔薇の刺繍。


正直骨が折れた。
疲れるし難しいし指刺すし…
でも、満足感でいっぱいだ。

 

「あー、腹減った」


それもそうだ。
夕飯も食べずに黙々と作業をしていたのだ。


その日、僕は夕飯を食べ
風呂に入り、14日に期待を抱きつつ眠りについた。



14日
僕の待っていた日がきた。



「水銀燈…はい、これバレンタインデーのお返し」


「あら、ありがとぉ…」


「あ、中身は」


「言わないでいいわぁ、後で見たいから…結構重いわねぇ、期待してるわぁ」


「あ…」


期待されてもしょうがないんだけどな…

「金糸雀ーこれ、お返し」


「あ、それ振り回すなよ、じゃ、僕はこれで…」


「…?変なJUMかしら?…ん?これ…どうみても玉子かしらー!?」


「あ、いたいた…翠星石に蒼星石ーこれ、お返しね」


「チビ人間にしては上出来ですぅ、ちゃんとした物用意したですか?」


「ん?いらないなら返してくれて構わないんだぞ?」


「い、いらないとは言ってないですぅ!貰うです!」


「JUM君、ありがとね」


「二人ともクッキーだから早めに食べろよー」

 

「真紅ー」


「あら、JUM何の用かしら?」


「はい、これ」


「あら、この匂いは紅茶の葉ね」


「正解、じゃ、お返しは渡したぞ」


「あら、もう行くの?」


「あぁ、まだ他にもな…」


「雛苺ー?いるかー?」


「ここにいるのよー!」


「はい、これチョコのお返しな」


「うにゅーなのー!」


「良かったね、雛苺」


「あ、柏葉も…これ」


「あ、ありがとう」


「じゃ、ちょっとまた行ってくる」


「おーい、きらきー…おやつだぞー」


「JUM様、おやつはどこですか?」


「うわ!?居たのか!?」


「はい。で、おやつはどこですか?」


「…軽く悲しくなってきた…はい、お返しのクッキーとかチョコとか飴とか色々な詰め合せ」


「お昼休みに美味しく頂かせていただきますわ」


「……」



放課後


「薔薇水晶」


僕は呼ぶ


「え?」


彼女は振り向く


「これ、バレンタインデーのお返し」


「…ありがと」


「かなり頑張ったんだからもうちょっと喜んでくれよ」


「うん…かなり、嬉しいよ?…開けていい?」


「むしろ開けてくれ」


「うん…」


「あ…アイピロー……作ってくれたんだ…?」


「おまけみたいな感じだけどね…」


「おまけ?」


「もう一つのに力を入れたからね」


「…ハンカチ?…綺麗」

 

彼女がそれに夢中になる
僕はそれが嬉しくてたまらない。


「すごい…これ、大変だったでしょ?」


「かなり、な」


「…本当にありがと」


それを言い終えると、彼女は僕に口づけた


嬉しそうに、笑いながら…



おまけ 水銀燈


「さぁて、JUMは何をくれたのかしらぁ?」

 

ちょっと大きめの箱の中から出てきたのは、綺麗なアクセサリー


ではなく


『ニューサンキング』


そんな飲み物が袋の中に何本も

 

「…JUMの…JUMのお馬鹿さぁぁぁぁぁぁん!!」

 

おまけ 真紅


ホワイトデーから数日


「薔薇水晶、そういえば貴女…アイピローを買うんじゃなかったの?」


「…もうある、そしていつも持ってる」


「あら、見せて頂戴」


「…はい」


「こ、これはくんくん!?」


「薔薇水晶!貴女、これを何処で買ったの!?」


「…非売品」


「な…ひ、非売品!?」


「5000円で売りなさい!薔薇水晶!」


「ばらしー!私は10000円出すわぁ!」


「ちょっと水銀燈!私の取引よ!?」


「いいじゃなぁい、別に!」


「よくないのだわ!」


「…先行ってるね」


薔薇水晶は二人を置いて学校へと向かう…


そんな薔薇水晶の背後からはまだ口論や競り合いの声が聞こえる。

 

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