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   校門に向かって小走りに進む影があった。
蒼 「うぅ…すっかり遅くなっちゃった。…怒ってるだろうなぁ。」
水 「当たり前でしょぉ。私は待たされるの大嫌いなのよぉ?」
蒼 「うわ!水銀燈!」
水 「ちょ、ちょっと蒼星石…なんでそんなに驚かれなきゃいけないのよぉ…」
蒼 「ご、ごめん。いきなり出てくるからお化けかと思って…」
水 「…じゃあ何で水銀燈って呼びかけたのよぉ。」
蒼 「な、なんとなくかな…」
水 「…まぁ、それは置いといて。貴女、今日は6時までに部活が終わるって言ってたわよねぇ?」
蒼 「…はい、言いました。」
水 「だから6時ごろに校門に居てくれれば一緒に帰れるよ、って言ってたわよねぇ?」
蒼 「…言いました。」
水 「今、6時40分まわったころよねぇ。」
蒼 「…ごめんなさい。」
水 「この寒空の下、40分も待たされたのよぉ?ごめんの一言で許すわけないじゃなぁい。」
蒼 「…なんか奢るよ。」
水 「あら、そんなこと言っていいのぉ?私、すっごく高いもの奢ってもらうわよぉ?」
蒼 「…常識の範疇で選んでくれると信じてるから。」
水 「ん~…しょうがないわねぇ…それじゃ、本当に高いもの、奢ってもらおうかしらぁ。」
   …一瞬、二つの影が重なった。

蒼 「す、水銀燈!いいいいきなり何するんだよ!」
水 「何って…知らないのぉ?口付け、キス、接吻…」
蒼 「そ、そうじゃなくて!何でいきなりキスなんか…」
水 「言ったでしょぉ?高いもの奢ってもらうって。」
蒼 「ぼ、ボクの唇は売り物じゃない!」
水 「あらぁ?でも希少価値はあるわよねぇ。貴女、ガード固くてなかなかさせてくれな…」
蒼 「女同士でキスなんかできるわけないだろ!」
水 「今できたわよぉ?試しにもう一回やってみるぅ?」
蒼 「……も、もう知らない。水銀燈なんか知らない…」
水 「…あらあら、自分が遅刻してきた癖に何でそんなに偉そうなのかしらぁ?」
蒼 「うわっ!ちょ…ちょっと水銀燈!待って!ごめんなさい!ボクが悪かった!だからもうやめ」
   下校途中、ごめんなさいを除夜の鐘並に連呼した蒼星石は、もう絶対に水銀燈を待たせたりしないと心に決めたそうな。

水 「ふふ…次遅れたらもっと高いものを…」
蒼 「へ、変なとこ見ないでよ!」

Fin.

蒼 「ねぇ、水銀燈。」
水 「なぁに?」
蒼 「この状況の意味がいまいち把握できないんだけど。」
   時は昼休み。ポカポカした春の陽気の下で日向ぼっこを楽しんでいた蒼星石。
   その蒼星石の上を横切るように寝そべった水銀燈。
水 「まぁまぁ。細かいことは気にしないでいいじゃなぁい。」
蒼 「よくない。重いからどいてよ。」
水 「まあ!レディに向かって重いとは失礼ねぇ…」
蒼 「事実なんだからしょうがないでしょ。」
水 「悪かったわねぇ…私、蒼星石と違ってスタイルいいからぁ、仕方ないのよぉ。」
蒼 「は?」
水 「バストもヒップも貴女より大分高い数値だと思うわぁ。」
蒼 「…!」
水 「ん?どうしたのぉ?電流が走ったみたいな顔してるわよぉ?」
蒼 「…るのに…」
水 「え?」
蒼 「気にしてるのに!ああそうだよ!どうせボクはぺったんこだよ!」
水 「ちょ、ちょっと蒼星石。声が大き…」
蒼 「水銀燈はいいよね!スタイルもいいし綺麗な顔立ちしてるし…もご」
   話の途中で口を塞がれた。
水 「そうやって自分を卑下しちゃ駄目よぉ。」
蒼 「…水銀燈は自分に自信を持ってるからそんなこと言えるんだ…」
水 「まぁ、そうかもしれないけどねぇ。我ながらスタイルは完璧だと思うわよぉ。」
蒼 「………」
水 「でも、そんなにむくれないで欲しいわぁ。貴女、もっと自信持っていいのよぉ。」
蒼 「え?」
水 「少し自覚持ちなさいよぉ。貴女のことを私より綺麗だと思っている人ぐらい、いっぱい居るのよぉ?」
蒼 「そ、そうかなぁ…」
水 「そうよぉ。現に貴女の認める完璧なスタイルの女性も、貴女のことをとっても綺麗だと思ってるのよぉ?」
蒼 「え、誰それ。」
水 「…ここは怒っていいのかしらぁ。」
蒼 「わわ、冗談だよ冗談。…でも、水銀燈が?」
水 「そうよぉ。ぺったんこだろうが何だろうが、私は貴女のその姿が大好きよぉ?」
蒼 「…ん。何か引っかかるけど、とりあえず嬉しいよ。」
水 「このまま私のものにしちゃいたいぐらいにv」
蒼 「…へ?」
   不意に上から抱きしめられる。さっきまで仰向けだった水銀燈の顔が今ははっきりと間近に見えた。
水 「ふふふ…至福だわぁ…」
蒼 「ちょ、ちょっと!ここ学校だよ!?」
水 「それがどうかしたのぉ?今時ニワトリだって学校の飼育小屋で発情するわよぉ。」
蒼 「い、意味わかんないよ!発情って何さ、発情って。」
水 「あぁ…貴女の全てがほしいわぁ…」
蒼 「!ふ、服の中に手を入れるなぁ!」
水 「照れちゃって…可愛いわねぇ。」
蒼 「ひゃ!撫でまわすなぁ!く、くすぐったいでしょ!」
   うららかな午後の日差しの下。今日も水銀燈に振り回される蒼星石なのでした。
水 「ふふふ…蒼星石の身体の開発、この調子で進むかしらぁ…」
蒼 「ぜ、絶対されるもんか!」

Fin.

蒼 「あぁ見えて…結構気にするタイプだったんだなぁ、水銀燈。」
   帰り道、ポツリと独り言を漏らす蒼星石。
蒼 「どうしよう…ボクの所為で傷ついちゃったのかなぁ…」
   そう思うと、何か底知れぬ罪悪感が湧き出して目頭が熱くなった。
蒼 「…嫌われちゃってたら、どうしよう。」
   一粒、涙がこぼれたそのとき…水銀燈の住む家が見えてきた。

   ピンポーン。
   これで三回目になるが、水銀燈の家のインターホンを鳴らす。
蒼 「…居ないのかなぁ…」
   蒼星石は、何の気なしにドアノブに手をかけた。すると…
蒼 「鍵が…開いてる?」
   ドアを開き、中をこっそりと覗く蒼星石。パッと見ただの覗き魔だったが、そんなことを気にする余裕はなかった。
   中から…何か物音がする。
蒼 「まさか…泥棒でも…!」
   急いで中に飛び込む。しかし、そこに居たのは…
水 「…あらぁ、蒼星石。血相変えちゃって…どうかしたのぉ?」
   至って普通に料理をしている水銀燈だった。
蒼 「す、水銀燈…君、なんで学校から居なくなっちゃったんだ?」
水 「あぁ、四時限目提出期限のレポートがまだ終わってなくて。
蒼 「はぁ?」
水 「怒られる前に早退しちゃおうと思ったのよ。」
   しれっと言う水銀燈。蒼星石はその場にへなへなと座り込んだ。蒼 「く、来るんじゃなかった…真面目に心配したのに…」
水 「あらぁ?心配?なんのことよぉ。」
蒼 「…いいよ。無駄な心配だったみたいだし。」
水 「じょ、冗談よぉ。そりゃあ私だってあの時は多少傷ついたわよ。」
蒼 「その割には随分元気そうじゃないか。」
水 「…空元気って言葉、知らないの?」
   本日二度目。水銀燈の声のトーンが変わった。
水 「…わ、私…とうとう蒼星石に嫌われちゃったかと思って…」
蒼 「え…ちょ、ちょっと水銀燈…」
水 「思わず教室から飛び出したはいいけど…そのまま教室に戻れなくなっちゃって…」
蒼 「あ…あの…」
水 「心配して家まで来てくれたのが嬉しかったから…あんまり悲しませないようと思って明るく振舞ってたのよ…」
蒼 「…ごめん、水銀燈。」
水 「いいわよ、謝ってなんかくれなくても。どうせ私なんか…」
   両手で顔を覆う水銀燈の前に、ただおろおろするばかりの蒼星石。
   こういうとき、どうすればいいのか。ふと、彼女は昔のことを思い返した。

蒼 「翠星石なんかもう知らない!謝っても許してなんかあげない!」
翠 「あ、あの…蒼星石。翠星石が悪かったですぅ。ケーキの苺はちゃんと返すですぅ。だから機嫌直して…」
蒼 「やだ!翠星石なんか嫌いだ!あっち行けぇ!」
   取り付くしまのない返答を返したことが記憶に残っている。そのとき確か翠星石は…
   頑なに断り続けた自分の頭を…無言で撫でてくれた。
翠 「…こんなことしかできないけど…翠星石は…蒼星石に嫌われたくないですぅ…」
   涙混じりにそう言った翠星石の姿は、今でも脳裏に焼きついていた。
蒼 「ねぇ…水銀燈。」
水 「…」
   無言で顔を上げた水銀燈の目には涙が光っていた。珍しく、弱い一面を見た気がする。
   蒼星石は、その頭を抱きしめ…優しく撫で始めた。
蒼 「…ボクは…水銀燈のこと、嫌いなんかじゃない。」
水 「…」
蒼 「確かに…たまにエッチなことされて、恥ずかしいときもあるけど…」
水 「…」
蒼 「ボクは…水銀燈と一緒に居ると、何だか気持ちよくなれるから。」
水 「…」
蒼 「水銀燈…好きだよ。」
   この言葉に嘘偽りはなかった。それもこの「好き」の真意は…きっと、友人としてよりも深いものだと思う。
   しばし、沈黙が場を支配した。そしてその沈黙を破ったのは…
水 「ふ…ふふふ…」
   堪えきれない、とでも言うように零れた、水銀燈の笑い声だった。
蒼 「…水銀燈?」
水 「あ、あはははははははは!そ、蒼星石ってば…本気にしちゃってぇ…」
蒼 「な…ま、まさか水銀燈!」
水 「覚えておきなさぁい。涙は女の武器…そして商売道具なのよぉ。」
蒼 「だ、騙したな!」
水 「ふふ、ごめんね。でも…嬉しかったわぁ。」
蒼 「…へ?」
水 「好きって伝えるのは、私のほうからだと思ってたから…」
蒼 「あ…あれはもののはずみで!」
水 「私も…愛してるわぁ。蒼星石。」
   言うが早いが、水銀燈はキッチンの床に蒼星石を押し倒した。
蒼 「わ~!な、何するんだよ!」
水 「喧嘩、告白とくれば…次は愛の営みでしょぉ?」
   少しいつもよりも深い口付け。甘い吐息が漏れる。
蒼 「ん…水銀燈…」
水 「蒼星石…貴女の初めて、美味しくいただくわぁv」
蒼 「!お、女同士なんだよ?」
水 「女相手に告白をした子がいまさら何を言ってるのぉ?」
蒼 「…う…」
水 「それじゃ、服を脱いでちょうだぁい。あ、それとも脱がせてあげましょうかぁ?」
蒼 「い、いやだぁぁぁあああ!」
   今日は蒼星石にとって、学ぶことの多い一日だった。何事についても。

水 「ふふ…意外と色っぽい声出すのねぇ、蒼星石。」
蒼 「こ、このまま憤死してしまいたい…翠星石や真紅にバレでもしたら…」
水 「あ、安心してちょうだぁい。翠星石にはちゃんとこのビデオテープを…」
蒼 「水銀燈!そんなことしたら本当に死んでやるから!」

Fin.

水 「ん~、このおにぎり絶品ねぇ…コンビニで売れるわよ、蒼星石。」
蒼 「も、もうちょっと静かに食べてよ。」
水 「素直な感想述べただけなのにぃ。」
蒼 「後で聞かせてくれればいいからさ。」
   水銀燈は、連日ヤクルトとスナック菓子で昼食を済ませていたのだが…
   昨日、ついに現場を蒼星石に見つかり、こっぴどく怒られてしまったのだ。
   「栄養失調になる」とか「なげかわしい」とか散々言われた。しかし、転んでもただでは起きぬ水銀燈。
   その日一日かけて「お弁当を作ってきて」と頼み、見事(しぶしぶ、といった感じだったが)OKサインを貰ったのだ。
   そして迎えた今日、蒼星石からもらったお弁当は…少々形の崩れたものこそあるが絶品と称しても過言ではない味だった。
   ただし。食べ物とは食べればなくなるものである。
水 「はぁ…もうこれが最後の一品なのねぇ…名残惜しいわぁ…」
   最後に残った卵焼き。全部で3つあったのだが、すでに2つは食べきってしまった。
蒼 「食べ物に名残を惜しまなくていいから。」
水 「…そうよねぇ。それじゃ、いただきまぁす。」
   パク。…ん?こ、この味は…
水 「~~~~~~!!」
蒼 「あはははは!ひっかかったひっかかった!」
水 「か…辛い…!」
   日頃の行いの報いだろうか、この最後の卵焼きには…巷で評判の「ハバネロ」が多量に含まれていたのだ。
   しっかり味わおうと舌先に乗せた卵焼きがまさか辛いとは思わなかった水銀燈は、かなりのダメージを受けたようだ。
水 「し…失敗したわぁ…ヤクルトもうないじゃない…」
蒼 「へへ。日頃のお返しだよ、水銀燈。」
   とても清清しい笑顔を浮かべる蒼星石。
水 「あ、あんまりよぉ…このトラップは精神的にもダメージが大きいわぁ。」
蒼 「…それじゃ、いい感じにダメージを与えたところで…」
   水銀燈の唇に柔らかいものが触れた。蒼星石の唇が。
水 「ん…そ、蒼星石?」
蒼 「…こっちからするのは初めてだったっけ。」
水 「…さ、される側って結構恥ずかしいものなのねぇ。」
蒼 「ボクの気持ち、わかった?」
水 「ちょっとだけ、ね。でも…なんでいきなりキスなんかしたのよぉ。」
蒼 「…辛さを、甘い唇で中和してあげようかと思って。」
   いつもの蒼星石からは考えられない台詞と行動だ。
水 「貴女まさか、それがしたいばかりに…」
蒼 「まさに楽してズルして水銀燈の唇をいただいたわけ。」
   ま…負けた。水銀燈は初めての敗北感を味わった。
   ただ、蒼星石は忘れていた。冒頭でも言った通り…水銀燈は転んでもただでは起きない。
水 「そう…それなら…甘い行為で口直しといきましょうかぁ…」
蒼 「あ!そ、そうだ!ボク翠星石に呼ばれてて…」
水 「逃がすわけないでしょぉ…覚悟しなさい!蒼星石!」
蒼 「うわ!な、なんでこうなるのさ~!」
   蒼星石が主導権を握れるのは…一体いつになるのだろうか。

水 「貴女がリードするなんてこと…一生ありえないわよぉ。」
蒼 「い、いつまでもやられるがままで終わるもんか!」

Fin.

   性懲りもなく、今日も蒼星石にまとわりつく水銀燈。
蒼 「あーもう!そろそろセクハラで訴えてやる!」
水 「あらぁ?女同士の軽いスキンシップで訴えるなんてこと、できるわけないじゃなぁい。」
蒼 「ど、どこが軽いスキンシップ…」
水 「馬鹿ねぇ。胸を触っただとか抱きつかれただとか…そんなのレズっけがない子同士でも日常茶飯事よぉ。」
蒼 「そ、そういうものなの?」
水 「そうよぉ。物分りがいいわねぇ。」
蒼 「で、でも恥ずかしいことにかわりはないでしょ?人が嫌がることをするのはどうかと…」
水 「…嫌なの?」
蒼 「え?」
   突如、水銀燈の声のトーンが変わった。
水 「…そう。そうよね。貴女、人と馴れ合うの好きじゃないもんね。」
蒼 「え、えっと…水銀燈?」
   おずおずと呼びかける。しかし、水銀燈は蒼星石から離れるや否や教室の外へ出ていってしまった。
蒼 「あ、待ってよ水銀燈!」
   その日、水銀燈が授業に戻ってくることはなかった。

   放課後になっても、水銀燈の姿は見当たらなかった。
蒼 「…帰っちゃったのかなぁ。」
   今日は部活はお休み。蒼星石は、水銀燈の家に行ってみることにした。
蒼 「あぁ見えて…結構気にするタイプだったんだなぁ、水銀燈。」
   帰り道、ポツリと独り言を漏らす蒼星石。
蒼 「どうしよう…ボクの所為で傷ついちゃったのかなぁ…」
   そう思うと、何か底知れぬ罪悪感が湧き出して目頭が熱くなった。
蒼 「…嫌われちゃってたら、どうしよう。」
   一粒、涙がこぼれたそのとき…水銀燈の住む家が見えてきた。

   ピンポーン。
   これで三回目になるが、水銀燈の家のインターホンを鳴らす。
蒼 「…居ないのかなぁ…」
   蒼星石は、何の気なしにドアノブに手をかけた。すると…
蒼 「鍵が…開いてる?」
   ドアを開き、中をこっそりと覗く蒼星石。パッと見ただの覗き魔だったが、そんなことを気にする余裕はなかった。
   中から…何か物音がする。
蒼 「まさか…泥棒でも…!」
   急いで中に飛び込む。しかし、そこに居たのは…
水 「…あらぁ、蒼星石。血相変えちゃって…どうかしたのぉ?」
   至って普通に料理をしている水銀燈だった。
蒼 「す、水銀燈…君、なんで学校から居なくなっちゃったんだ?」
水 「あぁ、四時限目提出期限のレポートがまだ終わってなくて。
蒼 「はぁ?」
水 「怒られる前に早退しちゃおうと思ったのよ。」
   しれっと言う水銀燈。蒼星石はその場にへなへなと座り込んだ。
蒼 「く、来るんじゃなかった…真面目に心配したのに…」
水 「あらぁ?心配?なんのことよぉ。」
蒼 「…いいよ。無駄な心配だったみたいだし。」
水 「じょ、冗談よぉ。そりゃあ私だってあの時は多少傷ついたわよ。」
蒼 「その割には随分元気そうじゃないか。」
水 「…空元気って言葉、知らないの?」
   本日二度目。水銀燈の声のトーンが変わった。
水 「…わ、私…とうとう蒼星石に嫌われちゃったかと思って…」
蒼 「え…ちょ、ちょっと水銀燈…」
水 「思わず教室から飛び出したはいいけど…そのまま教室に戻れなくなっちゃって…」
蒼 「あ…あの…」
水 「心配して家まで来てくれたのが嬉しかったから…あんまり悲しませないようと思って明るく振舞ってたのよ…」
蒼 「…ごめん、水銀燈。」
水 「いいわよ、謝ってなんかくれなくても。どうせ私なんか…」
   両手で顔を覆う水銀燈の前に、ただおろおろするばかりの蒼星石。
   こういうとき、どうすればいいのか。ふと、彼女は昔のことを思い返した。

蒼 「翠星石なんかもう知らない!謝っても許してなんかあげない!」
翠 「あ、あの…蒼星石。翠星石が悪かったですぅ。ケーキの苺はちゃんと返すですぅ。だから機嫌直して…」
蒼 「やだ!翠星石なんか嫌いだ!あっち行けぇ!」
   取り付くしまのない返答を返したことが記憶に残っている。そのとき確か翠星石は…
   頑なに断り続けた自分の頭を…無言で撫でてくれた。
翠 「…こんなことしかできないけど…翠星石は…蒼星石に嫌われたくないですぅ…」
   涙混じりにそう言った翠星石の姿は、今でも脳裏に焼きついていた。
蒼 「ねぇ…水銀燈。」
水 「…」
   無言で顔を上げた水銀燈の目には涙が光っていた。珍しく、弱い一面を見た気がする。
   蒼星石は、その頭を抱きしめ…優しく撫で始めた。
蒼 「…ボクは…水銀燈のこと、嫌いなんかじゃない。」
水 「…」
蒼 「確かに…たまにエッチなことされて、恥ずかしいときもあるけど…」
水 「…」
蒼 「ボクは…水銀燈と一緒に居ると、何だか気持ちよくなれるから。」
水 「…」
蒼 「水銀燈…好きだよ。」
   この言葉に嘘偽りはなかった。それもこの「好き」の真意は…きっと、友人としてよりも深いものだと思う。
   しばし、沈黙が場を支配した。そしてその沈黙を破ったのは…
水 「ふ…ふふふ…」
   堪えきれない、とでも言うように零れた、水銀燈の笑い声だった。
蒼 「…水銀燈?」
水 「あ、あはははははははは!そ、蒼星石ってば…本気にしちゃってぇ…」
蒼 「な…ま、まさか水銀燈!」
水 「覚えておきなさぁい。涙は女の武器…そして商売道具なのよぉ。」
蒼 「だ、騙したな!」
水 「ふふ、ごめんね。でも…嬉しかったわぁ。」
蒼 「…へ?」
水 「好きって伝えるのは、私のほうからだと思ってたから…」
蒼 「あ…あれはもののはずみで!」
水 「私も…愛してるわぁ。蒼星石。」
   言うが早いが、水銀燈はキッチンの床に蒼星石を押し倒した。
蒼 「わ~!な、何するんだよ!」
水 「喧嘩、告白とくれば…次は愛の営みでしょぉ?」
   少しいつもよりも深い口付け。甘い吐息が漏れる。
蒼 「ん…水銀燈…」
水 「蒼星石…貴女の初めて、美味しくいただくわぁv」
蒼 「!お、女同士なんだよ?」
水 「女相手に告白をした子がいまさら何を言ってるのぉ?」
蒼 「…う…」
水 「それじゃ、服を脱いでちょうだぁい。あ、それとも脱がせてあげましょうかぁ?」
蒼 「い、いやだぁぁぁあああ!」
   今日は蒼星石にとって、学ぶことの多い一日だった。何事についても。

水 「ふふ…意外と色っぽい声出すのねぇ、蒼星石。」
蒼 「こ、このまま憤死してしまいたい…翠星石や真紅にバレでもしたら…」
水 「あ、安心してちょうだぁい。翠星石にはちゃんとこのビデオテープを…」
蒼 「水銀燈!そんなことしたら本当に死んでやるから!」

Fin.

   現在「女王の教室」鑑賞中の二人。
蒼 「うわぁ…マヤってきつい過去巡ってきたんだねぇ…」
水 「そうねぇ…これはトラウマよねぇ…」
蒼 「ねぇ、水銀燈?」
水 「なぁに?」
蒼 「ボクがこんなふうに(里中くん)苛められてたらどうする?」
水 「そうねぇ…」
蒼 「助けて…くれる?」
水 「いや、多分一緒になって苛めにかかるわねぇ。」
蒼 「え゛。」
水 「ふふふ…そうすれば…蒼星石の服を脱がせて…あーんなことや…こーんなことや…」
蒼 「…水銀燈…」
水 「…あらぁ?何かしら、この殺気は…」
蒼 「いい加減目覚めろ~!(ドカァン)」

完。Finじゃなくて完。


「やあ水銀燈」
「蒼星石?貴女がサボりなんて珍しいわねぇ」
「僕だってたまにこういう事をしたくなる日があるさ…隣、いいかい」
「ええ、どうぞぉ。男の子だったら尚良かったんだけど」
「おあいにく様。僕が男の子みたいなのは外見だけで、中身は立派な女の子だよ」
「ほんとにぃ?ふふふっ、確かめてあげようかしらぁ」
「水銀燈、それは僕への挑戦と受け取っていいんだね?」
「…ちょ、ちょっとぉ。冗談に決まってるじゃないのぉ」
「本当に?その割にはなんだか楽しそうだったけどね」
「も、もちろん冗談よぉ!ていうか、貴女目つきが怪しいわよ…」
「そう?ふふっ、残念。僕としては本気でも良かったんだけどね」
「……貴女、そっちのケがあるの?」
「うわ、そんな見て解るほど引かなくても。僕はね、どっちでもイケるタイプなんだ」
「い、一応ほら。私はノーマルだからぁ……」
「大丈夫大丈夫。一度経験してみるといいよ。世界が変わるよ?」
「あまり変えたくないわぁ…」
「女同士だから解るツボ、っていうのもあるんだよ…ほら、例えばこんな風に」
「うぁ…ちょっ、と…変なところ…触らないでよぉ……」
「うん?別に僕は君の首を撫でているだけだよ。そんなに変なことじゃないさ」
「や…ダメだってばぁ。私はそっちのケは…いやぁぁぁぁ…!」

-あらあら~おやおや~それからどんどこしょ~-

「…なんで蒼星石を見て頬を染めやがるですか、水銀燈」
「少しだけ視野が広がったんだよ。薔薇水晶、これでいいのかい」
「ん……蒼星石、感謝……」
「……もしかして、私…ハメられたぁ……?」
「愚かね」
「ヒナヒナヒナ!」
「カナカナカナ!」



「退屈ねぇ・・・」
学校の屋上で私は一人彼、もとい彼女を待つ。
待ち合わせを約束させておいて一人遅れるとはどういう了見なのだろう。
後でしっかりお仕置きしてあげなくちゃ、などという多少不謹慎なことを考えつつ空を見上げた。
いいお天気。
ただ真っ青なだけの空ではなく、綿のところどころ浮かんだ空。
私は影に包まれているのに、上には透き通るような蒼色が見える。
まるで、あの子のような、美しい色。
「何かいい物でも見えたのかい?」
そして、あの子。
「遅いわよぉ蒼星石。」
「ごめんね、途中で先生に教材運べって言われてさ。お詫びに飲み物買って来たよ、ほら。」
何?その笑顔は。無条件で許したくなっちゃうじゃない。
「水銀燈はレモンティーとミルクティーどっちがいい?僕はどっちでも・・・ひゃぅ!」
だから、耳を甘噛みしてあげる。
「蒼星石は悪い子ねぇ・・・物で人に許して貰おうなんて・・・」
「ふぁぁっ・・・やめてよぉ水銀燈・・・」
耳たぶはこの子の急所。しかも私の稚拙な行為でも感じてしまうのだ。
「許して欲しいんなら愛してるって言いなさぁい。」
「んん、はぁんっ・・・とう、あいしてる・・・」
「声が小さい。」
蒼星石が潤んだ瞳で睨んでくる。それでも私は攻撃をやめない。
「・・・・・・水銀燈、愛してるっ!」
OK。心でそう呟いて耳から口を離す。
「ああもう本当に可愛いわぁあなたっ!」
そう言って、私は彼女を昼休み中ずっと抱きしめていた。

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