『K』~雛苺と黒猫の物語~第六夜
それから月日が過ぎ、秋も終わりに近付いてきた。もうすぐ雛苺と過ごす二度目の冬がやってくる。
雛「うゆー。ホーリーナイトぉ、もうちょっと気品漂う感じにできないのー?」
『気品ってよぉ。血統書付きの猫にでも頼め』
一緒に住み始めてからの二年、ほとんど毎日絵を描いて過ごしてきた。
かくゆう今日も絵を描いている。
今日は、ちょっと遠出して小高い丘の上に来ている。
春になると一面にタンポポが咲き乱れ、ここから見える湖とマッチして最高なんだ
が……
『なぁ、寒くね?』
雛「あはは~。失敗だったのー」
そんな明るい顔で言われましても…
雛「ぢゃぁ、お弁当にしようなのー」
と、レジャーシートをひきはじめる雛苺。
なぁんでまな板はないのにレジャーシートはあるんだ?
そう、雛苺宅にはまな板がなかったのだ……って余計な話だったな。
ピクニック気分でウキウキの雛苺は、早起きしてお弁当を作っていた……のだが
『おいっ!!うにゅーしか入ってねぇぞ!?』
雛「うよ?問題あるの?」
『ありまくりだわっ!猫に、んなもん食わせんなっ!!』
雛「ハァ……ナイトはわがままなのよ ろくな大人になれないのよ?」
『黙れ!万年ロリ娘がっ!!』
雛「なにをー!?」
雛「……ッハハハ」『……ッハハハ』
ほぼ同時に笑いだす。
これが普通の会話。約2年で培ってきた信頼の証。
茶化し、じゃれあい、ふざけあう。
こんな幸せな日々がいつまでも続くのだと思ってた…
そう冬がくる前までは
続く。