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『メイメイ飼育日記』


薔「銀ちゃん…こっちこっち……」
銀「はぁ、そんなに急かさないでよぉ…」
ある休日、水銀燈は薔薇水晶と一緒に街に買い物に来ていた。
そして彼女は今、薔薇水晶に誘われて先程から細い裏路地を行ったり来たりを繰り返している。
銀「ちょっとぉ、まだ着かないのぉ?」
薔「もうちょい…確かこの辺に……あ!あった…」
銀「ん~?…ってここぉ!?」
水銀燈は薔薇水晶の指差した店を前に眉をしかめて声を上げた。
そこは路地裏の最奥にある古びたペットショップらしき店であった。
銀「ちょっとぉ…こんなとこに何が…ってあぁ!!」
水銀燈が訪ねた時、すでに薔薇水晶は店の中へと入って行っていた。
慌てて後を追ってその店に入る水銀燈。
次の瞬間、彼女の目には檻に入った様々な動物が飛び込んできた。
銀「わぁ…すごぉい…」
古びた外観には似合わず店内はなかなかに広く、犬や猫などの哺乳類でなく鳥や虫、爬虫類や熱帯魚まで幅広いジャンルの生き物が並べられていた。
薔「凄いでしょ…?」
突如掛けられた声に目を向けると子犬を抱えた薔薇水晶が小さな笑いを浮かべて立っていた。


銀「えぇ、こんなとこにこんなお店があったのねぇ…」
薔「ここは…この街一番の品揃え……珍しい生き物がいっぱい…」
銀「ふぅん…せっかくだしぃ、私もなんか飼ってみようかしらぁ…」
そう言うと水銀燈は飼育が簡単そうな生き物を探し始める。
銀「う~ん…何がいいのかしらぁ?」
薔「ハムスターとか…熱帯魚とかは…?」
銀「それもなんかありきたりねぇ…」


「何かお探しですかな?」


その時、ふいに掛けられた声にビクリとしながら水銀燈が振り向いた先には初老の男性が立っていた。
薔「あ…店長さん…どうも…。」
店長「やぁ、薔薇水晶さん。こちらはお友達かい?」
薔「はい……ってかマブダチ…」
店長「はは、そうかいそうかい。それで…どんなものを探しているのかな?」
店長が水銀燈に話を振る。
銀「は…はい、えっと…あまり高くなくってぇ…丈夫で飼うのが簡単、それでいて珍しい生き物とか…ないですかねぇ?」
それは普通に考えてとても我が儘な注文である。珍しい生き物は高い、それは誰でもわかることなのだが…
店長「あぁ、それならピッタリのがいますよ。」
店長はニンマリ笑うと水銀燈たちに手招きをした。
 

店長「ついておいで…店の奥にとっておきのがいるから。」
銀「は…はぁ。」
水銀燈と薔薇水晶は店長の後について店の奥へと進む…
薄暗い店の奥、そこにあった扉を開けるとその先にはいくつもの檻が置かれていた。
そして店長はその中の一つを水銀燈らに向かって指差した。


銀「何…?これぇ…」
薔「さぁ…何だろ……?」
2人は檻の中の生き物を前に首を傾げる。
その生き物は70cmほどの大きさで二本の足で直立していた。
その全身は黒く、胸にふたつの黄色く光る器官、目玉はなく頭には二本の触角らしきものが生えている…。
店長「ふふっ、初めて見たでしょう?」
店長が誇らしげに声を掛ける。
銀「あのぉ…コレ、何ですかぁ?」
店長「ふふふ…よく聞いてくれたね。この生き物は“ゼットン”っていうとても珍しい生き物だよ。」
銀「ゼ…ゼットン?」
薔「コレ…哺乳類ですか…?爬虫類ですか…?」
店長「いや、宇宙恐竜だよ。」
銀「宇宙……恐竜ぅ!?」
水銀燈は店長の口から放たれた奇天烈な言葉に声を裏返した。
店長「そう、知人に頼み込んで日本で初めて入荷したんだ。どうだい?今ならお安くしとくよ?」


銀「い…いえ、その……」チラッ
水銀燈は謎の生物を横目で見る…
ゼ「ゼットォ~ン…」
すると謎の生物は檻の中から水銀燈の顔をじっと見つめていた。
銀「ひっ…ひぃ!?目が合った!!」
店長「おっ、どうやらゼットンは君のことを気に入ったみたいじゃないか♪」
銀「いぃっ!?」
薔「銀ちゃん…よかったじゃない……」
銀「ち…ちっとも嬉しくないわよ!!もういいわ、行くわよ!?薔薇水晶!!」
水銀燈は薔薇水晶の手を掴むと一目散に店を後にした。


店長「おやおや……ん?」
残された店長がふと檻に目を向けると、そこにはゼットンの姿は無くなっていた…
店長「これはこれは…どうやらよっぽど気に入られたようだね…クスクス…」


その夜…
銀「はぁ、今日は薔薇水晶のせいで疲れたわぁ…さ、早くお風呂に入って…」
帰宅した水銀燈は自室のドアを開けた。


ゼ「ゼット~ン」


銀「………」
水銀燈の思考が止まった…
銀「えっ……えぇぇえええええええええええええええ!!?」
その直後、周囲に水銀燈の絶叫が響く。それもそのはず、昼間あの店で見た謎の生物が自室のベッドの上に立っていたのだから。


銀「なっ…なんであんたがここにいるのよぉ!?」
水銀燈はゼットンに向かって声を荒げる。
するとベッドの上にいたゼットンは一瞬で姿を消すと、あっという間に自分の目の前に姿を現した。
銀「ひゃあっ!な…何が起きたのぉ…?」
水銀燈は目の前で起きた信じらんない光景に腰を抜かしてへたり込む。
ゼ「ゼット~ン…」
するとゼットンは水銀燈へと一枚の紙を差し出した。
銀「…え?何…これ…」
水銀燈がそれを手に取るとそこには
つ『ゼットン飼育マニュアル』
と書かれているではないか。
銀「え…ええええええええ!?」
ゼ「ゼット~ン…」
銀「よ…読めっていうのぉ?」
水銀燈はゼットンに促されその書類に目を通した。


銀「なになに…ゼットンは宇宙に生息する大変珍しい生き物です…。
ゼットンは基本的に知能も高く丈夫なため飼育自体は容易で、その丈夫さは地球上の通常兵器も物ともせず、レーザーなどの光線兵器も吸収して跳ね返すほどです。
餌は自分で勝手に調達するため基本的に与える必要はありません。
頻繁にテレポート能力を使うので脱走されないようにしっかり愛情を注いであげてください……ですってぇ!?」


ゼ「ゼット~ン…」
銀「じょ…冗談じゃないわよぉ!!私はまだあんたを飼うなんて一言も言ってないじゃない!?」
ゼ「ゼッ…」
銀「それにあんたみたいな得体の知れない生き物、誰が好き好んで……えっ!?」
ゼ「ゼットォ~ン…」
するとゼットンの顔面に縦一列にある発光器官が激しく光り始めたではないか。
銀「ち…ちょっと!何よこれぇ!?」
水銀燈は慌てて飼育マニュアルに目を向ける。
するとそこには恐ろしい内容が書いてあった…
つ『注意!ゼットンは怒らせると口から超高熱の火球を吐きます。もしマトモに喰らえば人ひとりくらい跡形もなく蒸発してしまうので気を付けてください。』
銀「嘘ぉぉおおおおっ!?」
再びゼットンに目を向けるとその照準はピッタリと自分へと向けられているではないか!
銀「ひっ…ひぃいいいいいいっ!!」
水銀燈は慌てて床に両手を付くとゼットンに向かって頭を下げた。
銀「ごめんなさいごめんなさいごめんなさぁい!!謝るからどうか許してぇえええ!!」
ゼ「ゼットォ~ン!」
銀「ひぃっ!わ…わかったわよぉ!!アナタのことちゃんと飼うから許してよぉおお!!」


ゼ「ゼット~ン…」
するとその凄まじい光は彼女の言葉に満足したかのように収束していった。
銀「ハァ、ハァ…どうにか収まってくれたみたいね…」
ゼ「ゼット~ン…」
息を切らす水銀燈にゼットンがすり寄る。
銀「な…なによぉ…」
ゼ「ゼット~ン…」
するとゼットンはマニュアルに書いてあった『名』という文字を指差した。
銀「な…名前をつけろっていうのぉ?」
ゼ「ゼット~ン…」
ゼットンが頷く。
銀「と…言われてもねぇ……ヒッ!」
ゼットンの口に再び光が集まる…
銀「わっ…わかった!わかったからやめてぇ!!」
光が収まる。
銀「ハア…こんなんじゃ命がいくつあっても足りないわぁ…」
ゼ「ゼット~ン…」
銀「わかったから!えっと…それじゃあ……メイメイなんて…どうかしら?」
ゼ「……ゼ~ットン、ゼ~ット~ン。」
するとその名前が気に入ったのかゼットンは両手を上げて体を上下に揺すりだした。
銀「き…気に入ったのぉ?えと…メイメイ…」
メ「ゼット~ン、ゼ~ット~ン…」
銀「そ…そぅ…よかったわぁ…。」


そしてこの瞬間、ゼットン…メイメイと水銀燈の奇妙な生活が始まった。


続く(?)

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