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「・・・そうね。貴方には教えてもいいかもしれないわ。」

「え?」                                                

 

何の気なしの質問。何か訳ありな回答。

 

~重なる想い(Side:桜田ジュン)

 

「ちょっと、長くなるかもしれないけど。それでも、聞きたいなら。」

 

何で長話になるんだ?ただ一言、「友達」とでも「知り合い」とでも言えばいい話じゃないか。

・・・でも、こんな風に意味深に問い返されたら、知的好奇心を抑えられないのが人間だ。

 

「ああ、聞かせてくれ。」

「そう・・・それじゃ、ついてきなさい。」

 

相も変らぬ命令口調で、真紅は僕に背を向けた。・・・まだ、どこか寄るところがあるのか?

真紅は有無を言わさず歩いていく。僕は慌ててその後を追った。

学校を出てすぐの頃に似た沈黙が、再び場を支配している。しかし今回のは、さっきと状況が違う。

真紅の表情は妙に決然としたものだったし、今は彼女の方が歩く速度が早い。

結局僕らは何一つ会話をすることなく・・・ごく普通な一軒の家屋の前まで来て、その歩を止めた。

 

「入って。」

 

真紅はそれだけ言い放つと、さっさと玄関を開けて一人で中へ入ってしまった。

・・・そう。どうやらここは、真紅の家らしい。初めて見る。

 

「お邪魔します。」

 

後から入った僕を迎えるのは、整った下足置き場。置いてあるのは真紅の靴だけである。

 

「ダージリンは、ストレートでいいわね?」

「ああ、任せるよ。」

 

居間に通された僕は、椅子に腰掛け、紅茶を淹れてくれている真紅を待つ。

程なくして、紅茶を淹れ終えた真紅は僕の対面に腰掛け、カップを一つ差し出してきた。

 

「はい。」

「ん。サンキュ。」

 

受け取った紅茶を軽く一口飲む。

・・・味に深みを持たせる渋みっては本当だな。などと、先ほど真紅が言った台詞を頭の中で反芻させた。

その間真紅は、自分のカップを両手で包み俯いていたが・・・やがて、顔を上げ、僕の顔をまっすぐに見据えた。

 

「それじゃあ、ジュン。話してもいい?」

「ああ、頼むよ。」

 

小さく深呼吸をする真紅。ここから、僕を驚愕させる、ある真実が語られる・・・

 

「始めに、単刀直入に言うわ。」

「・・・ああ。」

「薔薇水晶は・・・私の従姉妹にあたる少女よ。」

 

口につけたカップが前歯に当たり、カン・・・と無機質な音を響かせた。

 

「・・・従姉妹ってあの、親の兄弟の子供って奴か?」

「そういうことになるわね。」

 

し、親戚だったのか・・・言われてみれば、どこか似た様な雰囲気があるようにも・・・

・・・いや、これは。今真紅の口から「薔薇水晶は真紅の従姉妹」という事実を聞いたからに過ぎないな。

真紅は、固まった僕を一瞥すると、再び話を続けた。

 

「私の祖父は、ローゼンという人形師。彼には六人の娘が居たの。」

「六人も・・・」

 

全員娘って、結構凄い確率じゃないか?ええっと・・・計算するのは面倒だからいいや。

 

「その末の娘・・・そうね、私の叔母に当たる方。その娘が薔薇水晶。・・・そして双子の姉、雪華綺晶よ。」

「ふ、双子・・・?」

「ええ。薔薇水晶には双子の姉が居るのよ。彼女もまた薔薇水晶と同じように、来週からうちの高校へ編入してくるそうよ。」

「・・・へえ。」

 

二人が顔見知りだったのはそういうわけか・・・そりゃ親戚なんだし、面識もあるだろう。

薔薇水晶が、「友達ではない」と否定したのも納得だ。

 

「・・・ここまでは、いいかしら?」

「こ、ここまでは?」

 

どういうことだ?聞きたいことはもう聞いたはず。これ以上真紅が語ることは・・・

顔に疑問の色が浮かんでいたのだろうか。真紅は、眉をひそめて言った。

 

「そう。薔薇水晶は、私の従姉妹。そして、私が話そうとしているのは、ここから先のこと。」

 

長い前置きだった。

 

「私は、祖父の四番目の娘の子。」

 

僕は・・・

 

「祖父の他の娘たちにも子供が居るわ。」

 

薔薇水晶と真紅の関係を知った驚きなど、まだまだ軽い驚きであったと思い知らされ・・・

 

「私の従姉妹は、薔薇水晶と雪華綺晶を含めて、全部で七人。」

 

・・・更なる驚愕を味わうことになる。

 

「残りの五人の名は、水銀燈・・・金糸雀・・・翠星石・・・蒼星石・・・そして、雛苺。」

 

 

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