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「ジュン。もう少しゆっくり歩きなさい。」

「そんな速く歩いてるつもりはないんだけど。」

 

二人っきりの下校タイム。・・・甘い展開は期待できないけど。

 

~重なる想い(Side:桜田ジュン)

 

唐突だけど、僕は今真紅と二人っきりで下校している。その理由は・・・話すと長いんだけど、聞きたい?

あ、そう。そりゃそうだ。じゃ、簡潔にまとめよう。みんな用事があるんだってさ。・・・内容は想像に任せるよ。

偶然、というかむしろ必然?暇だったのが僕と真紅だったがために、こうして二人で下校してるわけ。

・・・当然のようにポット入り鞄は僕が持たされてる。しかも真紅の奴、帰りに紅茶を買うとか言い出した。

僕の身体は今ボロボロだってのに。歩くだけで、昼休みに某サイヤ人中心の男子暴徒衆につけられた傷が痛む。

・・・翠星石のクッキーは死守したけどね。家でココアでも飲みながら食べようと思う。こんなとこで、状況説明終わり。

 

「貴方にそのつもりがなくても、私の歩幅は貴方よりも小さいのだわ。」

「ああ、そういえばそうだな。態度がでかいから気付かなかっ・・・だ!?」

「ジュン。貴方はまず口を慎む、ということを覚えることね。」

 

傷が一つ増えた。・・・今のは僕が悪いのか?いや、正当な意見だと思うな、うん。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

そこで、会話は途切れた。考えてみれば、真紅と二人きりなどという状況は、一緒に登校するようになってから初めてで。

共有する話題が見つからない。よって、会話の発端が作れない。隣の真紅はただ黙々と歩き続け、僕もただよろよろと歩き続ける。

会話もないまま、学校から真紅ご贔屓のティーショップまでの行程も半分を過ぎた頃。唐突に真紅が口を開いた。

 

「ダージリンティーは、抽出しようとすると短時間で強い渋みと苦味が出るの。」

「・・・はぁ?」

 

い、いきなり何を言い出すんだ?

 

「だから抽出をするときは、基本的に短時間で終えるのが望ましいわ。」

「・・・・・・」

「かと言ってあんまり短く済ませようとすると、味に深みを与えるその特有の渋みが・・・」

「ちょっと待った。」

「・・・なに?」

「なに?じゃないだろ。いきなり何の話だ?」

「・・・・・・」

 

黙ってしまった。一体何だって言うんだ?突然何の脈絡もなく紅茶の淹れかた講座を始めたと思ったら、まただんまりかよ。

と、思ったら。ぼそぼそと何か言っているようだった。この道は比較的車通りが多いので、よく聞こえない。

 

「・・・ない・・・」

「何がないって?」

「え?」

 

断片的に単語が聞き取れたので、聞き返すと、どうしたことだろうか。

自分でも独り言を言っている自覚がなかったのか、妙に間の抜けた返答が返ってきた。

 

「今、『ない』とか呟いただろ?」

「あ・・・え、ええ。言ったけれど。」

「だから、何がないって?」

「・・・・・・」

 

何で黙るんだよ。返答が返ってこないと余計に気になるじゃないか。

財布でもなくしたんだとしたら深刻だ。僕は、さらに追及しようと口を開く。

 

「・・・なあ、真・・・」

「う、うるさいわね。つまらない、と言ったのよ。」

「は?」

 

別に深刻でもない返答が返ってきたことに、今度はこっちが間の抜けた声をあげてしまう。

 

「ふ、二人っきりで静かな状況だというのに、貴方が気の利いた話題の一つも出さないからよ。」

「ぼ、僕のせいかよ。」

「当然でしょう?レディにつまらない思いをさせる男なんて駄目に決まっているじゃない。」

「それはむちゃくちゃだろ・・・」

 

まったく、自分本位な奴め。こいつの中のレディとやらはどれだけ絶対の存在なんだろうか。

・・・でも、ちょっと可愛げもあるかな。真紅は僕と会話がしたかったんだ、と大いに自惚れた受け取り方をすればだけど。

 

「まったく、本当に使えないのだわ。」

 

・・・たまには、素直に自惚れておこうか。今だけ言い返さないでおいてやる。

 

「じゃ、真紅。最近評判のあのドラマなんだけどさ・・・」

「あら、私の紅茶の話は完全に無視なのかしら?」

「いや、ホラ。僕紅茶とか詳しくないし・・・」

 

それからティーショップまで、時間ではせいぜい十分かそこらしか経っていないだろうけど。

交わした会話も、何の変哲もない会話だったけれど。・・・それでも、それなりに。楽しい時間だった。

 

ティーショップの前に到着すると、真紅は僕に預けた自分の鞄の中から財布を取り出し、

 

「ジュンはここで待ってなさい。」

「え?」

「すぐに戻ってくるから。」

 

それだけ告げて、さっさと店の中へ入っていってしまった。なんだよ、僕は飼い犬かなんかか?

ま、いいか。疲れてるし。僕は入り口のそばの壁にもたれかかり・・・ふと、気付いた。

隣の本屋の入り口脇に、少女が・・・いや、年齢は僕と同じくらいかな?とにかく立っていた。

何だか妙に不思議な雰囲気の子だ。真っ白な肌、長い髪。花の刺繍の入った眼帯がいやに目を引くが・・・外見よりも、この子がとっている行動の方が気にかかる。

直立不動、眼帯をつけてない右目で、じーっと僕の目を・・・瞬きすらせずに見つめ返している。

・・・はて、どこかで会ったことでもあったかな?

 

 

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